Provided by: manpages-ja-dev_0.5.0.0.20161015+dfsg-1_all bug

名前

       open, openat, creat - ファイルのオープン、作成を行う

書式

       #include <sys/types.h>
       #include <sys/stat.h>
       #include <fcntl.h>

       int open(const char *pathname, int flags);
       int open(const char *pathname, int flags, mode_t mode);

       int creat(const char *pathname, mode_t mode);

       int openat(int dirfd, const char *pathname, int flags);
       int openat(int dirfd, const char *pathname, int flags, mode_t mode);

   glibc 向けの機能検査マクロの要件 (feature_test_macros(7)  参照):

       openat():
           glibc 2.10 以降:
               _XOPEN_SOURCE >= 700 || _POSIX_C_SOURCE >= 200809L
           glibc 2.10 より前:
               _ATFILE_SOURCE

説明

       ファイルの pathname を与えると、 open()  はファイルディスクリプターを返す。 ファイルディス
       クリプターは、この後に続くシステムコール (read(2), write(2), lseek(2), fcntl(2) など)   で
       使用される小さな非負の整数である。  このシステムコールが成功した場合に返されるファイルディ
       スクリプターは そのプロセスがその時点でオープンしていないファイルディスクリプターの うち最
       小の数字のものとなる。

       デフォルトでは、新しいファイルディスクリプターは execve(2) を実行した後も オープンされたま
       まとなる (つまり、 fcntl(2) に説明がある FD_CLOEXEC ファイルディスクリプターフラグは最初は
       無効である); 後述の O_CLOEXEC フラグ を使うとこのデフォルトを変更することができる。 ファイ
       ルオフセット (file offset) はファイルの先頭に設定される (lseek(2) 参照)。

       open()  を呼び出すと、「オープンファイル記述」 (open file description)  が作成される。ファ
       イル記述とは、システム全体のオープン中のファイルのテーブルのエントリーである。  このオープ
       ンファイル記述は、ファイルオフセットとファイル状態フラグ (下記参照) が保持する。  ファイル
       ディスクリプターはオープンファイルっ記述への参照である。  この後で  pathname  が削除された
       り、他のファイルを参照するように変更されたりしても、  この参照は影響を受けない。  オープン
       ファイル記述の詳細な説明は「注意」の節を参照。

       引き数  flags には、アクセスモード O_RDONLY, O_WRONLY, O_RDWR のどれかひとつが入っていなけ
       ればならない。 これらはそれぞれ読み込み専用、書き込み専用、読み書き用に ファイルをオープン
       することを要求するものである。

       さらに、  flags  には、ファイル作成フラグ  (file creation flag) とファイル状態フラグ (file
       status flag) を 0 個以上「ビット単位の OR (bitwise-or)」で 指定することができる。 ファイル
       作成フラグO_CLOEXEC,  O_CREAT, O_DIRECTORY, O_EXCL, O_NOCTTY, O_NOFOLLOW, O_TMPFILE,
       O_TRUNC, O_TTY_INIT である。 ファイル状態フラグ は以下のリストのうち上記以外の残りのもので
       ある。  二種類のフラグの違いは、ファイル状態フラグの方はその内容を取得したり (場合によって
       は) 変更したりできる点にある。詳細は fcntl(2) を参照。

       すべてのファイル作成フラグとファイル状態フラグを以下のリストに示す。

       O_APPEND
              ファイルを追加 (append) モードでオープンする。 毎回の write(2)  の前に lseek(2)  を
              行ったかのように、ファイルポインターをファイルの最後に移動する。 NFS ファイルシステ
              ムで、 O_APPEND  を使用すると、複数のプロセスがひとつのファイルに同時にデータを追加
              した場合、 ファイルが壊れてしまうことがある。 これは NFS が追加モードをサポートして
              いないため、 クライアントのカーネル (kernel) がそれをシミュレートしなければならない
              のだが、 競合状態を避けることはできないからである。

       O_ASYNC
              シグナル駆動 I/O (signal-driven I/O) を有効にする: このファイルディスクリプターへの
              入力または出力が可能になった場合に、シグナルを生成する (デフォルトは  SIGIO  である
              が、  fcntl(2) によって変更可能である)。 この機能が使用可能なのは端末、疑似端末、ソ
              ケットのみであり、 (Linux 2.6 以降では) パイプと FIFO に対しても使用できる。 さらに
              詳しい説明は fcntl(2)  を参照すること。 下記の「バグ」も参照。

       O_CLOEXEC (Linux 2.6.23 以降)
              新しいファイルディスクリプターに対して  close-on-exec フラグを有効にする。 このフラ
              グを指定することで、  プログラムは  FD_CLOEXEC  フラグをセットするために   fcntl(2)
              F_SETFD 操作を別途呼び出す必要がなくなる。

