Provided by: manpages-ja_0.5.0.0.20180315+dfsg-1_all bug

名称

       pppd - PPP (Point to Point Protocol) を処理するデーモン

書式

       pppd [ tty_name ] [ speed ] [ options ]

解説

       Point-to-Point プロトコル (PPP) は、シリアル回線上に確立された Point-to-Point リンクを介し
       たデータグラムの送受方法を提供します。 PPP  は、データグラムのカプセル化方式、拡張可能なリ
       ンク制御プロトコル (LCP)、 そして異なるネットワーク層プロトコルの設定と接続の確立を行う 一
       群のネットワーク制御プロトコル (NCP) の 3 つの部分から構成されています。

       カプセル化体系は、カーネル内のドライバコードにより提供されています。 pppd は、基本的な LCP
       機能、認証機能、そしてインターネットプロトコル  (IP) 接続の確立と設定を行う NCP (IP 制御プ
       ロトコル (IPCP) と呼ばれています) を提供します。

よく使われるオプション

       <tty_name>
              指定したデバイスを介して通信します。 もし必要であれば、前に "/dev/"  文字列が追加さ
              れます。  デバイス名が指定されていない場合や 標準入力に接続された端末の名前が与えら
              れた場合には、 pppd はその端末を使用し、 バックグラウンド実行のための fork を行いま
              せん。  noauth  オプションが使用された場合、 このオプションは特権オプションとなりま
              す。

       <speed>
              ボーレートを <speed> に設定します (10 進数)。 4.4BSD や  NetBSD  といったシステムで
              は、  シリアルデバイスドライバがサポートする任意の速度を指定可能です。 その他のシス
              テム (SunOS, Linux 等) では一定の組み合わせのみが指定可能です。

       active-filter filter-expression
              データパケットに適用されるパケットフィルタであり、   どのパケットをリンクアクティビ
              ティとみなすかを決定するパケットフィルタを  指定します。 リンクアクティビティとみな
              されると、アイドルタイマがリセットされるか、   デマンドダイヤルモード時にはリンクが
              アップされます。  (例えば経路情報パケット等) 定常的にリンク上でパケット送受信が行わ
              れ、  他の方法ではリンクがアイドルであるとはみなされない場合に、   このオプションを
              idle  オプションとともに使用すると便利です。  filter-expression の文法は tcpdump(1)
              と同じですが、 限定子は PPP では不適当ですので、etherarp は使用できません。  一
              般的には、フィルタ式をシングルクォートで括って、 式中の空白がシェルに解釈されること
              を避けるべきです。 カーネル及び pppd が PPP_FILTER を定義してコンパイルされた場合の
              み、 このオプションを利用可能です。

       asyncmap <map>
              非同期文字マップを  <map> に設定します。 このマップは、シリアル回線を経由するとどの
              制御文字の受信が うまくいかなくなるかを記述するものです。 pppd は、これらの文字を 2
              バイトのエスケープシーケンスとして送信するよう、   相手側に依頼します。  引数は  32
              ビットの 16 進数であり、各ビットがエスケープすべき文字を  表しています。  ビット  0
              (00000001) は文字 0x00 を表し、 ビット 31 (80000000) は、文字 0x1f つまり '^_' を表
              しています。 複数の asyncmap オプションが与えられた場合、それらの値の論理和が  採用
              されます。  asyncmap オプションが与えられなかった場合には、このホストが受信側となる
              非同期文字マップは設定されません。 相手側はすべての制御文字をエスケープして送信しま
              す。 送信文字をエスケープするには、escape オプションを使用します。

       auth   ネットワークパケットの送受信を許可する前に、相手側に自分証明を 行うよう要求します。

       call name
              ファイル /etc/ppp/peers/name からオプションを読みます。 pppd が root 以外によって起
              動された場合においても、 このファイルに noauth のような特権オプションを含んでもかま
              いません。 文字列 name は / で開始してはなりませんし、 パス名の一部に .. を含んでは
              なりません。 オプションファイルのフォーマットは後述します。

       connect script
              script で指定された実行可能コマンドまたはシェルコマンドを使用して、  シリアル回線の
              セットアップを行います。  ほとんどの場合、ここで指定されるスクリプトには chat(8) プ
              ログラムを使用し、 モデムにダイヤルコマンドを送ったり、リモート ppp  セッションを開
              始したりします。 noauth オプションが使用された場合、 このオプションは特権オプション
              となります。

       connect-max-attempts <n>
              指定した時間 (デフォルトでは 1) を越えてリモートシステムとの ダイヤル接続を保持しま
              せん。接続ができない場合は、 pppd は終了します。 persist を指定することが要求されま
              す。

       crtscts
              シリアルポートのフロー制御にハードウェアフロー制御 (RTS/CTS)  を用います。  crtsctsnocrtscts  の両方のオプションが与えられない時、  シリアルポートのハードウェアフ
              ロー制御の設定は変更されずに そのままになります。

       defaultroute
              IPCP ネゴシエーションが成功すると、相手側をゲートウェイとする  デフォルト経路をシス
              テムの経路テーブルに追加します。 このオプションにより追加されたデフォルト経路エント
              リは、 PPP 接続が切断された際に削除されます。 nodefaultroute オプションが指定された
              場合には、 このオプションは特権オプションとなります。

       disconnect script
              pppd  が接続を切った後に script で指定した実行可能コマンドまたは シェルコマンドを実
              行します。 このスクリプトで、例えばハードウェアモデム制御信号 (DTR)  が使えない場合
              に  モデムをハングアップすることができます。 モデムが既にハングアップしている場合に
              は、この切断スクリプトは実行されません。 noauth オプションが使用された場合には、 こ
              のオプションは特権オプションです。

       escape xx,yy,...
              転送時にエスケープを行うべき文字を指定します (相手側が 非同期文字マップでエスケープ
              を要求しているかどうかには影響されません)。  エスケープされる文字は、コンマで区切ら
              れた  16  進数で指定します。  制御文字しか指定できない asyncmap オプション とは異な
              り、escape オプションではどんな文字でも指定できる  ことに注意してください。  ただし
              16 進表記で 0x20 から 0x3f までと 0x5e の文字は エスケープしてはなりません。

       file name
              オプションをファイル  name から読み込みます (フォーマットは後述します)。 このファイ
              ルは、pppd を起動したユーザが読むことが可能である必要があります。

       lock   シリアルデバイスに対する排他アクセスを確実に行うために、 UUCP  形式のロックファイル
              を作成するよう pppd に指示します。

       mru n  ネゴシエーション時の MRU [最大受信単位; Maximum Receive Unit] 値を n に設定します。
              pppd は、通信相手に n バイトを超えるパケットを送信しないよう要求します。 最小の MRU
              値は、128 です。 デフォルトの MRU 値は 1500 です。低速のリンクでは 296 を推奨します
              (TCP/IP ヘッダ 40 バイト + データ 256 バイト)。

       mtu n  MTU [最大転送単位; Maximum Transmit Unit] 値を n に設定します。 相手が  MRU  ネゴシ
              エーションを通じてこれより小さい値を要求してこない限り、   PPP   ネットワークインタ
              フェースを通して n バイトを 越えないデータパケットを送ることを、 pppd  はカーネルの
              ネットワークコードに要求します。

       passive
              LCP  で "passive" オプションを有効にします。このオプションを指定した場合には、 接続
              を開始しようとしても相手からの返答がない場合、 pppd は相手から有効な LCP パケットが
              到着するのを受動的に待ち続けます。 このオプションを指定しなければ、相手からの返答が
              ない場合に pppd は実行を中断します。

