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名前
sigvec, sigblock, sigsetmask, siggetmask, sigmask - BSD 版シグナル API
書式
#include <signal.h>
int sigvec(int sig, const struct sigvec *vec, struct sigvec *ovec);
int sigmask(int signum);
int sigblock(int mask);
int sigsetmask(int mask);
int siggetmask(void);
glibc 向けの機能検査マクロの要件 (feature_test_macros(7) 参照):
All functions shown above:
Since glibc 2.19:
_DEFAULT_SOURCE
Glibc 2.19 and earlier:
_BSD_SOURCE
説明
これらの関数は、昔ながらの BSD 版シグナル API を使用しているプログラム に対して互換性のあるインターフェー
スを glibc で提供するものである。 この API は過去のものであり、新しいアプリケーションでは POSIX シグナル
API (sigaction(2), sigprocmask(2) など) を使用すべきである。
関数 sigvec() は、(POSIX の sigaction(2) と同様に) シグナル sig の動作の設定・取得を行う。 vec は、NULL
以外の場合、 sig の新しい動作を定義した sigvec 構造体へのポインターである。 ovec は、NULL 以外の場合、
sig の変更前の動作を返すために使用される sigvec 構造体へのポインターである。 sig の動作を変更せずに現在の
動作を取得するためには、 vec に NULL を指定し、 ovec に NULL でないポインターを指定すればよい。
シグナル SIGKILL と SIGSTOP に対する動作は変更できない。
sigvec 構造体は以下の通りである:
struct sigvec {
void (*sv_handler)(int); /* Signal disposition */
int sv_mask; /* Signals to be blocked in handler */
int sv_flags; /* Flags */
};
sv_handler フィールドはシグナルの動作を指定するもので、 シグナルハンドラー関数のアドレスか、 SIG_DFL と
SIG_IGN のいずれかを指定できる。 SIG_DFL はシグナルに適用されるデフォルトの動作を意味し、 SIG_IGN はシグ
ナルを無視することを意味する。
sv_handler にシグナルハンドラーのアドレスを指定した場合、 sv_mask はハンドラーが実行中にブロックされるべ
きシグナルのマスクを指定する。 また、ハンドラーを起動したシグナル自身はブロックされる。 SIGKILL か
SIGSTOP をブロックしようとした場合には、黙って無視される。
sv_handler にシグナルハンドラーのアドレスを指定した場合、 sv_flags フィールドはハンドラーが呼ばれた際の挙
動を制御するフラグを指定する。 このフィールドには、0 か、以下のフラグを 1個以上指定できる:
SV_INTERRUPT
シグナルハンドラーが停止中のシステムコールを中断した場合、 ハンドラーから復帰しても、システムコー
ルは再開されず、 エラー EINTR で失敗する。 このフラグを指定しなかった場合、システムコールは デフォ
ルトで再開される。
SV_RESETHAND
シグナルハンドラーを呼び出す前にシグナルの動作を デフォルトにリセットする。 このフラグを指定しな
かった場合、もう一度 sigvec() を呼び出して明示的に削除されるか、プロセスが execve(2) を実行するま
で、ハンドラーは設定されたままとなる。
SV_ONSTACK
代替シグナルスタック上でシグナルハンドラーを実行する (歴史的に、BSD では代替シグナルスタックは廃止
された関数 sigstack() を使って設定する。POSIX では、代わりに sigaltstack(2) を使用する)。
マクロ sigmask() は signum に対する「シグナルマスク」を構成して返す。 例えば、以下のようなコードを使う
と、 sigvec() に渡す vec.sv_mask を初期化できる。
vec.sv_mask = sigmask(SIGQUIT) | sigmask(SIGABRT);
/* Block SIGQUIT and SIGABRT during
handler execution */
sigblock() 関数は、 mask にあるシグナルをプロセスのシグナルマスクに追加し (POSIX の
sigprocmask(SIG_BLOCK) と同様)、変更前のプロセスのシグナルマスクを返す。 SIGKILL や SIGSTOP をブロックし
ようとした場合には、黙って無視される。
sigsetmask() 関数はプロセスのシグナルマスクを mask で指定された値に設定し (POSIX の
sigprocmask(SIG_SETMASK) と同様)、変更前のプロセスのシグナルマスクを返す。
siggetmask() 関数はプロセスの現在のシグナルマスクを返す。この関数は sigblock(0) と等価である。
返り値
sigvec() 関数は成功すると 0 を返す。エラーの場合、-1 を返し、 errno にエラーを示す値をセットする。
sigblock() と sigsetmask() は変更前のシグナルマスクを返す。
sigmask() マクロは signum のシグナルマスクを返す。
エラー
sigaction(2) と sigprocmask(2) の「エラー」の節を参照。
バージョン
バージョン 2.21 以降では、 GNU C ライブラリはもはや sigvec() 関数を ABI の一部として公開しなくなった。
(後方互換性を保証するために、glibc のシンボルのバージョン付け機構により、 古いバージョンのライブラリとリ
ンクされたバイナリに対してはこのインターフェースが引き続き公開されている。)
属性
この節で使用されている用語の説明については、 attributes(7) を参照。
┌──────────────────────────────────┬───────────────┬─────────┐
│ インターフェース │ 属性 │ 値 │
├──────────────────────────────────┼───────────────┼─────────┤
│ sigvec(), sigmask(), sigblock(), │ Thread safety │ MT-Safe │
│ sigsetmask(), siggetmask() │ │ │
└──────────────────────────────────┴───────────────┴─────────┘
準拠
これらの関数のうち siggetmask() 以外の全ては 4.3BSD にあった。 siggetmask() の出自ははっきりしない。 こ
れらの関数は廃止予定であり、新しいプログラムでは使用しないこと。
注意
4.3BSD では、信頼性のあるシグナル処理機構を提供する (vec.sv_mask を 0 で sigvec() を呼び出したときと同
様)。 System V が提供する処理機構は信頼性のないものである。 POSIX.1 では、 signal() のこの点は規定しない
ままとなっている。 さらなる詳細については signal(2) を参照。
BSD と System V のどちらのシステムでも シグナルを待つために、 sigpause(3) という名前の関数が提供されてい
るが、 この関数の引数は両方のシステムで異なる。 詳細は sigpause(3) を参照。
関連項目
kill(2), pause(2), sigaction(2), signal(2), sigprocmask(2), raise(3), sigpause(3), sigset(3), signal(7)
この文書について
この man ページは Linux man-pages プロジェクトのリリース 5.10 の一部である。プロジェクトの説明とバグ報告
に関する情報は https://www.kernel.org/doc/man-pages/ に書かれている。
Linux 2020-08-13 SIGVEC(3)