Provided by: manpages-ja-dev_0.5.0.0.20140515+dfsg-2_all bug

名前

       pthread_key_create,  pthread_key_delete, pthread_setspecific, pthread_getspecific - スレッ
       ド固有データの管理

書式

       #include <pthread.h>

       int pthread_key_create(pthread_key_t *key, void (*destr_function) (void *));

       int pthread_key_delete(pthread_key_t key);

       int pthread_setspecific(pthread_key_t key, const void *pointer);

       void * pthread_getspecific(pthread_key_t key);

説明

       プログラムではスレッドごとに値の異なる グローバル変数や静的変数がしばしば必要となる。 複数
       のスレッドは 1 つのメモリ空間を共有するため、 通常の変数ではこれを実現することができない。
       スレッド固有データは、 この必要性への POSIX スレッドの答えである。

       それぞれのスレッドはスレッド固有データ (thread-specific data) 領域、 略して TSD 領域という
       プライベートなメモリブロックを保有している。 この領域は TSD キーをインデックスとして管理さ
       れる。 TSD 領域では void * 型の値を TSD キーに結び付ける。 TSD  キーはすべてのスレッドに共
       通であるが、 TSD キーに結び付けられる値はスレッドごとに異なるように することができる。

       具体的にいえば、 TSD 領域は void * 型のポインタの配列として、 TSD キーはこの配列に対する整
       数値のインデックスとして、 TSD  キーに結び付けられる値は呼び出しスレッドの対応する配列要素
       として見える。

       スレッドが生成されると、TSD 領域はすべてのキーに対する値が NULL になるよう初期化される。

       pthread_key_create  は新しい  TSD キーを確保する。 キーは key で指し示される領域に格納され
       る。 ある時点で確保できるキーの数には制限があり、 その最大値は  PTHREAD_KEYS_MAX  である。
       返されたキーに結び付けられる初期値は、 その時点で実行されているスレッドすべてにおいて NULL
       である。

       引数 destr_functionNULL 以外の値を指定することで、  そのキーに対応するデストラクタ関数
       を登録することができる。  スレッドが  pthread_exit やキャンセルによって終了すると、 そのス
       レッド中でキーに結び付けられた値を引数として関数 destr_function が呼び出される。 値が NULL
       の場合には関数  destr_function は呼び出されない。 スレッド終了時にデストラクタ関数が呼び出
       される順序は不定である。

       デストラクタ関数が呼び出される前に、  現在のスレッドにおいてキーに結び付けられる値は  NULL
       になる。  しかし、デストラクタ関数は NULL 以外の値をそのキーやほかのキーに結び付けるかもし
       れない。 これを処理するため、 すべての非 NULL の値に対するデストラクタ関数をすべて呼び出し
       たあとに デストラクタ関数のある非 NULL の値がまだ残っている場合には、 デストラクタ関数の呼
       び出し処理は繰り返される。 LinuxThreads の実装では、 PTHREAD_DESTRUCTOR_ITERATIONS  回繰り
       返すと、たとえデストラクタ関数のある非     NULL     の値が残っていても、    処理は中止され
       る。LinuxThreads 以外の実装では無限ループに陥るかもしれない。

       pthread_key_delete は TSD キーを解放する。 その時点で実行中のスレッドでキーに非 NULL  の値
       が結び付けられているかどうかをチェックしたり、  キーに対応するデストラクタ関数を呼び出した
       りはしない。

       pthread_setspecific は呼び出しスレッドで key に結び付けられる値を、与えられた pointer に変
       更する。

       pthread_getspecific は呼び出しスレッドでその時点で key に結び付けられている値を返す。

返り値

       pthread_key_create  および pthread_key_deletepthread_setspecific は成功すると 0 を、失
       敗すると非 0 のエラーコードを返す。 成功の場合、 pthread_key_create は新しく確保されたキー
       を 引数 key で指し示される領域に格納する。

       pthread_getspecific は、成功するとキー key に結び付けられた値を、 エラーの場合には NULL を
       返す。

エラー

       pthread_key_create はエラーの場合に次のようなエラーコードを返す:

              EAGAIN PTHREAD_KEYS_MAX だけのキーがすでに確保されている。

       pthread_key_delete および  pthread_setspecific  はエラーの場合に次のようなエラーコードを返
       す:

              EINVAL key は有効な、確保された TSD キーではない。

       pthread_getspecific は、 key が有効な、確保された TSD キーでない場合には NULL を返す。

著者

       Xavier Leroy <Xavier.Leroy@inria.fr>

関連項目

       pthread_create(3), pthread_exit(3), pthread_testcancel(3).

       次のコードでは、100  バイトのスレッド固有の配列を確保し、 スレッドの終了とともに自動で解放
       する:

              /* スレッド固有バッファのキー */
              static pthread_key_t buffer_key;

              /* 1 回限りのキーの初期化 */
              static pthread_once_t buffer_key_once = PTHREAD_ONCE_INIT;

              /* スレッド固有のバッファを確保する */
              void buffer_alloc(void)
              {
                pthread_once(&buffer_key_once, buffer_key_alloc);
                pthread_setspecific(buffer_key, malloc(100));
              }

              /* スレッド固有のバッファを返す */
              char * get_buffer(void)
              {
                return (char *) pthread_getspecific(buffer_key);
              }

              /* キーを確保する */
              static void buffer_key_alloc()
              {
                pthread_key_create(&buffer_key, buffer_destroy);
              }

              /* スレッド固有のバッファを解放する */
              static void buffer_destroy(void * buf)
              {
                free(buf);
              }

                                           LinuxThreads                       PTHREAD_SPECIFIC(3)