noble (1) fetchmail.1.gz

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名前

       fetchmail - POP, IMAP, ETRN, ODMR 機能を持つサーバからメールを取得する

書式

       fetchmail [option...] [mailserver...]
       fetchmailconf

説明

       fetchmail はメールを取得・転送するためのユーティリティです。 fetchmail はリモートのメールサーバからメール
       を取得し、 これをローカル  (クライアント)  マシンの配送システムに転送します。  受け取ったメールは、その後
       mutt(1), elm(1), Mail(1) など、 普通のメールユーザエージェントで扱うことができます。 fetchmail ユーティリ
       ティはデーモンモードで実行し、 指定した時間間隔で 1 つあるいは複数のシステムを 繰り返しポーリングすること
       ができます。

       fetchmail  プログラムは一般的なメール取得プロトコル (POP2, POP3, IMAP2bis, IMAP4, IMAPrev1) の いずれかを
       サポートしているサーバからメールを集めてくることができます。 また、ESMTP の ETRN 拡張と ODMR を使うことも
       できます。 (これらのプロトコルを説明している RFC 全ては、 このオンラインマニュアルの最後に列挙します。)

       fetchmail  は基本的に  (SLIP  や PPP 等の) オンデマンド TCP/IP 接続上で使うためのものですが、 sendmail を
       使った (送信者開始の) SMTP トランザクションを セキュリティ上の理由から認めないサイトでは、 メッセージ転送
       エージェントとしても役立つかもしれません。

       それぞれのメッセージを取得すると、 通常 fetchmail は自身が動作しているマシン (localhost) の 25 番ポートに
       SMTP 経由でこのメッセージを配送します。 この動作は、ちょうど通常の TCP/IP 接続上で メッセージが渡されたか
       のように行われます。  次に、メールはシステムの MDA (Mail Delivery Agent (メール配送エージェント)、 普通は
       sendmail(8) ですが、システムによっては smail, mmdf, exim, qmail 等が  使われているかもしれません)  経由で
       ローカルに配送されます。  したがって、配送制御機構 (.forward ファイル等) は、 システムの MDA とローカル配
       送エージェントを通じて 全て通常通り使うことができます。

       25 番ポートのリスナはないが、fetchmail のコンパイル時に 信頼できるローカル  MDA  を検知または指定された場
       合、  代わりとしてローカル配信にその  MDA  を使います。  通常、ビルド時に fetchmail は 実行可能プログラム
       procmail(1) と sendmail(1) のバイナリを探します。

       プログラム fetchmailconf  が使用可能であれば、このプログラムを使って  fetchmailrc  の設定ファイルを楽に設
       定・編集することができます。 このプログラムは X 上で動作し、 またシステム上に Python 言語と Tk ツールキッ
       トがあることが必要です。 単独ユーザモード用に初めて fetchmail を設定する場合には、  初心者モード  (Novice
       mode) を使うことをお勧めします。 上級者モード (Expert mode) を使うと、 マルチドロップ機能を含む fetchmail
       の設定を完全に制御することができます。 どちらの場合でも、`Autoprobe (自動検出)' ボタンを押すと、 指定され
       たメールサーバが最もうまくサポートしているプロトコルを教えてくれ、 そのサーバで起こる可能性がある問題も指
       摘してくれます。

一般的な操作

       fetchmail の動作はコマンドラインオプションと実行制御ファイル ~/.fetchmailrc で制御することができます。 実
       行制御ファイルの文法は後のセクションで説明します  (このファイルは fetchmailconf プログラムが編集します)。
       コマンドラインオプションは、 ~/.fetchmailrc での宣言を上書き指定します。

       問い合わせは、コマンドラインのオプションの後に指定した 全てのサーバに対して行われます。  コマンド行でサー
       バを指定していない場合には、  ~/.fetchmailrc ファイルの `poll' エントリそれぞれに対して問い合わせが行われ
       ます。

       fetchmail は、スクリプトやパイプラインで使いやすいように、 終了時に適切な終了コードを返すようになっていま
       す。 後述の「終了コード」セクションをご覧ください。