オプション

       <local_IP_address>:<remote_IP_address>
              ローカルインタフェースとリモートインタフェースの IP アドレスを設定します。 どちらか
              片方を省略することも可能です。IP   アドレスは、ホスト名もしくは  10  進数ドット表現
              (例: 150.234.56.78) のどちらでも指定可能です。 デフォルトのローカルアドレスは、その
              システムの  (最初の) IP アドレスと なります。(ただし noipdefault オプションが指定さ
              れた場合を除きます。) リモートアドレスは、 オプションで指定されていない場合には相手
              側から取得されます。 ですから、もっとも単純な指定を行う場合には、このオプションは不
              必要です。 ローカルまたはリモートの IP アドレスがこのオプションで指定されている場合
              には、   IPCP  ネゴシエーションで相手側がこの指定と異なるアドレスを送って来た場合、
              pppd はこれを拒否します。ただし、 ipcp-accept-localipcp-accept-remote  が指定さ
              れている場合にはこの限りではありません。

       bsdcomp nr,nt
              接続相手に、BSD-Compress  方式を使った送出時のパケット圧縮を要求します。 ここでの最
              大コードサイズは nr ビットです。 相手側が送るパケットの最大の大きさは、 nt ビットで
              す。 nt が指定されない時は、デフォルトの nr が使われます。 9 から 15 の範囲の値が、
              nrnt で使われます。  より大きな値は、よりよい圧縮となりますが、圧縮辞書のために
              より多くの  カーネルメモリを消費します。nrnt に対して、値 0 を 指定すると、指定
              した方向には圧縮を行いません。    BSD-Compress     圧縮を完全に無効にするためには、
              nobsdcompbsdcomp 0 を指定してください。

       chap-interval n
              このオプションが指定された場合、 pppd は n 秒おきに再チャレンジします。

       chap-max-challenge n
              CHAP チャレンジの最大送信回数を n に設定します (デフォルト値は 10)。

       chap-restart n
              (チャレンジの再送のタイムアウトによる) CHAP 再開の間隔を n 秒に設定します (デフォル
              ト値は 3)。

       debug  接続のデバッグ機能を有効にします。 このオプションを指定した場合、pppd  は送受信した
              すべての制御パケットの内容を可読形式でログします。   パケットは   syslog   を経由し
              て、daemon     ファシリティの     debug      レベルとして記録されます。      本情報
              は、/etc/syslog.conf     を適切に記述することで    ファイルに記録することができます
              (syslog.conf(5) 参照)。

       default-asyncmap
              asyncmap ネゴシエーションを無効にし、  送受信両方向にて全制御文字をエスケープさせま
              す。

       default-mru
              MRU  [最大受信単位; Maximum Receive Unit] ネゴシエーションを無効にします。 このオプ
              ションを指定すると、送受信両方向において、 pppd はデフォルトの MRU 値 1500 バイトを
              使用します。

       deflate nr,nt
              接続相手に、Deflate 方式を使った送出時のパケット圧縮を要求します。 ここで最大のウィ
              ンドウサイズは  2**nr  バイトです。  また、相手に送るパケットを最大ウィンドウサイズ
              2**nt バイトにて圧縮 することを合意します。 nt が指定されないと、デフォルトの nr の
              値となります。 nrnt には 8 から  15  までの範囲の値が許されます。  より大きな値
              は、よりよい圧縮となりますが、圧縮辞書のためにより多くの   カーネルメモリを消費しま
              す。 nrnt  に対して、値  0  を  指定すると、指定した方向には圧縮を行いません。
              Deflate  圧縮を完全に無効にするためには、  nodeflatedeflate 0 を指定してくださ
              い。 (注: 相手が両方とも可能な場合には、 pppd は BSD-Compress よりも Deflate 圧縮を
              好んで要求します。)

       demand リンクの開始を要求時のみ、つまりデータトラフィックが存在する時のみ行います。 このオ
              プションを指定する場合、リモート IP  アドレスを、  ユーザがコマンドラインで指定する
              か、オプションファイル中に含む必要があります。 pppd は、相手に接続することなく、 ま
              ずインタフェースを設定して IP トラフィックに備えます。 トラフィックが現れると、pppd
              は相手へ接続し、 ネゴシエーションや認証などを行います。 これが完了すると、pppd はリ
              ンクを介してデータパケット (すなわち IP パケット) の授受を開始します。

              demand オプションは暗黙的に persist オプションを指定します。 この動作が望ましくない
              場合、demand  オプションの後に nopersist オプションを使用してください。 idle および
              holdoff のオプションもまた、 demand オプションとともに使用すると便利です。

       domain d
              認証のために使用するローカルホスト名にドメイン名 d を付加します。  例えば、完全な形
              でのドメイン名 (FQDN) が porsche.Quotron.COM であって、 gethostname() が porsche と
              いう名前を返す場合には、 このオプションを用いてドメイン名を Quotron.COM  と指定しま
              す。  そうすると、pppd は porsche.Quotron.COM を 秘密情報ファイルの中の秘密情報を調
              べるために使用したり、 相手に対して自己証明するために送るデフォルトの名前として使用
              します。 このオプションは特権オプションです。

       holdoff n
              リンク切断から再初期化まで何秒待つかを指定します。 persist または demand オプション
              使用時にのみ、 このオプションは有効です。  アイドルであったためにリンクが切断された
              場合は、 この抑止期間は適用されません。

       idle n リンクが  n 秒アイドルだった場合に接続を切るように pppd に指定します。 データパケッ
              ト (つまり  IP  パケット)が送受信されない時に、  リンクはアイドルだとみなされます。
              注:  demand オプションを使用せずに persist オプションを使用する場合に、このオプショ
              ンを使うことを勧めます。 active-filter オプションが与えられると、  指定したアクティ
              ビティフィルタが受理しなかったデータパケットもまた、 リンクがアイドルであるとみなす
              対象とします。

       ipcp-accept-local
              このオプションが指定された場合には、 別のオプションによってローカル IP アドレスの指
              定が行われている場合でも、  pppd は相手からのローカル IP アドレスの指定を受け入れま
              す。

       ipcp-accept-remote
              このオプションが指定された場合には、 別のオプションによってリモート IP アドレスの指
              定が行われている場合でも、  pppd は相手からのリモート IP アドレスの指定を受け入れま
              す。

       ipcp-max-configure n
              IPCP configure-request の最大送信回数を n 回に設定します (デフォルト値は 10)。

       ipcp-max-failure n
              IPCP configure-Reject を送信開始するまでの IPCP configure-NAK の最大応答回数を n 回
              に設定します (デフォルト値は 10)。

       ipcp-max-terminate n
              IPCP terminate-request の最大送信回数を n 回に設定します (デフォルト値は 3)。

