noble (1) patch.1.gz

Provided by: manpages-ja_0.5.0.0.20221215+dfsg-1_all bug

名前

       patch - オリジナルファイルに差分ファイルを適用する

書式

       patch [options] [originalfile [patchfile]]

       通常はもっと簡単に

       patch -pnum <patchfile

説明

       patch  は、プログラム diff で生成された差分リストを含むパッチファイル patchfile を引数に取り、 1 個または
       複数のオリジナルファイルにこれらの差分を適用し、 パッチの当たったバージョンを生成する。  通常、オリジナル
       ファイルは   パッチの当たったバージョンと置き換わる。   バックアップを作成することもできる  (  -b  または
       --backup  オプションを参照  )  。  通常、パッチを当てるファイルの名前はパッチファイルから得られる。  ただ
       し、パッチの当たるファイルが 1 個だけの場合、 orginalfile としてコマンドラインで指定することができる。

       実行すると、  patch  は差分  (diff)  リストの形式を判別する。  ただし、  -c  (--context),  -e  (--ed), -n
       (--normal), -u (--unified) オプションのどれかが指定された場合、自動判別は行なわれない。 コンテキスト diff
       (old-style,  new-style,  unified) および ノーマル diff は patch プログラム自身がパッチを適用する。 いっぽ
       う、 ed diff はパイプを通じて ed(1) エディタに流し込まれるだけである。

       patch は差分の前にあるゴミを読み飛ばし、差分を適用し、 そして後ろにあるゴミを読み飛ばそうとする。  そのた
       め、差分リストを含む記事やメッセージを patch に流し込むことができ、それで動作するはずである。 diff 全体が
       一定量インデントされている場合や、 コンテキスト diff が CRLF で終わる行を含んでいる場合、  インターネット
       RFC  934 で規定されるように "-" で始まる行の先頭に 1個または複数個の "- " が付いている場合には、 これらは
       考慮される。

       コンテキスト diff や ノーマル diff ( ノーマル diff の場合の適用範囲はやや狭い ) の場合、 patch はパッチ中
       の行番号の誤りを検出することができ、 パッチのそれぞれの塊 (hunk) について、正しい位置を見つけようとする。
       最初は、hunk に書かれた行番号に 直前の hunk  を適用した際のオフセットを加減した位置ではないかと推測する。
       もしそれが正しい位置ではない場合、  patch  は  hunk 中のコンテキストに一致する行が前後にないかを探す。 ま
       ず、 patch はコンテキストのすべての行が一致する位置を探す。  そのような位置が見つからない場合で、かつコン
       テキスト diff であり、 かつ fuzz factor (曖昧度合い) の最大値が 1 以上の場合、 コンテキストの最初と最後の
       行を無視してもう一度探す。 それも失敗し、 fuzz factor の最大値が 2 以上の場合、  コンテキストの最初と最後
       の 2 行ずつを無視してもう一度探す。 ( デフォルトの fuzz factor の最大値は 2 である。 ) patch は、パッチの
       その hunk を適用する位置を見つけられない場合、 その hunk を  reject  (却下)  ファイルに書き出す。  通常、
       reject ファイルの名前は出力ファイルの後ろに .rej を付けたものか、 .rej を付けるとファイル名が長くなりすぎ
       る場合には # を付けたものとなる ( もし # 1 文字を付けても長くなりすぎる場合には、  ファイル名の最後の文字
       を  # に置き換える ) 。 ( reject (却下) された hunk は入力されたパッチの形式にかかわらず、 通常のコンテキ
       スト diff の形式で出力される。 入力がノーマル diff の場合、コンテキストの多くは単純に空になる。 )  reject
       ファイル中の hunk に付けられた行番号はパッチファイルのものとは 異なるかもしれない。 reject ファイル中の行
       番号は、古いファイルにおける位置ではなく、 patch が新しいファイルの中で hunk が当たると思うおおよその位置
       になっている。

       それぞれの hunk の処理が終わると、 hunk が失敗したかどうかや、 もし失敗した場合、 patch が ( 新しいファイ
       ルの ) どの行に その hunk が当たると思ったかが通知される。 hunk が diff  に示された行番号と異なる位置に適
       用された場合は、  そのオフセットが通知される。 大きなオフセットが 1 個だけ通知された場合、 ある hunk が間
       違った位置に適用された かもしれない。 一致する位置を探すために fuzz factor が使われたかどうかも通知される
       が、  その場合には少々不審に思ったほうがよい。 --verbose オプションを指定すると、 hunk がぴったり一致した
       場合にも通知される。

