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名前
msgrcv, msgsnd - System V メッセージキュー操作
書式
#include <sys/types.h>
#include <sys/ipc.h>
#include <sys/msg.h>
int msgsnd(int msqid, const void *msgp, size_t msgsz, int msgflg);
ssize_t msgrcv(int msqid, void *msgp, size_t msgsz, long msgtyp,
int msgflg);
説明
システムコール msgsnd() と msgrcv() は、 System V メッセージキューへのメッセージの送信と、メッセージの受
信に使用される。呼び出し元プロセスは、 メッセージを送信するためにはメッセージキューに対する書き込み許可
を、 メッセージを受信するためには読み出し許可を持っていなければならない。
呼び出し元プロセスは以下に示す構造体を用意し、この構造体への ポインターを msgp 引数として渡す。
struct msgbuf {
long mtype; /* message type, must be > 0 */
char mtext[1]; /* message data */
};
mtext フィールドは配列 (または他の構造体) で、その大きさは 非負の整数である msgsz で指定される。 長さ 0
のメッセージ (つまり mtext フィールドがないメッセージ) も認められている。 mtype フィールドは厳密に正の整
数でなければならない。 この値は、メッセージを受信するプロセスでメッセージを選択するために 使用される (下
記の msgrcv() の説明を参照のこと)。
msgsnd()
msgsnd() システムコールは msgp 引数で指定されたメッセージのコピーを msqid で指定された識別子を持つメッ
セージキューへ追加する。
キューに十分な空き容量がある場合、 msgsnd() は直ちに成功する。 キューの容量は、メッセージキューのデータ
構造体の msg_qbytes フィールドで制御される。 キュー作成時にこのフィールドは MSGMNB に初期化されるが、この
制限は msgctl(2) を使って変更できる。 次のいずれかの条件が成立する場合に、メッセージキューは一杯と判断さ
れる。
• 新しいメッセージをそのキューに追加すると、 そのキューの全バイト数がキューの最大サイズ (msg_qbytes
フィールド) を超過してしまう場合。
• そのキューにもう一つメッセージを追加すると、 そのキューが全メッセージ数がキューの最大サイズ (msg_qbytes
フィールド) を超過してしまう場合。 このチェックは、無限個の長さ 0 のメッセージをそのキューに追加するの
を防ぐために必要である。 長さ 0 のメッセージはデータを含まないが、 (ロックされた) カーネルメモリーを消
費するからである。
そのキューに十分な領域がない場合、 デフォルトの動作では、 必要な領域ができるまで msgsnd() は停止 (block)
する。 msgflg に IPC_NOWAIT が指定された場合、 msgsnd() はエラー EAGAIN で失敗する。
停止している msgsnd() は以下の場合にも失敗する。
• キューが削除された。 この場合、 errno は EIDRM に設定される。
• シグナルが捕捉された。 この場合、 errno は EINTR に設定される。 signal(7) 参照。 (msgsnd() は、たとえ
シグナルハンドラーの設定時に SA_RESTART を指定していたとしても、シグナルハンドラーによって割り込まれた
後で 自動的に再スタートすることは決してない。)
正常に終了した場合、メッセージキューのデータ構造体は以下のように 更新される:
• msg_lspid には呼び出し元プロセスのプロセス ID が設定される。
• msg_qnum は 1 増加する。
• msg_stime には現在時刻が設定される。
msgrcv()
msgrcv() システムコールは msqid で指定されたキューからメッセージを削除し、 msgp で指定されたバッファーに
そのメッセージを格納する。
msgsz 引数には msgp 引数で指定された構造体の mtext メンバーの最大のバイト数を指定する。 メッセージのテキ
