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名前

       math_error - 数学関数からのエラーの検出

書式

       #include <math.h>
       #include <errno.h>
       #include <fenv.h>

説明

       エラーが発生すると、ほとんどのライブラリ関数は (-1 や NULL などの)  特別な値を返すことでエ
       ラーを通知する。 <math.h> で宣言されている数学関数は、通常は浮動小数点値を返すので、  他の
       機構を使ってエラーを通知する。 エラー通知機構は 2 種類あり、 古いものが errno を設定するや
       り方であり、新しいものが        fenv(3)         で説明されている浮動小数点例外機構である。
       (feclearexcept(3)   と fetestexcept(3)  を使用する。これらについては以下で概要を説明してい
       る。)

       移植性が必要なプログラムで、数学関数からのエラーを確認する必要がある場合には、  数学関数を
       呼び出す前に errno を 0 に設定し、

           feclearexcept(FE_ALL_EXCEPT);

       を呼び出すべきである。

       数学関数から返ってきた際に、 errno が 0 以外か、

           fetestexcept(FE_INVALID | FE_DIVBYZERO | FE_OVERFLOW |
                        FE_UNDERFLOW);

       の呼び出しが 0 以外を返した場合 (fenv(3)  参照)、数学関数でエラーが発生している。

       数学関数で発生するエラー条件については以下で説明する。

   領域エラー (domain error)
       領域エラー  が発生するのは、数学関数に渡された引き数の値がその関数が定義されている  領域に
       入っていない場合である (例えば log(3) に負の引き数を渡した場合)。 領域エラーが発生すると、
       数学関数は普通は  NaN  を返し  (同じ状況で違う値を返す関数もある)、  errnoEDOM を設定
       し、「無効 (invalid)」 浮動小数点例外 (FE_INVALID)  を上げる。

   極エラー (pole error)
       極エラー が発生するのは、関数の数学的な結果が無限大そのものとなる場合である (例えば 0 の対
       数は負の無限大である)。  極エラーが発生すると、その関数の返り値は  (符号付きの)  HUGE_VAL,
       HUGE_VALF, HUGE_VALL のいずれかとなる  (前記の値のうちどれが返るかは関数の返り値の型により
       決まり、  それぞれ double, float, long double に対応する)。 結果の符号は、その関数の数学的
       な定義から決定される。 errnoERANGE に設定され、「0 による除算 (divide-by-zero)」  浮動
       小数点例外 (FE_DIVBYZERO)  が上がる。

   範囲エラー (range エラー)
       範囲エラー  が発生するのは、関数の結果の値がその関数の返り値の型では表現できない場合  であ
       る。関数の返り値は、範囲エラーがオーバーフローであったかアンダーフロー  であったかによって
       異なる。

       浮動小数点のオーバーフローは、結果が有限だが、大き過ぎて  結果を返す型では表現できない場合
       に発生する。 オーバーフローが発生すると、 その関数は HUGE_VAL, HUGE_VALF, HUGE_VALL のいず
       れかを返す  (前記の値のうちどれが返るかは関数の返り値の型により決まり、  それぞれ  double,
       float, long double に対応する)。 errnoERANGE に設定され、「オーバーフロー (overflow)」
       浮動小数点例外 (FE_OVERFLOW)  が上がる。

       浮動小数点のアンダーフローは、  結果が小さ過ぎて、結果を返す型では表現できない場合に発生す
       る。 アンダーフローが発生すると、数学関数は通常は 0.0 を返す (C99 では、指定された型におい
       て最小の正規化された正の値より大きくない  値を持つ実装定義 (implementation-defined) の値を
       返す、となっている)。   errnoERANGE   に設定され、「アンダーフロー」浮動小数点例外
       (FE_UNDERFLOW) が上がる。

       いくつかの関数では、渡された引き数の値や、正しい関数の結果が subnormal (非正規化数) になる
       場合に範囲エラーを上げる。 subnormal な値とは、0 ではないが、その値が小さすぎて  (仮数部の
       最上位ビットが  1  となる)  標準形では表現できないような値である。  subnormal な値の表現で
       は、仮数部の上位側のビットに 1 個以上の 0 が 含まれることになる。

注意

       C99 と POSIX.1-2001 で規定されている math_errhandling 識別子は glibc  ではサポートされてい
       ない。 この識別子は、2 つのエラー通知機構 (errnofetestexcept(3)  経由で取得できる例外)
       のうちどちらが使用されているかを通知 することになっている。 標準では、少なくとも一つは使用
       されることが要求されているが、 両方とも利用可能であってもよいとされている。 glibc での現在
       の (バージョン 2.8 での) 状況はかなり混乱している。 ほとんどの関数 (ただし全部ではない) は
       エラー時に例外を上げる。  いくつかの関数は errno も設定する。 errno を設定するが、例外を上
       げない関数も少しだけ存在する。 どちらも行わない関数もごく少数だが存在する。 詳細については
       個々のマニュアルページを参照のこと。

       errnofetestexcept(3)  の両方を使ってエラーチェックを行うことで複雑になるのを避けるた
       め、  多くの場合、関数呼び出しを行う前に不正な引き数かのチェックを行う  方法が推奨されてい
       る。  例えば、以下のコードは、 log(3)  の引き数が NaN でも (極エラーとなる) 0 でも (領域エ
       ラーとなる) 0 未満 でもないことを保証するものである。

           double x, r;

           if (isnan(x) || islessequal(x, 0)) {
               /* Deal with NaN / pole error / domain error */
           }

           r = log(x);

       このページに書かれていることは、 (<complex.h> で宣言されている) 複素数関数にはあてはまらな
       い。 一般に、C99 や POSIX.1-2001 ではこれらの関数がエラーを返すことを 要求してない。

       gcc(1)   の -fno-math-errno オプションを使うと、実行ファイルで、標準の実装よりも高速な数学
       関数の  実装が使用されるようになるが、  エラー時に  errno   が設定されない   (gcc(1)    の
       -ffast-math  オプションを指定した場合にも -fno-math-errno は有効になる)。 このオプションを
       指定した場合でも、 fetestexcept(3)  を使ったエラーの検査は可能である。

関連項目

       gcc(1), errno(3), fenv(3), fpclassify(3), INFINITY(3), isgreater(3), matherr(3), nan(3)

       info libc

この文書について

       この man ページは Linux man-pages プロジェクトのリリース 3.53 の一部  である。プロジェクト
       の説明とバグ報告に関する情報は http://www.kernel.org/doc/man-pages/ に書かれている。