       コマンドラインでオリジナルファイル origfile が指定されなかった場合、 patch は diff の前にあるゴミから次の
       ような規則を使って 編集すべきファイルを判別しようとする。

       まず、 patch は候補となるファイル名の順序付きリストを次のようにして作る:

         ヘッダがコンテキスト diff のものである場合、 patch はヘッダにある新旧のファイル名を使う。 -pnum または
          --strip=num オプションに見合った数のスラッシュがないファイル名は無視される。 /dev/null  というファイル
          名も無視される。

         diff  の前のゴミの中に Index: があり、新旧両方のファイル名がないか patch が POSIX に準拠している場合、
          patchIndex: の行にあるファイル名を使う。

         以下のルールを実現するために、 ヘッダに現れた順に関係なく、 候補となるファイル名は、旧、新、 index  の
          順序で扱われる。

       そして patch は候補リストから次のようにファイル名を選択する:

         複数の名前のファイルが見つかった場合、  patch  は  POSIX 準拠ならば最初の名前を、 そうでなければ最適な
          (best) 名前を選択する。

         patch が RCS, ClearCase, SCCS を無視しない場合 ( -g num または --get=num オプションを参照 ) で、かつ候
          補リストの名前のファイルはどれも存在しないが  RCS,  ClearCase,  SCCS マスタが見つかった場合、 patch は
          RCS, ClearCase, SCCS マスタの存在する 候補リスト中の最初の名前のファイルを選択する。

         候補リストの名前のファイルがどれも存在せず、 RCS, ClearCase, SCCS マスタも見つからず、  候補リストには
          複数の名前があり、  patch が POSIX 準拠ではなく、 そのパッチがファイルを作成しようとしているように見受
          けられる場合、 patch は作成するディレクトリが最も少なくて済む、最適な (best) 名前を選択する。

         以上の規則でファイル名が決まらない場合、 patch はパッチを当てるファイルの名前を尋ね、その名前を使う。

       空でないファイル名のリストから 最適な (best) ものを選ぶために、 patch  はまずパス名の要素が最も少ないもの
       を選び、 その中からベースネームの最も短いものを選び、 さらにその中から最も短いものを選び、 最後に、残った
       中で最初の名前を選ぶ。

       さらに、前のゴミに Prereq: という行が含まれる場合、 patch はその必要条件の行から最初の単語  (  通常はバー
       ジョン番号  ) を取り、 オリジナルファイルにその単語があるかどうかをチェックする。 もしない場合、 patch は
       処理する前に確認を求める。

       すべての結論は、 ニュースリーダを使っているときには、 次のような感じにすればよいということである:

          | patch -d /usr/src/local/blurfl

       こうすれば、ディレクトリ blurfl にあるファイルに、パッチを含む記事から直接パッチを当てることができる。

       パッチファイルに複数のパッチが含まれている場合、 patch は、それぞれが別々のパッチファイルから入力されたか
       のように当てようとする。  このときは、とりわけ、 パッチを当てるファイルの名前はそれぞれの差分リストから決
       まらなければならず、 それぞれの差分リストの前のゴミにはファイル名やリビジョン番号といった  必要なことがら
       が含まれていることが求められる。

オプション

       -b  または  --backup
          バックアップファイルを作成する。  つまり、ファイルにパッチを当てるとき、  元のファイルを削除せずに、リ
          ネームまたはコピーする。  存在しないファイルをバックアップするときは、  空の、読み出す内容のないバック
          アップファイルが作られ、 ファイルが存在しなかったことを表すものとなる。 バックアップファイルの名前がど
          のように決まるかについては -V または --version-control オプションを参照。

       --backup-if-mismatch
          パッチがファイルにぴったり一致しなかった場合で、    かつ他の方法でバックアップを要求されていない場合に
          ファイルをバックアップする。 patch が POSIX 準拠でない場合はデフォルトである。

       --no-backup-if-mismatch
          パッチがファイルにぴったり一致しなかった場合で、  かつ他の方法でバックアップを要求されていない場合には
          ファイルをバックアップしない。 patch が POSIX 準拠の場合はデフォルトである。