              ある種のマルチスレッドのプログラムはこのフラグの使用は不可欠である点に注意するこ
              と。 なぜなら、個別に FD_CLOEXEC フラグを設定する fcntl(2) F_SETFD 操作を呼び出した
              としても、あるスレッドがファイルディスクリプターを オープンするのと同時に別のスレッ
              ドが fork(2) と execve(2)  を実行するという競合条件を避けるのには十分ではないからで
              ある。 実行の順序に依存して、この競合条件の結果、 open() が返したファイルディスクリ
              プターが fork(2) で作成された子プロセスにより実行されるプログラムに意図せず見えてし
              まう可能性がある。  (この種の競合は、 本質的に、 close-on-exec フラグをセットすべき
              ファイルディスクリプターを作成するどのシステムコールでも起こり得るものであり、 他の
              いろいろな  Linux システムコールでこの問題に対処するために O_CLOEXEC と同等の機能が
              提供されている。)

       O_CREAT
              ファイルが存在しなかった場合は作成 (create) する。 ファイルの所有者  (ユーザー  ID)
              は、プロセスの実効ユーザー  ID に設定される。 グループ所有権 (グループ ID) は、プロ
              セスの実効グループ ID または親ディレクトリのグループ ID に設定される  (これは、ファ
              イルシステムタイプ、マウントオプション、         親ディレクトリのモードに依存する。
              mount(8)  で説明されているマウントオプション bsdgroupssysvgroups を参照)。

              mode は新しいファイルを作成する場合に使用するアクセス許可 (permission) を指定する。
              flagsO_CREATO_TMPFILE が指定されている場合、 mode を指定しなければならな
              い。 O_CREATO_TMPFILE も指定されていない場合、 mode は無視される。 有効なアクセ
              ス許可は、普段と同じようにプロセスの umask によって修正され、作成されたファイルの許
              可は (mode & ~umask) となる。  このモードは、新しく作成されたファイルに対するそれ以
              降のアクセス   にのみ適用される点に注意すること。  読み取り専用のファイルを作成する
              open()  コールであっても、 読み書き可能なファイルディスクリプターを返すことがありう
              る。

              mode のために以下のシンボル定数が提供されている :

              S_IRWXU  00700  ユーザー  (ファイルの所有者)  に読み込み、書き込み、 実行の許可があ
                       る。

              S_IRUSR  00400 ユーザーに読み込みの許可がある。

              S_IWUSR  00200 ユーザーに書き込みの許可がある。

              S_IXUSR  00100 ユーザーに実行の許可がある。

              S_IRWXG  00070 グループに読み込み、書き込み、実行の許可がある。

              S_IRGRP  00040 グループに読み込みの許可がある。

              S_IWGRP  00020 グループに書き込みの許可がある。

              S_IXGRP  00010 グループに実行の許可がある。

              S_IRWXO  00007 他人 (others) に読み込み、書き込み、実行の許可がある。

              S_IROTH  00004 他人に読み込みの許可がある。

              S_IWOTH  00002 他人に書き込みの許可がある。

              S_IXOTH  00001 他人に実行の許可がある。

       O_DIRECT (Linux 2.4.10 以降)
              このファイルに対する  I/O  のキャッシュの効果を最小化しようとする。このフラグを使う
              と、一般的に性能が低下する。 しかしアプリケーションが独自にキャッシングを行っている
              ような 特別な場合には役に立つ。 ファイルの I/O はユーザー空間バッファーに対して直接
              行われる。  O_DIRECT フラグ自身はデータを同期で転送しようとはするが、 O_SYNC フラグ
              のようにデータと必要なメタデータの転送が保証されるわけではない。同期 I/O を保証する
              ためには、  O_DIRECT に加えて O_SYNC を使用しなければならない。下記の「注意」の節の
              議論も参照。

              ブロックデバイスに対する似通った意味のインターフェースが  raw(8)   で説明されている
              (但し、このインターフェースは非推奨である)。

       O_DIRECTORY
              pathname がディレクトリでなければオープンは失敗する。 このフラグは、 opendir(3)  が
              FIFO やテープデバイスに対してコールされた場合の サービス不能 (denial-of-service) 攻
              撃を避けるために カーネル 2.1.126 で追加された。

       O_DSYNC
              ファイルに対する書き込み操作は、同期  I/O  のデータ完全性完了の要件に基づいて行われ
              る。

              write(2) (や同様のコール) が返るまでに、 書き込まれたデータおよびデータを取得するの
              に必要なファイルメタデータが裏で利用されているハードウェアに転送される        (つま
              り、write(2) の後に fdatasync(2) を呼び出したのと同じようになる)。 下記の「注意」も
              参照のことO_EXCL この呼び出しでファイルが作成されることを保証する。このフラグが  O_CREAT と 一緒に指
              定され、 pathname のファイルが既に存在した場合、 open() は失敗 する。

              これら二つのフラグが指定された際、シンボリックリンクは辿られない。 pathname  がシン
              ボリックリンクの場合、  シンボリックリンクがどこを指しているかに関わらず open()  は
              失敗する。

              一般的には、 O_CREAT を指定せずに O_EXCL を使用した場合の O_EXCL の動作は規定されて
              いない。 これには一つ例外があり、Linux 2.6 以降では、 pathname がブロックデバイスを
              参照している場合、 O_CREAT なしで O_EXCL を使用することができる。  システムがそのブ
              ロックデバイスを使用中の場合  (例えば、  マウントされているなど)、  open() はエラー
              EBUSY で失敗する。

