Provided by: manpages-ja-dev_0.5.0.0.20131015+dfsg-2_all
名前
nanosleep - 高精度なスリープ
書式
#include <time.h> int nanosleep(const struct timespec *req, struct timespec *rem); glibc 向けの機能検査マクロの要件 (feature_test_macros(7) 参照): nanosleep(): _POSIX_C_SOURCE >= 199309L
説明
nanosleep() は、少なくとも *req で指定された時間の間、プログラムの実行を遅延させる。 nanosleep() は、呼び出したスレッドの実行を、 少なくとも *req で指定された時間の間、もしく は呼び出したスレッドでハンドラの起動の きっかけとなるシグナル、またはプロセスを終了させる シグナルの配送が 行われるまで一時停止する。 呼び出しがシグナルハンドラにより割り込まれた場合、 nanosleep は -1 を返し、 errno に EINTR を設定し、 rem が NULL でなければ 残りの時間を rem が指す構造体に格納する。 *rem の値を使 うと、 nanosleep() をもう一度呼び出して、指定した時間の停止を 完了させることができる (但 し、「注意」の節を参照のこと)。 ナノ秒刻みの時間間隔を指定するのに timespec 構造体が使用される。この構造体は次のように定義 されている。 struct timespec { time_t tv_sec; /* 秒 */ long tv_nsec; /* ナノ秒 */ }; ナノ秒のフィールドの値は 0 から 999999999 の範囲になければならない。 sleep(3) や usleep(3) に比べると nanosleep() には以下のような利点がある: 停止期間の指定 に関して高い時間分解能が提供されている。 シグナルと互いに影響を及ぼすことがないと POSIX.1 で明示的に規定されている。 シグナルハンドラによって割り込まれた際に、停止を再開するのが よ り簡単にできる。
返り値
要求された期間の停止に成功した場合、 nanosleep() は 0 を返す。呼び出しがシグナルハンドラ により割り込まれたり、 エラーが発生した場合は、-1 を返し、 errno にエラー内容を示す値を設 定する。
エラー
EFAULT ユーザ空間からの情報のコピーで問題があった。 EINTR そのスレッドに配送されたシグナルにより停止が中断された。 スレッドが簡単に nanosleep() を再び呼び出して停止を続けることができるように、 残りの停止時間が *rem に格納される。 EINVAL tv_nsec フィールドの値が 0 から 999999999 の範囲でないか、 tv_sec の値が負であっ た。
準拠
POSIX.1-2001.
注意
req で指定された期間が、内部で使用されるクロックの粒度の倍数になっていない 場合、期間は一 番近い倍数に切り上げられる。 また、停止が完了した後、CPU が呼び出し元のスレッドを再び実行 できるように なるまでには遅延が入る。 シグナルによる割り込み後に繰り返し再開された場合、 nanosleep() の停止が相対的な期間である ことは問題となることがある。 これは、呼び出しの割り込みから再開までの間の時間が原因で 停止 が最終的に完了した際に時間にずれが発生するからである。 この問題は、絶対時刻が指定できる clock_nanosleep(2) を使うことで回避できる。 POSIX.1 は、 nanosleep() は CLOCK_REALTIME に対して時刻を計測するべきだと規定している。 しかしながら、Linux は CLOCK_MONOTONIC クロックを用いて時刻を計測している。 このことはおそ らく問題にならないだろう。 なぜなら、POSIX.1 の clock_settime(2) の仕様には、 CLOCK_REALTIME の不連続な変化は nanosleep() に影響すべきではない、と書かれているからであ る。 clock_settime(2) 経由で CLOCK_REALTIME クロックの値を設定しても、 nanosleep() 関数 などの CLOCK_REALTIME に基づくサービスにより相対的な期間だけ実行を停止するスレッド には影響はない。 結果として、クロック値が更新前か後かに関わらず、要求された相対的な 時間が 経過すると満了することになる。 以前の動作 (例えば、時間が重要な意味を持つハードウェアを制御する場合など) より正確な停止を必要とする アプリケーションに対応するために、 nanosleep() は、マイクロ秒精度のビジー・ウェイトを利用 することで、 2 ms 以下の停止を行うことができた。 但し、この機能を利用するには、呼び出し元 のスレッドが SCHED_FIFO や SCHED_RR といったリアルタイム・ポリシーの元でスケジューリングさ れている 必要があった。 この特別な拡張はカーネル 2.5.39 で削除された。したがって、 現在の 2.4 系列のカーネルにはこの機能が存在するが、 2.6系列のカーネルにはない。
バグ
Linux 2.4 では、 nanosleep() が (SIGTSTP などの) シグナルにより停止された場合、 nanosleep() の呼び出しは SIGCONT シグナルによるスレッドの再開後に EINTR エラーで失敗す る。 システムコールがこの後で再スタートされた場合、 スレッドが停止状態にある間に経過した時 間は 停止期間としてカウント「されない」。
関連項目
clock_nanosleep(2), restart_syscall(2), sched_setscheduler(2), timer_create(2), sleep(3), usleep(3), time(7)
この文書について
この man ページは Linux man-pages プロジェクトのリリース 3.54 の一部 である。プロジェクト の説明とバグ報告に関する情報は http://www.kernel.org/doc/man-pages/ に書かれている。