Provided by: manpages-ja_0.5.0.0.20180315+dfsg-1_all bug

名前

       ld - GNU リンカ

書式

       ld     [-o output] objfile...
              [-Aarchitecture] [-b input-format] [-Bstatic] [-Bdynamic] [-Bsymbolic]
              [-c commandfile] [--cref] [-d|-dc|-dp]
              [-defsym symbol = expression] [-e entry] [-embedded-relocs] [-E] [-export-dynamic]
              [-f name] [--auxiliary name] [-F name] [--filter name] [-format input-format] [-g]
              [-G size] [-h name] [-soname name] [--help] [-i] [-lar] [-Lsearchdir] [-M] [-Map
              mapfile] [-m emulation] [-n|-N] [-noinhibit-exec] [-no-keep-memory]
              [-no-warn-mismatch] [-oformat output-format] [-R filename] [-relax] [-r|-Ur]
              [-rpath directory] [-rpath-link directory] [-S] [-s] [-shared] [-sort-common]
              [-split-by-reloc count] [-split-by-file] [-T commandfile] [-Ttext textorg]
              [-Tdata dataorg] [-Tbss bssorg] [-t] [-u sym] [-V] [-v] [--verbose] [--version]
              [-warn-common] [-warn-constructors] [-warn-multiple-gp] [-warn-once]
              [-warn-section-align] [--whole-archive] [--no-whole-archive] [--wrap symbol] [-X]
              [-x]

説明

       ld は複数のオブジェクトファイルや書庫  (archive)  ファイルを結合し、それら  のデータをリロ
       ケートして、シンボルの参照をまとめる。新たな実行  プログラムをコンパイルして作成する作業の
       最終ステップは、多くの場合 ld の呼び出しとなる。

       ld はリンカコマンド言語のファイルを受け付ける。このファイルでリンク処理を明 示的に、また完
       全に制御することができる。この man ページではコマンド言 語を説明していない。コマンド言語や
       GNU リンカのその他の内容に関する詳 細は info の `ld' エントリか、マニュアルである ld:  the
       GNU linker を参照すること。

       ld   の本バージョンではオブジェクトファイル関連の作業に汎用の  BFD  ライブラ  リを用いてい
       る。これによって ld では多くの異なるフォーマットのオ  ブジェクトファイルを読み、書き、結合
       することができるようになっている  (  例えば  COFF  や a.out)。異なるフォーマットをリンクし
       て、あらゆる 種類のオブジェクトファイルを作成できる。サポートされているフォーマット や関連
       するアーキテクチャに関しては ` objdump -i' を実行すればよ い。詳細は objdump(1) を見よ。

       GNU  リンカは柔軟であるだけでなく、診断 (diagnostic) メッセージ も他のリンカより詳しい。多
       くのリンカはエラーが生じるとすぐに動作を停 止してしまうが、 ld  は可能な限り処理を続け、他
       のエラーに関しても知らせようとする  (あるいは エラーにもかかわらず出力ファイルを作成してし
       まうことさえある)。

       GNU リンカ ld は多くの状況をカバーするように作成されている。また他のリンカとできる限  り互
       換性を保つようにしてある。したがって  ld の振る舞いは、コマン ドラインや環境変数によって細
       かく制御できるようになっている。

オプション

       コマンドラインオプションのあまりの多さに怖気づくかもしれないが、実際の  作業で指定されるオ
       プションは、ほとんどの場合少ない。例として ld の良く用いられる例、サポートされている標準的
       な Unix システムで標準 Unix のオブジェクトファイルを作成する場合を考えよう。このようなシス
       テ ムで hello.o ファイルをリンクする作業は以下のようになる。

       $ ld -o output /lib/crt0.o hello.o -lc

       この例では ldoutput という名前のファイルを作成するように命令している。リンクするファイ
       ルは /lib/crt0.ohello.o および標準的な検索ディレクトリにあるライブラリ libc.a である。

       ld のコマンドラインオプションは任意の順序で指定でき、必要なだけ繰り返すこ とができる。オプ
       ションの繰り返しは、多くの場合最初のもの以外を無視する  か、先の指定 (コマンドラインの左に
       あるもの) を上書きするかになる。

       例外 (複数回の指定が意味を持つもの) は以下の通り。 -A-b (またはその同義である -format)、
       -defsym-L-l-R-u。

       リンクする  (複数の) オブジェクトファイルは objfile として与えるが、これはコマンドラインで
       オプションの後、前、あるいは混ぜ て置いても構わない。ただし objfie  をオプションのフラグと
       その引数の間に置くことはできない。

