Provided by: manpages-ja-dev_0.5.0.0.20221215+dfsg-1_all bug

名前

       wordexp, wordfree - posix シェルのように単語の展開を行う

書式

       #include <wordexp.h>

       int wordexp(const char *s, wordexp_t *p, int flags);

       void wordfree(wordexp_t *p);

   glibc 向けの機能検査マクロの要件 (feature_test_macros(7)  参照):

       wordexp(), wordfree(): _XOPEN_SOURCE

説明

       関数  wordexp()   はシェルのように文字列 s を展開し、 p で指し示す構造体に結果を返す。 データ型 wordexp_t
       は少なくともフィールド we_wordc, we_wordv, we_offs を持つ構造体である。 フィールド we_wordcsize_t  で
       あり、 s を展開した結果に単語がいくつあるかを表す。 フィールド we_wordvchar ** であり、見つかった単語
       の配列を指し示す。 size_t 型のフィールド we_offs は、 we_wordv 配列にある初期要素のうちいくつが NULL で埋
       められるべきかを表すのに使われたりする (flags により決定される。下記を参照。)。

       関数  wordfree()  は割り当てたメモリーを再度解放する。 より正確にいうと、この関数はその引数を解放するので
       はなく、 配列 we_wordv とそれが指し示す文字列を解放する。

   文字列引数
       この展開はシェルによるコマンドのパラメーターの展開 (sh(1)  を参照) と同じであるので、文字列 s  はシェルコ
       マンドパラメーターで不正とされる文字を含んではならない。  特にエスケープされていない改行、|,  &, ;, <, >,
       (, ), {, } 文字を コマンド置換やパラメーター置換の場面以外に含めてはならない。

       引数 s にクォートしていないコメント文字 # で始まる単語が含まれている場合には、 その単語とそれ以降の単語が
       無視されるか、 それとも # がコメント文字として扱わないかは、規定されていない。

   展開
       実行される展開は、以下の段階で構成される:  チルダ展開  (~user を user のホームディレクトリに置き換える)、
       変数展開 ($FOO を環境変数 FOO の値に置き換える)、 コマンド展開 ($(command) または `command` を command の
       出力で置き換える)、 算術展開、フィールド分割、ワイルドカード展開、クォートの除去。

       特殊なパラメーター ($@, $*, $#, $?, $-, $$, $!, $0) の 展開結果は規定されていない。

       フィールド分割は環境変数  $IFS を用いて行われる。 この環境変数が設定されていない場合、 フィールド区切り文
       字はスペース・タブ・改行である。

   出力される配列
       配列 we_wordv は見つかった単語をを含み、最後に NULL が続く。

   flags 引数
       flags 引数は以下の値のビット包含的 OR である:

       WRDE_APPEND
              見つかった単語を前回の呼び出し結果の配列に追加する。

       WRDE_DOOFFS
              初期状態である we_offs 個の NULL を配列 we_wordv に挿入する (これらは返される we_wordc  にはカウン
              トされない)。

       WRDE_NOCMD
              コマンド置換を行わない。

       WRDE_REUSE
              引数  p は前回の wordexp()  の呼び出し結果であり、 wordfree()  が (まだ) 呼び出されない。 割り当て
              られた領域を再利用する。

       WRDE_SHOWERR
              通常はコマンド置換のときに stderr/dev/null にリダイレクトされる。 このフラグは stderr をリダイ
              レクトしないように指定する。

       WRDE_UNDEF
              未定義のシェル変数を展開しようとした場合に、エラーとして扱う。

返り値

       成功した場合は 0 が返される。 エラーの場合は以下の 5 つの値のうちの 1 つが返される。

       WRDE_BADCHAR
              改行または |, &, ;, <, >, (, ), {, } のうちの 1 つが不正に出現した。

       WRDE_BADVAL
              未定義のシェル変数が参照され、かつ WRDE_UNDEF フラグでこれをエラーとして扱うように指示されている。

       WRDE_CMDSUB
              コマンド置換が要求されたが、 WRDE_NOCMD フラグでこれをエラーとして扱うように指示されていた。

       WRDE_NOSPACE
              メモリーが足りない。

       WRDE_SYNTAX
              対応する括弧がない、クォートが合致しないといった、 シェルの書式エラー。

バージョン

       wordexp()  と wordfree()  は、バージョン 2.1 以降の glibc で提供されている。

属性

       この節で使用されている用語の説明については、 attributes(7) を参照。

       ┌─────────────────┬───────────────┬────────────────────────────────┐
       │インターフェース属性                             │
       ├─────────────────┼───────────────┼────────────────────────────────┤
       │wordexp()        │ Thread safety │ MT-Unsafe race:utent const:env │
       │                 │               │ env sig:ALRM timer locale      │
       ├─────────────────┼───────────────┼────────────────────────────────┤
       │wordfree()       │ Thread safety │ MT-Safe                        │
       └─────────────────┴───────────────┴────────────────────────────────┘
       In  the above table, utent in race:utent signifies that if any of the functions setutent(3), getutent(3),
       or endutent(3)  are used in parallel in different threads of a program,  then  data  races  could  occur.
       wordexp()  calls those functions, so we use race:utent to remind users.

準拠

       POSIX.1-2001, POSIX.1-2008.

       以下のサンプルプログラムの出力はだいたい "ls [a-c]*.c" と同じになる。

       #include <stdio.h>
       #include <stdlib.h>
       #include <wordexp.h>

       int
       main(int argc, char **argv)
       {
           wordexp_t p;
           char **w;

           wordexp("[a-c]*.c", &p, 0);
           w = p.we_wordv;
           for (int i = 0; i < p.we_wordc; i++)
               printf("%s\n", w[i]);
           wordfree(&p);
           exit(EXIT_SUCCESS);
       }

関連項目

       fnmatch(3), glob(3)

この文書について

       この  man ページは Linux man-pages プロジェクトのリリース 5.10 の一部である。プロジェクトの説明とバグ報告
       に関する情報は https://www.kernel.org/doc/man-pages/ に書かれている。

                                                   2020-11-01                                         WORDEXP(3)