              NFS では、 O_EXCL は、Linux 2.6 以降で NFSv3 以降を使っている場合でのみサポートされ
              る。  O_EXCL サポートが提供されていない NFS 環境では、このフラグに頼って ロック処理
              を実行するプログラムは競合状態 (race condition) に出会う 可能性がある。  ロックファ
              イルを使用して不可分 (atomic) なファイルロックを実現し、 NFS が O_EXCL をサポートし
              ているかに依存しないようにしたい場合、 移植性のある方法は、同じファイルシステム上に
              他と名前の重ならない  ファイル (例えばホスト名と PID を組み合わせた名前) を作成し、
              link(2)  を使用してそのロックファイルへのリンクを作成することである。 link(2)  コー
              ルの返り値が  0 ならばロックに成功している。 あるいは、そのファイルに stat(2)  を使
              用してリンク数 (link  count)  が  2  になっているかをチェックする。  そうなっていれ
              ば、同じくロックに成功しているということである。

       O_LARGEFILE
              (LFS) off_t ではサイズを表せない (だだし off64_t ではサイズを表せる)ファ イルをオー
              プン可能にする。この定義を有効にするためには、(どのヘッダーファイ  ルをインクルード
              するよりも前に) _LARGEFILE64_SOURCE マクロを定義しなければ ならない。 32 ビットシス
              テムにおいて大きなファイルにアクセスしたい場合、     (O_LARGEFILE     を使うよりも)
              _FILE_OFFSET_BITS    機能検査マクロを    64   に   セットする方が望ましい方法である
              (feature_test_macros(7) を参照)。

       O_NOATIME (Linux 2.6.8 以降)
              ファイルに対して read(2)  が実行されたときに、最終アクセス時刻 (inode の  st_atime)
              を更新しない。 このフラグはインデックス作成やバックアッププログラムで使うことを意図
              している。 これを使うとディスクに対する操作を大幅に減らすことができる。  このフラグ
              は全てのファイルシステムに対して有効であるわけではない。    その一例が   NFS   であ
              り、サーバがアクセス時刻を管理している。

       O_NOCTTY
              pathname が端末 (terminal) デバイス — tty(4) 参照 — を指している 場合に、たとえその
              プロセスが制御端末を持っていなくても、オープンしたファイル は制御端末にはならない。

       O_NOFOLLOW
              pathname がシンボリックリンクだった場合、オープンは失敗する。 これは FreeBSD の拡張
              で、Linux には  バージョン  2.1.126  で追加された。  このフラグが指定された場合でも
              pathname の前の方の要素 (最後のディレクトリセパレータより前の部分) にあるシンボリッ
              クリンクについてはリンクが辿られる。 下記の O_PATH も参照のこと。

       O_NONBLOCK または O_NDELAY
              可能ならば、ファイルは非停止 (nonblocking) モードでオープンされる。 open() も、返し
              たファイルディスクリプターに対する以後のすべての操作も呼び出 したプロセスを待たせる
              ことはない。 FIFO (名前付きパイプ) を扱う場合には fifo(7) も参照すること。 強制ファ
              イルロック  (mandatory file lock) やファイ ルリース (file lease) と組み合わせた場合
              の、 O_NONBLOCK の効果についての 議論は、 fcntl(2) を参照すること。

       O_PATH (Linux 2.6.39 以降)
              このフラグを指定して取得したファイルディスクリプターは、 ファイルシステムツリー内で
              の場所を示すため、 純粋にファイルディスクリプターレベルでの作用する操作を実行するた
              め、 の二つの目的で使用することができる。 ファイル自身はオープンされず、 他のファイ
              ル操作 (例えば read(2), write(2), fchmod(2), fchown(2), fgetxattr(2), mmap(2)) はエ
              ラー EBADF で失敗する。

              取得したファイルディスクリプターに対して以下の操作を行うことが「できる」。

              *  close(2); fchdir(2)  (Linux 3.5 以降); fstat(2)  (Linux 3.6 以降)

              *  ファイルディスクリプターの複製 (dup(2), fcntl(2)  F_DUPFD など)

              *  ファイルディスクリプターフラグの取得と設定 (fcntl(2) の F_GETFDF_SETFD)

              *  fcntl(2) の F_GETFL 操作を使ったオープンされたファイルの状態フラグの取得。  返さ
                 れるフラグには O_PATH ビットが含まれる。

              *  openat(2) や他の "*at()" 系のシステムコールの dirfd 引数としてそのファイルディス
                 クリプターを渡す。 これには、  ファイルがディレクトリでない場合に  linkat(2)  に
                 AT_EMPTY_PATH  が指定された場合 (や procfs 経由で AT_SYMLINK_FOLLOW が使用された
                 場合) を含む。

              *  そのファイルディスクリプターを別のプロセスに  UNIX  ドメインソケット経由で渡す。
                 (unix(7) の SCM_RIGHTS を参照)

              flagsO_PATH が指定された場合、 O_CLOEXEC, O_DIRECTORY, O_NOFOLLOW 以外のフラグ
              ビットは無視される。

              pathname がシンボリックリンクで O_NOFOLLOW フラグも合わせて指定された場合、  この呼
              び出しではシンボリックリンクを参照するファイルディスクリプターを返す。 このファイル
              ディスクリプターは、  空のパス名を指定した  fchownat(2),   fstatat(2),   linkat(2),
              readlinkat(2)  の呼び出しで dirfd 引数として使うことで、 そのシンボリックリンクに対
              して操作を行うことができる。