       通常リンカの実行には最低一つのオブジェクトファイルが指定されるが、異な  るフォーマットを持
       つバイナリファイルを -l-R やスクリプトコマンド言語で指定することもできる。バイナリの入力
       ファイル  が一つも指定されない場合には、リンカは出力ファイルを作成せず、 ` No input files'
       というメッセージを表示する。

       オプションの引数はオプション文字の直後にスペースなしで続けることもでき  るし、オプションの
       次に別の引数として置くこともできる。

       -Aarchitecture
              ld のこのリリースでは、このオプションは Intel 960 アーキテクチャのファミ リに対して
              のみ意味を持つ。このファミリ向けに設定された ld では、 architecture 引数は 960 ファ
              ミリのメンバーを示す  2 文字の名前のどれかを指定する。このオ プションは出力ターゲッ
              トを指定し、入力ファイルにある非互換な命令全てに 対して警告メッセージを表示する。ま
              たリンカが書庫ライブラリを検索する 方法を変更し、指定されたアーキテクチャに特有のラ
              イブラリが利用できるよ うにする。これは検索するファイルに、アーキテクチャを示す文字
              列を後置 したものを加えることによってなされる。

              例えば使用している ld のコマンドラインに -ACA または -ltry があれば、リンカは組み込
              みの検索パスと -L で指定されたパスを 探し、以下のような名前のライブラリを見つけよう
              とする。

              try
              libtry.a
              tryca
              libtryca.a

              最初の二つはどんな場合でも検索されるものであり、後の二つは  -ACA を用いたことによっ
              て加わったものである。

              ld の将来のリリースでは、同じような機能が他のアーキテクチャファミリでもサ  ポートさ
              れる可能性がある。

              -A   オプションはコマンドラインで複数回用いられると、それぞれが意味を持つ。  ただし
              アーキテクチャファミリがターゲットの組み合わせを許す場合に限られ る。それぞれの指定
              によって、   -l  で指定されたライブラリに名前のバリエーションを付けたものが検索され
              る。

       -b input-format
              コマンドラインでこのオプションに続いて指定された入力オブジェクトファイ ルのバイナリ
              フォーマットを指定する。通常この指定は必要ない。  ld はそれぞれのマシンで最も一般的
              なフォーマットをデフォルトの入力フォーマッ トとするように設定されているからである。
              input-format  はテキスト文字列で、  BFD  ライブラリによってサポートされている特定の
              フォー マットの名前である。 -format input-format はスクリプトコマンド TARGET と同じ
              効力を持つ。

              一般的なバイナリフォーマットではないファイルをリンクする場合に、このオ プションを指
              定することになる。また異なるフォーマットのオブジェクトファ       イルをリンクする際
              に、フォーマットを明示的に変更する目的に   -b   を使うこともできる。この際には   -b
              input-foramt をそれぞれのフォーマットに属するオブジェクトファイル群の前に挿入する。

              デフォルトのフォーマットは環境変数  GNUTARGET  から取得される。スクリプトでコマンド
              TARGET を用いて入力フォーマットを設定することもできる。

       -Bstatic
              共有ライブラリに対するリンクをしない。これは共有ライブラリをサポートし ているプラッ
              トフォームにおいてのみ意味を持つ。

       -Bdynamic
              動的ライブラリに対してリンクする。これは共有ライブラリをサポートしてい   るプラット
              フォームにおいてのみ意味を持つ。そのようなプラットフォームで はこのオプションは通常
              デフォルトになっている。

       -Bsymbolic
              共有ライブラリを作る場合、グローバルシンボルへの参照を共有ライブラリ内     部の定義
              (definition)  と結合する。共有ライブラリにリンクされるプログ ラムでは、通常この共有
              ライブラリ内部の定義を上書きすることができる。こ のオプションが意味を持つのは共有ラ
              イブラリをサポートする ELF プラット フォームのみである。

       -c commandfile
              commandfile  からリンクコマンドを読むように ld に指示する。これらのコマンドは ld デ
              フォルトのリンクフォーマットを完全に上書きする  (デフォルトに追加され  るわけではな
              い)。  commandfile ではターゲットフォーマットに関して必要な記述がすべてされていなけ
              ればな らない。

              リンクコマンドのスクリプトは、コマンドラインでも指定できる。これにはス クリプトの文
              字列をブラケット (`{' と `}') で囲う。