ストの長さが msgsz より大きい場合の動作は、 msgflg に MSG_NOERROR が指定されているかどうかで決まる。
MSG_NOERROR が指定されていれば、メッセージのテキストは切り詰められる (切り捨てられた部分は失われる)。
MSG_NOERROR が指定されていなければ、メッセージはキューから削除されず、 システムコールは -1 を返して失敗
し、 errno に E2BIG が設定される。
MSG_COPY が msgflg に指定されていない場合 (下記参照)、 msgtyp 引数には要求するメッセージの型を指定する。
型は以下のように指定する:
• msgtyp が 0 ならば、キューの最初にあるメッセージが読み込まれる。
• msgtyp が 0 より大きい場合、 msgflg に MSG_EXCEPT が指定されていなければ、 msgtyp 型のキューの最初の
メッセージが読み込まれる。 MSG_EXCEPT が指定された場合は、 msgtyp 型以外のキューの最初のメッセージが読
み込まれる。
• msgtyp が 0 より小さければ、 msgtyp の絶対値以下で最も小さい型を持つキューの最初のメッセージが読み込ま
れる。
msgflg 引数には、以下のフラグを任意の数だけ (0個も可)、これらの OR で指定する:
IPC_NOWAIT
キューに要求された型のメッセージがない場合には直ちに返る。 システムコールは失敗し、 errno には
ENOMSG が設定される。
MSG_COPY (Linux 3.8 以降)
キューの中で msgtyp で指定した位置にあるメッセージのコピーを、キューを変更せずに (非破壊的に) 取り
出す (メッセージの位置は 0 から順番に番号が割り当てられる)。
このフラグは IPC_NOWAIT と組み合わせて指定しなければならない。 その結果、指定した位置にメッセージ
がなかった場合、呼び出しはエラー ENOMSG ですぐに失敗する。 MSG_COPY と MSG_EXCEPT は msgtyp の意味
を相容れない方法で使用するため、この二つのフラグの両方を msgtyp に指定することはできない。
MSG_COPY フラグは、 カーネルのチェックポイント復元 (checkpoint-restore) 機能の実装のために追加され
た。 このフラグはカーネルが CONFIG_CHECKPOINT_RESTORE オプションを有効にして作成された場合にのみ利
用できる。
MSG_EXCEPT
0 より大きな msgtyp と一緒に使用して、 msgtyp 以外のキューの最初のメッセージを読み込む。
MSG_NOERROR
msgsz バイトよりも長かった場合はメッセージのテキストを切り詰める。
要求された型のメッセージが存在せず、 msgflg に IPC_NOWAIT が指定されていなかった場合、呼び出し元プロセス
は 以下のいずれかの状況になるまで停止 (block) される:
• 要求している型のメッセージがキューへ入れられた。
• メッセージキューがシステムから削除された。 この場合、システムコールは失敗し、 errno に EIDRM が設定され
る。
• 呼び出し元プロセスがシグナルを捕獲した。 この場合、システムコールは失敗し、 errno に EINTR が設定され
る。 (msgrcv() は、たとえシグナルハンドラーの設定時に SA_RESTART を指定していたとしても、シグナルハン
ドラーによって割り込まれた後で 自動的に再スタートすることは決してない。)
正常に終了した場合、メッセージキューのデータ構造体は以下のように 更新される:
msg_lrpid には呼び出し元プロセスのプロセス ID が設定される。
msg_qnum は 1 減算される。
msg_rtime には現在の時刻が設定される。
返り値
失敗した場合は、どちらの関数も -1 を返し、エラーを errno に表示する。成功した場合、 msgsnd() は 0 を返
し、 msgrcv() は mtext 配列に実際にコピーしたバイト数を返す。
エラー
msgsnd() が失敗した場合、 errno に以下の値のいずれかが設定される:
EACCES The calling process does not have write permission on the message queue, and does not have the
CAP_IPC_OWNER capability in the user namespace that governs its IPC namespace.