       -B pref  または  --prefix=pref
          簡易バックアップファイルの名前を生成するとき、ファイル名に pref というプレフィクスをつける。  例えば、
          -B /junk/     とすると、    src/patch/util.c    というファイルに対する簡易バックアップファイルの名前は
          /junk/src/patch/util.c となる。

       --binary
          すべてのファイルをバイナリモードで読み書きする。 ただし、標準出力と /dev/tty を除く。 POSIX 準拠のシス
          テムではこのオプションは無効である。  このオプションで違いの出る  DOS  のようなシステムでは、 パッチを
          diff -a --binary のようにして作らなければならない。

       -c  または  --context
          パッチファイルを通常のコンテキスト diff として解釈する。

       -d dir  または  --directory=dir
          何をするよりも前に、 ただちにディレクトリ dir に移動する。

       -D define  または  --ifdef=define
          変更に印を付けるのに #ifdef ... #endif のような構造を使う。 このとき差分を示すシンボルに define を用い
          る。

       --dry-run
          パッチを当てたときの結果を表示するが、 実際にはどのファイルも変更しない。

       -e  または  --ed
          パッチファイルを ed スクリプトとして解釈する。

       -E  または  --remove-empty-files
          パッチを当てたあと空になったファイルを削除する。  通常、このオプションは不要である。 なぜなら patch は
          ヘッダのタイムスタンプを見て、パッチを当てたあとに  ファイルが存在するべきかどうかを判断することができ
          るからである。 しかし、入力がコンテキスト diff でない場合や patch が POSIX 準拠の場合、 patch はこのオ
          プションが与えられない限りパッチ後に空になったファイルを削除しない。  patch   がファイルを削除するとき
          は、 空の上位ディレクトリも削除しようとする。

       -f  または  --force
          ユーザが何をしようとしているかを完全に分かっているとみなし、  何も問い合わせをしない。  どのファイルに
          パッチを当てるべきかが   ヘッダに書かれていないパッチはスキップし、   ファイルのバージョンがパッチ中の
          Prereq:  の行に書かれたバージョンと違っていてもパッチを当て、 パッチが反転しているように見えても反転し
          ていないとみなす。 このオプションはコメント出力を抑制しない。そうしたければ -s を使うこと。

       -F num  または  --fuzz=num
          fuzz factor の最大値を設定する。 このオプションはコンテキスト diff に対してのみ有効で、 patch が  hunk
          を適用する位置を探すときに無視する行数の最大値を指定する。 fuzz factor を大きくすると パッチが間違って
          当たってしまう場合が多くなることに注意すること。 デフォルトの fuzz factor は 2 で、 コンテキスト  diff
          のコンテキストの行数よりも大きく設定してはならない。 コンテキストの行数は通常 3 である。

       -g num  または  --get=num
          このオプションは ファイルが RCS または SCCS で管理されていて、 ファイルが存在しないか読み取り専用で デ
          フォルトバージョンに一致する場合、 またはファイルが ClearCase で管理されていてファイルが存在しない場合
          の  patch  の動作を変更する。  num  が正であれば、  patch はリビジョン管理システムからファイルを取得 (
          チェックアウト ) する。 0 であれば、 patch は RCS, ClearCase, SCCS を無視し、ファイルを取得しない。 負
          であれば、  patch はファイルを取得するかどうかをユーザに尋ねる。 このオプションのデフォルトの値は、 環
          境変数 PATCH_GET が設定されていればその値となる。 そうでない場合、デフォルトの値は patch が POSIX 準拠
          であれば 0 、そうでなければ負となる。

       --help
          オプションの要約を表示し、終了する。

       -i patchfile  または  --input=patchfile
          パッチを  patchfile  から読み込む。  patchfile- の場合は標準入力から読み込み、これがデフォルトであ
          る。

       -l  または  --ignore-whitespace
          タブやスペースが変更されている場合のために、パターンの一致をゆるく見る。 パッチファイル中の 1 個または
          複数の空白の並びは  オリジナルファイルの空白のどの並びにも一致し、 行末の空白の並びは無視される。 通常
          文字は完全に一致していなければならない。 コンテキストの各行はオリジナルファイルの 1 行に一致していなけ
          ればならない。