       --cref クロスリファレンスのテーブルを出力する。リンカのマップファイルが生成さ   れる場合に
              は、クロスリファレンステーブルはマップファイルに出力される。 それ以外の場合には標準
              出力に表示される。

       -d

       -dc

       -dp    これらの  3 つのオプションは等価である。複数の形式があるのは他のリンカ との互換性の
              ためである。これらのいずれかを指定すると、  ld   はリロケータブル出力ファイルが指定
              (-r)     された場合でも共通シン    ボルのための領域を割り当てる。スクリプトコマンド
              FORCE_COMMON_ALLOCATION が同じ効力を持つ。

       -defsym symbol = expression
              expression   によって与えられた絶対アドレスを含むグローバルシンボルを出力ファイルに
              生成する。このオプションは必要なだけコマンドラインに指定でき、複数のシ ンボルを定義
              することができる。 expression の指定には簡単な算術もサポートされている。 16  進定数
              や存在する他のシン  ボルを与えたり、 +- をそれらの間の足し引きに用いるこ ともで
              きる。より手の込んだ数式が必要な場合には、スクリプトでリンカコマ ンド言語を用いるこ
              とをすすめる。

       -e entryentry
              をプログラムのエントリポイントを示す シンボルとして取り扱う (デフォルトのエントリポ
              イントを上書きする)。  デフォルトと他のエントリポイントの指定方法については  ld  の
              info の *Note Entry Point:: を参照すること。

       -embedded-relocs
              このオプションが意味を持つのは GNU コンパイラやアセンブラの -membedded-pic オプショ
              ンによって生成された MIPS embedded な PIC コードをリンクする場 合だけである。これは
              リンカにテーブルを生成させる。このテーブルは、ポイ ンタ値に対して static に初期化さ
              れた全てのデータを実行時にリロケートす る際に用いられる。詳細は  testsuite/ld-empic
              内部のコードを参照のこと。

       -E

       -export-dynamic
              ELF ファイルを作成する際に、全てのシンボルをダイナミックなシンボルテー ブルに追加す
              る。通常ダイナミックシンボルテーブルには動的なオブジェクト によって用いられるシンボ
              ルのみが含まれている。このオプションは dlopen を使う場合などに必要となる。

       -f name

       --auxiliary name
              ELF 共有オブジェクトを作成する際に、内部の DT_AUXILIARY フィールドを指 定した名前に
              設定する。この指定によって、ダイナミックリンカは扱っている 共有オブジェクトのシンボ
              ルテーブルを、他の共有オブジェクト  name のシンボルテーブルの補助フィルタとして用い
              るようになる。

       -F name

       --filter name
              ELF 共有オブジェクトを作成する際に、内部の DT_FILTER フィールドを指  定した名前に設
              定する。この指定によって、ダイナミックリンカはその 共有オブジェクトのシンボルテーブ
              ルを、他の共有オブジェクト  name   のシンボルテーブルのフィルタとして用いるようにな
              る。

       -format input-format
              -b input-format と同義。

       -g     受け付けるが無視される。他のツールとの互換性のために用意されている。

       -G sizeMIPS ECOFF において、 GP レジスタを用いて最適化するオブジェクトの最大
              サイズを size に設定する。他のオブジェクトファイルフォーマットでは無視される。

       -h name

       -soname name
              ELF  共有オブジェクトを作成するとき、内部の DT_SONAME フィールドを指定 した名前に設
              定する。実行ファイルが  DT_SONAME  フィールドを持つ共有オブ  ジェクトとリンクされる
              と、これの実行時にダイナミックリンカは DT_SONAME によって指定された共有オブジェクト
              をロードしようとする (通常 はリンカに対して指定されたファイルをロードする)。

       --help コマンドラインオプションの要約を標準出力に表示して終了する。このオプショ       ンと
              --version は、他の GNU プログラムとの互換性のためダッシュ (-) 二つで始まる。こ れ以
              外のオプションは他のリンカとの互換性のためダッシュ一つで始まる。

       -i     インクリメンタルリンクを実行する (オプション -r と同じ)。

       -larアーカイブファイル
              ar をリンクするファイルのリストに加える。このオプションは何回でも指定でき  る。  ldar が指定されるごとに、 libar.a が見つかるまで検索パ スを探す。

       -Lsearchdir
              このコマンドは searchdirld の書庫ライブラリの検索パスに追加する。このオプション
              は必要なだけ指定で きる。