       O_SYNC ファイルに対する書き込み操作は、同期 I/O のファイル完全性完了の要件に基づいて行われ
              る (これに対し O_DSYNC では同期 I/O のデータ完全性完了が提供される)。

              write(2)  (や同様のコール)  が返るまでに、 書き込まれたデータと関連するファイルメタ
              データが裏で利用されているハードウェアに転送される     (つまり、write(2)     の後に
              fsync(2) を呼び出したのと同じようになる)。 下記の「注意」も参照のことO_TMPFILE (Linux 3.11 以降)
              名前なしの一時ファイルを作成する。 pathname 引き数はディレクトリを指定する。 名前な
              しの inode がそのディレクトリが存在するファイルシステムに作成される。  そのファイル
              に名前を付与しない限り、   作成されたファイルに書き込まれた内容は、  最後のファイル
              ディスクリプターがクローズされる際に失われる。

              O_TMPFILE は必ず O_RDWRO_WRONLY のいずれかと一緒に使わなければならない。 O_EXCL
              も指定することができる。  O_EXCL  が指定されなかった場合、 linkat(2) を使って、その
              ファイルシステムにこの一時ファイルへのリンクを作成し、ファイルを永続化することがで
              きる。 以下のコードのようにすればよい。

                  char path[PATH_MAX];
                  fd = open("/path/to/dir", O_TMPFILE | O_RDWR,
                                          S_IRUSR | S_IWUSR);

                  /* 'fd' に対するファイル I/O ... */

                  snprintf(path, PATH_MAX,  "/proc/self/fd/%d", fd);
                  linkat(AT_FDCWD, path, AT_FDCWD, "/path/for/file",
                                          AT_SYMLINK_FOLLOW);

              この場合、 open() の mode 引き数は O_CREAT と同様にファイルのアクセス許可モードの決
              定に使われる。

              O_TMPFILE とともに O_EXCL を指定すると、 一時ファイルに対して上記の方法でファイルシ
              ステムへのリンクを行うことができなくなる   (この場合の   O_EXCL  の意味は他の場合の
              O_EXCL の意味とは異なる点に注意)。

              O_TMPFILE には主に二つの用途がある。

              *  改善された tmpfile(3) の機能: (1) クローズ時に自動的に削除される、 (2)  パス名で
                 は決して参照できない、 (3) シンボリックリンク攻撃ができない、 (4) 呼び出し元が一
                 意な名前を考える必要がない、 という特長を持つ競合のない一時ファイルの作成。

              *  最初は見えないファイルを作成し、  それからデータを書き込んだり、適切なファイルシ
                 ステム属性を持つように調整したり  (chown(2),  chmod(2),  fsetxattr(2) など) した
                 後、 準備が全て整った状態で (上述の linkat(2) を使って) ファイルシステム内にアト
                 ミックにリンクを行う。

              O_TMPFILE  は、  裏で利用されるファイルシステムによるサポートが必要である。  一部の
              Linux  ファイルシステムだけがこの機能をサポートしている。  最初の実装では、   ext2,
              ext3, ext4, UDF, Minix, shmem ファイルシステムがサポートしていた。 XFS でのサポート
              が Linux 3.15 で追加された。

       O_TRUNC
              ファイルが既に存在し、通常ファイルであり、 アクセスモードで書き込みが許可されている
              (つまり、  O_RDWR  または  O_WRONLY の) 場合、長さ 0 に切り詰め (truncate) られる。
              ファイルが FIFO または端末デバイスファイルの場合、 O_TRUNC フラグは無視される。  そ
              れ以外の場合、 O_TRUNC の効果は未定義である。

   creat()
       creat()  は flagsO_CREAT|O_WRONLY|O_TRUNC を指定して open() を行うのと等価である。

   openat()
       openat() システムコールは open() と全く同様に動作するが、以下で説明する点が異なる。

       pathname で指定されたパス名が相対パスの場合、このパス名はファイルディスクリプター dirfd が
       参照するディレクトリに対する相対パスと解釈される  (open()   に相対パス名を渡した場合のよう
       に、呼び出したプロセスのカレントワーキングディレクトリに対する相対パスではない)。

       pathname  で指定されたパス名が相対パスで、 dirfd が特別な値 AT_FDCWD の場合、 (open() と同
       様に) pathname  は呼び出したプロセスのカレントワーキングディレクトリに対する相対パスと解釈
       される。

       pathname で指定されたパス名が絶対パスの場合、 dirfd は無視される。

返り値

       open(),  openat(), creat() は新しいファイルディスクリプターを返す。 エラーが発生した場合は
       -1 を返す (その場合は errno が適切に設定される)。

エラー

       open(), openat(), creat() は以下のエラーで失敗する。

       EACCES ファイルに対する要求されたアクセスが許されていないか、 pathname  のディレクトリ部分
              の何れかのディレクトリに検索許可がなかった。 またはファイルが存在せず、親ディレクト
              リへの書き込み許可がなかった。 (path_resolution(7)  も参照すること。)

