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NAME

       pthread_cond_init,  pthread_cond_destroy, pthread_cond_signal, pthread_cond_broadcast, pthread_cond_wait,
       pthread_cond_timedwait - 条件変数の操作

書式

       #include <pthread.h>

       pthread_cond_t cond = PTHREAD_COND_INITIALIZER;

       int pthread_cond_init(pthread_cond_t *cond, pthread_condattr_t *cond_attr);

       int pthread_cond_signal(pthread_cond_t *cond);

       int pthread_cond_broadcast(pthread_cond_t *cond);

       int pthread_cond_wait(pthread_cond_t *cond, pthread_mutex_t *mutex);

       int pthread_cond_timedwait(pthread_cond_t *cond, pthread_mutex_t *mutex, const struct timespec *abstime);

       int pthread_cond_destroy(pthread_cond_t *cond);

説明

       条件(「条件変数」の省略) は、共有データに対するある述語が満たされる  まで、スレッドが実行を停止しプロセッ
       サを手放すことを可能にする同期  装置である。条件に対する基本的な操作は、(述語が真になった場合に) 条件を送
       信することと、他のスレッドが条件を送信するまでスレッドの実行 を停止して条件を待つことである。

       条件変数はいつでも mutex と結びつけられていなければならない。これは、  あるスレッドが条件変数を待とうとし
       ている時に、他のスレッドが、  先のスレッドが実際に条件変数に対して待機するその直前に条件を送信する、 とい
       う競合条件を避けるためである。

       pthread_cond_init は、条件変数 condcond_attr で指定された条件属性、または cond_attrNULL  であれ
       ば、デフォルトの属性で初期化する。 LinuxThreads の実装は、いかなる条件変数の属性にも対応していない。 かく
       して、 cond_attr パラメタは、実のところ無視される。

       型 pthread_cond_t の変数は、定数 PTHREAD_COND_INITIALIZER を使って静的に初期化することもできる。

       pthread_cond_signal は、条件変数 cond に備えて待機しているスレッドの一つの実行を再開させる。 cond  を待っ
       ているスレッドがなければ、何も起こらない。 複数のスレッドが cond を待っていれば、ただ一つのものだけが再開
       されるが、どれであるかは わからない。

       pthread_cond_broadcastcond に備えて待機している全てのスレッドの実行を再開させる。 cond を待っているス
       レッドがなければ、何も起こらない。

       pthread_cond_wait  は ( pthread_mutex_unlock による) mutex のアンロックと条件変数 cond の送信に対する待機
       を一息で行う。条件変数が送信されるまで  スレッドの実行は停止され、CPU  時間を消費することはない。   mutex
       は、 pthread_cond_wait の開始時点で、これを呼び出すスレッドによってロックされていなければ ならない。 呼び
       出し側のスレッドに戻る前に pthread_cond_waitmutex を ( pthread_mutex_lock によって)再び獲得する。

       mutex のアンロックと条件変数に対する待機は一息に行われる。従って、 全てのスレッドが条件を送信する前に常に
       mutex を獲得するのならば、 スレッドが mutex をアンロックする時点と、それが条件変数を待つ時点 との中間の時
       点で、条件の送信が行なわれる(従って無視される)ことが 不可能となることが保証される。

       pthread_cond_timedwaitpthread_cond_wait と同じく、一息で mutex のアンロックと cond への待機を行う。し
       かしまた、待ち時間の長さの設定も行う。  condabstime  で指定された時間内に送信されなかったのならば、
       mutex mutex が再獲得され pthread_cond_timedwait は、エラー ETIMEDOUT を返す。 abstime パラメタは  time(2)
       と  gettimeofday(2)  の起点を同じくする絶対時間を指定する。すなわち 0 の abstime は 00:00:00 GMT, January
       1, 1970 に相当する。

       pthread_cond_destroy                   は条件変数を破壊し、それが保持している可能性のある資源を開放する。
       pthread_cond_destroy の開始時点で、いかなるスレッドもその条件変数を待っていてはいけない。 LinuxThreads の
       実装では、いかなる資源も条件変数に付随していない。 従って、 pthread_cond_destroy は、条件が待機スレッドを
       持っていないことを確かめる以外に 何もしない。