       -n  または  --normal
          パッチファイルをノーマル diff として解釈する。

       -N  または  --forward
          反転していると思われるパッチやすでに適用済みと思われるパッチを無視する。 -R も参照。

       -o outfile  または  --output=outfile
          ファイルにパッチを当てて置き換えるのではなく、 出力を outfile に送る。

       -pnum  または  --strip=num
          パッチファイルで見つかったファイル名それぞれについて、  num 個のスラッシュを含む最小のプレフィクスを取
          り除く。 隣接した 1 個または複数のスラッシュの並びは 1 個のスラッシュとして 数えられる。  このオプショ
          ンは パッチを送った人と異なるディレクトリにファイルを格納している場合のために、 パッチファイル中のファ
          イル名の扱いを変更する。 例えば、パッチファイル中のファイル名が

             /u/howard/src/blurfl/blurfl.c

          であったとすると、 -p0 とするとファイル名全体が変更されずに用いられ、 -p1 とすると

             u/howard/src/blurfl/blurfl.c

          のように先頭のスラッシュが取り除かれ、 -p4 とすると

             blurfl/blurfl.c

          のようになり、 -p を指定しなければ blurfl.c となる。 最終的に参照されるディレクトリは カレントディレク
          トリ、または -d オプションで指定されたディレクトリである。

       --posix
          以下のようにより厳格に POSIX 標準にしたがう。

            diff ヘッダから複数のファイル名が得られた場合、 リスト (old, new, index) のうち最初に存在したファイ
             ルを用いる。

            パッチを当てたあと空になったファイルを削除しない。

            RCS, ClearCase, SCCS から ファイルを取得するかどうかを尋ねない。

            コマンドラインではすべてのオプションがファイルの前になければならない。

            パッチが元のファイルにぴったり一致しない場合でも、 ファイルをバックアップしない。

       --quoting-style=word
          ファイル名を出力するのにスタイル word を使う。 word は次のどれかでなければならない:

          literal
                 ファイル名をそのまま出力する。

          shell  ファイル名にシェルのメタキャラクタが含まれる場合や 曖昧な出力となってしまう場合、  ファイル名に
                 シェル用の引用符を付ける。

          shell-always
                 通常は引用符が必要でない場合にもシェル用の引用符を付ける。

          c      C 言語文字列と同様にファイル名に引用符を付ける。

          escape c と同じように引用符を付けるが、最初と最後のダブルクウォート文字を省略する。

          --quoting-style オプションのデフォルト値は環境変数 QUOTING_STYLE で指定することができる。 環境変数が設
          定されていない場合、デフォルト値は shell である。

       -r rejectfile  または  --reject-file=rejectfile
          reject ( 却下された hunk) を デフォルトの .rej ファイルではなく rejectfile に出力する。

       -R  または  --reverse
          このパッチは新旧のファイルが反転しているとみなす。  (   まあ、ときどきある。人間のやることだから。   )
          patch  はそれぞれの hunk を当てる前に反転させる。 reject ( 却下された hunk) も反転したあとの形式で出力
          される。 -R オプションは ed 形式の diff スクリプトに対しては動作しない。  反対の操作をするには情報が少
          なすぎるからである。

          パッチの最初の  hunk  が失敗すると、 patch は hunk を反転させて当たるかどうかをみる。 もし当たる場合、
          -R オプションをセットするかどうかを尋ねる。 もし当たらない場合、通常の方法を継続する。 ( 注意:  この方
          法では、 ノーマル diff で最初のコマンドが追加の ( つまり、本来は削除であった ) 場合に 反転されたパッチ
          を検出することができない。 それは、空のコンテキストはどこにでもマッチするために、 追加は常に成功するか
          らである。  幸い、ほとんどのパッチは行を追加するか、変更するものであって、  削除するものは少ないため、
          経験的にいって、反転したノーマル diff のほとんどは削除から始まっていて、 失敗してくれる。 )

       -s  または  --silent  または  --quiet
          エラーが発生しない限り、静かに動作する。

       -t  または  --batch
          -f と同様に質問を抑制する。 ただし、異なる仮定をする。  ヘッダにファイル名を含まないパッチはスキップし
          (-f  と同じ ) 、 ファイルのバージョンがパッチ中の Prereq: の行に書かれたバージョンと違うパッチはスキッ
          プし、 パッチが反転しているように見える場合は反転しているとみなす。