       ipcp-restart <n>
              (再送のタイムアウトによる)  IPCP  再開の間隔を  n  秒に設定します。 (デフォルト値は
              3)。

       ipparam string
              ip-up と ip-down スクリプト用に余分のパラメータを指定します。  このオプションが与え
              られた場合、  string  が  6 番目のパラメータと して、これらのスクリプトに与えられま
              す。

       ipx    IPXCP および IPX プロトコルを有効にします。 このオプションは現在 Linux でのみ、 IPX
              サポートを含めてカーネルを構成した場合のみサポートされています。

       ipx-network n
              IPXCP  設定要求フレーム中の IPX ネットワーク番号を n に設定します。 16 進数 (先頭の
              0x を除いて) を指定します。 正当なデフォルト値はありません。 このオプションが指定さ
              れないと、ネットワーク番号は相手から獲得します。 相手がネットワーク番号を持っていな
              い場合は、IPX プロトコルは開始されません。

       ipx-node n:m
              IPX ノード番号を設定します。 2 つのノード番号をコロンで区切ります。 最初の番号 n は
              ローカルのノード番号です。 次の番号 m は相手のノード番号です。 どちらのノード番号も
              16 進数であり、最大 10  桁です。  ipx-network  のノード番号は一意である必要がありま
              す。  正当なデフォルト値はありません。 このオプションが指定されないと、ノード番号は
              相手から獲得します。

       ipx-router-name <string>
              ルータ名を設定します。 これは文字列であり、情報データとして相手に送られます。

       ipx-routing n
              受信する経路プロトコルをこのオプションで指定します。 複数の ipx-routing  インスタン
              スを指定可能です。'none'  オプション (0) のみ、ipx-routing インスタンスとして指定可
              能です。 値は、0NONE に、2RIP/SAP に、 4NLSP に対応します。

       ipxcp-accept-local
              ipx-node オプションで指定したノード番号に対する、相手の NAK を受け付けます。 非ゼロ
              のノード番号が指定された場合、  この値の使用を主張することがデフォルトです。 このオ
              プションを指定すると、 相手がノード番号のエントリを上書きすることを許します。

       ipxcp-accept-network
              ipx-network オプションで指定したネットワーク番号に対する、 相手の NAK  を受け付けま
              す。  非ゼロのノード番号が指定された場合、 この値の使用を主張することがデフォルトで
              す。 このオプションを指定すると、  相手がノード番号のエントリを上書きすることを許し
              ます。

       ipxcp-accept-remote
              設定要求フレーム中に指定される相手のネットワーク番号を使用します。 相手のノード番号
              を指定し、 かつこのオプションを指定しなかった場合は、  相手はあなたが指定した値を使
              用することを強制されます。

       ipxcp-max-configure n
              システムが送信する IPXCP 設定要求フレーム数の最大値を n に設定します。 デフォルト値
              は 10 です。

       ipxcp-max-failure n
              ローカルシステムがオプションを拒否する前に、 ローカルシステムが送信する  IPXCP  NAK
              フレーム数の 最大値を設定します。デフォルト値は 3 です。

       ipxcp-max-terminate n
              相手が聞いていないという判断をローカルシステムが下す前に、 ローカルシステムが送信す
              る IPCP 停止要求フレーム数の最大値を設定します。デフォルト値は 3 です。

       kdebug n
              カーネルレベルの PPP ドライバのデバッグコードを有効にします。 引数 n として、以下の
              数値のうち必要なものの合計を指定します。 1 は一般的なデバッグメッセージ出力を有効に
              します。 2 は受信したパケットの内容の出力を要求します。 4  は送信したパケットの内容
              の出力を要求します。       ほとんどのシステムでは、カーネルが表示したメッセージは、
              /etc/syslog.conf  設定ファイルに指示されるように、  syslog(1)  がファイルにログしま
              す。

       lcp-echo-failure n
              このオプションが指定された場合、  LCP echo-request を n 回送信しても 相手から有効な
              LCP echo-reply が帰ってこなければ、pppd は 相手がダウンしているものと推測します。こ
              のような場合、pppd  は 接続を切断します。このオプションを使用する際には、 lcp-echo-
              interval のパラメータとして 0 以外の数値を指定してください。 このオプションは、ハー
              ドウェアモデム制御線 (DSR) が使用できない状況で、 (モデムがハングアップするなど) 物
              理的な接続が切断された後に pppd を終了するために用いられます。

       lcp-echo-interval <n>
              このオプションを指定すると、pppd は LCP echo-request フレームを n  秒毎に相手側に送
              信します。 通常、相手側は echo-request を受信すると echo-reply を送り返して返答しま
              す。 このオプションは、相手側との接続が切れたことを検出するために  lcp-echo-failure
              オプションとともに使用されます。

       lcp-max-configure n
              LCP configure-request の最大送信回数を n 回に設定します (デフォルト値は 10)。

       lcp-max-failure n
              LCP configure-Reject を送信開始するまでの LCP configure-NAK の最大応答回数を n 回に
              設定します (デフォルト値は 10)。

       lcp-max-terminate n
              LCP terminate-request の最大送信回数を n 回に設定します (デフォルト値は 3)。

       lcp-restart n
              (再送のタイムアウトによる) LCP 再開の間隔を n 秒に設定します (デフォルト値は 3)。

       local  モデム制御線を使用しません。このオプションを指定すると、 pppd  は、モデムからの  CD
              (Carrier  Detect) 信号の状態を無視し、 DTR (Data Terminal Ready) 信号の状態を変化さ
              せません。

       login  PAP を用いた相手の認証に、システムパスワードデータベースを用い、 ユーザをシステムの
              wtmp  ファイルに記録します。 アクセスが許されるためには、 /etc/ppp/pap-secrets ファ
              イルとシステムパスワードデータベースの両方に、 相手のエントリが存在する必要がありま
              す。

       maxconnect n
              ネットワークトラフィックの使用開始から n 秒後に接続を切断します (これは、最初のネッ
              トワーク制御プロトコルが来てから n 秒になります)。

       modem  モデム制御線を使用します。このオプションはデフォルトです。 このオプションを指定する
              と、pppd  は  (接続スクリプトが指定していなければ) モデムからの CD (Carrier Detect)
              信号のアサートを待ってから  シリアルデバイスをオープンし、接続終了時に  DTR   (Data
              Terminal  Ready)  信号を短い期間落としてから 接続スクリプトを実行します。 Ultrix で
              は、このオプションはハードウェアフロー制御、 すなわち crtscts  オプションを暗黙的に
              指定します。

       ms-dns <addr>
              pppd が Microsoft Windows クライアントのサーバとして動作している場合、 このオプショ
              ンは pppd に 1 または 2 の DNS (Domain Name Server) アドレスを クライアントに提供す
              ることを許します。  このオプションの最初のインスタンスはプライマリ DNS アドレスを与
              えます。 次のインスタンスは (もし与えられれば) セカンダリ DNS  アドレスを与えます。
              (このオプションは、 古いバージョンの pppd では dns-addr という名前でした。)

