Provided by: manpages-ja-dev_0.5.0.0.20210215+dfsg-1_all bug

名前

       fanotify_mark - ファイルシステムオブジェクトへの fanotify マークの追加、削除、変更

書式

       #include <sys/fanotify.h>

       int fanotify_mark(int fanotify_fd, unsigned int flags,
                         uint64_t mask, int dirfd, const char *pathname);

説明

       fanotify API の概要については fanotify(7) を参照。

       fanotify_mark(2)  はファイルシステムオブジェクトに対する fanotify マークの追加、削除、変更を行う。 呼び出
       し元はマークを付けるファイルシステムオブジェクトに対する読み出し許可を持っていなければならない。

       fanotify_fd 引き数は fanotify_init(2) で返されたファイルディスクリプターである。

       flags は実行する操作内容を示すビットマスクである。 以下の値のいずれか一つだけを指定しなければならない。

       FAN_MARK_ADD
              mask のイベントを mark マスク (もしくは ignore マスク) に追加する。 mask  は空であってはいけない。
              空の場合はエラー EINVAL が発生する。

       FAN_MARK_REMOVE
              引き数 mask のイベントを mark マスク (もしくは ignore マスク) から削除する。 mask は空であってはい
              けない。 空の場合はエラー EINVALが発生する。

       FAN_MARK_FLUSH
              fanotify  グループから全てのマウント  mark  か全てのマウント以外の  mark  を削除する。   flagFAN_MARK_MOUNT  が含まれる場合、 マウントに対する全ての mark がそのグループから削除される。 含まれ
              ない場合は、 ディレクトリとファイルに対する全ての mark が削除される。 FAN_MARK_MOUNT  以外のフラグ
              を FAN_MARK_FLUSH と組み合わせて使うことはできない。 mask は無視される。

       上記のどの値も指定されなかった場合、 または 2 つ以上の値が指定された場合、 呼び出しはエラー EINVAL で失敗
       する。

       これに加えて、 flags に以下の値を 0 個以上ビット単位の論理和 (OR) で指定できる。

       FAN_MARK_DONT_FOLLOW
              pathname がシンボリックリンクの場合、 リンクが参照するファイルではなく、  リンク自身にマークを付け
              る  (デフォルトでは fanotify_mark() は pathname がシンボリックリンクの場合シンボリックリンクの展開
              を行う)。

       FAN_MARK_ONLYDIR
              マークが付けられたファイルシステムオブジェクトがディレクトリでない場合、 エラー  ENOTDIR  が発生す
              る。

       FAN_MARK_MOUNT
              pathname  で指定されたマウントポイントにマークを付ける。 pathname がマウントポイント自身ではない場
              合、  pathname  を含むマウントポイントがマークされる。  マウントポイントに含まれる全てのディレクト
              リ、 サブディレクトリ、 その中のファイルが監視される。

       FAN_MARK_IGNORED_MASK
              mask のイベントの ignore マスクへの追加、もしくは削除を行う。

       FAN_MARK_IGNORED_SURV_MODIFY
              ignore  マスクは変更イベントが発生しても残り続ける。 このフラグがセットされていない場合、 無視する
              ファイルやディレクトリに対して変更イベントが発生した際に ignore マスクはクリアされる。

       mask はどのイベントに対して通知を受けるか (もしくはどのイベントを無視するか) を定義する。  以下の値から構
       成されるビットマスクである。

       FAN_ACCESS
              ファイルやディレクトリへのアクセス (読み出し) があった際にイベントを作成する (「バグ」も参照)。

       FAN_MODIFY
              ファイルが変更された (書き込み) 際にイベントを作成する。

       FAN_CLOSE_WRITE
              書き込み可能ファイルがクローズされた際にイベントを作成する。

       FAN_CLOSE_NOWRITE
              読み出し専用のファイルやディレクトリがクローズされた際にイベントを作成する。

       FAN_OPEN
              ファイルやディレクトリがオープンされた際にイベントを作成する。

       FAN_OPEN_PERM
              ファイルやディレクトリをオープンするアクセス許可が要求された際にイベントを作成する。 fanotify ファ
              イルディスクリプターが FAN_CLASS_PRE_CONTENTFAN_CLASS_CONTENT を指定されて作成されている必要が
              ある。

       FAN_ACCESS_PERM
              ファイルやディレクトリを読み出すアクセス許可が要求された際にイベントを作成する。 fanotify ファイル
              ディスクリプターが FAN_CLASS_PRE_CONTENTFAN_CLASS_CONTENT  を指定されて作成されている必要があ
              る。