       以下のオプションで  fetchmail  の動作が変わります。  一度うまく動作する .fetchmailrc ファイルが設定できれ
       ば、その後は これらのオプションを指定する必要はほとんどないでしょう。

       ほとんど全てのオプションには対応するキーワードがあり、これらは fetchmailrc ファイルで宣言することができま
       す。

       ここでは一部の特殊なオプションは説明しておらず、   代わりに後述の「認証」と「デーモンモード」に関するセク
       ションで説明しています。

   一般設定のオプション
       -V, --version
              お使いの fetchmail のバージョン情報を表示します。メールの取得は行いません。その代わり、  fetchmail
              が実際にサーバに接続した場合に使われるはずのオプション情報全てが、  指定されているそれぞれのサーバ
              について表示されます。 パスワードやその他の名称文字列に含まれる表示不可能な文字は、 C 言語と同様に
              バックスラッシュを使った  エスケープシーケンスとして表示されます。 このオプションは、 オプションが
              希望通りに設定されていることを確かめる際に便利です。

       -c, --check
              実際にはメールの取得や削除を行わず、  取得待ちのメールがあるかどうかを示すステータスコードだけを返
              します (後述の「終了コード」を参照)。 このオプションはデーモンモードを無効にします (無意味になるた
              め)。 複数サイトへの問い合わせはうまく動作しませんし、 ETRN や ODMR でも動作しません。  既読である
              が削除されていないメールがサーバのメールボックスに残っており、  かつメール取得のプロトコルが保存さ
              れているメッセージと   新しいメッセージを区別できない場合には、偽を表す正の値が返されます。   つま
              り、このオプションは  IMAP では動作し、POP3 では動作しません。 また、POP3 では時々失敗することがあ
              ります。

       -s, --silent
              静粛モード。通常はメール取得の途中に標準エラー出力に出力される、 進行状況/ステータスメッセージを全
              て止めます (しかし、実際のエラーメッセージは止めません)。 --verbose オプションはこのオプションを上
              書きします。

       -v, --verbose
              詳細表示モード。 fetchmail とメールサーバの間でやりとりされた制御メッセージを 全て標準出力に出力し
              ます。 --silent オプションを上書きします。 このオプションを 2 つ付けると (-v -v)、追加の診断情報が
              出力されます。

   メールの扱いに関するオプション
       -a, --all
              (キーワード: fetchall) 古い (既読) メッセージと新しいメッセージを 両方ともメールサーバから取得しま
              す。   デフォルトでは、サーバが既読の印を付けていないメッセージだけを取得します。   POP3  を使う場
              合、このオプションを指定すると TOP ではなく必ず RETR が使われます。 POP2 のメール取得は、--all  が
              常に有効であるかのように動作します  (後述の「取得失敗モード」を参照)。  このオプションは  ETRN  と
              ODMR では動作しません。

       -k, --keep
              (キーワード: keep) 取得したメッセージをリモートのメールサーバに残します。 通常は、メールを取得した
              後に  メールサーバのフォルダからメッセージが削除されます。  keep オプションを指定すると、 取得した
              メッセージはメールサーバのユーザのフォルダに残ります。 このオプションは ETRN と ODMR  では動作しま
              せん。

       -K, --nokeep
              (キーワード: nokeep) 取得したメッセージをリモートのメールサーバから削除します。 このオプションを指
              定すると、取得したメールは削除されます。 .fetchmailrc 内 で keep  をデフォルト設定にしている場合に
              は、  このオプションが役に立つかもしれません。 ETRN や ODMR を使う場合には、このオプションは必ず有
              効にされます。

       -F, --flush
              POP3/IMAP 専用のオプションです。 新しいメッセージを取得する前に、古い (以前に取得した)  メッセージ
              をメールサーバから削除します。  このオプションは  ETRN と ODMR では動作しません。 注意: ローカルの
              MTA がハングし、fetchmail が異常終了した場合、 次回に  fetchmail  を起動したときに配送されていない
              メールが消されてしまいます。 あなたが良いと思うのはたぶんデフォルトの設定です: `-k' を指定しなけれ
              ば、 fetchmail は配送が成功した後に自動的にメッセージを削除します。