       ms-wins <addr>
              pppd  が Microsoft Windows クライアントまたは "Samba" クライアントの サーバとして動
              作している場合、このオプションは pppd に 1 または 2 の WINS (Windows Internet  Name
              Services)  サーバアドレスをクライアントに提供 することを許します。 このオプションの
              最初のインスタンスはプライマリ WINS アドレスを与えます。 次のインスタンスは (もし与
              えられれば) セカンダリ WINS アドレスを与えます。

       name name
              認証の目的で用いられるローカルシステムの名前を name に設定します。 このオプションは
              特権オプションです。  このオプションを指定すると、pppd   は秘密情報ファイルの第   2
              フィールドが name である行を使用して秘密情報を探し、相手を認証します。 さらに、user
              オプションで上書きしない場合は、 相手に対してローカルシステムを自己証明する時に送る
              名前として name を使用します。 (pppd はドメイン名を name に付加しないことに注意して
              ください。)

       netmask n
              インタフェースのネットマスクを n に設定します。 32 ビットのネットマスクを「10  進数
              ドット」表記で指定します (例: 255.255.255.0)。 このオプションが与えられると、デフォ
              ルトのネットマスクと指定したネットマスク との論理和が値となります。デフォルトのネッ
              トマスクはネゴシエートされる  リモートの IP アドレスに依存します。 リモート IP アド
              レスのクラスに適切なネットマスクと、 同一ネットワーク上システムの非  point-to-point
              ネットワークインターフェース のネットマスクとの論理和となります。

       noaccomp
              Address/Control 圧縮を双方向 (送受信) で無効にします。

       noauth 相手が自己証明することを要求しません。  auth オプションが /etc/ppp/options に指定さ
              れている場合、 このオプションは特権オプションです。

       nobsdcomp
              BSD-Compress 圧縮を無効にします。 BSD-Compress 方式を使用したパケット圧縮を pppd は
              要求も賛同もしません。

       noccp  CCP  (圧縮制御プロトコル; Compression Control Protocol) ネゴシエーションを 無効にし
              ます。 相手にバグがあるために、 CCP ネゴシエーションのための pppd  からの要求に混乱
              してしまう場合にのみ、 このオプションが必要です。

       nocrtscts
              シリアルポートにハードウェアフロー制御 (つまり RTS/CTS) を使用しません。 crtsctsnocrtscts の両方のオプションが与えられない時、 シリアルポートのハードウェアフロー制
              御の設定は変更されずに そのままになります。

       nodefaultroute
              defaultroute オプションを無効にします。 pppd を使っているユーザにデフォルト経路を作
              成させたくない システム管理者は、このオプションを /etc/ppp/options ファイルに  記述
              することができます。

       nodeflate
              Deflate 圧縮を無効にします。 pppd は Deflate 方式を使用した圧縮パケットを要求しませ
              んし、賛同もしません。

       nodetach
              制御端末から切り離しません。このオプションを指定しないと、 標準入力がある端末以外の
              シリアルデバイスが指定された場合は、  pppd は fork してバックグラウンドプロセスにな
              ります。

       noip   IPCP ネゴシエーションと IP 通信を無効にします。 相手にバグがあるために、 IPCP  ネゴ
              シエーションのための pppd からの要求に混乱してしまう場合にのみ、 このオプションが必
              要です。

       noipdefault
              ローカル IP アドレスが指定されない場合にデフォルトで行われる、 ホスト名から IP アド
              レスを  (可能であれば)  決定する動作を無効にします。 このオプションを指定した場合に
              は、IPCP ネゴシエーション時に 相手側がローカルの IP  アドレスを指定する必要がありま
              す (明示的にコマンドラインで指定されているか、 オプションファイルで指定されている場
              合を除きます)。

       noipx  IPXCP および IPX プロトコルを無効にします。 相手にバグがあるために、  IPXCP  ネゴシ
              エーションのための pppd からの要求に混乱してしまう場合にのみ、 このオプションが必要
              です。

       nomagic
              magic   number   ネゴシエーションを無効にします。このオプションを指定した場合には、
              pppd  はループバック回線を検出することができません。 相手にバグがある場合にのみ必要
              となります。

       nopcomp
              送受信方向とも、プロトコルフィールド圧縮ネゴシエーションを無効にします。

       nopersist
              接続の確立と切断のたびに終了します。 persist または demand のオプションが指定されな
              い場合、 このオプションはデフォルトです。

       nopredictor1
              Predictor-1 圧縮を受け付けませんし、賛同もしません。

       noproxyarp
              proxyarp オプションを無効にします。pppd のユーザに proxy ARP エントリを作成させたく
              ないシステム管理者は、このオプションを /etc/ppp/options  ファイルに記述することでそ
              のようにできます。

       novj   Van Jacobson 形式の TCP/IP ヘッダ圧縮を送受信方向において無効にします

       novjccomp
              Van  Jacobson 形式の TCP/IP ヘッダ圧縮において、 connection-ID 圧縮を無効にします。
              このオプションを指定すると、 pppd は  Van  Jacobson  圧縮された  TCP/IP  ヘッダから
              connection-ID バイトを省略しなくなりますし、 相手にも依頼しません。

       papcrypt
              相手の同一性を調べるために使われる  /etc/ppp/pap-secrets ファイル内の全ての秘密情報
              を暗号化することを 指示します。pppd は、暗号化前の /etc/ppp/pap-secrets  ファイルか
              らの秘密情報と等しいパスワードを受け入れません。

       pap-max-authreq n
              PAP authenticate-request の最大送信回数を n 回に設定します (デフォルト値は 10)。

       pap-restart n
              (再送のタイムアウトによる) PAP 再開の間隔を n 秒に設定します (デフォルト値は 3)。

       pap-timeout n
              PAP  において接続先が自己証明するまで  pppd が待機する最大時間を、n 秒に 設定します
              (0 は制限を設けないことを意味します)。

       pass-filter filter-expression
              送受信されるデータパケットに適用されるフィルタで、 通過を許されるパケットを決定する
              フィルタを指定します。  フィルタが拒否するパケットは黙って捨てられます。 特定のネッ
              トワークデーモン (例えば routed) が リンクバンド幅を使い切ることを防いだり、 基本的
              なファイアウォール機能を提供するために、このオプションがあります。          filter-
              expression の文法は tcpdump(1) と同じですが、 限定子は  PPP  リンクでは不適当ですの
              で、 etherarp は使用できません。 一般的には、フィルタ式をシングルクォートで括っ
              て、 式中の空白がシェルに解釈されることを避けるべきです。 inboundoutbound  の限
              定子を付けることにより、   入出力のパケットに異なった制約を適用可能です。  このオプ
              ションは現在 NetBSD でのみ利用可能であり、 カーネル及び pppd が PPP_FILTER を定義し
              てコンパイルされた場合のみ、 このオプションを利用可能です。

       persist
              接続が切断された後で終了しません。代わりに再接続しようとします。

       predictor1
              相手が送出するフレームを   Predictor-1   圧縮を使用するよう要求し、  要求された場合
              Predictor-1      で送出フレームを圧縮することに賛同します。      カーネルドライバが
              Predictor-1 圧縮をサポートしない場合には、 このオプションは影響ありません。

