Provided by: manpages-ja-dev_0.5.0.0.20131015+dfsg-2_all bug

名前

       ioprio_get, ioprio_set - I/O スケジューリングクラスと優先度の設定/取得

書式

       int ioprio_get(int which, int who);
       int ioprio_set(int which, int who, int ioprio);

       注意: これらのシステムコールには glibc ラッパー関数は存在しない。 「注意」の節を参照。

説明

       システムコール ioprio_get()  / ioprio_set()  は、(1つ以上の) スレッドの I/O スケジューリングクラスと 優先
       度の取得/設定を行う。

       whichwho 引き数でシステムコールの操作対象となるスレッドを指示する。 which 引き数は、 who をどのように
       解釈するかを決めるもので、以下のいずれか一つを指定する。

       IOPRIO_WHO_PROCESS
              who  は特定のプロセスやスレッドを特定するためのプロセス  ID  かスレッド  ID である。 who が 0 の場
              合、呼び出し元のスレッドに対して操作が行われる。

       IOPRIO_WHO_PGRP
              who はプロセスグループ ID であり、プロセスグループの全メンバが対象となる。 who が 0 の場合、  呼び
              出し元がメンバーとなっているプロセスグループに対して操作が行われる。

       IOPRIO_WHO_USER
              who はユーザID であり、実 UID に一致する全プロセスが対象となる。

       ioprio_get()   の呼び出し時に whichIOPRIO_WHO_PGRPIOPRIO_WHO_USER が指定され、 who に一致するプロ
       セスが複数あった場合、 一致するプロセス全体の中で最も高い優先度が返される。  優先度が高いとは、より高い優
       先度クラスに属している  (IOPRIO_CLASS_RT が最も高い優先度クラスで、 IOPRIO_CLASS_IDLE が最も低い)、もしく
       は 同じ優先度クラスに属しているが優先度レベルが高い (優先度番号が小さい方が優先度レベルが高いことを意味す
       る)、 ということである。

       ioprio_set()  に渡す ioprio 引き数は、対象となるプロセスに割り当てるスケジューリングクラスと 優先度の両方
       を指定するビットマスクである。 ioprio の値を組み立てたり解釈するのに、以下のマクロが利用できる。

       IOPRIO_PRIO_VALUE(class, data)
              スケジューリングクラス class  と優先度  (data)   を与えると、このマクロは  2つの値を組み合わせて、
              ioprio 値を生成し、マクロの結果として返す。

       IOPRIO_PRIO_CLASS(mask)
              mask (ioprio 値) を与えると、このマクロは I/O クラス要素、つまり IOPRIO_CLASS_RT, IOPRIO_CLASS_BE,
              IOPRIO_CLASS_IDLE のいずれか一つの値を返す。

       IOPRIO_PRIO_DATA(mask)
              mask (ioprio 値) を与えると、このマクロは優先度 (data)  要素を返す。

       スケジューリングクラスと優先度に関する詳しい情報は、 「備考」の節を参照のこと。

       I/O 優先度は読み出しと同期書き込み (O_DIRECT, O_SYNC)  に対応している。 I/O  優先度は非同期書き込みには対
       応していない。なぜなら、 非同期書き込みはメモリ書き換えを行うプログラムの動作 (context) とは 関係なく発行
       され、そのためプログラム単位の優先度は適用されないから である。

返り値

       成功すると、 ioprio_get()  は、 whichwho で指定された基準に合致した全プロセスで最も高い I/O  優先度を
       持つプロセスの ioprio 値を返す。 エラーの場合、-1 を返し、 errno にエラーを示す値を設定する。

       成功すると、 ioprio_set()  は 0 を返す。 エラーの場合、-1 を返し、 errno にエラーを示す値を設定する。

エラー

       EINVAL whichioprio の値が不正である。 ioprio 用に指定可能なスケジューラクラスと優先度レベルについては
              「備考」を参照のこと。

       EPERM  呼び出し元プロセスが、指定されたプロセスに    ioprio    を割り当てるのに必要な権限を持っていない。
              ioprio_set() に必要な権限についての詳しい情報は「備考」の節を参照のこと。

       ESRCH  whichwho で指定された基準に合致するプロセスが見つからなかった。

バージョン

       これらのシステムコールはカーネル 2.6.13 以降の Linux で利用可能である。

準拠

       これらのシステムコールは Linux 独自である。

注意

       glibc はこれらのシステムコールに対するラッパー関数を提供していない。 syscall(2)  を使って呼び出すこと。

       複数のプロセスやスレッドが一つの I/O コンテキストを共有する場合がある。 clone(2) を CLONE_IO フラグ付きで
       呼び出した場合にはこの状況となる。 しかしながら、デフォルトでは、一つのプロセスの個々のスレッドは I/O  コ
       ンテキストを共有「しない」。 したがって、 プロセス内のすべてのスレッドの I/O 優先度を変更したい場合には、
       それぞれのスレッドに対して ioprio_set() を呼び出す必要がある。 この操作を行うのに必要となるスレッド ID に
       は gettid(2) か clone(2) が返す値を指定する。

       これらのシステムコールは、I/O  優先度に対応した I/O スケジューラと 組み合わせて使用された場合にのみ効果を
       持つ。 カーネル 2.6.17 では、この条件を満たすスケジューラは Completely Fair Queuing (CFQ) I/O  スケジュー
       ラだけである。