   プロトコルと問い合わせのオプション
       -p, --protocol <proto>
              (キーワード: proto[col]) リモートのメールサーバと通信するときに使うプロトコルを指定します。 プロト
              コルが指定されなければ、デフォルト値は AUTO です。 proto には以下のどれかを指定することができます:

              AUTO   IMAP, POP3, POP2 に試します (サポートが組み込まれていないプロトコルは飛ばします)。

              POP2   Post Office Protocol 2

              POP3   Post Office Protocol 3

              APOP   古い形式の MD5 チャレンジ認証付きの POP3 を使います。

              RPOP   RPOP 認証付きの POP3 を使います。

              KPOP   ポート 1109 番で Kerberos V4 認証付きの POP3 を使います。

              SDPS   Demon Internet の SDPS 拡張付きの POP3 を使います。

              IMAP   IMAP2bis, IMAP4, IMAP4rev1 のいずれか (fetchmail はこれらの機能を自動的に検出します)。

              ETRN   ESMTP の ETRN オプションを使います。

              ODMR   On-Demand Mail Relay の ESMTP プロファイルを使います。

       ETRN  と  ODMR  を除き、これらの選択オプションは基本的に全て同じ動作です  (標準のサーバデーモンと通信し、
       サーバのメールボックスに配送されているメールを取得します)。 ETRN モードを使うと、ESMTP 準拠のサーバ  (BSD
       sendmail  のリリース 8.8.0 以降など) に、 クラアイントマシンへの送信 SMTP 接続を即座に開かせ、 サーバの未
       配達メールのキューに入っている、 宛先がユーザのクライアントマシンになっている  全てのメールの転送を開始さ
       せることができます。  ODMR  モードでは ODMR が可能なサーバが必要で ETRN と同様に動作します。 ただし、ODMR
       モードではクライアントマシンに静的 DNS が必要ありません。

       -U, --uidl
              (キーワード: uidl) 必ず UIDL  を使うようにします  (POP3  の場合のみ有効です)。  メッセージの「新し
              さ」の確認が必ずクライアント側で行われるようになります  (UIDL は「unique ID listing (ユニークな ID
              の列挙)」を表します)。 `keep' と一緒に用い、メールボックスを、  あるユーザグループ用の新しいニュー
              スを入れておく場所として使ってください。

       -P, --port <ポート番号>
              (キーワード:  port)  port  オプションを使うと、接続する TCP/IP の ポート番号を指定することができま
              す。 このオプションが必要となることはほとんどないでしょう。 というのも、サポートされている全てプロ
              トコルにはよく知られているデフォルトの ポート番号があるからです。

       --principal <principal>
              (キーワード: principal) principal オプションを使うと、 相互認証のための principal を指定することが
              できます。 Kerberos 認証付きの POP3 と IMAP の場合に使用できます。

       -t, --timeout <秒数>
              (キーワード: timeout) timeout オプションを使うと、  サーバが応答しない際のタイムアウト時間を秒単位
              で設定することができます。  指定された秒数の間メールサーバがグリーティングメッセージを送ってこない
              か コマンドに応答しない場合、 fetchmail はサーバとの接続を切ります。  このようなタイムアウトを使わ
              なければ、 fetchmail は落ちているホストから いつまでもメールを取得しようとしてハングアップしてしま
              うかもしれません。 これは fetchmail がバックグラウンドで動作している時には  特にうっとうしいでしょ
              う。  デフォルトのタイムアウト時間があり、fetchmail -V で表示することができます。 与えられた接続で
              何度も連続してタイムアウトを受けた場合、 fetchmail  は接続が止められているものと考え、リトライを止
              めます。 これが起こった場合、接続を止められたユーザはメールで通知を受けます。

