Provided by: manpages-ja-dev_0.5.0.0.20180315+dfsg-1_all bug

名前

       syscall - 間接システムコール

書式

       #define _GNU_SOURCE         /* feature_test_macros(7) 参照 */
       #include <unistd.h>
       #include <sys/syscall.h>   /* SYS_xxx の定義用 */

       long syscall(long number, ...);

説明

       syscall() は、システムコールを起動する小さなライブラリ関数で、 number で指定されたアセンブ
       リ言語インターフェースのシステムコールを、指定された引き数をつけて実行する。 syscall()  が
       役に立つのは、例えば  C ライブラリにラッパー関数が存在しないシステムコールを呼び出したい場
       合である。

       syscall() は、システムコールを行う前に CPU  レジスターを保存し、システムコールから返った際
       にレジスターを復元し、エラーが発生した場合はシステムコールが返したエラーコードを  errno(3)
       に格納する。

       システムコールのシンボル定数は、ヘッダーファイル <sys/syscall.h> に書かれている。

返り値

       返り値は呼び出されたシステムコールによって定義される。 一般に、返り値 0 は成功を表す。  -1
       はエラーを表し、エラーコードは errno に入れられる。

注意

       syscall()  は 4BSD で最初に登場した。

   アーキテクチャー固有の要件
       各アーキテクチャーの ABI には、 システムコールの引き数のカーネルへの渡し方に関する独自の要
       件がある。 (ほとんどのシステムコールのように) glibc ラッパー関数があるシステムコールでは、
       glibc   が詳細を処理し、アーキテクチャーに応じた方法で引き数が適切なレジスターにコピーされ
       る。 しかし、 システムコールを呼び出すのに syscall() を使う場合には、 呼び出し側でアーキテ
       クチャー依存の詳細を処理しなければならない場合がある。  これはいくつかの 32 ビットアーキテ
       クチャーでは非常によくあることだ。

       例えば、ARM アーキテクチャーの Embedded ABI (EABI) では、 (long long などの) 64 ビット値は
       偶数番地のレジスターのペアに境界があっていなければならない。したがって、  glibc が提供する
       ラッパー関数ではなく syscall() を使う場合には、 readahead() システムコールは ARM  アーキテ
       クチャーの EABI では以下のようにして起動されることになる。

           syscall(SYS_readahead, fd, 0,
                   (unsigned int) (offset >> 32),
                   (unsigned int) (offset & 0xFFFFFFFF),
                   count);

       オフセット引き数は 64 ビットで、最初の引き数 (fd) は r0 で渡されるので、呼び出し側では手動
       で 64 ビット値を分割して境界を合わせて、 64 ビット値が r2/r3  レジスターペアで渡されるよう
       にしなければならない。このため、 r1 (2 番目の引数 0) としてダミー値を挿入している。

       同様のことが、 MIPS の O32 ABI、 PowerPC の 32 ビット ABI や Xtensa でも起こりうる。

       次のシステムコールに影響がある:    fadvise64_64(2),    ftruncate64(2),   posix_fadvise(2),
       pread64(2), pwrite64(2), readahead(2), sync_file_range(2), truncate64(2)

   アーキテクチャー毎の呼び出し規約
       各アーキテクチャーには、それぞれ独自のシステムコール起動方法とカーネルへの引き数の渡し方が
       ある。 各種のアーキテクチャーの詳細を以下の 2 つの表にまとめる。

       最初の表は、 カーネルモードに遷移するのに使用される命令、 システムコール番号を示すのに使用
       されるレジスター、 システムコールの結果を返すのに使用されるレジスターの一覧である  (なお、
       ここに載っているカーネルモードに遷移するのに使用される命令は、  カーネルモードに遷移する最
       速や最善の方法でない場合もあるので、 vdso(7) を参照する必要があるかもしれない)。

       arch/ABI   instruction          syscall #   retval Notes
       ───────────────────────────────────────────────────────────────────────────
       arm/OABI   swi NR               -           a1     NR はシステムコール番号
       arm/EABI   swi 0x0              r7          r0
       arm64      svc #0               x8          x0
       blackfin   excpt 0x0            P0          R0
       i386       int $0x80            eax         eax
       ia64       break 0x100000       r15         r8     下記参照
       mips       syscall              v0          v0     下記参照
       parisc     ble 0x100(%sr2, %r0) r20         r28
       s390       svc 0                r1          r2     下記参照
       s390       svc 0                r1          r2     下記参照
       sparc/32   t 0x10               g1          o0
       sparc/64   t 0x6d               g1          o0
       x86_64     syscall              rax         rax

       s390 と s390x では、 NR (システムコール番号) が 256 未満の場合 "svc NR" で NR が直接渡され
       る場合がある。

       少ないがいくつかのアーキテクチャーでは、    システムコールの失敗を示す単純な真偽値がレジス
       ターを使って通知される。この用途に ia64 は r10 を使用し、 mips は a3 を使用する。

       2 つ目の表は、システムコールの引き数を渡すのに使用されるレジスターの一覧である。

       arch/ABI      arg1  arg2  arg3  arg4  arg5  arg6  arg7  備考
       ─────────────────────────────────────────────────────────────────
       arm/OABI      a1    a2    a3    a4    v1    v2    v3
       arm/EABI      r0    r1    r2    r3    r4    r5    r6
       arm64         x0    x1    x2    x3    x4    x5    -
       blackfin      R0    R1    R2    R3    R4    R5    -
       i386          ebx   ecx   edx   esi   edi   ebp   -
       ia64          out0  out1  out2  out3  out4  out5  -
       mips/o32      a0    a1    a2    a3    -     -     -     下記参照
       mips/n32,64   a0    a1    a2    a3    a4    a5    -
       parisc        r26   r25   r24   r23   r22   r21   -
       s390          r2    r3    r4    r5    r6    r7    -
       s390x         r2    r3    r4    r5    r6    r7    -
       sparc/32      o0    o1    o2    o3    o4    o5    -
       sparc/64      o0    o1    o2    o3    o4    o5    -
       x86_64        rdi   rsi   rdx   r10   r8    r9    -

       mips/o32 のシステムコールの規約では、 ユーザースタックに引き数を 5 個から 8 個渡す。

       これらの表にはすべての呼び出し規約が記載されているわけではない点に注意すること —  アーキテ
       クチャーによっては、ここに記載されていない他のレジスターが見境なく上書きされる場合もある。

       #define _GNU_SOURCE
       #include <unistd.h>
       #include <sys/syscall.h>
       #include <sys/types.h>
       #include <signal.h>

       int
       main(int argc, char *argv[])
       {
           pid_t tid;

           tid = syscall(SYS_gettid);
           tid = syscall(SYS_tgkill, getpid(), tid, SIGHUP);
       }

関連項目

       _syscall(2), intro(2), syscalls(2), errno(3), vdso(7)

この文書について

       この  man ページは Linux man-pages プロジェクトのリリース 3.79 の一部 である。プロジェクト
       の説明とバグ報告に関する情報は http://www.kernel.org/doc/man-pages/ に書かれている。