   I/O スケジューラの選択
       I/O                スケジューラの選択はデバイス単位に行われ、その選択は                スペシャルファイル
       /sys/block/<device>/queue/scheduler 経由で行われる。

       現在の I/O スケジューラは /sys ファイルシステム経由で参照できる。例えば、以下のコマンドを実行すると、  現
       在カーネルでロードされているスケジューラの全リストが表示される。

              $ cat /sys/block/hda/queue/scheduler
              noop anticipatory deadline [cfq]

       括弧で囲まれたスケジューラがそのデバイス  (上の例では  hda)  について実際に使用されているスケジューラであ
       る。 別のスケジューラを設定するには、このファイルに新しいスケジューラ名を  書き込めばよい。例えば、以下の
       コマンドを実行すると、デバイス hda のスケジューラとして cfq が設定される。

              $ su
              Password:
              # echo cfq > /sys/block/hda/queue/scheduler

   Completely Fair Queuing (CFQ) I/O スケジューラ
       バージョン  3 (別名 CFQ Time Sliced) 以降、 CPU スケジューリングと同様の I/O nice レベルが CFQ に実装され
       ている。 これらの nice  レベルは  3つのスケジューリングクラスに分類でき、  各スケジューリングクラスにつき
       1つ以上の優先度レベルが定義されている。

       IOPRIO_CLASS_RT (1)
              これはリアルタイム I/O クラスである。 このスケジューリングクラスには他のクラスよりも高い優先度が与
              えられる。   このクラスのプロセスには、常にディスクへのアクセスが優先して   割り当てられる。そのた
              め、この  I/O クラスを使う際には、 たった一つの リアルタイム I/O クラスのプロセスにより システム全
              体のディスクアクセスができなくなってしまうことがある という点に、注意を払う必要がある。 このクラス
              には、8 段階の class data (優先度レベル) がある。 この値は、そのプロセスが 1回のディスクアクセスに
              どれだけの 時間が必要かを正確に決めるためのものである。 最高のリアルタイム優先度レベルは 0  で、最
              低は  7 である。 将来的には、優先度レベルは、希望するデータレートを渡すなど、 より直接的に性能条件
              を反映できるように変更されるかもしれない。

       IOPRIO_CLASS_BE (2)
              これは ベストエフォート・スケジューリングクラスである。 このクラスは、特定の I/O  優先度を設定して
              いないプロセスの  デフォルト値である。  class data (優先度レベル) により、そのプロセスがどの程度の
              I/O    帯域を得られるかが決定される。    ベストエフォート・優先度レベルは、CPU    の    nice    値
              (getpriority(2)  参照) と同様のものである。 優先度レベルは、ベストエフォート・スケジューリングクラ
              スの中で 他のプロセスとの相対的な優先度を決定する。 優先度レベルの値の範囲は 0 (最高) から  7  (最
              低) である。

       IOPRIO_CLASS_IDLE (3)
              これは  idle スケジューリングクラスである。 このレベルで動作するプロセスは他にディスクアクセスをし
              ようとする プロセスがない場合にのみ I/O 時間を取得する。 idle クラスには class data (優先度)  は用
              意されていない。 プロセスにこの優先度を割り当てる際には注意が必要である。 なぜなら、優先度の高いプ
              ロセスが常にディスクにアクセスしている場合には ディスクにアクセスできなくなる可能性があるからだ。

       CFQ I/O スケジューラの更なる情報とサンプルプログラムについては Documentation/block/ioprio.txt  を参照のこ
       と。

   I/O 優先度の設定に必要な許可
       プロセスの優先度を変更する許可が得られるかどうかは 以下の 2つの条件に基いて決定される。

       プロセスの所有権
              非特権プロセスは、プロセスの実 UID が呼び出し元プロセスの実 UID もしくは 実効 UID と一致するプロセ
              スの I/O 優先度のみを設定できる。 CAP_SYS_NICE  ケーパビリティを持つプロセスは、どのプロセスの優先
              度でも変更できる。

       どの優先度に設定しようとしているか
              非常に高い優先度  (IOPRIO_CLASS_RT)  を設定しようとする場合、 CAP_SYS_ADMIN ケーパビリティが必要で
              ある。  カーネル   2.6.24   以前では、非常に低い優先度   (IOPRIO_CLASS_IDLE)    を設定するためにも
              CAP_SYS_ADMIN ケーパビリティが必要であったが、 Linux 2.6.25 以降ではもはや必要なくなった。

       ioprio_set()  はこの両方のルールに従い、条件を満たさない場合、エラー EPERM で失敗する。

バグ

       glibc は、このページに記載された関数プロトタイプやマクロを定義する 適切なヘッダファイルをまだ提供していな
       い。 必要な定義については linux/ioprio.h を見ればよい。

関連項目

       ionice(1), getpriority(2), open(2), capabilities(7)

       Linux カーネルソース内の Documentation/block/ioprio.txt

この文書について

       この man ページは Linux man-pages プロジェクトのリリース 3.54 の一部 である。プロジェクトの説明とバグ報告
       に関する情報は http://www.kernel.org/doc/man-pages/ に書かれている。