EAGAIN msg_qbytes がキューの制限を超えていたため、メッセージを送ることができず、かつ msgflg に IPC_NOWAIT
が指定されていた。
EFAULT msgp が指しているアドレスがアクセス可能でない。
EIDRM メッセージキューが削除された。
EINTR メッセージキューが要求した条件を満たすまで停止している時に、 プロセスがシグナルを捕獲した。
EINVAL msqid が不適切な値であるか、 mtype が正の値でないか、 msgsz が不適切な値 (0 以下か、システムで決ま
る値 MSGMAX よりも大きい値) である。
ENOMEM msgp が指すメッセージのコピーを作成するのに十分なメモリーがシステムに存在しない。
msgrcv() が失敗した場合には errno に以下の値のいずれかが設定される:
E2BIG メッセージのテキストの長さが msgsz よりも大きく、 msgflg に MSG_NOERROR が設定されていなかった。
EACCES The calling process does not have read permission on the message queue, and does not have the
CAP_IPC_OWNER capability in the user namespace that governs its IPC namespace.
EFAULT msgp が指しているアドレスがアクセス可能でない。
EIDRM メッセージを受信するためにプロセスが停止している間に、 メッセージキューが削除された。
EINTR メッセージを受けるためにプロセスが停止している間に、 プロセスがシグナルを捕獲した。 signal(7) 参
照。
EINVAL msgid が不正か、 msgsz が 0 より小さい。
EINVAL (Linux 3.14 以降)
msgflg に MSG_COPY が指定されたが、 IPC_NOWAIT が指定されていない。
EINVAL (Linux 3.14 以降)
msgflg に MSG_COPY と MSG_EXCEPT の両方が指定された。
ENOMSG msgflg に IPC_NOWAIT が設定されており、 メッセージキューに要求された型のメッセージが存在しなかっ
た。
ENOMSG IPC_NOWAIT と MSG_COPY が msgflg に指定されたが、 キューには msgtyp 未満のメッセージしか入っていな
かった。
ENOSYS (Linux 3.8 以降)
msgflg に MSG_COPY と IPC_NOWAIT の両方が指定されたが、カーネルが CONFIG_CHECKPOINT_RESTORE なしで
作成されている。
準拠
POSIX.1-2001, POSIX.1-2008, SVr4.
フラグ MSG_EXCEPT と MSG_COPY は Linux 固有である。 これらの定義を得るには、機能検査マクロ _GNU_SOURCE を
定義する。
注意
Linux や POSIX の全てのバージョンでは、 <sys/types.h> と <sys/ipc.h> のインクルードは必要ない。しかしなが
ら、いくつかの古い実装ではこれらのヘッダーファイルのインクルードが必要であり、 SVID でもこれらのインク
ルードをするように記載されている。このような古いシステムへの移植性を意図したアプリケーションではこれらの
ファイルをインクルードする必要があるかもしれない。
msgp 引数は、 glibc 2.0 と 2.1 では struct msgbuf * と宣言されている。glibc 2.2 以降では、 SUSv2 と SUSv3
の要求通り、void * と宣言されている。
以下は msgsnd システムコールに影響するシステム制限である:
MSGMAX Maximum size of a message text, in bytes (default value: 8192 bytes). On Linux, this limit can be
read and modified via /proc/sys/kernel/msgmax.
MSGMNB Maximum number of bytes that can be held in a message queue (default value: 16384 bytes). On
Linux, this limit can be read and modified via /proc/sys/kernel/msgmnb. A privileged process
(Linux: a process with the CAP_SYS_RESOURCE capability) can increase the size of a message queue
beyond MSGMNB using the msgctl(2) IPC_SET operation.
現在の実装では、システム全体のメッセージヘッダーの上限数 (MSGTQL) と、システム全体のメッセージプールの最
大バイト数 (MSGPOOL) に関して実装依存の制限はない。
バグ
Linux 3.13 以前では、 msgrcv() の呼び出しで MSG_COPY フラグは指定されたが IPC_NOWAIT は指定されず、かつ
メッセージキューに msgtyp 未満のメッセージしかない場合に、 msgrcv() の呼び出しはキューに次のメッセージが
書き込まれるまで停止していた。 新しいメッセージが書き込まれた時点で、 そのメッセージが指定された位置
msgtyp かどうかに関わらず、 msgrcv() の呼び出しは新たに書き込まれたメッセージのコピーを返していた。 この
バグは Linux 3.14で修正された。
msg_copy に MSG_COPY と MSG_EXCEPT の両方を指定するのは、論理的なエラーである (なぜならこれらのフラグは
msgtyp を別の意味で解釈するからである)。 Linux 3.13 以前では、msgrcv() がこのエラーを検出しなかった。 こ
のバグは Linux 3.14 で修正された。
例
The program below demonstrates the use of msgsnd() and msgrcv().