       -T  または  --set-time
          パッチを当てたあとのファイルの変更日時とアクセス日時を コンテキスト diff  ヘッダのタイムスタンプに設定
          する。  コンテキスト diff ヘッダはローカル時刻を使っているとみなす。 このオプションは推奨されない。 な
          ぜならローカル時刻を使ったパッチは異なるタイムゾーンの人には 簡単に使えないから、 またローカルタイムス
          タンプは  サマータイムの調整で時刻が戻った場合に曖昧になるからである。  このオプションを使う代わりに、
          UTC でパッチを生成し、 -Z または --set-utc を使うこと。

       -u  または  --unified
          パッチファイルを unified コンテキスト diff として解釈する。

       -v  または  --version
          patch のリビジョンヘッダとパッチレベルを出力し、終了する。

       -V method  または  --version-control=method
          バックアップファイルの名前を決定するのに method を使う。 method は PATCH_VERSION_CONTROL (  または、そ
          れがない場合、 VERSION_CONTROL) 環境変数で指定でき、このオプションで上書きされる。 method はバックアッ
          プファイルが作られるかどうかには影響せず、 作られるバックアップファイルの名前に影響するだけである。

          method の値は GNU Emacs の `version-control' 変数と同様である。 patch はもっと分かりやすい同義語も理解
          する。 method の有効な値は次のとおりである ( 区別が付けば短縮形を用いてもよい ):

          existing  または  nil
             番号付きのバックアップがある場合、バックアップに番号を付ける。 そうでない場合、簡易バックアップを作
             る。 これがデフォルトである。

          numbered  または  t
             バックアップに番号を付ける。 F というファイルに対する番号付きバックアップファイルの名前は F.~N~  の
             ようになる。 N はバージョン番号である。

          simple  または  never
             簡易バックアップを作る。 -B または --prefix-Y または --basename-prefix-z または --suffix オプ
             ションで簡易バックアップファイルの名前が決まる。 これらのうちどのオプションも指定されない場合、  簡
             易バックアップサフィクスが使われる。 サフィクスは SIMPLE_BACKUP_SUFFIX 環境変数が存在する場合はその
             値、そうでない場合は .orig である。

          番号付きまたは簡易バックアップの場合、 バックアップファイルの名前が長すぎると、 代わりにバックアップサ
          フィクス ~ が使われる。 ~ を付加しても長すぎる場合、 ファイル名の最後の文字が ~ に置き換えられる。

       --verbose
          処理が行なわれる様子について追加の情報を出力する。

       -x num  または  --debug=num
          内部デバッグフラグを設定する。 patch を変更する人にしか興味のないものである。

       -Y pref  または  --basename-prefix=pref
          簡易バックアップファイルの名前を生成するとき、 ファイル名のベースネームに プレフィクス pref を付ける。
          例えば、      -Y .del/      とした場合、      src/patch/util.c      の簡易バックアップファイルの名前は
          src/patch/.del/util.c となる。

       -z suffix  または  --suffix=suffix
          suffix を簡易バックアップサフィクスとして使う。 例えば、 -z - とした場合、 src/patch/util.c の簡易バッ
          クアップファイルの名前は src/patch/util.c- となる。 バックアップサフィクスは SIMPLE_BACKUP_SUFFIX 環境
          変数で指定することができ、このオプションで上書きされる。

       -Z  または  --set-utc
          パッチを当てたあとのファイルの変更日時とアクセス日時を  コンテキスト diff ヘッダのタイムスタンプに設定
          する。 コンテキスト diff ヘッダは 世界協定時 (UTC 、GMT としても知られる ) を 使っているとみなす。  -T
          または --set-time オプションも参照すること。

          -Z  または --set-utc および -T または --set-time オプションは、通常はファイルのオリジナルの時刻が パッ
          チヘッダ中の時刻と一致しない場合や  内容がパッチとぴったり一致しない場合には、ファイルの時刻を設定しな
          い。 しかし、 -f または --force オプションが指定された場合、ファイルの時刻は強制的に設定される。

          diff の出力形式の制限のため、 これらのオプションでは 内容の変化しないファイルの時刻は更新されない。 ま
          た、これらのオプションを使った場合には、 パッチの当たったファイルに依存するファイルを削除して ( 例えば
          make clean で ) 、 あとで make を実行したときにパッチの当たったファイルの時刻で 混乱しないようにしなけ
          ればならない。