       EDQUOT O_CREAT が指定された場合で、そのファイルが存在せず、ディスクブロックか inode がその
              ファイルシステムのユーザークォータに達していた。

       EEXIST pathname は既に存在し、 O_CREATO_EXCL が使用された。

       EFAULT pathname がアクセス可能なアドレス空間の外を指している。

       EFBIG  EOVERFLOW 参照。

       EINTR  遅いデバイス (例えば FIFO、 fifo(7)  参照) のオープンが完了するのを待って停止してい
              る間に システムコールがシグナルハンドラーにより割り込まれた。 signal(7)  参照。

       EINVAL ファイルシステムが O_DIRECT フラグをサポートしていない。 詳細は注意を参照。

       EINVAL flags に無効な値が入っている。

       EINVAL flagsO_TMPFILE が指定されたが、 O_WRONLYO_RDWR も指定されていなかった。

       EISDIR pathname はディレクトリを参照しており、書き込み要求が含まれていた (つまり  O_WRONLY
              または O_RDWR が設定されている)。

       EISDIR pathname が存在するディレクトリを参照していて、 O_TMPFILE および O_WRONLYO_RDWR
              の一方が flags に指定されていたが、 このカーネルバージョンでは O_TMPFILE 機能が提供
              されていない。

       ELOOP  pathname を解決する際に遭遇したシンボリックリンクが多過ぎる。

       ELOOP  pathname  がシンボリックリンクで、 flagsO_NOFOLLOW が指定されたが、 O_PATH が指
              定されていなかった。

       EMFILE プロセスがオープンしているファイル数がすでに最大数に達している   (getrlimit(2)   の
              RLIMIT_NOFILE の説明を参照)。

       ENAMETOOLONG
              pathname が長過ぎる。

       ENFILE オープンされているファイルの総数がシステムの制限に達している。

       ENODEV pathname がデバイススペシャルファイルを参照しており、対応するデバイスが存在しない。
              (これは Linux カーネルのバグであり、この場合には ENXIO が返されるべきである)

       ENOENT O_CREAT が設定されておらず、かつ指定されたファイルが存在しない。 または、  pathname
              のディレクトリ部分が存在しないか壊れた (dangling) シンボリックリンクである。

       ENOENT pathname  が存在しないディレクトリを参照していて、  O_TMPFILE  および  O_WRONLYO_RDWR の一方が flags に指定されていたが、 このカーネルバージョンでは O_TMPFILE  機
              能が提供されていない。

       ENOMEM 十分なカーネルメモリーがない。

       ENOSPC pathname を作成する必要があるが、 pathname を含んでいるデバイスに新しいファイルのた
              めの空き容量がない。

       ENOTDIR
              pathname  に含まれるディレクトリ部分のどれかが実際にはディレクトリでない。   または
              O_DIRECTORY が指定されており、 pathname がディレクトリでない。

       ENXIO  O_NONBLOCK | O_WRONLY が設定されており、指定したファイルが FIFO で そのファイルを読
              み込み用でオープンしている FIFO が存在しない。 または、ファイルがデバイススペシャル
              ファイルで 対応するデバイスが存在しない。

       EOPNOTSUPP
              pathname を含んでいるファイルシステムが O_TMPFILE をサポートしていない。

       EOVERFLOW
              pathname   が参照しているのが、大き過ぎてオープンできない通常のファイルである。  通
              常、このエラーが発生するは、32 ビットプラットフォーム上で -D_FILE_OFFSET_BITS=64 を
              指定せずにコンパイルされたアプリケーションが、ファイルサイズが  (1<31)-1 バイトを超
              えるファイルを開こうとした場合である。   上記の   O_LARGEFILE    も参照。    これは
              POSIX.1-2001 で規定されているエラーである。 2.6.24 より前のカーネルでは、Linux はこ
              の場合にエラー EFBIG を返していた。

       EPERM  O_NOATIME フラグが指定されたが、呼び出し元の実効ユーザー ID が ファイルの所有者と一
              致せず、かつ呼び出し元に特権 (CAP_FOWNER)  がない。

       EPERM  操作が file seal により禁止されている。 fcntl(2)  参照。

       EROFS  pathname  が読み込み専用のファイルシステム上のファイルを参照しており、 書き込みアク
              セスが要求された。

       ETXTBSY
              pathname が現在実行中の実行イメージを参照しており、書き込みが要求された。

       EWOULDBLOCK
              O_NONBLOCK     フラグが指定されたが、そのファイルには矛盾するリースが設定されていた
              (fcntl(2)  参照)。

       openat() では以下のエラーも発生する。

       EBADF  dirfd が有効なファイルディスクリプターではない。

       ENOTDIR
              pathname  が相対パス名で、 dirfd がディレクトリ以外のファイルを参照しているファイル
              ディスクリプターである。

バージョン

       openat()  はカーネル 2.6.16 で Linux  に追加された。  ライブラリによるサポートはバージョン
       2.4 で glibc に追加された。

準拠

       open(), creat()  SVr4, 4.3BSD, POSIX.1-2001, POSIX.1-2008.

       openat(): POSIX.1-2008.

