Provided by: manpages-ja-dev_0.5.0.0.20180315+dfsg-1_all bug

名前

       spu_run - SPU コンテキストを実行する

書式

       #include <sys/spu.h>

       int spu_run(int fd, unsigned int *npc, unsigned int *event);

       : このシステムコールには glibc のラッパー関数は存在しない。「注意」の節を参照。

説明

       spu_run()  システムコールは、Cell Broadband Engine アーキテクチャーを実装した PowerPC マシ
       ンで Synergistic Processor Units (SPU)  にアクセスするために  使用される。  fd  引き数は、
       spu_create(2)  が返すファイルディスクリプターで、 特定の SPU コンテキストを参照する。 その
       コンテキストが物理  SPU  に割り当てられると、  npc  で渡された命令ポインター  (instruction
       pointer) から実行が開始される。

       SPU コードの実行は同期的 (synchronously) に行われる、つまり SPU が実行中は spu_run()  は停
       止 (block) する。 SPU コードの実行をメイン CPU や他の SPU と並行して行う必要がある場合は、
       最初に、その  SPU  コードを実行する新しいスレッドを、(例えば pthread_create(3)  などを使っ
       て) 生成しなければならない。

       spu_run()  が返るときには、SPU のプログラムカウンターの現在値が npc に書き込まれる。  これ
       により、連続する spu_run()  の呼び出しで同じ npc ポインターを使うことができる。

       event 引き数には、拡張ステータスコード用のバッファーを指定する。 SPU_CREATE_EVENTS_ENABLED
       フラグ付きで SPU コンテキストが作成されると、 spu_run()  が返る前に Linux カーネルによりこ
       のバッファーに 拡張ステータスコードが格納される。

       ステータスコードには以下の定数が一つ以上入る。

       SPE_EVENT_DMA_ALIGNMENT
              DMA (direct memory access) のアライメントエラーが発生した。

       SPE_EVENT_INVALID_DMA
              無効な MFC (Memory Flow Controller) DMA コマンドを行おうとした。

       SPE_EVENT_SPE_DATA_STORAGE
              DMA ストレージエラーが発生した。

       SPE_EVENT_SPE_ERROR
              不正な命令が実行された。

       NULL  は event 引き数として有効な値である。 この場合、イベントは呼び出し元のプロセスに報告
       されない。

返り値

       成功すると、 spu_run()  は  spu_status  レジスターの値を返す。  エラーの場合、-1  を返し、
       errno を下記のエラーコードのいずれかに設定する。

       spu_status  レジスターの値は、ステータスコードと SPU の stop-and-signal 命令が返す 14 ビッ
       トのコードの ビットマスクで構成される。 後者の  14  ビットのコードはオプションである。  ス
       テータスコードのビットマスクは下記の通りである。

       0x02   SPU が stop-and-signal 命令で停止した。

       0x04   SPU が halt (停止) 命令で止まった。

       0x08   SPU はチャンネルのウェイト中である。

       0x10   SPU はシングルステップモードであった。

       0x20   SPU が不正な命令を実行しようとした。

       0x40   SPU が不正なチャンネルにアクセスしようとした。

       0x3fff0000
              この値のマスクを適用して得られたビット値には、 stop-and-signal 命令から返されたコー
              ドが入っている。 これらのビットは  0x02  ビットがセットされている場合にのみ有効であ
              る。

       spu_run()  がエラーを返さなかった場合、下位 8 ビットのうち 1 つ以上は 常にセットされる。

エラー

       EBADF  fd が有効なファイルディスクリプターでない。

       EFAULT npc が有効なポインターでない。または event が NULL 以外で、しかも無効なポインターで
              ある。

       EINTR  spu_run()  の実行中にシグナルが発生した。 signal(7)  参照。 必要であれば、 npc の値
              は新しいプログラムカウンターの値に更新される。

       EINVAL fdspu_create(2)  が返した有効なファイルディスクリプターでない。

       ENOMEM Memory  Flow Controller (MFC) DMA により発生したページフォールトを 処理するのに必要
              なメモリーがなかった。

       ENOSYS 機能が動作中のシステムで提供されていない。理由は、 ハードウェアで SPU  が提供されて
              いないか、 spufs モジュールがロードされていないか、のどちらかである。

バージョン

       spu_run()  システムコールはカーネル 2.6.16 で Linux に追加された。

準拠

       このシステムコールは  Linux 固有であり、 PowerPC アーキテクチャーでのみ実装されている。 こ
       のシステムコールを使ったプログラムは移植性がない。

注意

       glibc  はこのシステムコールに対するラッパー関数を提供していない。   syscall(2)    を使うこ
       と。ただし、  spu_run() は より抽象度の高い SPU へのインターフェースを実装するライブラリか
       ら   利用されることを意図したものであり、通常のアプリケーションから   使用は意図されていな
       い。推奨のライブラリについては  ⟨http://www.bsc.es/projects/deepcomputing/linuxoncell/⟩ を
       参照のこと。

       以下は、簡単な 1 命令の SPU プログラムを spu_run()  システムコールを使って実行させる例であ
       る。

       #include <stdlib.h>
       #include <stdint.h>
       #include <unistd.h>
       #include <stdio.h>
       #include <sys/types.h>
       #include <fcntl.h>

       #define handle_error(msg) \
           do { perror(msg); exit(EXIT_FAILURE); } while (0)

       int main(void)
       {
           int context, fd, spu_status;
           uint32_t instruction, npc;

           context = spu_create("/spu/example-context", 0, 0755);
           if (context == -1)
               handle_error("spu_create");

           /* write a 'stop 0x1234' instruction to the SPU's
            * local store memory
            */
           instruction = 0x00001234;

           fd = open("/spu/example-context/mem", O_RDWR);
           if (fd == -1)
               handle_error("open");
           write(fd, &instruction, sizeof(instruction));

           /* set npc to the starting instruction address of the
            * SPU program. Since we wrote the instruction at the
            * start of the mem file, the entry point will be 0x0
            */
           npc = 0;

           spu_status = spu_run(context, &npc, NULL);
           if (spu_status == -1)
               handle_error("open");

           /* we should see a status code of 0x1234002:
            *   0x00000002 (spu was stopped due to stop-and-signal)
            * | 0x12340000 (the stop-and-signal code)
            */
           printf("SPU Status: 0x%08x\n", spu_status);

           exit(EXIT_SUCCESS);
       }

関連項目

       close(2), spu_create(2), capabilities(7), spufs(7)

この文書について

       この  man ページは Linux man-pages プロジェクトのリリース 3.79 の一部 である。プロジェクト
       の説明とバグ報告に関する情報は http://www.kernel.org/doc/man-pages/ に書かれている。