       --plugin <コマンド>
              (キーワード:  plugin) plugin オプションを使うと、TCP 接続を確立するための 外部プログラムを使うこと
              ができます。 これは SOCKS, SSL, ssh を使う場合や  ファイアウォール用の特殊な設定が必要なときに便利
              です。  プログラムは $PATH 環境変数内で検索されます。 オプションとして、"%h" と "%p" を使って、 そ
              れぞれホスト名とポート名を引き数として渡すこともできます (補間ロジックは少し原始的で、受け取られる
              引き数は空白で囲まれているか、     文字列の先頭または末尾になければいけないことに注意して下さい)。
              fetchmail はプラグインの標準入力に書き込みを行い、 プラグインの標準出力から読み込みを行います。

       --plugout <コマンド>
              (キーワード: plugout) 前の項の plugin オプションと同じですが、 このオプションは SMTP  接続に対して
              のみ使われます  (SMTP  接続ではたぶんプラグインは不要なので、  plugin オプションから分離されていま
              す)。

       -r <フォルダ名>, --folder <フォルダ名>
              (キーワード: folder[s]) メールサーバ上で、デフォルト以外の指定されたメールフォルダ (またはコンマで
              区切ったフォルダのリスト) からメールを取得します。 フォルダ名の記法はサーバに依存します。 このオプ
              ションは POP3, ETRN, ODMR では使えません。

       --tracepolls
              (キーワード: tracepolls) fetchmail が生成する Received 行に、 `polling %s account %s' という形式で
              トレース情報を入れるようにさせます。 %s の部分はユーザのリモート名とポーリングレベルに置き換えられ
              ます (通常、Received ヘッダにはサーバの本当の名前も含まれます)。  これは、受信したアカウントに基づ
              いたメールフィルタリングを 容易にするために使うことができます。

       --ssl  (キーワード:  ssl) メールサーバへの接続を SSL を使って暗号化します。サーバへの接続は、SSL によって
              守られた接続上で指定した基本プロトコルを使って行われます。 ポートが指定されていない場合は、 接続は
              基本プロトコルの  SSL  版の既知のポートで試みられます。 これは一般的には、基本プロトコルで使われる
              ポートとは異なります。 IMAP の場合、基本プロトコルはポート 143 であり、 SSL で守られたプロトコルの
              場合はポート 993 です。

       --sslcert <名前>
              (キーワード: sslcert) クライアント側の公開 SSL 証明書のファイル名を指定します。SSL による 暗号化を
              行うサーバの一部には、認証のためにクライアント側の鍵と証明書を  必要とするものもあります。ほとんど
              の場合はこれは省略してもかまいません。 このオプションは SSL セッションを確立する時にサーバに示す公
              開鍵証明書 の位置を指定します。サーバが必要としなければ、これを指定する必要はあり ません (指定して
              もかまいません)。これを必要とするサーバもありますし、 要求するけれど必要とはしないサーバもあります
              し、全く要求しないサーバも あります。これは秘密鍵 (鍵と証明書を一緒にしたファイル)  と同じファイル
              の こともありますが、これはお勧めできません。

       --sslkey <ファイル名>
              (キーワード:  sslkey) クライアント側の秘密 SSL 鍵のファイル名を指定します。SSL による 暗号化を行う
              サーバの一部には、認証のためにクライアント側の鍵と証明書を  必要とするものもあります。ほとんどの場
              合はこれは省略してもかまいません。 このオプションは SSL セッションを確立する時にサーバとの署名トラ
              ンザクション で用いる秘密鍵の位置を指定します。サーバが必要としなければ、これを指定 する必要はあり
              ません (指定してもかまいません)。これを必要とするサーバも ありますし、要求するけれど必要とはしない
              サーバもありますし、全く要求し ないサーバもあります。これは公開鍵 (鍵と証明書を一緒にしたファイル)
              と同 じファイルのこともありますが、これはお勧めできません。鍵を外すために パスワードが必要な場合に
              は、サーバとのセッションを確立する直前に  パスワードを聞かれます。そのため、デーモンモードで使うの
              は困難です。

       --sslproto <名前>
              (キーワード:  sslproto) ssl プロトコルを強制的に使用します。 指定可能な値は `ssl2', `ssl3', `tls1'
              です。 サーバとのデフォルトの接続がうまく行かなかった場合に試して下さい。

