Provided by: manpages-ja_0.5.0.0.20180315+dfsg-1_all bug

名称

       cpp - GNU-C 互換のコンパイラプリプロセッサ

書式

       cpp    [-$] [-Apredicate[(value)]] [-C] [-Dname[=definition]] [-dD] [-dM] [-I directory]
              [-H] [-I-] [-imacros file] [-include file] [-idirafter dir] [-iprefix prefix]
              [-iwithprefix dir] [-lang-c] [-lang-c++] [-lang-objc] [-lang-objc++] [-lint]
              [-M [-MG]] [-MM [-MG]] [-MD file ] [-MMD file ] [-nostdinc] [-nostdinc++] [-P]
              [-pedantic] [-pedantic-errors] [-traditional] [-trigraphs] [-Uname] [-undef]
              [-Wtrigraphs] [-Wcomment] [-Wall] [-Wtraditional]
              [infile|-] [outfile|-]

解説

       C プリプロセッサは、 実際のコンパイルの前にプログラムを変換するために C コンパイラから自動
       的に利用される マクロプロセッサです。 長い記述を簡略してマクロとして定義することができるた
       め、 マクロプロセッサと呼ばれます。

       C プリプロセッサは、以下の4つの機能を提供します。

       •      ヘッダファイルを読み込みます。 これは プログラムに組み込まれる (C 言語の)宣言の入っ
              たファイルです。

       •      C 言語の任意の部分の省略形として マクロを定義し、C プリプロセッサがプログラム内の全
              てのマクロを その定義で置き換えます。

       •      条件文の処理をします。専用のプリプロセッサコマンドを用いて、   いろいろな条件にした
              がってプログラムの一部を含めたり除外したりできます。

       •      行番号の制御をします。  ソースファイルと コンパイルされた中間ファイルとを組み合わせ
              たり再アレンジしたりするプログラムを 用いる場合、  コンパイラにオリジナルのソースの
              何行目であるかを知らせるための、 行番号制御のプリプロセッサコマンドを利用できます。

       C  プリプロセッサは、そのインプリメントによって細かな部分に違いが  いくつかあります。GNU C
       プリプロセッサの完全なドキュメントは、 info ファイルの `cpp.info',  もしくは、マニュアルの
       The  C Preprocessorを参照して下さい。 この双方は `cpp.texinfo'から生成されます。GNU C プリ
       プロセッサは ANSI Standard C のスーパセットと なっています。

       ANSI Standard C では、今日 C プログラムで一般的に用いられている多くの (無害な)構造が認めら
       れていません。  この非互換性はユーザにとっては不便であり、そのため GNU C preprocessor では
       この記述をデフォルトで受け付けるように作られています。 厳密にいえば、 ANSI Standard C にす
       るためには  オプションとして `-trigraphs', `-undef', `-pedantic'をつけなければなりません。
       しかし経験則から、厳密な ANSI Standard C にあわせてこうした設定を 行なうと支障のある場合が
       多いことがわかっています。

       ほとんどの場合は、C  プリプロセッサは明示的に実行する必要はありません。 C コンパイラが自動
       的に実行してくれるからです。しかしながら、  明示的にプリプロセッサを実行するのが有効なこと
       が個々にはあります。

       C  プリプロセッサ は、引数として infile  outfileの 2 つのファイル名を期待します。 プリプ
       ロセッサは `#include'で指定したファイルと一緒に infileを読み込みます。  入力ファイルの組み
       合わせで作られた出力は、 全て outfileに書かれます。

       infile   outfile の指定に `-'を使用することができます。infile  `-' であれば 標準入力か
       らデータを読み、outfile  `-' であれば標準出力へ結果を書きます。もし outfile もしくは両方
       のファイル名が省略された場合、    省略されたファイルの代わりに標準入力と標準出力が使われま
       す。

オプション

       以下が C プリプロセッサが受け付けるオプションの一覧です。 これらのオプションは、  プリプロ
       セッサがコンパイラから起動されている場合にも 自動的に引き渡されるので、 C プログラムをコン
       パイルする際にも指定することができます。

       -P     `#'-行番号 という行番号情報をプリプロセッサの出力に含めません。 これは、C  以外の言
              語で行番号情報が含まれているとエラーを起こす言語を 処理する場合に有用でしょう。

       -C     コメントを削除せず、そのまま出力ファイルに含めます。 マクロ呼び出しの引数に現れるコ
              メントはマクロ呼び出しの展開後にコピーされます。

       -traditional
              ANSI ではなく、旧形式の C の文法として解釈します。

       -trigraphs
              ANSI標準のトリグラフ(trigraph)構文を処理します。 これは ANSI C で 1  文字を表示する
              と定められた  `??'  で始まる  3  文字の並びです。例えば、`??/'   `\' を表しますの
              で、`'??/n'' は改行文字の文字定数となります。 厳密に言えば、GNU C  プリプロセッサの
              `-trigraphs'  オプションは ANSI C 標準を完全にはサポートしません。 が、普通のユーザ
              ならばその違いに気づく事は稀でしょう。

              トリグラフについて、これ以上知りたいとは思わないでしょ?

