Provided by: manpages-ja-dev_0.5.0.0.20180315+dfsg-1_all bug

名前

       sigvec, sigblock, sigsetmask, siggetmask, sigmask - BSD 版シグナル API

書式

       #include <signal.h>

       int sigvec(int sig, const struct sigvec *vec, struct sigvec *ovec);

       int sigmask(int signum);

       int sigblock(int mask);

       int sigsetmask(int mask);

       int siggetmask(void);

   glibc 向けの機能検査マクロの要件 (feature_test_macros(7)  参照):

       上記の全ての関数: _BSD_SOURCE

説明

       これらの関数は、昔ながらの BSD 版シグナル API を使用しているプログラム に対して互換性のあるインターフェー
       スを glibc で提供するものである。 この API は過去のものであり、新しいアプリケーションでは POSIX  シグナル
       API (sigaction(2), sigprocmask(2)  など) を使用すべきである。

       関数 sigvec()  は、(POSIX の sigaction(2)  と同様に) シグナル sig の動作の設定・取得を行う。 vec は、NULL
       以外の場合、 sig の新しい動作を定義した sigvec 構造体へのポインターである。  ovec  は、NULL  以外の場合、
       sig の変更前の動作を返すために使用される sigvec 構造体へのポインターである。 sig の動作を変更せずに現在の
       動作を取得するためには、 vec に NULL を指定し、 ovec に NULL でないポインターを指定すればよい。

       シグナル SIGKILLSIGSTOP に対する動作は変更できない。

       sigvec 構造体は以下の通りである:

           struct sigvec {
               void (*sv_handler)(int); /* Signal disposition */
               int    sv_mask;          /* Signals to be blocked in handler */
               int    sv_flags;         /* Flags */
           };

       sv_handler フィールドはシグナルの動作を指定するもので、 シグナルハンドラー関数のアドレスか、  SIG_DFLSIG_IGN  のいずれかを指定できる。 SIG_DFL はシグナルに適用されるデフォルトの動作を意味し、 SIG_IGN はシグ
       ナルを無視することを意味する。

       sv_handler にシグナルハンドラーのアドレスを指定した場合、 sv_mask  はハンドラーが実行中にブロックされるべ
       きシグナルのマスクを指定する。    また、ハンドラーを起動したシグナル自身はブロックされる。   SIGKILLSIGSTOP をブロックしようとした場合には、黙って無視される。

       sv_handler にシグナルハンドラーのアドレスを指定した場合、 sv_flags フィールドはハンドラーが呼ばれた際の挙
       動を制御するフラグを指定する。 このフィールドには、0 か、以下のフラグを 1個以上指定できる:

       SV_INTERRUPT
              シグナルハンドラーが停止中のシステムコールを中断した場合、  ハンドラーから復帰しても、システムコー
              ルは再開されず、 エラー EINTR で失敗する。 このフラグを指定しなかった場合、システムコールは デフォ
              ルトで再開される。

       SV_RESETHAND
              シグナルハンドラーを呼び出す前にシグナルの動作を  デフォルトにリセットする。  このフラグを指定しな
              かった場合、もう一度 sigvec() を呼び出して明示的に削除されるか、プロセスが execve(2)  を実行するま
              で、ハンドラーは設定されたままとなる。

       SV_ONSTACK
              代替シグナルスタック上でシグナルハンドラーを実行する (歴史的に、BSD では代替シグナルスタックは廃止
              された関数 sigstack() を使って設定する。POSIX では、代わりに sigaltstack(2)  を使用する)。

       マクロ sigmask()  は signum  に対する「シグナルマスク」を構成して返す。  例えば、以下のようなコードを使う
       と、 sigvec()  に渡す vec.sv_mask を初期化できる。

           vec.sv_mask = sigmask(SIGQUIT) | sigmask(SIGABRT);
                       /* Block SIGQUIT and SIGABRT during
                          handler execution */

       sigblock()       関数は、     mask     にあるシグナルをプロセスのシグナルマスクに追加し     (POSIX     の
       sigprocmask(SIG_BLOCK) と同様)、変更前のプロセスのシグナルマスクを返す。 SIGKILLSIGSTOP  をブロックし
       ようとした場合には、黙って無視される。

       sigsetmask()       関数はプロセスのシグナルマスクを     mask     で指定された値に設定し     (POSIX     の
       sigprocmask(SIG_SETMASK) と同様)、変更前のプロセスのシグナルマスクを返す。

       siggetmask()  関数はプロセスの現在のシグナルマスクを返す。この関数は sigblock(0) と等価である。

返り値

       sigvec()  関数は成功すると 0 を返す。エラーの場合、-1 を返し、 errno にエラーを示す値をセットする。

       sigblock()  と sigsetmask()  は変更前のシグナルマスクを返す。

       sigmask() マクロは signum のシグナルマスクを返す。

エラー

       sigaction(2)  と sigprocmask(2)  の「エラー」の節を参照。

属性

   マルチスレッディング (pthreads(7) 参照)
       関数 sigvec(), sigblock(), sigsetmask(), siggetmask() はスレッドセーフである。

       sigmask() マクロはスレッドセーフである。

バージョン

       バージョン 2.21 以降では、 GNU C ライブラリはもはや sigvec()  関数を  ABI  の一部として公開しなくなった。
       (後方互換性を保証するために、glibc  のシンボルのバージョン付け機構により、 古いバージョンのライブラリとリ
       ンクされたバイナリに対してはこのインターフェースが引き続き公開されている。)

準拠

       これらの関数のうち siggetmask()  以外の全ては 4.3BSD にあった。 siggetmask()  の出自ははっきりしない。 こ
       れらの関数は廃止予定であり、新しいプログラムでは使用しないこと。

注意

       4.3BSD  では、信頼性のあるシグナル処理機構を提供する  (vec.sv_mask  を 0 で sigvec() を呼び出したときと同
       様)。 System V が提供する処理機構は信頼性のないものである。 POSIX.1-2001 では、 signal() のこの点は規定し
       ないままとなっている。 さらなる詳細については signal(2)  を参照。

       BSD と System V のどちらのシステムでも シグナルを待つために、 sigpause(3)  という名前の関数が提供されてい
       るが、 この関数の引き数は両方のシステムで異なる。 詳細は sigpause(3)  を参照。

関連項目

       kill(2), pause(2), sigaction(2), signal(2), sigprocmask(2), raise(3), sigpause(3), sigset(3), signal(7)

この文書について

       この man ページは Linux man-pages プロジェクトのリリース 3.79 の一部である。 プロジェクトの説明とバグ報告
       に関する情報は http://www.kernel.org/doc/man-pages/ に書かれている。