The example program is first run with the -s option to send a message and then run again with the -r
option to receive a message.
The following shell session shows a sample run of the program:
$ ./a.out -s
sent: a message at Wed Mar 4 16:25:45 2015
$ ./a.out -r
message received: a message at Wed Mar 4 16:25:45 2015
プログラムのソース
#include <stdio.h>
#include <stdlib.h>
#include <string.h>
#include <time.h>
#include <unistd.h>
#include <errno.h>
#include <sys/types.h>
#include <sys/ipc.h>
#include <sys/msg.h>
struct msgbuf {
long mtype;
char mtext[80];
};
static void
usage(char *prog_name, char *msg)
{
if (msg != NULL)
fputs(msg, stderr);
fprintf(stderr, "Usage: %s [options]\n", prog_name);
fprintf(stderr, "Options are:\n");
fprintf(stderr, "-s send message using msgsnd()\n");
fprintf(stderr, "-r read message using msgrcv()\n");
fprintf(stderr, "-t message type (default is 1)\n");
fprintf(stderr, "-k message queue key (default is 1234)\n");
exit(EXIT_FAILURE);
}
static void
send_msg(int qid, int msgtype)
{
struct msgbuf msg;
time_t t;
msg.mtype = msgtype;
time(&t);
snprintf(msg.mtext, sizeof(msg.mtext), "a message at %s",
ctime(&t));
if (msgsnd(qid, &msg, sizeof(msg.mtext),
IPC_NOWAIT) == -1) {
perror("msgsnd error");
exit(EXIT_FAILURE);
}
printf("sent: %s\n", msg.mtext);
}
static void
get_msg(int qid, int msgtype)
{
struct msgbuf msg;
if (msgrcv(qid, &msg, sizeof(msg.mtext), msgtype,
MSG_NOERROR | IPC_NOWAIT) == -1) {
if (errno != ENOMSG) {
perror("msgrcv");
exit(EXIT_FAILURE);
}
printf("No message available for msgrcv()\n");
} else
printf("message received: %s\n", msg.mtext);
}
int
main(int argc, char *argv[])
{
int qid, opt;
int mode = 0; /* 1 = send, 2 = receive */
int msgtype = 1;
int msgkey = 1234;
while ((opt = getopt(argc, argv, "srt:k:")) != -1) {
switch (opt) {
case 's':
mode = 1;
break;
case 'r':
mode = 2;
break;
case 't':
msgtype = atoi(optarg);
if (msgtype <= 0)
usage(argv[0], "-t option must be greater than 0\n");
break;
case 'k':
msgkey = atoi(optarg);
break;
default:
usage(argv[0], "Unrecognized option\n");
}
}
if (mode == 0)
usage(argv[0], "must use either -s or -r option\n");
qid = msgget(msgkey, IPC_CREAT | 0666);
if (qid == -1) {
perror("msgget");
exit(EXIT_FAILURE);
}
if (mode == 2)
get_msg(qid, msgtype);
else
send_msg(qid, msgtype);
exit(EXIT_SUCCESS);
}
関連項目
msgctl(2), msgget(2), capabilities(7), mq_overview(7), sysvipc(7)
この文書について
この man ページは Linux man-pages プロジェクトのリリース 5.10 の一部である。プロジェクトの説明とバグ報告
に関する情報は https://www.kernel.org/doc/man-pages/ に書かれている。
Linux 2020-11-01 MSGOP(2)