       FAN_ONDIR
              ディレクトリに対するイベントを作成する。  例えば  opendir(3)、 readdir(3) (ただし「バグ」も参照)、
              closedir(3) が呼び出された場合。 このフラグが指定されなかった場合、 ファイルに対するイベントだけが
              作成される。

       FAN_EVENT_ON_CHILD
              マークされたディレクトリの直下のエントリーに対してイベントを作成する。  このフラグはマウントにマー
              クを付ける際には効果はない。  マークされたディレクトリのサブディレクトリのエントリーに対してはイベ
              ントが作成されない点に注意すること。 ディレクトリツリー全体を監視するには、 関連するマウントにマー
              クを付ける必要がある。

       以下の組み合わせ値が定義されている。

       FAN_CLOSE
              ファイルがクローズされた (FAN_CLOSE_WRITE|FAN_CLOSE_NOWRITE)。

       マークを付けるファイルシステムオブジェクトは、 ファイルディスクリプター dirfdpathname  で指定されたパ
       ス名から決定される。

       *  pathname が NULL の場合、 dirfd でマークを付けるファイルシステムオブジェクトが定義される。

       *  pathname  が  NULL  で、 dirfd が特別な値 AT_FDCWD の場合、 カレントワーキングディレクトリがマークされ
          る。

       *  pathname   が絶対パスの場合、   そのパス名によりマークを付けるファイルシステムオブジェクトが定義され、
          dirfd は無視される。

       *  pathname  が相対パスで、  dirfdAT_FDCWD でない場合、 マークを付けるファイルシステムオブジェクトは
          dirfd が参照するディレクトリに対する相対パス pathname を解釈して決定される。

       *  pathname が相対パスで、 dirfdAT_FDCWD の場合、  マークを付けるファイルシステムオブジェクトはカレン
          トワーキングディレクトリに対する相対パス pathname を解釈して決定される。

返り値

       成功すると  fanotify_mark() は 0 を返す。 エラーの場合、 -1 を返し、 errno にエラーの原因を示す値を設定す
       る。

エラー

       EBADF  無効なファイルディスクリプターが fanotify_fd で渡された。

       EINVAL 無効な値が flagsmask に指定されたか、 fanotify_fd が fanotify ファイルディスクリプターでなかっ
              た。

       EINVAL fanotify   ファイルディスクリプターが  FAN_CLASS_NOTIF  でオープンされたが、  アクセス許可イベント
              (FAN_OPEN_PERMFAN_ACCESS_PERM) のフラグがマスクに含まれている。

       ENOENT dirfdpathname で指定されたファイルシステムオブジェクトが存在しない。  このエラーはマークされて
              いないオブジェクトからマークを削除しようとした場合にも発生する。

       ENOMEM 必要なメモリーを割り当てできなかった。

       ENOSPC マークの数が 8192 の上限を超過し、 fanotify_init(2) で fanotify ファイルディスクリプターが作成され
              た際に FAN_UNLIMITED_MARKS フラグが指定されていなかった。

       ENOSYS このカーネルでは fanotify_mark() が実装されていない。 fanotify API  が利用できるのは、  カーネルで
              CONFIG_FANOTIFY が有効になっている場合だけである。

       ENOTDIR
              flagsFAN_MARK_ONLYDIR が含まれているが、 dirfdpathname がディレクトリを指定していない。

バージョン

       fanotify_mark() は Linux カーネルのバージョン 2.6.36 で導入され、 バージョン 2.6.37 で有効になった。

準拠

       このシステムコールは Linux 独自である。

バグ

       バージョン 3.16 より前の Linux カーネルでは以下のバグが存在した。

       *  flagsFAN_MARK_FLUSH  が指定されている場合、 たとえそのオブジェクトが使用されない場合であっても、
          dirfdpathname には有効なファイルシステムオブジェクトを指定しなければならない。

       *  readdir(2) は FAN_ACCESS イベントを生成しない。

       *  fanotify_mark(2) が FAN_MARK_FLUSH 付きで呼び出された場合、 flags の値が無効かはチェックされない。

関連項目

       fanotify_init(2), fanotify(7)

この文書について

       この man ページは Linux man-pages プロジェクトのリリース 3.79 の一部 である。プロジェクトの説明とバグ報告
       に関する情報は http://www.kernel.org/doc/man-pages/ に書かれている。