取り消し

       pthread_cond_wait  および pthread_cond_timedwait は、取り消しポイントである。このいずれかの関数で停止して
       いる スレッドが取り消されると、スレッドは直ちに実行を再開し、 pthread_cond_waitpthread_cond_timedwaitmutex 引数を再ロックし、最後に取り消しを実行する。 結果として、クリーンアップハンドラが呼び出される際
       に mutex がロックされていることを保証される。

非同期シグナルに対する安全性

       条件関数は非同期シグナルに対して安全ではない。よって、   シグナルハンドラから呼び出すべきではない。特に、
       pthread_cond_signal  または pthread_cond_broadcast のシグナルハンドラからの呼び出しは、呼び出しスレッドを
       デッドロックする可能性がある。

返り値

       全ての条件変数関数は、成功すると 0 を返し、エラーならば非ゼロの エラーコードを返す。

エラー

       pthread_cond_init, pthread_cond_signal, pthread_cond_broadcast, および pthread_cond_wait は、決してエラー
       コードを返さない。

       pthread_cond_timedwait は、エラーに際して次のエラーコードを返す:

              ETIMEDOUT
                     条件変数が abstime で指定された時限までに送信されなかった。

              EINTR  pthread_cond_timedwait がシグナルによって割り込まれた。

       pthread_cond_destroy 関数は、エラーに際して次のエラーコードを返す:

              EBUSY  いずれかのスレッドが現在 cond に対して待機している。

著者

       Xavier Leroy <Xavier.Leroy@inria.fr>

関連項目

       pthread_condattr_init(3), pthread_mutex_lock(3), pthread_mutex_unlock(3), gettimeofday(2), nanosleep(2).

       二つの共有変数  xy があって、mutex mut により保護されているとしよう。更に、条件変数 cond があって、 xy より大きくなれば、送信されるとしよう。

              int x,y;
              pthread_mutex_t mut = PTHREAD_MUTEX_INITIALIZER;
              pthread_cond_t cond = PTHREAD_COND_INITIALIZER;

       xy より大きくなるまで待つには、 次のようにすれば良い:

              pthread_mutex_lock(&mut);
              while (x <= y) {
                      pthread_cond_wait(&cond, &mut);
              }
              /* x  y の操作 */
              pthread_mutex_unlock(&mut);

       xy よりも大きくするような xy の操作は必要に応じて、条件を送信せねばならない:

              pthread_mutex_lock(&mut);
              /* x  y を変更する */
              if (x > y) pthread_cond_broadcast(&cond);
              pthread_mutex_unlock(&mut);

       起動すべきスレッドが最大限一つであることが確実ならば (例えば、 xy  を通じて交流するスレッドが二つしか
       ないのならば)、  pthread_cond_signalpthread_cond_broadcast の、少しばかり効率的な代替物として使用でき
       る。 疑問のある場合には pthread_cond_broadcast を使用せよ。

       xy より大きくなるのを五秒の時限を設けて待つには次のようにする:

              struct timeval now;
              struct timespec timeout;
              int retcode;

              pthread_mutex_lock(&mut);
              gettimeofday(&now);
              timeout.tv_sec = now.tv_sec + 5;
              timeout.tv_nsec = now.tv_usec * 1000;
              retcode = 0;
              while (x <= y && retcode != ETIMEDOUT) {
                      retcode = pthread_cond_timedwait(&cond, &mut, &timeout);
              }
              if (retcode == ETIMEDOUT) {
                      /* タイムアウト */
              } else {
                      /* x  y の操作 */
              }
              pthread_mutex_unlock(&mut);

                                                  LinuxThreads                                   PTHREAD_COND(3)