       --sslcertck
              (キーワード: sslcertck) fetchmail がローカルの信用できる証明書に対してサーバ証明書を  厳密にチェッ
              クするようにします (sslcertpath オプションを見てください)。 サーバ証明書が信頼できる署名で (直接的
              または間接的に) サインされていない場合、SSL 接続は失敗します。 このチェックにより、SSL  接続に対し
              て  経路の途中にいる人間が行う攻撃を阻止できます。 OpenSSL による証明書確認では、 CRL は現在サポー
              トされていないかもしれない点に注意してください。  このオプションを使うと、システムクロックがいくら
              か進みます。

       --sslcertpath <ディレクトリ名>
              (キーワード:  sslcertpath) fetchmail がローカルの証明書を探すディレクトリを設定します。 デフォルト
              は OpenSSL のデフォルトのディレクトリです。 ディレクトリは OpenSSL  が期待するようにハッシュされな
              ければなりません。  ディレクトリ内の証明書を追加・修正した場合は、 (OpenSSL の tools/ サブディレク
              トリに入っている) c_rehash ツールを使う必要があります。

       --sslfingerprint
              (キーワード: sslfingerprint) コロンで区切られた 16 進数表記の 2 組の数字で書かれた  サーバ・キーの
              署名  (キーの  MD5  ハッシュ)  を指定します。  16  進数の数字は大文字でなければなりません。 これは
              OpenSSL が使うデフォルトの形式で、 SSL 接続が確立されると fetchmail はこの形式で署名を表示します。
              このオプションが指定されると、  サーバ・キーの署名を与えられた署名と比較します。  一致しなかった場
              合、接続は失敗します。 これは経路の途中にいる人間が行う攻撃を阻止できます。

   配送制御オプション
       -S <hosts>, --smtphost <ホスト>
              (キーワード: smtp[host]) メールを転送するホストのリスト (1 つ以上のホスト名で、コンマで区切ります)
              を指定します。  ホストはリストの順に接続が試みられます。 最初の動作しているホストが、 今回の動作に
              おける転送先対象となります。 通常は `localhost' がリストの末尾に暗黙のデフォルト値として追加されて
              います。  しかし、Kerberos 認証を使う場合には、 fetchmail を実行しているマシンの FQDN がリストの末
              尾に 暗黙のデフォルト値として追加されます。 それぞれのホスト名には、ホストの名前の次にポート番号が
              付いています。  ポート番号とホスト名はスラッシュで区切られます。 デフォルトのポート番号は 25 (IPv6
              では ``smtp'') です。 (/ で始まる) 絶対パス名を指定した場合、 LMTP 接続を受け付ける UNIX  ソケット
              の名前として解釈されます (これは Cyrus IMAP デーモンでサポートされます)。 例:

                   --smtphost server1,server2/2525,server3,/var/imap/socket/lmtp

              このオプションは  ODMR モードで使用することができ、 fetchmail に ODMR サーバと SMTP, LMTP レシーバ
              の間の リレーをさせます。

       --fetchdomains <ホスト>
              (キーワード: fetchdomains) ETRN と ODMR モードにおいて、このオプションは  接続が行われた場合にサー
              バがメールを配送するドメインの一覧を指定します。   デフォルトは  fetchmail  が稼働しているマシンの
              FQDN です。

       -D <ドメイン>, --smtpaddress <ドメイン>
              (キーワード: smtpaddress) アドレスに追加されるドメインを指定します。 このアドレスは SMTP  で送られ
              る  RCPT  TO 行に入ります。 これが指定されなかったときは、SMTP サーバの名前 (--smtphost で指定する
              か、デフォルトの "localhost") が使われます。

       --smtpname <ユーザ@ドメイン>
              (キーワード: smtpname) SMTP で送られる RCPT TO 行に入れられるドメインとユーザを指定します。 デフォ
              ルトのユーザは現在のユーザです。

       -Z <nnn>, --antispam <nnn[, nnn]...>
              (キーワード:  antispam)  SMTP 受信プログラムからのスパム防止の応答と解釈される、 数値形式の SMTPエ
              ラーのリストを指定します。 値が -1  であれば、このオプションは無効にされます。  コマンドラインオプ
              ションの場合、 リストの値はコンマで区切らなければなりません。

