Provided by: manpages-ja-dev_0.5.0.0.20221215+dfsg-1_all
名前
makecontext, swapcontext - ユーザーコンテキストを操作する
書式
#include <ucontext.h> void makecontext(ucontext_t *ucp, void (*func)(), int argc, ...); int swapcontext(ucontext_t *oucp, const ucontext_t *ucp);
説明
In a System V-like environment, one has the type ucontext_t (defined in <ucontext.h> and described in getcontext(3)) and the four functions getcontext(3), setcontext(3), makecontext(), and swapcontext() that allow user-level context switching between multiple threads of control within a process. makecontext() 関数は、ポインター ucp が指すコンテキストを変更する (ucp は以前の getcontext(3) 呼び出しで得られたものである)。 makecontext() を起動する前には、呼び出し者 は、このコンテキスト用に 新しいスタックを確保し、そのアドレスを ucp->uc_stack に代入し、 さらに後継のコンテキストを定義し、そのアドレスを ucp->uc_link に 代入しなければならない。 このコンテキストが将来 (setcontext(3) または swapcontext() によって) 有効にされると、関 数 func が呼ばれ、 引数として argc 以降の整数 (int) 引数の列が渡される。 呼び出し者は argc にこれらの引数の個数を指定しなければならない。 この関数が戻ると、後継のコンテキストが 有効になる。 後継コンテキストのポインターが NULL の場合、そのスレッドが終了する。 swapcontext() 関数は現在のコンテキストを ポインター oucp が指す構造体に保存し、 ポイン ター ucp が指すコンテキストを有効にする。
返り値
成功すると、 swapcontext() は返らない (しかし後に oucp が有効になった場合には返ることがあ る。 このときには swapcontext() は 0 を返すように見える。) 失敗すると、 swapcontext() は -1 を返し、 errno をエラーに応じて設定する。
エラー
ENOMEM スタックに割り当てる空間が残っていない。
バージョン
makecontext() と swapcontext() は、バージョン 2.1 以降の glibc で提供されている。
属性
この節で使用されている用語の説明については、 attributes(7) を参照。 ┌─────────────────┬───────────────┬────────────────────────────┐ │インターフェース │ 属性 │ 値 │ ├─────────────────┼───────────────┼────────────────────────────┤ │makecontext() │ Thread safety │ MT-Safe race:ucp │ ├─────────────────┼───────────────┼────────────────────────────┤ │swapcontext() │ Thread safety │ MT-Safe race:oucp race:ucp │ └─────────────────┴───────────────┴────────────────────────────┘
準拠
SUSv2, POSIX.1-2001. POSIX.1-2008 では、移植性の問題から makecontext() と swapcontext() の仕様が削除されている。 代わりに、アプリケーションを POSIX スレッドを使って書き直すことが 推奨されている。
注意
ucp->uc_stack の解釈は sigaltstack(2) の場合と同じである。 すなわちこの構造体には、 ス タックとして用いられるメモリー領域の開始アドレスと長さが含まれ、 これはスタックが伸びる方 向がどちらであるかには関係しない。 したがって、ユーザープログラムはこの件については心配し なくてよい。 int とポインター型が同じ大きさであるアーキテクチャーでは (x86-32 はその例であり、両方の型 とも 32 ビットである)、 makecontext() の argc 以降の引数としてポインターを渡してもうまく 動くかもしれない。 しかしながら、このようにすると、移植性は保証されず、 標準に従えば動作は 未定義であり、ポインターが int よりも大きいアーキテクチャーでは正しく動作しないことだろ う。 それにも関わらず、バージョン 2.8 以降の glibc では、 makecontext() に変更が行わ れ、(x86-64 などの) いくつかの 64 ビットアーキテクチャーで 引数としてポインターを渡すこと ができるようになっている。
例
以下のサンプルプログラムは、 getcontext(3), makecontext(), swapcontext() の使用方法の例を 示すものである。 このプログラムを実行すると、以下のような出力が得られる: $ ./a.out main: swapcontext(&uctx_main, &uctx_func2) func2: started func2: swapcontext(&uctx_func2, &uctx_func1) func1: started func1: swapcontext(&uctx_func1, &uctx_func2) func2: returning func1: returning main: exiting プログラムのソース #include <ucontext.h> #include <stdio.h> #include <stdlib.h> static ucontext_t uctx_main, uctx_func1, uctx_func2; #define handle_error(msg) \ do { perror(msg); exit(EXIT_FAILURE); } while (0) static void func1(void) { printf("func1: started\n"); printf("func1: swapcontext(&uctx_func1, &uctx_func2)\n"); if (swapcontext(&uctx_func1, &uctx_func2) == -1) handle_error("swapcontext"); printf("func1: returning\n"); } static void func2(void) { printf("func2: started\n"); printf("func2: swapcontext(&uctx_func2, &uctx_func1)\n"); if (swapcontext(&uctx_func2, &uctx_func1) == -1) handle_error("swapcontext"); printf("func2: returning\n"); } int main(int argc, char *argv[]) { char func1_stack[16384]; char func2_stack[16384]; if (getcontext(&uctx_func1) == -1) handle_error("getcontext"); uctx_func1.uc_stack.ss_sp = func1_stack; uctx_func1.uc_stack.ss_size = sizeof(func1_stack); uctx_func1.uc_link = &uctx_main; makecontext(&uctx_func1, func1, 0); if (getcontext(&uctx_func2) == -1) handle_error("getcontext"); uctx_func2.uc_stack.ss_sp = func2_stack; uctx_func2.uc_stack.ss_size = sizeof(func2_stack); /* Successor context is f1(), unless argc > 1 */ uctx_func2.uc_link = (argc > 1) ? NULL : &uctx_func1; makecontext(&uctx_func2, func2, 0); printf("main: swapcontext(&uctx_main, &uctx_func2)\n"); if (swapcontext(&uctx_main, &uctx_func2) == -1) handle_error("swapcontext"); printf("main: exiting\n"); exit(EXIT_SUCCESS); }
関連項目
sigaction(2), sigaltstack(2), sigprocmask(2), getcontext(3), sigsetjmp(3)
この文書について
この man ページは Linux man-pages プロジェクトのリリース 5.10 の一部である。プロジェクトの 説明とバグ報告に関する情報は https://www.kernel.org/doc/man-pages/ に書かれている。