環境変数

       PATCH_GET
          patch が存在しないファイルや読み取り専用のファイルをデフォルトで RCS, ClearCase, SCCS から取得するかど
          うかを指定する。 -g または --get オプションを参照。

       POSIXLY_CORRECT
          設定されている場合、 patch はデフォルトで POSIX 標準により厳格に従う。 --posix オプションを参照。

       QUOTING_STYLE
          --quoting-style オプションのデフォルトの値。

       SIMPLE_BACKUP_SUFFIX
          .orig の代わりに簡易バックアップファイルの名前に使う拡張子。

       TMPDIR, TMP, TEMP
          一時ファイルを入れるディレクトリ patch はこのリストの中で最初に設定されている環境変数を使う。 どれも設
          定されていない場合、デフォルトはシステム依存である。 Unix ホストでは通常 /tmp である。

       VERSION_CONTROL または PATCH_VERSION_CONTROL
          バージョンコントロールスタイルを選択する。 -V または --version-control オプションを参照。

ファイル

       $TMPDIR/p∗
          一時ファイル。

       /dev/tty
          制御端末。ユーザに尋ねた質問の答えを得るために使われる。

関連項目

       diff(1), ed(1)

       Marshall T. Rose and Einar A. Stefferud, Proposed Standard for Message Encapsulation,  Internet  RFC  934
       <URL:ftp://ftp.isi.edu/in-notes/rfc934.txt> (1985-01).

パッチを送る人への注意

       パッチを送ろうとする場合に心に留めておかなければならない点がいくつかある。

       パッチを機械的に作ること。 よい方法は diff -Naur old new のようなコマンドを使うことである。 newold は
       それぞれ新旧のディレクトリである。 oldnew には 1 個もスラッシュがあってはいけない。  diff  コマンドの
       ヘッダに含まれる日時は伝統的な Unix 形式を使って 協定世界時で書かれていなければならない。 そうすれば パッ
       チを受け取った人が -Z または --set-utc オプションを使うことができる。 次のものは Bourne  シェル形式を使っ
       たコマンド例である:

          LC_ALL=C TZ=UTC0 diff -Naur gcc-2.7 gcc-2.8

       受け取る人にはパッチの当て方を伝える。  つまり、どのディレクトリに cd すればよいかとどの patch オプション
       を使えばよいかを伝える。 オプション文字列は -Np1 が推奨される。  受け取った人になったつもりで手順を試し、
       オリジナルファイルのコピーを取って、作ったパッチを当ててみる。

       送り出すパッチファイルの最初の diff として、 パッチレベルをインクリメントしていく patchlevel.h ファイルを
       入れておくと、 多くの人の面倒を軽減できる。 パッチに Prereq: 行を加えておけば、  順番を間違えて警告を食ら
       うのを防ぐことができる。

       /dev/null や 日時が Epoch (1970-01-01 00:00:00 UTC) の空のファイルと 作成したいファイルを比較した diff を
       送ることで、 ファイルを作成することができる。 この方法はターゲットのディレクトリに作成したいファイルが ま
       だ存在しない場合に限って動作する。 反対に、削除したいファイルと日時が Epoch の空のファイルを比較した コン
       テキスト diff を送ることで、ファイルを削除することができる。 ファイルは patch が POSIX 準拠でなく、 -E ま
       たは  --remove-empty-files  オプションが指定されない場合に削除される。 ファイルを作成したり削除したりする
       パッチを生成する簡単な方法は、 GNU diff-N または --new-file オプションを使うことである。

       受け取った人が -pN オプションを使うことが想定される場合、 次のようなパッチを送らないこと:

          diff -Naur v2.0.29/prog/README prog/README
          --- v2.0.29/prog/README   Mon Mar 10 15:13:12 1997
          +++ prog/README   Mon Mar 17 14:58:22 1997

       なぜなら二つのファイル名は異なる数のスラッシュを含んでおり、 patch のバージョンによって  ファイル名を異な
       るように解釈するからである。 混乱を避けるために、代わりに次のようなパッチを送ること:

          diff -Naur v2.0.29/prog/README v2.0.30/prog/README
          --- v2.0.29/prog/README   Mon Mar 10 15:13:12 1997
          +++ v2.0.30/prog/README   Mon Mar 17 14:58:22 1997