              デフォルトの検索パス (-L が指定されなかったときの検索パス) は ld が用いているエミュ
              レーションのモードに依存する。また設定に依存する場合   もある。リンクスクリプトでは
              SEARCH_DIR コマンドを用いてこのパスを設定することもできる。

       -M     標準出力にリンクマップを表示する。リンクマップには ld  によってマップされたシンボル
              の位置情報とグローバルな共通メモリ領域の 割当て情報が含まれている。

       -Map mapfileファイル
              mapfile  にリンクマップを出力する。リンクマップには ld によってマップされたシンボル
              の位置情報とグローバルな共通 storage の 割当て情報が含まれている。

       -m emulationリンカ
              emulation をエミュレートする。エミュレートできるもののリストは --verbose または  -V
              で得られる。このオプションはコンパイル時のデフォルト (ld の設定を行ったシステム向け
              のリンカ) を上書きする。

       -N     textdata セクションを読み書き可能にする。出力フォーマットが  Unix  スタイルのマ
              ジッ ク・ナンバーをサポートしている場合は、出力ファイルに OMAGIC がマークされる。

              -N オプションを指定するとリンカは data セグメントのページ位置調整を行わな い。

       -n     text セグメントをリードオンリーにする。可能な場合は NMAGIC が書き込まれる。

       -noinhibit-exec
              通常リンカはリンク処理の途中でエラーになると出力ファイルを生成しない。 このフラグを
              もちいると致命的でないエラーの場合には出力ファイルを残すよ うに指定できる。

       -no-keep-memory
              通常リンカはメモリ消費量よりも実行速度を優先するように最適化されている。 すなわち入
              力ファイルのシンボルテーブルがメモリにキャッシュされている。 このオプションを指定す
              ると、メモリ消費を抑えるようにな る  (必要に応じてシンボルテーブルを読み直す)。この
              オプションは  大きな実行ファイルをリンクするとき、メモリを使い果たしてしまうよう な
              場合に指定する必要がある。

       -no-warn-mismatch
              何らかの理由でマッチしない入力ファイルをいっしょにリンクしようとすると、 リンカは通
              常エラーになります。この原因としては、 それらの入力ファイルが異なるプロセッサ用に、
              あるいは異なるエンディアン用にコンパイルされたなどが考えられます。 このオプションを
              指定すると、リンカはこの種の潜在的なエラーを 黙って許可します。このオプションは不用
              意に使うべきではありません。 リンカのエラーをどうしても避けたいような、  特殊な作業
              を行っているときに限るべきです。

       -o output
              outputld によって作成されるプログラムの名前である。このオプションが指定されな
              かっ た場合は a.out がデフォルトとして用いられる。スクリプトコマンド OUTPUT  でも出
              力ファイル名を指定できる。

       -oformat output-format
              出力されるオブジェクトファイルのバイナリフォーマットを指定する。通常は このオプショ
              ンは必要ない。 ld  でのデフォルトの出力フォーマットは、それぞれのマシンで最も普通の
              フォー  マットになるように設定されているからである。 output-format はテキスト文字列
              で、 BFD ライブラリでサポートされている特定のフォーマッ  トの名前である。スクリプト
              コマンド OUTPUT_FORMAT でも出力フォーマットを指定できる。しかしこのオプションはスク
              リプトでの 指定を上書きする。

       -R filename
              シンボル名とそれらのアドレスを filename  から読み込む。しかしそれらのリロケートや出
              力への追加は行わない。これに   よって出力ファイルでは、(他のプログラムで定義された)
              メモリ上の絶対ア ドレスをシンボルを用いて参照できることになる。

       -relax 機能はマシンに依存する。現在では H8/300 でのみサポートされている。

              プラットフォームによっては、このオプションを指定するとグローバルな最適 化を行う場合
              もある。これはリンカがプログラムのアドレスを置き換える (出 力されるオブジェクトファ
              イルのアドレスモードを relax させたり新しい命 令を同期させる) 場合に可能となる。

              サポートされていないプラットフォームでは、  -relax   は受け付けられるが何も起こらな
              い。

       -r     リロケータブルな出力を生成する。すなわち再び  ld の入力として用いることができるよう
              なファイルを生成する。これはしばしば 部分 (partial) リンクと呼ばれる。また標準 Unix
              の  マジック・ナンバーをサポートする環境では、このオプションは出力ファイル のマジッ
              ク・ナンバーを OMAGIC  にする。このオプションが指定されなかった場合は、完全なファイ
              ルが生成さ れる。 C++ プログラムをリンクする場合、このオプションはコンストラクタ へ
              の参照を解決しない。 C++ の場合には代わりに -Ur を用いることができる。