       -pedantic
              `#else'  `#endif' の後にコメント以外のテキストがつくといった場合に、 ANSI C  標準
              で求められる警告を出力します。

       -pedantic-errors
              `-pedantic' に似ていますが、警告ではなくエラーにします。

       -Wtrigraphs
              トリグラフがあると警告を出力します(ただし、トリグラフの処理は行います)。

       -Wcomment

       -Wcomments
              コメント開始シーケンスである  `/*' がコメント中に存在したならば警告を発生します (両
              形式は同じ効果を持ちます)。

       -Wall  `-Wtrigraphs'  `-Wcomment' (ただし `-Wtraditional'  は除く)  を指定したのと同じで
              す。

       -Wtraditional
              ANSI と伝統派の C とで異なる振る舞いをとる構文が出現した場合に 警告を発します。

       -I directory
              ディレクトリ directory をヘッダファイルを検索するディレクトリリストの末尾に追加しま
              す。 このオプションは、指定したディレクトリが  システムのヘッダファイルが格納されて
              いるディレクトリよりも先に  検索されるので、ユーザ自身の作成したバージョンで システ
              ムが提供するヘッダファイルを上書きさせることもできます。 1 つ以上の `-I' オプション
              を使用する場合、ディレクトリは左から右の順番で検索され、 標準のシステムヘッダファイ
              ルはその後になります。

       -I-    `-I-'   オプションよりも前に指定された   `-I'    オプションで与えられたディレクトリ
              は、`#include  "file"'  のインクルード文の場合にのみ検索されます。`#include <file>'
              では検索されません。

              オプション `-I-' の後のオプション `-I' に追加のディレクトリが指定された場合、それら
              のディレクトリは 全ての `#include' 文で検索されます。

              付け加えて言うならば、`-I-'          オプションを指定すると、カレントディレクトリは
              `#include "file"' 文に対する最初の検索ディレクトリではなくなります。 それゆえ、カレ
              ントディレクトリは明示的に  `-I.'  として指定された場合にのみ検索されることになりま
              す。 `-I-'  `-I.'  を双方とも指定することで、どのディレクトリがカレントディレクト
               の前に、あるいは後に検索されるかを厳密に指定することができます。

       -nostdinc
              ヘッダファイルの検索に標準システムディレクトリを用いません。`-I' オプションで指定し
              たディレクトリ(と、もし適切であるならば カレントディレクトリ)が検索されます。

       -nostdinc++
              ヘッダファイルの検索に  C++  仕様の標準ディレクトリを用いません。  が、その他の標準
              ディレクトリは検索します。 (このオプションは libg++ の構築時に用いられます。)

       -D name
              name を既定義のマクロとして、`1' に定義します。

       -D name=definition
                 name  をマクロとしてdefinition  に定義します。definition  の内容に制限はありませ
              が、プリプロセッサをシェルやシェルに類似した プログラムから起動している場合、シェル
              の文法上意味を持つスペース などの文字を保護するため、そのシェルのクォート文法を使用
              する必要が あります。もし、1 つの name に対して複数の `-D' を指定したならば、もっと
              も右側の定義が有効となります。

       -U  namename  を定義しません。同一の  name   に対して  `-U'    `-D' の双方が指定された場
       合、`-U'  `-D' に優先し、 name  は定義されません。

       -undef 非標準のマクロを一切定義しません。

       -A name(value)
              (#assert コマンドと同じ方法で) 述語   name  にトークンリスト  value  をアサートしま
              す。シェルのコマンドライン上では括弧を エスケープするなりクォートすることを忘れない
              で下さい。

              既定義のアサーション全てを取り消すのに、`-A-'  を使えます。これはまた、既定義のマク
              ロ全てを無効にします。

       -dM    プリプロセッサの結果を出力する代わりに、 プリプロセッサの実行中に定義された、既定義
              のものも含む全てのマクロの `#define' コマンドのリストを出力します。  これは、使用し
              ているプリプロセッサのそのバージョンで、 どんなマクロが既定義であるかを知る方法を提
              供してくれます。 それには、空のファイル `foo.h'  をこのオプションで処理してみればよ
              いのです。

              touch foo.h; cpp -dM foo.h

              はすべての既定義マクロの値を見せてくれるでしょう。

       -dD    `-dM' に似ていますが、2 つの相違点があります。これは既定義マクロを 出力しません。ま
              た、`#define' コマンドとプリプロセス結果の双方 を出力します。これらの出力は両方とも
              標準出力に行われます。

       -M [-MG]
              プリプロセスの結果を出力する代わりに、main  のソースファイルの依存性を 記述するmake
              規則を出力します。 プリプロセッサはソースファイルのオブジェクトファイル名、コロン、
              そのすべてのインクルードファイル名から成るmake 規則を出力します。複数のインクルード
              ファイルがある場合、規則は`\'-改行で複数行に区切られます。