       バックアップファイルと名前が同じファイル、例えば  README.orig と比較したパッチを送らないこと。 この方法で
       は patch が混乱して、 正しいファイルではなく バックアップファイルにパッチを当ててしまうかもしれないからで
       ある。   そうではなく、   ファイル名が同じで別のディレクトリにあるファイルどうし、例えば   old/READMEnew/README を比較したパッチを送ること。

       反転したパッチを送らないように注意すること。 もうパッチを当てたのかと思ってしまうからである。

       自動生成されるファイル ( 例えば、 makefile に configure: configure.in という行がある場合の configure とい
       うファイル  ) を変更するパッチを作らないようにすること。 受け取った人は自動生成されるファイルを再生成する
       ことができるからである。 自動生成されるファイルの diff を送らなければならない場合、 UTC を用いて diff  を
       作り、 受け取った人に -Z または --set-utc オプションを使ってパッチを当ててもらい、 パッチの当たったファイ
       ルに依存する、 パッチの当たっていないファイルを削除してもらう ( 例えば make clean で ) 。

       582 もの差分リストを 1 個のファイルに入れなくても済むのであれば、  ぐちゃぐちゃになってしまった場合に備え
       て 関連するパッチを別々のファイルにまとめておくのが賢明である。

エラーと終了ステータス

       エラーは一般に、 patch がパッチファイルを解析できなかったことを示している。

       --verbose  オプションを指定した場合、 Hmm... はパッチファイルの中に処理されなかったテキストがあり、 patch
       がテキストの中にパッチがあるかどうかを 必死に探そうとしていることを表している。  パッチが見つかると、その
       パッチがどんな種類のものかを示す。

       patch の終了ステータスは、 すべての hunk の適用に成功した場合に 0 、 一部の hunk が適用できなかった場合に
       1 、 もっと深刻な問題に見舞われた場合に 2 となる。 バッチ処理で複数のパッチを適用する場合、  終了ステータ
       スをチェックして、  部分的にしかパッチの当たっていないファイルに 以降のパッチを当てないようにすることが必
       要である。

警告

       コンテキスト diff は空のファイルや空のディレクトリ、 シンボリックリンクなどのスペシャルファイルの作成や削
       除を 確実に表すことはできない。 所有者やアクセス権限、あるファイルが 別のファイルのハードリンクであること
       といった ファイルメタデータの変更を表すこともできない。 もしそのような変更も必要であれば、  別に手順書  (
       例えば、シェルスクリプト ) を用意して、 パッチに添付しなければならない。

       patch は、 ed スクリプト中の行番号がはみ出しているかどうかは分からないし、 ノーマル diff の行番号の間違い
       は 変更や削除を見つけた場合に限って検出できる。 fuzz factor が 3 のコンテキスト diff も同じ問題に遭遇する
       かもしれない。  適当な対話式のインタフェースが導入されるまでは、 このような場合はコンテキスト diff を作っ
       て 変更が妥当かどうかを確認しなければならない。 もちろん、エラーなくコンパイルできたことは パッチがうまく
       当たったよい証拠になるが、必ずしもそうとはいえない。

       patch は多数の推測が必要な場合であっても、通常は正しい結果を出す。 しかし、結果が正しいことが保証されるの
       は、 そのパッチが生成されたファイルと全く同一のバージョンの ファイルに適用された場合だけである。

互換性の問題

       POSIX 標準は patch の古典的な振る舞いと異なる振る舞いを規定している。 patch のバージョン 2.1 およびそれ以
       前 ( これらは POSIX に 準拠していない ) と 相互に運用しなければならない場合、これらの違いを知っておく必要
       がある。

         古典的な patch では、 -p オプションの引数は省略可能であり、単独の -p-p0  と同等であった。  今日の
          patch  では  -p オプションに引数が必須で、 -p 0-p0 と同等である。 互換性を最大限に保つために、 -p0-p1 といったオプションを使う。

          また、古典的な patch はパスプレフィクスを取り除く際、スラッシュの数を単純に数えていた。  今日の  patch
          はパス名の要素を数える。  つまり、 1 個または複数の隣接するスラッシュの列は 1 個のスラッシュとして数え
          られる。 互換性を最大限に保つために、 ファイル名に // を含むパッチは送らないようにすること。