              このオプションは -i と同じ。

       -rpath directory
              ディレクトリを実行時ライブラリの検索パスに追加する。これは ELF の実  行ファイルを共
              有オブジェクトとリンクするときに用いられる。  -rpath の引き数は全て結合され、ダイナ
              ミックリンカに渡される。ダイナミックリン カは、これを用いてロードする共有オブジェク
              トを実行時に決定する。  -rpath オプションはリンクに明示的に含まれている共有オブジェ
              クトによって必要と     される別の共有オブジェクトを指定するのに用いることもできる。
              -rpath-link オプションの説明を見よ。 ELF 実行ファイルの -rpath が指定されない場合に
              は、 (指定されていれば) 環境変数 LD_RUN_PATH の値が用いられる。

              -rpath オプションは SunOS で用いることもできる。 SunOS のデフォルトでは、リン  カは
              実行時の検索パスを  -L オプションで与えられたパスから生成する。 -rpath が用いられる
              と、実行時の検索パスは -rpath オプションで与えられたパスのみから生成され、 -L  オプ
              ションは無視される。これは gcc を使っていて、 -L がたくさん指定されてしまう (これら
              は NFS マウントされたファイルシ ステムかもしれない) 場合などに便利である。

       -rpath-link directory
              ELF か SunOS を用いている場合、ある共有ライブラリが別の共有ライブラリ  を必要とする
              場合がある。これは  ld -shared によるリンクで入力ファイルに共有ライブラリが含まれて
              いる場合に起こる。

              リンカが非共有 (非リロケータブル) なリンクを行っているときに、このよう な依存関係に
              遭遇すると、リンカは自動的にその必要とされている共有ライブ ラリも (明示されていなく
              ても) リンクしてしまおうとする。このような場合 に -rpath-link  オプションは検索する
              最初のディレクトリセットを指定する。 -rpath-link オプションではディレクトリ名の並び
              をコロンで区切って一度に指定すること もできるし、複数回用いて指定することもできる。

              必要な共有ライブラリが見つからないと、リンカは警告を出してリンク処理を 継続しようと
              する。

       -S     出力ファイルからデバッガのシンボル情報を削除する (全てのシンボルではな い)。

       -s     出力ファイルから全てのシンボル情報を削除する。

       -shared
              共有ライブラリを生成する。現在のところ ELF と SunOS プラットフォームで のみサポート
              されている (実際には SunOS では不要である。なぜならリンカ  は未定義シンボルが存在し
              ていたり  -e オプションが指定されている場合には自動的に共有ライブラリを生成するから
              である)。

       -sort-common
              通常 ld  がグローバルな共通シンボルをそれぞれの出力セクションに配置するにあたっ  て
              は、それらはサイズによってソートされる。まず 1 バイト変数のシンボル、 ついで 2 バイ
              ト、 4 バイト変数のシンボル、最後にそれ以外のものが並ぶ。  このオプションはアライン
              メントによって生じてしまうシンボル間のギャップ を防止する。このオプションはソートを
              行わないようにする。

       -split-by-reloc count
              出力ファイルに余分なセクションを生成して、ファイル中のそれぞれの出力セ   クションが
              count  以上のリロケーションを含まないようにする。これは  COFF オブジェクトファ イル
              フォーマットの巨大なリロケータブルファイルを、リアルタイムカーネル にダウンロードす
              る場合などに役に立つ。 COFF はセクションあたり 65535 以上のリロケーションを持てない
              からである。任意のセクションをサポートし ていないフォーマットでは、このオプションは
              機能しないことに注意。リンカ はそれぞれの入力セクションを分割して再配置するわけでは
              ない。したがって 入力ファイルのセクションに count  以上のリロケーションを含むものが
              あれば、それに対応してそれだけのリロケー ションを持った出力セクションは作成されてし
              まう。

       -split-by-file
              -split-by-reloc と似ているが、それぞれの入力ファイルに対して新たな出力セクショ ンを
              生成する。

       -Tbss org

       -Tdata org

       -Ttext orgそれぞれ出力ファイルの bssdatatext セグメント
              に対して org を開始アドレスにする。 org は 16 進の整数でなければならない。