              `-MG'  は、見つけられなかったヘッダファイルは(コンパイルの途中で)生成され、  ソース
              ファイルと同じディレクトリに存在するものとして扱います。`-M' と共に指定しなければな
              りません。

              この機能は自動的に Makefile を更新するのに使います。

       -MM [-MG]
              これは `-M' に似ていますが、`#include "file"'  でインクルードされるファイルのみを扱
              う点が異なります。`#include  <file>' でインクルードされるシステムヘッダファイルは無
              視されます。

       -MD file
              これも `-M'  に似ていますが、依存情報が`file'  に書き出されます。—`-MD'  を指定した
              ファイルの処理もこれに加えて行われ、`-M' のように通常の処理を抑制することはありませ
              ん。

              gcc を実行する場合は `file' 引数を指定してはいけません。gcc  は、入力ファイル名の末
              尾の `.c'  `.d' で置き換えたファイル名を出力に用いるからです。

              Mach  では、`make'  コマンドで便利なように複数のファイルを 1 つの依存規則ファイルに
              まとめるユーティリティ md が利用できます。

       -MMD file
              `-MD' に似ていますが、ユーザのヘッダファイルのみを扱い、システムヘッダは 無視する点
              が異なります。

       -H     通常の動作に加えて、 使用されたヘッダファイルのファイル名を出力します。

       -imacros file
              ファイル   file を入力として処理しますが、 標準の入力ファイルを処理する前にその結果
              の出力を破棄します。 file  によって生成される出力は捨てられるため、`-imacros  file'
              の処理結果の影響は、file 中に記述されたマクロがメインの入力ファイル中で使用可能にな
              ることだけです。 プリプロセッサは、`-imacrosfile' を処理する前に、 コマンドラインか
              ら与えられた全ての `-D'  `-U' オプションを評価します。

       -include file
              ファイル   file  を、標準の入力ファイルの前に処理し、その結果出力をインクルードしま
              す。

       -idirafter dir
              ディレクトリ dir を第 2 インクルードパスに加えます。第 2 インクルードパス中の  ディ
              レクトリは、メインインクルードパス  (オプション `-I' によって追加されます) 中にヘッ
              ダファイルを探した結果 発見できなかった場合に検索されます。

       -iprefix prefix
              prefix を、その後に続く  `-iwithprefix'  オプション用のプレフィックスとして使用しま
              す。

       -iwithprefix dir
              ディレクトリを第  2 インクルードパスに追加します。ディレクトリ名は prefix  dir 
              連結することによって得られます。ここで prefix は `-iprefix'  オプションによって指定
              されたものです。

       -lang-c

       -lang-c++

       -lang-objc

       -lang-objc++
              ソースの言語を指定します。`-lang-c++'  は、プリプロセッサに C++ のコメント文と、C++
              用の追加の デフォルトインクルードディレクトリを処理させ、`-lang-objc' は、Objective
              C  `#import' ディレクティブを使用可能にします。`-lang-c' は明示的にこれらの機能の
              切り離しを指定し、`-lang-objc++' は双方を利用可能にします。

              これらのオプションはコンパイラドライバ gcc によって生成されますが、`gcc' のコマンド
              ラインから引き渡すことはできません。

       -lint  コメント中に埋め込まれた、プログラムチェッカ  lint のコマンドを見つけ出し、それらの
              前に   `#pragma  lint'  を埋め込みます。例えば、コメント   `/*  NOTREACHED  */'  
              `#pragma lint NOTREACHED' になります。

              このオプションは直接 cpp を呼び出す場合にのみ使えます。gcc は、コマンドラインからこ
              のオプションを引き渡しません。

       -$     識別子中での `$' の使用を禁止します。 これは、標準が修正される以前は、C  標準への厳
              密な準拠のためにありました。

              本オプションは、  cpp を直接呼ぶときのみ使用可能です。 gcc はコマンド行からこれを渡
              しません。

関連項目

       info; The C Preprocessor, Richard M. Stallman.  中のエントリ `cpp'
       gcc(1); info; Using and Porting GNU CC (for version 2.0), Richard M. Stallman.  中のエント
       リ `gcc'

COPYING

       Copyright (c) 1991, 1992, 1993 Free Software Foundation, Inc.

       Permission  is  granted to make and distribute verbatim copies of this manual provided the
       copyright notice and this permission notice are preserved on all copies.

       Permission is granted to copy and distribute modified versions of this  manual  under  the
       conditions  for  verbatim  copying,  provided  that  the  entire resulting derived work is
       distributed under the terms of a permission notice identical to this one.

       Permission is granted to copy and distribute translations  of  this  manual  into  another
       language,  under  the  above conditions for modified versions, except that this permission
       notice may be included in translations approved by the Free Software Foundation instead of
       in the original English.