         古典的な patch では、デフォルトでバックアップが有効であった。 今日の patch では -b または --backup  オ
          プションで有効になる。

          反対に、 POSIX patch では、不整合があってもバックアップは一切作られない。 GNU patch では、この振る舞い
          は --no-backup-if-mismatch オプションか、 --posix オプションまたは POSIXLY_CORRECT 環境変数で POSIX 準
          拠にするかで有効になる。

          古典的な patch-b suffix オプションは GNU patch-b -z suffix オプションと同等である。

         古典的な patch は、 パッチヘッダからパッチを当てるファイルの名前を決定するのに 複雑な ( しかも完全には
          ドキュメントになっていない ) 手法を用いていた。 この手法は POSIX  に準拠しておらず、いくつか誤りもあっ
          た。  今日の patch は異なる、同じくらい複雑な (しかしドキュメントはましな) 手法を用いており、 オプショ
          ンで POSIX に準拠することができる。 誤りが減っているとよいのだが。 2 つの手法は、 コンテキスト diff の
          ヘッダのファイル名と  Index: の行がプレフィクスを除いて全く同じである場合には互換性がある。 作ったパッ
          チは、 それぞれのヘッダのファイル名がすべて同じ数のスラッシュを含んでいれば、 通常は互換性がある。

         古典的な patch がユーザに質問をするときは、 質問を標準エラーに出力し、  以下のリストのうちターミナルで
          ある最初のファイルから回答を求める: 標準エラー、標準出力、 /dev/tty、 標準入力。 今日の patch は質問は
          標準出力に出力し、 /dev/tty から回答を得る。 回答のデフォルトのうちいくつかは変更されており、 デフォル
          トの回答を使っても patch が無限ループに陥らないようになっている。

         古典的な  patch は、失敗した hunk の数をステータス値として終了し、 本当の問題に出くわした場合は 1 をス
          テータス値としていた。 今日の patch は hunk が失敗すると 1 で終了し、問題がある場合は 2 で終了する。

         GNU patch、 古典的 patch、 POSIX 準拠の patch のどれを使うか分からない人に宛てて手順を送る場合、  次の
          オプション以外は使わないこと。 以下のリストでは空白も意味を持ち、引数は必須である。

             -c
             -d dir
             -D define
             -e
             -l
             -n
             -N
             -o outfile
             -pnum
             -R
             -r rejectfile

バグ

       バグは電子メールで <bug-gnu-utils@gnu.org> へ報告してください。

       patch は部分一致や大きく逸脱したオフセットやひっくり返ったコードに対して もっと賢くすることもできるだろう
       が、その道は長いだろう。

       コードが重複している場合 ( 例えば #ifdef OLDCODE ... #else ...  #endif  のように区切られている場合  )  、
       patch  は両方のバージョンにパッチを当てることはできない。  もしパッチが当たったとしたら、  間違ったほうに
       パッチが当たってしまっていることもよくあり、 それでも成功したから続きをやれというだろう。

       すでに当たっているパッチを当てようとすると、 patch はパッチが反転していると思い、パッチを戻すかを尋ねる。
       これは機能のひとつとみなすことができよう。

著作権

       Copyright 1984, 1985, 1986, 1988 Larry Wall.
       Copyright 1989, 1990, 1991, 1992, 1993, 1994, 1995, 1996, 1997, 1998 Free Software Foundation, Inc.

       Permission is granted to make and distribute verbatim copies of this manual provided the copyright notice
       and this permission notice are preserved on all copies.

       Permission is granted to copy and distribute modified versions of this manual under  the  conditions  for
       verbatim  copying,  provided  that  the entire resulting derived work is distributed under the terms of a
       permission notice identical to this one.

       Permission is granted to copy and distribute translations of this manual into another language, under the
       above  conditions  for  modified  versions,  except  that  this  permission  notice  may  be  included in
       translations approved by the copyright holders instead of in the original English.

著者

       オリジナルの patch は Larry Wall が書いた。 Paul Eggert は恣意的な制限を取り除き、 バイナリファイルへの対
       応や、ファイルの時刻設定、ファイルの削除を追加した。  また、より  POSIX  に準拠するようにした。  ほかには
       Wayne Davison が unidiff への対応を追加し、 David MacKenzie  がコンフィグレーションとバックアップへの対応
       を追加した。