       フラグ O_DIRECT, O_NOATIME, O_PATH, O_TMPFILE は Linux 特有のものである。 これらのフラグの
       定義を得るためには _GNU_SOURCE を定義しなければならない。

       フラグ  O_CLOEXEC,  O_DIRECTORY,  O_NOFOLLOW  は   POSIX.1-2001   では規定されていないが、
       POSIX.1-2008    では規定されている。    glibc    2.12   以降では、これらの定義を得るには、
       _POSIX_C_SOURCE を 200809L 以上の値で定義するか、 _XOPEN_SOURCE  を  700  以上の値で定義す
       る。 glibc 2.11 以前では、 これらの定義を得るには _GNU_SOURCE を定義する。

       feature_test_macros(7)     に注意書きがあるように、     _POSIX_C_SOURCE,    _XOPEN_SOURCE,
       _GNU_SOURCE などの機能検査マクロはどのヘッダーファイルをインクルードするより前に定義しなけ
       ればならない。

注意

       Linux  では、 O_NONBLOCK フラグは、 open を実行したいが read または write を実行する意図は
       必ずしもないことを意味する。 これは ioctl(2)  のためのファイルディスクリプターを取得するた
       めに、 デバイスをオープンするときによく用いられる。

       O_RDONLY | O_TRUNC の影響は未定義であり、その動作は実装によって異なる。 多くのシステムでは
       ファイルは実際に切り詰められる。

       open()  はスペシャルファイルをオープンすることができるが、 creat()  でスペシャルファイルを
       作成できない点に注意すること。 代わりに mknod(2)  を使用する。

       ファイルが新しく作成されると、  ファイルの st_atime, st_ctime, st_mtime フィールド (それぞ
       れ最終アクセス時刻、最終状態変更時刻、最終修正時刻である。 stat(2)  参照) が現在時刻に設定
       される。 さらに親ディレクトリの st_ctimest_mtime も現在時刻に設定される。 それ以外の場
       合で、O_TRUNC フラグでファイルが修正されたときは、 ファイルの st_ctimest_mtime  フィー
       ルドが現在時刻に設定される。

   オープンファイル記述
       オープンファイル記述という用語は  POSIX で使用されている用語で、オープンされているファイル
       のシステム共通のテーブルのエントリーを参照するものである。  別の文脈では、このオブジェクト
       はいろいろな呼び方があり、  「オープンファイルオブジェクト」、「ファイルハンドル」、「オー
       プンファイルテーブルエントリー」、 カーネル開発者の用語では struct file などと呼ばれる。

       ファイルディスクリプターが (dup(2) や同様のシステムコールを使って) 複製される際に、 複製さ
       れたファイルディスクリプターは元のファイルディスクリプターと同じオープンファイル記述を参照
       する。 結果として 2 つのファイルディスクリプターはファイルオフセットとファイル状態フラグを
       共有する。 このような共有はプロセス間でも起こり得る。 fork(2) で作成された子プロセスは親プ
       ロセスのファイルディスクリプターの複製を継承し、これらの複製は同じオープンファイル記述を参
       照する。

       1  つのファイルに対して  open(2) を行う毎に、新しいオープンファイル記述が作成される。 した
       がって、 1 つのファイル inode に対して複数のオープンファイル記述が存在することがありえる。

   同期 I/O
       POSIX.1-2008 の「同期  I/O」の選択肢として複数種類が規定されており、  動作を制御するために
       open() フラグとして O_SYNC, O_DSYNC, O_RSYNC が規定されている。 この選択肢を実装がサポート
       しているかに関わらず、 各実装では少なくとも通常のファイルに対して O_SYNC  が利用できなけれ
       ばならない。

       Linux は O_SYNCO_DSYNC を実装しているが、 O_RSYNC は実装していない (少し間違っているの
       だが、 glibc では O_RSYNCO_SYNC と同じ値で定義されている)。

       O_SYNC は、 同期 I/O でのファイル完全性完了を提供する。 つまり、  書き込み操作はデータとす
       べての関連メタデータを裏で利用されているハードウェアにフラッシュすることを意味する。
       O_DSYNC は、 同期 I/O でのデータ完全性完了を提供する。 つまり、 書き込み操作はデータを裏で
       利用されているハードウェアにフラッシュするが、  それ以降の読み出し操作が正常に完了するのに
       必要なメタデータの更新のみをフラッシュする。 データ完全性完了は、 ファイル完全性完了を必要
       としないアプリケーションで、 ディスク操作の数を減らすことができる。

       2  種類の完了の違いを理解するために、 ファイルメタデータの 2 つの要素、 ファイルの最終修正
       時刻 (st_mtime) とファイル長、を考える。  すべての書き込み操作は最終修正時刻を更新するが、
       ファイルの末尾にデータを追加する書き込み操作のみがファイル長を変更する。  最終修正時刻は、
       読み出しが正常に完了するのに必要ではないが、 ファイル長は必要である。 したがって、 O_DSYNC
       はファイル長のメタデータの更新がフラッシュされることだけを保証する (これに対して O_SYNC で
       は最終修正時刻のメタデータも常にフラッシュされる)。