       proxyarp
              自システムの ARP [アドレス解決プロトコル; Address Resolution Protocol] テーブルに相
              手の IP アドレス と自システムのイーサネットアドレスを追加します。  他のシステムに対
              して、 相手がローカルイーサネット上にあるように見せることになります。

       remotename name
              リモートシステムの名前を name とみなして認証を行います。

       refuse-chap
              このオプションを指定すると、  pppd は相手に対して自己証明するにあたり CHAP の使用に
              賛同しません。

       refuse-pap
              このオプションを指定すると、 pppd は相手に対して自己証明するにあたり PAP の使用に賛
              同しません。

       require-chap
              CHAP  [チャレンジハンドシェーク認証プロトコル;  Challenge  Handshake Authentication
              Protocol] を用いて 自己証明を行うことを相手に要求します。

       require-pap
              PAP [パスワード認証プロトコル; Password Authentication Protocol] を用いて  自己証明
              を行うことを相手に要求します。

       silent このオプションを指定した場合、  pppd  は相手から有効な LCP パケットを受信するまで、
              接続を開始するための  LCP  パケットを送信せずに待ちます  (旧バージョンの  pppd   で
              'passive' オプションを指定した場合と同じ動作です)。

       usehostname
              認証時にホスト名をローカルシステムの名前として使用することを強制します  (ドメイン名
              が与えられれば付加されます)。 (このオプションは name オプションに優先します。)

       user name
              このマシンを相手に対して自己証明する際に用いるユーザ名を name に設定します。

       vj-max-slots n
              Van Jacobson の TCP/IP ヘッダ圧縮/伸長に使用する接続スロット数を n に設定します。 2
              から 16 (両端を含む) の範囲にある必要があります。

       welcome script
              PPP ネゴシエーション開始前かつ、(もしあれば) 接続スクリプトの完了後に、 script で指
              定される実行コマンドもしくはシェルコマンドを実行します。 noauth  オプションが使用さ
              れた場合には、 このオプションは特権オプションとなります。

       xonxoff
              ソフトウェアフロー制御  (つまり XON/XOFF) を使用してシリアルポート上の データフロー
              を制御します。

オプションファイル

       オプションは、コマンドラインから与えられるのと同様に、  ファイルに記述されたものを用いるこ
       とも可能です。  pppd  は、コマンドラインからのオプションを  読み込む前に /etc/ppp/options,
       ~/.ppprc,  /etc/ppp/options.ttyname  から  (この順に)  オプションを読み込みます。  (実際に
       は、端末名を得るためにコマンドラインオプションがまずスキャンされてから、   options.ttyname
       ファイルが読まれます。) options.ttyname ファイル名構成にあたり、 まず /dev/ が端末名から除
       かれ、残った / 文字がドットと置換されます。

       オプションファイルの内容は、 空白文字をデリミタとする単語の並びとして解釈されます。 空白文
       字を含む文字列はダブルクォート (") で囲うことで  1  つの文字列として解釈されるようになりま
       す。  バックスラッシュ (\) は、直後の 1 文字をクォートします。 ハッシュ文字 (#) はコメント
       の始まりとして解釈され、 改行までをコメントとみなします。 オプションファイル中での file お
       よび call のオプションの 使用制限はありません。

セキュリティ

       pppd  は、正当なユーザに対するサーバマシンへの PPP アクセスを提供しつつ、 サーバ自身やその
       サーバが存在するネットワークのセキュリティを危険に  さらす心配のない、充分なアクセス制御を
       システム管理者に提供します。  このアクセス制御の一部は、 /etc/ppp/options ファイルにより提
       供されます。 このファイルでシステム管理者は pppd の使用制限を設定することができます。 また
       一部は、PAP  や CHAP の秘密情報ファイルにより提供されます。 このファイルで個々のユーザが使
       用する IP アドレスの組を 管理者が制限することができます。

       通常の pppd の用途においては、 auth オプションを  /etc/ppp/options  ファイルに設定すべきで
       す。 (将来のリリースにおいてデフォルトになるかもしれません。) ユーザが pppd を使用して相手
       にダイヤルアウトしたい場合で、 相手が自己証明することを拒否する場合  (インターネットサービ
       スプロバイダなど)、  システム管理者は /etc/ppp/peers 下にオプションファイルを作成し、 ここ
       に noauth オプションと、使用するシリアルポート名と、 (必要なら) connect オプションと、その
       他適切なオプションを格納します。 このようにすることで、 非特権ユーザが信頼関係のある相手と
       の間で認証されない接続を結ぶことを可能 とします。

       上述のように、セキュリティに影響するオプションは特権オプションであり、  通常の非特権ユーザ
       が   setuid-root  された  pppd  では使用できません。  これは、コマンドラインでも、ユーザの
       ~/.ppprc ファイルでも、 file  オプションを使用して読まれるオプションファイルでも言えること
       です。  /etc/ppp/options ファイル中、 もしくは call オプションを使用して読まれるオプション
       ファイル中では、 特権オプションの使用は許されます。 pppd が root  ユーザにより起動された場
       合、特権オプションの使用は無制限です。

認証

       認証とは、一方が他方に自己を認めさせる処理のことを言います。  これは、一方が自己の名前を他
       方に送る際、 その名前のオーソライズされた本物の使用者のみから生まれる ある種の秘密情報を伴
       うことを必要とします。 このような交換において、最初の一方を「クライアント」と呼び、 他方を
       「サーバ」と呼びます。 クライアントは自己をサーバに識別させるための名前を持ち、 サーバもま
       た自己をクライアントに識別させるための名前を持ちます。  一般的に本物のクライアントは秘密情
       報 (またはパスワード) をサーバと共有し、  自己を証明するにあたりその秘密情報を知っていると
       伝えます。  認証に使用される名前は相手のインターネットホスト名に対応することが多いですが、
       これは本質的なことではありません。

       現在  pppd  は  2  つの認証プロトコルをサポートします:  それぞれ、パスワード認証プロトコル
       (Password   Authentication   Protocol;   PAP)   と  チャレンジハンドシェーク認証プロトコル
       (Challenge Handshake Authentication Protocol; CHAP) です。 PAP  の場合、クライアントは自己
       証明のために、 自己の名前とクリアテキストパスワードをサーバに送る必要があります。 これとは
       対称的に、CHAP 認証交換はサーバが開始し、 チャレンジをクライアントに送ります (チャレンジパ
       ケットにはサーバ名が含まれます)。  クライアントはこれに返答する必要があり、 返事の中に自己
       の名前に加えて共有秘密情報とチャレンジから得られるハッシュ値を  含め、自己が秘密情報を知っ
       ていると伝える必要があります。

       PPP  プロトコルは対称的ですから、 両者が他方に対して自己証明を行うように要求することを許し
       ます。 この場合、2 つの別々かつ独立した認証交換が発生します。 2 つの交換においては別の認証
       プロトコルを使用できますし、 原則的には違う名前を使用可能です。

       pppd のデフォルトの挙動は、もし認証の要求があればそれを受け入れ、 相手側には認証を要求しな
       いというものです。 ただし、 pppd がその認証を行なうのに必要な秘密情報を持っていない 特定の
       プロトコルによる認証は拒否します。

       pppd は認証に使用する秘密情報を秘密情報ファイル (PAP の場合 /etc/ppp/pap-secrets、 CHAP の
       場合  /etc/ppp/chap-secrets)  に格納します。  どちらの秘密情報ファイルも同じフォーマットで
       す。  秘密情報ファイルには、 pppd が他のシステムに対して自己証明するための秘密情報を格納す
       る ことができますし、 他のシステムの認証を行うための秘密情報を格納することも可能です。