       -T commandfile
              -c commandfile と等価である。他のツールとの互換性のために用意された。

       -t     入力ファイルを ld が処理するごとに、ファイルの名前を表示する。

       -u sym sym を出力ファイルに未定義なシンボルとして挿入する。例えばこれは、標準ライ ブラリか
              ら付加的なモジュールをリンクするトリガに使うことができる。 -u  は必要な未定義シンボ
              ルの数だけ繰り返すことができる。

       -Ur    C++  プログラム以外では、このオプションは -r と等価であり、リロケータブルな出力を生
              成する (つまり再び ld  の入力ファイルに用いることのできるファイルを出力する)。  C++
              プログラムをリンクする際には、  -Ur-r と異なり、コンストラクタへの参照を解決す
              る。

       --verbose
              ld のバージョン番号を表示し、サポートされているエミュレーションをリストす  る。入力
              ファイルがそれぞれオープンできるかどうかも表示する。

       -v, -V ld  のバージョン番号を表示する。  -V はサポートされているエミュレーションもリストす
              る。

       --version
              ld のバージョン番号を表示して終了する。

       -warn-common
              共通シンボルが他の共通シンボルやシンボル定義と結合されている場合に警告   を発する。
              Unix  のリンカはこの点には比較的寛容であるが、他の OS のリン カにはそうでないものも
              ある。このオプションはグローバルシンボルを結合す ることによって生じる問題点を見つけ
              る手がかりになるかもしれない。

       -warn-constructors
              グローバルコンストラクタが用いられたら警告を発する。これが意味を持つオ   ブジェクト
              ファイルフォーマットは少ない。 COFF や ELF では、リンカはグ  ローバルコンストラクタ
              を検出することができない。

       -warn-multiple-gp
              出力ファイルに複数のグローバルなポインタ値が必要な場合に警告を発する。 このオプショ
              ンが意味を持つのは、 Alpha のような特殊なプロセッサだけで ある。

       -warn-once
              未定義シンボルに関する警告をシンボルごとに一度だけにする。デフォルトで はそのシンボ
              ルを参照するモジュール一つについて一回警告が出る。

       -warn-section-align
              出力セクションのアドレスがアラインメントのために変更された場合に 警告を出す。通常ア
              ラインメントは入力セクションによって設定される。 アドレスは明示的に指定されなかった
              場合  (つまり SECTIONS コマンドが セクションのスタートアドレスを指定しなかった場合)
              にのみ変更されうる。

       --whole-archive
              コマンドラインでこのオプション以降に指定されたそれぞれの書庫に対して、 書庫内部の全
              てのオブジェクトファイルをリンクする (デフォルトでは書庫か ら必要なオブジェクトファ
              イルを検索する)。これは通常書庫ファイルを共有    ライブラリに変えるとき、内部のオブ
              ジェクトを全て共有ライブラリに含め るために指定される。

       --no-whole-archive
              コマンドラインでこのオプション以降に現われる書庫に対して --whole-archive オプション
              の効果を無効にする。

       --wrap symbol
              symbol に対してラッパ機能を用いる。 symbol への未定義な参照は全て __wrap_symbol  と
              して解決される。また  __REAL_symbol  への未定義な参照はすべて symbol として解決され
              る。

       -X     一時的なローカルシンボルをすべて削除する。ほとんどのターゲットでは、これは `L' で始
              まるローカルシンボルを意味する。

       -x     ローカルシンボルを全て削除する。

環境変数

       ld の動作は環境変数 GNUTARGET によって変更することができる。

       GNUTARGET-b (または等価なオプション -format) を用いない場合の 入力ファイルのオブジェク
       トフォーマットを定義する。この値は入力フォーマッ トに対して有効な BFD 名の一つでなければな
       らない。 GNUTARGETdefault に設定されていた場合には、 BFD は入力されるバイナリファ イル
       を調べて入力フォーマットを決定しようとする。これは通常は成功するが、  決定できない可能性も
       ある。オブジェクトファイルフォーマットで用いられて  いるマジック・ナンバーが一意であること
       を保証する方法は存在しないからで ある。しかし BFD をそれぞれのシステムで設定する際には、そ
       のシステムに  一般的なフォーマットが検索リストの最初の方に置かれる。したがって複数  フォー
       マットの可能性が存在した場合には、より一般的なフォーマットとして 解釈される。

関連項目

       objdump(1)
       info の `ld' および `binutils' エントリ
       ld: the GNU linker , Steve Chamberlain and Roland Pesch; The GNU Binary Utilities , Roland
       H. Pesch

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