       Linux 2.6.33 より前では、 Linux は open() では O_SYNC フラグのみを実装していた。  しかしな
       がら、 このフラグが指定された場合、 ほとんどのファイルシステムで提供されていたのは実際には
       同期 I/O でのデータ完全性完了と等価なものであった (つまり、 O_SYNC は実際には O_DSYNC と等
       価なものとして実装されていた)。

       Linux  2.6.33 行こう では、 正しい O_SYNC のサポートが提供されている。 しかしながら、 バイ
       ナリレベルの後方互換性を保証するため、 O_DSYNC は以前の O_SYNC  と同じ値で定義されており、
       O_SYNCO_DSYNC フラグの値を含む新しい (2 ビットの) フラグ値として定義されている。 これ
       により、 新しいヘッダーを使ってコンパイルされたアプリケーションで、 2.6.33  より前のカーネ
       ルで少なくとも O_DSYNC の動作は同じになることが保証される。

   NFS
       NFS を実現しているプロトコルには多くの不備があり、特に O_SYNCO_NDELAY に影響する。

       UID マッピングを使用している NFS ファイルシステムでは、 open()  がファイルディスクリプター
       を返した場合でも read(2) が EACCES で拒否される場合がある。 これはクライアントがアクセス許
       可のチェックを行って open() を実行するが、読み込みや書き込みの際には サーバーで UID マッピ
       ングが行われるためである。

   ファイルアクセスモード
       「アクセスモード」の値  O_RDONLY,  O_WRONLY,  O_RDWR  は、  flags   に指定できる他の値と違
       い、個々のビットを指定するものではなく、  これらの値は  flags  の下位 2 ビットを定義する。
       O_RDONLY, O_WRONLY, O_RDWR はそれぞれ 0, 1, 2 に定義されている。 言い換えると、 O_RDONLY |
       O_WRONLY の組み合わせは論理的に間違いであり、確かに O_RDWR と同じ意味ではない。

       Linux  では、特別な、非標準なアクセスモードとして  3  (バイナリでは  11) が 予約されており
       flags   に指定できる。   このアクセスモードを指定すると、ファイルの読み出し/書き込み許可を
       チェックし、 読み出しにも書き込みにも使用できないディスクリプターを返す。 この非標準のアク
       セスモードはいくつかの Linux ドライバで、デバイス固有の ioctl(2)  操作にのみ使用されるディ
       スクリプターを返すために使われている。

   openat() や他のディレクトリファイルディスクリプター API の基本原理
       openat()  やディレクトリファイルディスクリプターを引き数を取る他のシステムコールやライブラ
       リ関数 (execveat(2), faccessat(2), fanotify_mark(2), fchmodat(2), fchownat(2), fstatat(2),
       futimesat(2),  linkat(2),  mkdirat(2),  mknodat(2),  name_to_handle_at(2),  readlinkat(2),
       renameat(2), symlinkat(2), unlinkat(2), utimensat(2) mkfifoat(3), scandirat(3)) は二つの理
       由から用意されている。  ここでは、 openat コールに関して説明するが、この基本原理は他のイン
       ターフェースでも同じである。

       最初の理由として、 openat() を使うと、 アプリケーションは、 カレントワーキングディレクトリ
       以外のディレクトリで open() を使ってファイルをオープンする際に起こり得る競合条件を避けるこ
       とができる。 これらの競合条件は、 open()  に渡されたディレクトリプレフィックスの構成要素が
       open()  の呼び出しと並行して変化する可能性があるという点に由来している。  例えば、ファイル
       path/to/xxx が存在する場合にファイル path/to/xxx.dep を作成したいとする。 問題は、存在確認
       とファイル作成の間に、  pathto (シンボリックリンクでもよい) が別の場所を指すように変更
       されることがあるということだ。  このような競合条件は、  対象のディレクトリに対するファイル
       ディスクリプターをオープンし、  それから  fstatat(2) や openat() の dirfd 引き数としてその
       ファイルディスクリプターを指定することで、 避けることができる。

       二つ目として、  openat()  を使うと、アプリケーションが管理するファイルディスクリプターによ
       り、  スレッド単位の「カレントワーキングディレクトリ」を実装することができる (この機能は、
       /proc/self/fd/dirfd を使った方法でも実現することができるが、 効率の面で落とる)。

   O_DIRECT
       O_DIRECT フラグを使用する場合、ユーザー空間バッファーの長さやアドレス、 I/O のファイルオフ
       セットに関してアラインメントの制限が課されることがある。  Linux では、アラインメントの制限
       はファイルシステムやカーネルのバージョンに  よって異なり、全く制限が存在しない場合もある。
       しかしながら、現在のところ、指定されたファイルやファイルシステムに対して  こうした制限があ
       るかを見つけるための、アプリケーション向けのインターフェースで  ファイルシステム非依存のも
       のは存在しない。  いくつかのファイルシステムでは、制限を確認するための独自のインターフェー
       スが 提供されている。例えば、 xfsctl(3)  の XFS_IOC_DIOINFO 命令である。