       秘密情報ファイル中の各行は 1 つの秘密情報を格納します。 特定の秘密情報はあるクライアントと
       サーバの組み合わせに対して特有です  - このクライアントがこのサーバに対して自己証明すること
       にのみ使用されます。 秘密情報ファイルの各行は、少なくとも 3 つのフィールドからなります: そ
       れぞれ、クライアント名、サーバ名、秘密情報です。  指定したサーバに指定したクライアントが接
       続する時に使用する IP アドレスリストを、これらのフィールドの後に続けることができます。

       秘密情報ファイルはオプションファイルと同じように単語の並びとして  解釈されますので、クライ
       アント名、サーバ名、秘密情報の各フィールドは 1 語である必要があり、 これに含まれる空白文字
       や特殊文字は クォートもしくはエスケープする必要があります。 同じ行の残りの語は、クライアン
       トに許される IP アドレスのリストとされるか、 (ワイルドカードでもなく空でもない) 特定のクラ
       イアント名を含む行の 場合は "local:remote" アドレス  (コマンドラインもしくはオプションファ
       イルで共通フォーマット)  に優先します。 行に 3 語しか無い場合もしくは最初の語が "-" である
       場合、 全ての IP アドレスが不許可となります。 全アドレスを許可するには "*"  を使用します。
       また  "!"  から始まる語は、指定したアドレスを受け付けないことを示します。 アドレスの後には
       "/" と数値 n を続けることが可能であり、 全体のサブネットを示します。  つまり、全てのアドレ
       スの上位 n ビットが同じ値となります。 クライアント名、サーバ名、秘密情報においては大文字小
       文字の区別は重要です。

       秘密情報が `@' から始まる場合、後続するものはファイル名であり、 そこから秘密情報を読み込む
       ものとされます。  クライアント名もしくはクライアント名に単一の "*" を使用すると、 いかなる
       名前にもマッチします。 秘密情報を選択する時、pppd はベストマッチ、  すなわちワイルドカード
       が最小となるマッチを採用します。

       秘密情報ファイルには、他のホストを認証するための秘密情報に加え、  他のホストに対して自己証
       明するための秘密情報も格納します。 pppd が相手を認証 (相手が相手であることを確認) する時、
       秘密情報の検索にあたり、 相手の名前が最初のフィールドにありローカルシステムの名前が 2 番目
       のフィールド    にあるものを選びます。    ローカルシステム名のデフォルトはホスト名であり、
       domain オプション使用時にはドメイン名が付加されます。 このデフォルトには name オプションが
       優先しますが、 usehostname オプションが使用されている場合は例外です。

       pppd が相手に対する自己証明のための秘密情報を選ぶ時には、 まずどの名前を使用して相手に対し
       て自己識別するかを決めます。  この名前はユーザが  user オプションで指定可能です。 このオプ
       ションが使用されていない場合、 名前はデフォルトのローカルシステム名となり、 前の段落で示し
       たように決定されます。 こうして pppd は秘密情報の検索にあたり、 この名前が最初のフィールド
       にあり相手の名前が 2 番目のフィールド にあるものを選びます。  CHAP  認証が使用される場合、
       相手はチャレンジパケット中に相手の名前を含めますから、 pppd は相手の名前を知ることになりま
       す。 しかし、PAP が使用される場合、 ユーザが指定したオプションを元に pppd は相手の名前を決
       定します。 ユーザは相手の名前を直接 remotename で指定可能です。 そうではない場合で、リモー
       ト IP アドレスが (数値形式でなく) 名前で指定された場合、その名前を相手の名前として使用しま
       す。 これに失敗すると、pppd は相手の名前に空文字列を使用します。

       相手側を PAP で認証する際に、提供されるパスワードはまず秘密情報ファイルの 秘密情報と比較さ
       れます。 もしパスワードが秘密情報とマッチしなければ、 パスワードは crypt()  を使用して暗号
       化され、再び秘密情報と比較されます。 このため相手側の認証に使用する秘密情報は 暗号化された
       形式で記録することができます。 papcrypt オプションが与えられた場合、よりよいセキュリティの
       ため 最初の (暗号化されていない) 比較対象は除外されます。

       更にもし login オプションが指定されていれば、ユーザ名とパスワードも システムパスワードデー
       タベースでチェックされます。 このためシステム管理者は特定のユーザだけに PPP アクセスを  許
       可し、個々のユーザが使用できる IP アドレスの組を 制限するよう pap-secrets ファイルを設定す
       ることができます。 典型的には、login オプションを使う時に、 /etc/ppp/pap-secrets  中の秘密
       情報を "" とすることで、 相手が提供するいかなるパスワードにもマッチするようになります。 こ
       れにより、同じ秘密情報を 2 個所で必要とされることを避けることができます。

       login オプションが使われている時には、更なる確認が行われます。 /etc/ppp/ppp.deny  が存在し
       て、ユーザがそこに記述されている場合、   認証は失敗します。  /etc/ppp/ppp.shells  が存在し
       て、ユーザの通常の ログインシェルが記述されていない場合、認証は失敗します。

       認証は IPCP (またはその他のネットワーク制御プロトコル)  が開始される前に納得のいくように完
       了している必要があります。  相手が自己証明することを求められている時に、認証に失敗すると、
       pppd は (LCP をクローズすることで) リンクを切断します。 もし IPCP で得られたリモートホスト
       の IP アドレスが受け入れられない ものであった場合、IPCP はクローズされます。 IP パケットは
       IPCP が オープンしている時だけ送受信可能です。

       ローカルホストが一般的に認証を必要とする時でも、 接続を行い限定された IP アドレスの組の  1
       つを使うために  自己証明ができないホストに対して、  接続を認める必要がある場合もあります。
       もし相手側がこちらの認証要求を拒否した場合、pppd はそれを ユーザ名とパスワードが空文字列で
       ある  PAP 認証として扱います。 そこで、クライアント名とパスワードに空文字列を指定した 1 行
       を pap-secrets ファイルに追加することで、自己証明を拒否する ホストにも制限つきのアクセスを
       許可することができます。

経路制御

       IPCP  ネゴシエーションが成功した場合、 pppd はカーネルに、PPP インタフェースで用いるローカ
       ル IP アドレスおよび リモート IP アドレスを通知します。 これは、相手側と IP パケットを交換
       する リンクのリモート終端への経路を作成するのに充分な情報です。 サーバ以外のマシンとの通信
       には、一般的には経路 テーブルや ARP (アドレス解決プロトコル; Address Resolution  Protocol)
       テーブルのさらなる更新が必要となります。  ほとんどの場合 defaultrouteproxyarp オプショ
       ンで十分ですが、 更なる解析が必要な場合もあります。 /etc/ppp/ip-up  スクリプトが使用可能な
       場合があります。

