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名前
backtrace, backtrace_symbols, backtrace_symbols_fd - アプリケーション自身でのデバッグのサ ポート
書式
#include <execinfo.h> int backtrace(void **buffer, int size); char **backtrace_symbols(void *const *buffer, int size); void backtrace_symbols_fd(void *const *buffer, int size, int fd);
説明
backtrace() は、呼び出したプログラムのバックトレースを buffer が指す配列に入れて返 す。バックトレースは、プログラムで 現在動作中の関数呼び出しの並びである。 buffer が指す配 列の個々の要素は void * 型で、 対応するスタックフレームからのリターンアドレスである。 size 引数は buffer に格納できるアドレスの最大個数を指定する。 バックトレースが size より大きい 場合、 size 個の直近の関数呼び出しに対応するアドレスが返される。 完全なバックトレースを取 得するためには、確実に buffer と size が十分大きくなるようにすること。 backtrace() によって buffer にアドレスの集合が得られたら、 backtrace_symbols() によっ て、アドレス集合を、そのアドレスをシンボルで表した文字列の配列 に翻訳できる。 size 引数は buffer に格納されたアドレスの数を指定する。 個々のアドレスのシンボル表現は、関数名 (特定で きた場合)、 関数へのオフセット (16進表記)、実際のリターンアドレス (16進表記) から構成され る。 backtrace_symbols() の実行結果としては、 文字列ポインターの配列のアドレスが返され る。 この配列は backtrace_symbols() によって malloc(3) され、呼び出し側で free しなければ ならない (ポインターの配列が指す個々の文字列は free する必要はないし、 free すべきでもな い)。 backtrace_symbols_fd() は、 backtrace_symbols() と同じ引数 buffer と size をとるが、呼び 出し側に文字列の配列を返す代わりに、 文字列をファイルディスクリプター fd に 1 行に 1 エン トリーの形で書き込む。 backtrace_symbols_fd() は malloc(3) を呼び出さない。 そのため、こ れに続く関数が失敗する可能性がある状況でも利用できるが、「注意」も参照のこと。
返り値
backtrace() は buffer に格納したアドレスの個数を返す。その個数は size より大きくなること はない。 返り値が size より小さい場合、バックトレース全体が格納されている。返り値が size と等しい場合、バックトレースは切り詰められているかもしれない。 切り詰められた場合、最も古 いスタックフレームのアドレスは 返されないことになる。 backtrace_symbols() は、成功すると、この呼び出しで malloc(3) された配列へのポインターを 返す。 エラーの場合、 NULL を返す。
バージョン
backtrace(), backtrace_symbols(), backtrace_symbols_fd() はバージョン 2.1 以降の glibc で 提供されている。
属性
この節で使用されている用語の説明については、 attributes(7) を参照。 ┌───────────────────────┬───────────────┬─────────┐ │インターフェース │ 属性 │ 値 │ ├───────────────────────┼───────────────┼─────────┤ │backtrace(), │ Thread safety │ MT-Safe │ │backtrace_symbols(), │ │ │ │backtrace_symbols_fd() │ │ │ └───────────────────────┴───────────────┴─────────┘
準拠
これらの関数は GNU による拡張である。
注意
これらの関数は、関数のリターンアドレスがスタック上でどのように格納されるか に関してある仮 定を置いている。 以下の点に注意。 * (gcc(1) の 0 以外の最適化レベルで暗黙のうちに行われる) フレームポインターの省略を行う と、これらの前提が崩れる可能性がある。 * インライン関数はスタックフレームを持たない。 * 末尾呼び出しの最適化 (tail-call optimization) を行うと、 あるスタックフレームが別のス タックフレームを置き換える可能性がある。 * backtrace() and backtrace_symbols_fd() don't call malloc() explicitly, but they are part of libgcc, which gets loaded dynamically when first used. Dynamic loading usually triggers a call to malloc(3). If you need certain calls to these two functions to not allocate memory (in signal handlers, for example), you need to make sure libgcc is loaded beforehand. シンボル名は特別なリンカーオプションを使用しないと利用できない場合がある。 GNU リンカーを 使用するシステムでは、 -rdynamic リンカーオプションを使う必要がある。 "static" な関数のシ ンボル名は公開されず、 バックトレースでは利用できない点に注意すること。
例
以下のプログラムは、 backtrace() と backtrace_symbols() の使用例を示したものである。 以 下に示すシェルのセッションは、 このプログラムを動かした際の実行例である。 $ cc -rdynamic prog.c -o prog $ ./prog 3 backtrace() returned 8 addresses ./prog(myfunc3+0x5c) [0x80487f0] ./prog [0x8048871] ./prog(myfunc+0x21) [0x8048894] ./prog(myfunc+0x1a) [0x804888d] ./prog(myfunc+0x1a) [0x804888d] ./prog(main+0x65) [0x80488fb] /lib/libc.so.6(__libc_start_main+0xdc) [0xb7e38f9c] ./prog [0x8048711] プログラムのソース #include <execinfo.h> #include <stdio.h> #include <stdlib.h> #include <unistd.h> #define BT_BUF_SIZE 100 void myfunc3(void) { int nptrs; void *buffer[BT_BUF_SIZE]; char **strings; nptrs = backtrace(buffer, BT_BUF_SIZE); printf("backtrace() returned %d addresses\n", nptrs); /* backtrace_symbols_fd(buffer, nptrs, STDOUT_FILENO) を 呼び出しても、以下と同様の出力が得られる。 */ strings = backtrace_symbols(buffer, nptrs); if (strings == NULL) { perror("backtrace_symbols"); exit(EXIT_FAILURE); } for (int j = 0; j < nptrs; j++) printf("%s\n", strings[j]); free(strings); } static void /* "static" はシンボルを公開しないことを意味する */ myfunc2(void) { myfunc3(); } void myfunc(int ncalls) { if (ncalls > 1) myfunc(ncalls - 1); else myfunc2(); } int main(int argc, char *argv[]) { if (argc != 2) { fprintf(stderr, "%s num-calls\n", argv[0]); exit(EXIT_FAILURE); } myfunc(atoi(argv[1])); exit(EXIT_SUCCESS); }
関連項目
addr2line(1), gcc(1), gdb(1), ld(1), dlopen(3), malloc(3)
この文書について
この man ページは Linux man-pages プロジェクトのリリース 5.10 の一部である。プロジェクトの 説明とバグ報告に関する情報は https://www.kernel.org/doc/man-pages/ に書かれている。