       Linux 2.4 では、転送サイズ、 ユーザーバッファーのアライメント、ファイルオフセットは、 ファ
       イルシステムの論理ブロックサイズの倍数でなければならない。 Linux 2.6.0 以降では、 内部で使
       われるストレージの論理ブロックサイズのアライメント (通常は 512 バイト) で十分である。 論理
       ブロックサイズは ioctl(2) BLKSSZGET 操作や以下のシェルコマンドから知ることができる。

           blockdev --getss

       メモリーバッファーがプライベートマッピング  (mmap(2) の MAP_PRIVATE フラグで作成されたマッ
       ピング) の場合には、O_DIRECT I/O は fork(2) システムコールと同時に決して実行すべきではない
       (プライベートマッピングには、ヒープ領域に割り当てられたメモリーや静的に     割り当てたバッ
       ファーも含まれる)。非同期 I/O インターフェース (AIO) 経由 やプロセス内の他のスレッドから発
       行された、このような  I/O  は、  fork(2) が呼び出される前に完了されるべきである。 そうしな
       かった場合、データ破壊や、親プロセスや子プロセスでの予期しない  動作が起こる可能性がある。
       O_DIRECT I/O 用のメモリーバッファーが shmat(2) やMAP_SHARED フラグ 付きの mmap(2) で作成さ
       れた場合には、この制限はあてはまらない。    madvise(2)    でメモリーバッファーにアドバイス
       MADV_DONTFORK が設定され ている場合にも、この制限はあてはまらない(MADV_DONTFORK はそのメモ
       リー バッファーが fork(2) 後に子プロセスからは利用できないことを保証するも のである)。

       O_DIRECT フラグは SGI IRIX で導入された。SGI IRIX にも Linux  2.4  と同様の  (ユーザーバッ
       ファーの)  アラインメントの制限がある。  また、IRIX には適切な配置とサイズを取得するための
       fcntl(2)  コールがある。 FreeBSD 4.x  も同じ名前のフラグを導入したが、アラインメントの制限
       はない。

       O_DIRECT が Linux でサポートされたのは、カーネルバージョン 2.4.10 である。 古い Linux カー
       ネルは、このフラグを単に無視する。 O_DIRECT フラグをサポートしていないファイルシステムもあ
       り、その場合は、 O_DIRECT を使用すると open()  は EINVAL で失敗する。

       アプリケーションは、同じファイル、 特に同じファイルの重複するバイト領域に対して、 O_DIRECT
       と通常の I/O を混ぜて使うのは避けるべきである。 ファイルシステムがこのような状況において一
       貫性の問題を正しく  扱うことができる場合であっても、全体の I/O スループットは どちらか一方
       を使用するときと比べて低速になるであろう。  同様に、アプリケーションは、同じファイルに対し
       て mmap(2)  と直接 I/O (O_DIRECT)  を混ぜて使うのも避けるべきである。

       NFS  で O_DIRECT を使った場合の動作はローカルのファイルシステムの場合と違う。 古いカーネル
       や、ある種の設定でコンパイルされたカーネルは、 O_DIRECT と NFS  の組み合わせをサポートして
       いないかもしれない。    NFS   プロトコル自体はサーバにフラグを渡す機能は持っていないので、
       O_DIRECT I/O はクライアント上のページキャッシュをバイパスするだけになり、 サーバは I/O  を
       キャッシュしているかもしれない。  クライアントは、 O_DIRECT の同期機構を保持するため、サー
       バに対して I/O を同期して行うように依頼する。  サーバによっては、こうした状況下、特に  I/O
       サイズが小さい場合に 性能が大きく劣化する。 また、サーバによっては、I/O が安定したストレー
       ジにまで行われたと、 クライアントに対して嘘をつくものもある。 これは、サーバの電源故障が起
       こった際にデータの完全性が保たれない  危険は少しあるが、性能面での不利な条件を回避するため
       に行われている。 Linux の NFS クライアントでは O_DIRECT  I/O  でのアラインメントの制限はな
       い。

       まとめると、 O_DIRECT は、注意して使うべきであるが、強力なツールとなる可能性を持っている。
       アプリケーションは  O_DIRECT  をデフォルトでは無効になっている性能向上のためのオプションと
       考えておくのがよいであろう。

              「O_DIRECT  でいつも困るのは、インターフェース全部が本当にお馬鹿な点だ。 たぶん危な
              いマインドコントロール剤で 頭がおかしくなったサルが設計したんじゃないかな」 — Linus

バグ

       現在のところ、 open()  の呼び出し時に O_ASYNC を指定してシグナル駆動 I/O  を有効にすること
       はできない。 このフラグを有効にするには fcntl(2)  を使用すること。

       カーネルが O_TMPFILE 機能をサポートしているかを判定する際に、 EISDIRENOENT の 2 つのエ
       ラーコードをチェックしなければならない。

関連項目

       chmod(2), chown(2), close(2), dup(2),  fcntl(2),  link(2),  lseek(2),  mknod(2),  mmap(2),
       mount(2),   open_by_handle_at(2),   read(2),   socket(2),  stat(2),  umask(2),  unlink(2),
       write(2), fopen(3), fifo(7), path_resolution(7), symlink(7)

この文書について

       この man ページは Linux man-pages プロジェクトのリリース 3.79 の一部  である。プロジェクト
       の説明とバグ報告に関する情報は http://www.kernel.org/doc/man-pages/ に書かれている。