Provided by: manpages-ja-dev_0.5.0.0.20140515+dfsg-2_all bug

名前

       pthread_atfork - fork(2) の際に呼び出されるハンドラを登録する

書式

       int pthread_atfork(void (*prepare)(void), void (*parent)(void), void (*child)(void));

説明

       pthread_atforkfork(2) によって新しいプロセスが生成される際、その直前と直後に呼び出され
       る ハンドラ関数を登録する。 prepare ハンドラは、新しいプロセスが生成される直前に親プロセス
       から 呼び出される。 parent ハンドラは、 fork(2) がリターンする直前に親プロセスから呼び出さ
       れる。 child ハンドラは fork(2) が返る直前に子プロセスから呼び出される。

       prepare, parent および child の三つのハンドラのうちの一つまたは複数に NULL  を与えることが
       できるが、これは対応する時点でいかなるハンドラをも 呼び出す必要がないことを意味する。

       pthread_atfork  は複数のハンドラの組合せを登録するために複数回  呼び出すことが可能である。
       fork(2) の時点で複数の prepare ハンドラは LIFO 順で呼び出される( pthread_atfork で最後に加
       えられたものが  fork の前に最初に呼び出される)。 他方、 parentchild は FIFO 順で呼び出
       される (最初に加えられたものが最初に呼び出される)。

       pthread_atfork  の目的を理解するために、  fork(2)  は、現在ロック状態にある  mutex  も含め
       て、呼び出したスレッドのみの  メモリ空間全体を複製することを思い出そう。つまり、他のスレッ
       ドは  子プロセスでは実行されていないのである。従って、  fork  を呼び出したスレッド以外のス
       レッドによって  mutex がロックされている のならば、その mutex は子プロセスの中で永遠にロッ
       クされたままであり、  子プロセスの実行をブロックする可能性がある。  これを避けるためには、
       pthread_atfork   で次のようなハンドラを登録すれば良いだろう:   prepare  ハンドラが大域的な
       mutex を(ロックする際の順序で)ロックし、 parentchild  がそれらを(逆の順に)アンロックす
       る。  または、  prepareparentNULL  に設定し、  child を大域的な mutex に対して
       pthread_mutex_init を呼び出す関数に設定しても良いだろう。

返り値

       pthread_atfork は成功すれば 0 を返し、エラーがあれば非ゼロのエラーコードを返す。

エラー

       ENOMEM ハンドラを登録するのにメモリが足りない。

著者

       Xavier Leroy <Xavier.Leroy@inria.fr>

関連項目

       fork(2), pthread_mutex_lock(3), pthread_mutex_unlock(3).

       [訳注]  glibc-linuxthreads  の最新のドキュメントは  Texinfo形式で提供されている。   以下は
       glibc-linuxthreads-2.3.1 の Texinfo ファイルからの引用である。

       pthread_atfork の目的を理解するために、 fork が現在ロック状態にある mutex も含めたメモリ空
       間全体を、 しかし呼び出しスレッドだけを複製することを思い出してほしい。 つまり、他のスレッ
       ドは子プロセスでは実行されない。   mutex   は   fork  の後は使うことができず、子プロセスで
       pthread_mutex_init  を使って初期化されなければならない。  これは現在の実装の制限で、将来の
       バージョンでも存在するかもしれないし、 存在しないかもしれない。

       これを避けるためには、 pthread_atfork で次のようなハンドラを登録すればよい: prepare ハンド
       ラで mutex を (ロックする際の順序で) ロックし、 parent ハンドラで mutex をロック解除する。
       child ハンドラでは pthread_mutex_init を使用して mutex を初期化しなければならない。 条件変
       数などの他の同期オブジェクトについても同様である。

       グローバル mutex  を  fork  の前にロックすると、  他のスレッドはすべて、それらのグローバル
       mutex  で保護される コードのクリティカル領域から締め出される。したがって fork が親プロセス
       のアドレス空間のスナップショットを取ると、  そのスナップショットは有効で安定したデータをコ
       ピーする。 子プロセスで同期オブジェクトを初期化することで 親プロセスのスレッドサブシステム
       に由来するものが適切に清められることが保証される。 例えば、 mutex は獲得を待つスレッドの待
       ちキューを引き継ぐが、 この待ちキューは子プロセスでは意味を持たない。 mutex を初期化するこ
       とでこのことに対処する。

                                           LinuxThreads                         PTHREAD_ATFORK(3)