       インターネットへの接続を PPP インタフェース経由のみで行うマシンの 場合には、リモートホスト
       を通るデフォルト経路の追加が 望ましい場合があります。 defaultroute オプションは、IPCP が完
       了した際に  pppd  に そのようなデフォルト経路を作成させ、リンクが切断されたときには そのデ
       フォルト経路を削除させます。

       例えばサーバマシンが LAN に接続されている場合、LAN 上の他のホストが リモートホストと通信で
       きるようにするために proxy ARP の使用が 望ましい場合もあります。 proxyarp オプションを指定
       すると、pppd はリモートホストと 同一サブネット上にある (ブロードキャストと ARP  をサポート
       し、動作中  かつ  point-to-point やループバックでない) ネットワークインタフェースを 探しま
       す。 そのようなインタフェースが見つかった場合、pppd は 恒久的に公開された ARP エントリとし
       てリモートホストの  IP  アドレスと  その見つかったネットワークインタフェースのイーサネット
       (MAC) アドレスを 登録します。

       demand オプション使用時は、IPCP 起動時に インタフェースの IP アドレスは設定済みです。 pppd
       がインタフェース設定に使用したものと同じアドレスを    ネゴシエーションできなかった場合には
       (例えば ISP が動的に IP アドレスを割り当てる場合)、 pppd はインタフェースの IP  アドレスを
       ネゴシエートされたものに 変更する必要があります。 この場合既存の接続を破壊するかもしれませ
       んので、 動的 IP 割り当てを行う相手と要求時ダイヤルを行うことは勧められません。

使用例

       (ppp の配布のデフォルトの /etc/ppp/options ファイルと同じく) 以下の例では /etc/ppp/options
       ファイルは auth オプションを含むものとします

       おそらく最も一般的な pppd の使用方法は ISP へダイヤルアウトすることでしょう。 この場合次の
       コマンドを使用します。

              pppd call isp

       ここで /etc/ppp/peers/isp ファイルはシステム管理者が次のように設定します:

              ttyS0 19200 crtscts
              connect '/usr/sbin/chat -v -f /etc/ppp/chat-isp'
              noauth

       この例では、chat を使用して ISP のモデムにダイヤルし、  必要なログオンシーケンスを通過しま
       す。  /etc/ppp/chat-isp  ファイルは chat が使用するスクリプトを含みます。 例えば次のように
       なっています:

              ABORT "NO CARRIER"
              ABORT "NO DIALTONE"
              ABORT "ERROR"
              ABORT "NO ANSWER"
              ABORT "BUSY"
              ABORT "Username/Password Incorrect"
              "" "at"
              OK "at&d0&c1"
              OK "atdt2468135"
              "name:" "^Umyuserid"
              "word:" "\qmypassword"
              "ispts" "\q^Uppp"
              "~-^Uppp-~"

       chat スクリプトの詳細については、 chat(8) のマニュアルページを参照してください。

       pppd はまたダイヤルイン ppp サービスをユーザに提供するために使用可能です。  ユーザが既にロ
       グインアカウントを持っている場合には、 ppp サービスの最も簡単な設定方法は、 ユーザにそのア
       カウントでログインしてもらってから、 (setuid-root された) pppd  を次のように実行することで
       す。

              pppd proxyarp

       ユーザが PPP 機能を使用することを許すためには、 そのユーザのマシンのための IP アドレスを割
       り当て、 /etc/ppp/pap-secrets または /etc/ppp/chap-secrets (ユーザのマシンの PPP 実装が ど
       ちらの認証方法をサポートするかに依存します) にエントリを作成して、ユーザのマシンを認証可能
       とします。 例えば、Joe が "joespc" というマシンを持っていて、"server" というマシンへの  ダ
       イヤルインおよび joespc.my.net という IP アドレスの使用が許されている場合、 次のようなエン
       トリを /etc/ppp/pap-secrets または /etc/ppp/chap-secrets に 加えます:

              joespc    server    "joe's secret" joespc.my.net

       別の方法として、(例えば) "ppp" といったユーザ名を作成し、 そのログインシェルを pppd とし、
       ホームディレクトリを  /etc/ppp とする方法があります。 この方法で pppd を実行する場合に使用
       するオプションは /etc/ppp/.ppprc に置くことができます。

       もしあなたのシリアル接続がケーブル 1 本でなく、もっと複雑な場合には、 いくつかの制御文字が
       エスケープされるように  準備しておく必要があります。とりわけ、XON  (^Q)  および  XOFF (^S)
       を、 asyncmap a0000 を用いてエスケープすることはしばしば有効です。 パスが telnet  を含む場
       合には、  ^] 文字も同様にエスケープ (asyncmap 200a0000 を指定) する必要があるでしょう。 パ
       スが rlogin を含む場合には、rlogin クライアントの動作している側の ホストで escape ff  を指
       定する必要があるでしょう。これは、多くの  rlogin  の実装がネットワーク透過でないためです。
       それらの rlogin では、 0xff, 0xff, 0x73, 0x73 とそれに続く 8 バイトの シーケンスをストリー
       ムから取り除きます。

診断

       メッセージは  LOG_DAEMON ファシリティを用いて syslog デーモンに 送られます (これは希望する
       ファシリティを LOG_PPP マクロとして定義し、 pppd  を再コンパイルすることで変更することがで
       きます)。  エラーメッセージやデバッグメッセージを見るためには、 /etc/syslogd.conf ファイル
       を編集して pppd からのメッセージが  希望する出力デバイスやファイルに書き出されるようにして
       おく必要があります。

       debug    オプションは送受信されるすべての制御パケットの内容が   ログに記録されるようにしま
       す。対象となる制御パケットは、 すべての  LCP,  PAP,  CHAP,  IPCP  パケットです。  この機能
       は、PPP  ネゴシエーションがうまくいかない場合や 認証が失敗する場合の原因究明に効果的でしょ
       う。 コンパイル時にデバッギングオプションを有効にしていた場合には、 debug もまた他のデバッ
       グメッセージを記録するために使われます。

       pppd  プロセスに SIGUSR1 シグナルを送ってデバッギングを有効にすることが できます。これはト
       グル動作します。

スクリプト

       pppd は処理の様々な段階においてスクリプトを起動し、 サイト固有の追加処理を行います。  これ
       らのスクリプトは通常シェルスクリプトですが、    実行可能コードファイルであってもかまいませ
       ん。 pppd はスクリプトが終了するまで待ちません。 スクリプトは root にて (実ユーザ ID  およ
       び実効ユーザ  ID とも 0 に設定して) 実行されますので、経路テーブルの更新や特権デーモンの実
       行が可能です。 これらのスクリプトの内容によってシステムセキュリティが危うくならないよう 注
       意してください。  pppd は標準入力・標準出力・標準エラー出力を /dev/null にリダイレクトし、
       リンクの情報を与えるいくつかの環境変数を除いて環境変数を空にして、    スクリプトを実行しま
       す。 pppd が設定する環境変数を以下に示します:

