Provided by: manpages-ja-dev_0.5.0.0.20210215+dfsg-1_all bug

名前

       kcmp - 二つのプロセスが同じカーネルリソースを共有しているかを比較する

書式

       #include <linux/kcmp.h>

       int kcmp(pid_t pid1, pid_t pid2, int type,
                unsigned long idx1, unsigned long idx2);

       : このシステムコールには glibc のラッパー関数は存在しない。「注意」の節を参照。

説明

       システムコール kcmp() を使うと、 ID が pid1pid2 の二つのプロセスが、 仮想メモリーやファイルディスクリ
       プターなどの、 同じカーネルリソースを共有しているかどうかを検査できる。

       type 引き数は 2 つのプロセス間でどのリソースを比較するかを指定する。 以下のいずれかの値を指定する。

       KCMP_FILE
              プロセス pid1 のファイルディスクリプター idx1 が、 プロセス pid2  のファイルディスクリプター  idx2
              と同じオープンファイル記述 (open file description) を参照しているかを検査する。

       KCMP_FILES
              二つのプロセスが同じオープンファイル記述の集合を共有しているかを検査する。  引き数 idx1idx2 は
              無視される。

       KCMP_FS
              二つのプロセスが同じファイルシステム情報     (すなわち、ファイルのモード作成マスク、作業ディレクト
              リ、ファイルシステムのルート) を共有しているかを検査する。 引き数 idx1idx2 は無視される。

       KCMP_IO
              二つのプロセスが I/O コンテキストを共有しているかを検査する。 引き数 idx1idx2 は無視される。

       KCMP_SIGHAND
              二つのプロセスがシグナル配送  (disposition)  テーブルを共有しているかを検査する。  引き数  idx1idx2 は無視される。

       KCMP_SYSVSEM
              二つのプロセスが同じ System V セマフォ undo 操作のリストを共有しているかを検査する。  引き数  idx1idx2 は無視される。

       KCMP_VM
              二つのプロセスが同じアドレス空間を共有しているかを検査する。 引き数 idx1idx2 は無視される。

       kcmp()  には、タスクが実行されている場合に起こり得る誤判定 (false positive) に関する保護はない。 というこ
       とは、 意味のある結果を得るためには、 このシステムコールで検査を行う前に、 SIGSTOP を送信してタスクを停止
       すべきだということだ (signal(7) 参照)。

返り値

       kcmp() の呼び出しが成功した場合の返り値は、単にカーネルポインターを数値で比較した結果となる (カーネルはリ
       ソースを比較する際、リソースのメモリーアドレスを使用する)。

       これを説明するには、例を見るのが一番簡単である。 v1v2 を適切なリソースのアドレスとすると、 返り値は以
       下のいずれか一つとなる。

           0   v1v2 と等しい。言い換えれば、二つのプロセスはそのリソースを共有している。

           1   v1v2 より小さい。

           2   v1v2 より大きい。

           3   v1v2 と等しくないが、順序情報がない。

       エラーの場合は -1 が返され、 errno が適切に設定される。

       kcmp()  は、ソートに適した値を返すように設計された。 大量のファイルディスクリプターを比較する必要がある場
       合に、特に役に立つ。

エラー

       EBADF  typeKCMP_FILE で、かつ fd1fd2 がオープンファイル記述でない。

       EINVAL type が無効である。

       EPERM  プロセスのリソースを検査するのに十分な許可がない。  自分が所有していないプロセスを検査するためには
              CAP_SYS_PTRACE ケーパビリティが必要である。

       ESRCH  プロセス pid1pid2 が存在しない。

バージョン

       kcmp() システムコールは Linux 3.5 で初めて登場した。

準拠

       kcmp() は Linux 特有であり、 移植を考慮したプログラムでは使用すべきではない。

注意

       glibc はこのシステムコールに対するラッパー関数を提供していない。 syscall(2) を使って呼び出すこと。

       このシステムコールが利用できるのは、  カーネルの CONFIG_CHECKPOINT_RESTORE オプションが有効になっている場
       合だけである。         このシステムコールの主な用途は、         ユーザー空間でのチェックポイント/リストア
       (checkpoint/restore in user space; CRIU) 機能である。 このシステムコールを使わないとすると、 proc(5) ファ
       イルシステム経由で必要なプロセス情報を公開することになるが、 これはセキュリティ上の理由から不適切とみなさ
       れた。

       このページで参照されている共有リソースに関する背景についての情報は clone(2) を参照のこと。

関連項目

       clone(2), unshare(2)

この文書について

       この man ページは Linux man-pages プロジェクトのリリース 3.79 の一部 である。プロジェクトの説明とバグ報告
       に関する情報は http://www.kernel.org/doc/man-pages/ に書かれている。