       DEVICE 使用しているシリアル tty デバイス名。

       IFNAME 使用しているネットワークインタフェース名。

       IPLOCAL
              リンクのローカル側の IP アドレス。 IPCP が立ち上がった時のみ設定されます。

       IPREMOTE
              リンクのリモート側の IP アドレス。 IPCP が立ち上がった時のみ設定されます。

       PEERNAME
              相手の認証された名前。 相手が自己証明した場合のみ設定されます。

       SPEED  tty デバイスのボーレート。

       UID    pppd を起動したユーザの実ユーザ ID。

       pppd は、以下のスクリプトが存在すれば起動します。 存在しなくてもエラーではありません。

       /etc/ppp/auth-up
              リモートシステムが成功裏に自己証明した後で実行される   プログラムまたはスクリプトで
              す。 次のものをパラメータとして実行されます。

              interface-name peer-name user-name tty-device speed

              相手が自己証明しない場合には、 このスクリプトは実行されないことに注意してください。
              例えば noauth オプションが使用される時がこれにあたります。

       /etc/ppp/auth-down
              /etc/ppp/auth-up  が以前実行された後でリンクが落ちた時に実行される プログラムまたは
              スクリプトです。 これは /etc/ppp/auth-up と同じパラメータを与えて、同じ方法で実行さ
              れます。

       /etc/ppp/ip-up
              そのリンクで IP パケットの送受信が行えるようになった時 (IPCP が完了した時) に実行さ
              れるプログラムまたはスクリプトです。 次のものをパラメータとして実行されます。

              interface-name tty-device speed local-IP-address remote-IP-address ipparam

       /etc/ppp/ip-down
              そのリンクで IP パケットの送受信ができなくなった場合に実行される プログラムまたはス
              クリプトです。  このスクリプトは /etc/ppp/ip-up スクリプトで行った変更を 元にもどす
              ために用いられます。  これは  ip-up  と同じパラメータを与えて、同じ方法で実行されま
              す。

       /etc/ppp/ipx-up
              そのリンクで IPX パケットの送受信が行えるようになった時 (IPXCP が完了した時) に実行
              されるプログラムまたはスクリプトです。 次のものをパラメータとして実行されます。

              interface-name tty-device speed network-number  local-IPX-node-address  remote-IPX-
              node-address   local-IPX-routing-protocol   remote-IPX-routing-protocol  local-IPX-
              router-name remote-IPX-router-name ipparam pppd-pid

              local-IPX-routing-protocol および remote-IPX-routing-protocol のフィールドは 以下の
              いずれかです:

              NONE      経路プロトコルが無いことを示します
              RIP       RIP/SAP を使うべきであることを示します
              NLSP      Novell NLSP を使うべきであることを示します
              RIP NLSP  RIP/SAP と NLSP の両方を使うべきであることを示します

       /etc/ppp/ipx-down
              そのリンクで  IPX パケットの送受信ができなくなった場合に実行される プログラムまたは
              スクリプトです。 このスクリプトは /etc/ppp/ipx-up スクリプトで行った変更を 元にもど
              すために用いられます。 これは ipx-up と同じパラメータを与えて、同じ方法で実行されま
              す。

関連ファイル

       /var/run/pppn.pid (BSD または Linux), /etc/ppp/pppn.pid (その他)
              ppp インタフェースユニット n に対応する pppd プロセスの  プロセス  ID  が記録されま
              す。

       /etc/ppp/pap-secrets
              PAP  認証で使用するユーザ名、パスワード、IP  アドレスを格納します。  このファイルは
              root が所有し、他のユーザは読み書きできてはなりません。 そうでない場合 pppd  は警告
              ログを行います。

       /etc/ppp/chap-secrets
              CHAP 認証で使用する名前、秘密情報、IP アドレスを格納します。 このファイルは root が
              所有し、他のユーザは読み書きできてはなりません。 そうでない場合 pppd は警告ログを行
              います。

       /etc/ppp/options
              pppd  のシステムデフォルトオプションを記述します。 ユーザデフォルトオプションおよび
              コマンド ラインオプションが読まれる前に読み込まれます。

       ~/.ppprc
              ユーザ毎のデフォルトオプションを記述します。 /etc/ppp/options.ttyname  が読まれる前
              に読み込まれます。

       /etc/ppp/options.ttyname
              各シリアルポートのシステムデフォルトオプションを指定します。  ~/.ppprc の後で読まれ
              ます。 このファイル名の ttyname 部分の構成にあたり、  まず  /dev/  が  (存在すれば)
              ポート名から除かれ、 残ったスラッシュがドットに置換されます。

       /etc/ppp/peers
              pppd  が非 root ユーザによって起動されたとしても 特権オプションを含んでかまわないオ
              プションファイルを含むディレクトリです。   システム管理者はオプションファイルをこの
              ディレクトリ中に作成することにより、 非特権ユーザが相手の認証を要さずにダイヤルアウ
              ト可能とします。 しかし、信頼関係のある相手のみ可能です。

       /etc/ppp/ppp.deny
              システムのパスワードによる PAP 認証を使わせないユーザを記述します。

       /etc/ppp/ppp.shells
              システムのパスワードによる PAP 認証ログインのために適切なシェルを 記述します。

関連項目

       chat(8), ppp(8)

       RFC1144
              Jacobson, V.  Compressing TCP/IP headers  for  low-speed  serial  links.   February
              1990.

       RFC1321
              Rivest, R.  The MD5 Message-Digest Algorithm.  April 1992.

       RFC1332
              McGregor, G.  PPP Internet Protocol Control Protocol (IPCP).  May 1992.

       RFC1334
              Lloyd, B.; Simpson, W.A.  PPP authentication protocols.  October 1992.

       RFC1661
              Simpson, W.A.  The Point-to-Point Protocol (PPP).  July 1994.

       RFC1662
              Simpson, W.A.  PPP in HDLC-like Framing.  July 1994.

注意

       以下のシグナルが pppd に送られた場合、ここで説明する効果が得られます。

       SIGINT, SIGTERM
              これらのシグナルを受信した場合、pppd  は  (LCP  をクローズすることで)  リンクを切断
              し、シリアルデバイスの設定を復元して、プログラムを終了します。

       SIGHUP 物理層のリンク切断を指示します。pppd はシリアルデバイスの設定を復元し、  シリアルデ
              バイスを閉じます。  persist または demand のオプションが指定されている場合、pppd は
              シリアルデバイスを再オープンし、(抑止期間を置いてから)   新しい接続を始めようとしま
              す。  そうでない場合は、pppd  は終了します。 このシグナルを抑止期間に受けると、pppd
              は抑止期間をすぐに終了します。

       SIGUSR1
              このシグナルは、debug オプションの状態を反転します。

       SIGUSR2
              このシグナルは、 pppd に圧縮に付いて再びネゴシエートさせます。 これは、致命的な伸長
              エラーの結果として 圧縮を止めた後で、再び圧縮を有効にするために便利です。 (致命的な
              伸長エラーは一般にどちらかの実装上の バグを示します。)

作者

       Paul Mackerras (Paul.Mackerras@cs.anu.edu.au) が、 Drew Perkins, Brad Clements, Karl  Fox,
       Greg Christy, Brad Parker の作業を元に作成しました。

                                                                                          PPPD(8)