       -m <コマンド>, --mda <コマンド>
              (キーワード:  mda) -mda あるいは -m オプションを使って、(25 番ポートに転送するのではなく) メールを
              直接 MDA に渡すようにできます。 メールを失うのを避けるために、 このオプションは、 ディスクが溢れて
              いる場合やリソース消費エラーなどの場合に  0  以外のステータスを返す  procmail や sendmail といった
              MDA とともに使って下さい。 0 以外のステータスは fetchmail に配送が失敗したことを知らせ、  メッセー
              ジがサーバから削除されるのを防止します。  fetchmail を root で実行すると、 ユーザ ID は MDA 経由で
              メールを配送する間に対象ユーザのものに設定されます。 これが利用できる MDA には "/usr/sbin/sendmail
              -oem -f %F %T", "/usr/bin/deliver", "/usr/bin/procmail -d %T" があります (しかし、通常は後のものは
              冗長です。 なぜならこれは通常、SMTP リスナが転送を行う先だからです)。 %T を置いた場所には、MDA  コ
              マンドに対してローカル配送アドレスが挿入されます。 メールのメッセージの From アドレスは、%F を置い
              た場所に挿入されます。 "sendmail -oem -t" のような、To/Cc/Bcc の内容宛に メールを発送する MDA の呼
              び出しを用いてはいけません。 これをするとメールのループが発生し、 あなたが大勢の postmaster から大
              目玉を食らうことになります。

       --lmtp (キーワード: lmtp) LMTP (Local Mail Transfer Protocol) 経由の配送を行います。 このオプションを選択
              した場合には、  smtphost で対象リストに指定した各ホストに対して、 サービスのポートを (スラッシュの
              サフィックスを用いて) 明示的に指定しなければなりません。 デフォルトポートの 25 は (RFC 2033 によっ
              て) 認められていません。

       --bsmtp <ファイル名>
              (キーワード:  bsmtp)  取得したメールを  BSMTP ファイルに追加します。 これは単に、メールを SMTP受信
              デーモンに渡すときに fetchmail が通常生成するであろう SMTP コマンドを含んでいます。  引き数に  `-'
              を指定すると、メールは標準出力に書き込まれます。  fetchmail が付け直した MAIL FROM と RCPT TO 行が
              正しいことの  保証はない点に注意してください。  後述の「マルチドロップメールボックスの利用と不正使
              用」の 議論における注意事項が適用されます。

   リソースの制限・制御のためのオプション
       -l <最大バイト数>, --limit <最大バイト数>
              (キーワード:  limit) サイズの最大値を 10 進数で引き数に取ります。 このサイズより大きいメッセージは
              取得されず、サーバ上に残されます     (フォアグラウンドのセッションでは、      進行状況メッセージで
              "oversized  (サイズ超過)"  であると知らされます)。 メールの取得に使われるプロトコル (特に fetchall
              オプションを指定しない IMAP  または  POP3)  によって  未読の印を付けることができる場合、  明示的に
              --limit  に  0  を指定すると、 実行制御ファイルで設定した上限値を全て上書きします。 このオプション
              は、電話料金が高くて変化もするという理由から、  メール取得の時間を厳しく制御する必要がある人のため
              のものです。 デーモンモードでは、サイズ超過の通知は 呼び出しを行ったユーザに対してメールで行われま
              す (--warning オプションを参照)。 このオプションは ETRN と ODMR では使えません。

       -w <間隔>, --warnings <間隔>
              (キーワード: warnings) 時間間隔を秒数で引き数に取ります。 デーモンモードで `limit'  オプションを付
              けて fetchmail を呼び出すと、このオプションはサイズを超過しているメッセージに関する警告が 呼び出し
              たユーザ (または `postmaster'  オプションで指定したユーザ)  に  メールで送られる時間間隔を制御しま
              す。  このような通知は常に、サイズを超過しているメッセージが見つかった  最初のポーリングの終了時に
              メールで送られます。 その後は、警告時間間隔が経過するまで再通知は止められます  (これは、後に続く最
              初のポーリングの終了時に行われます)。

       -b <最大数>, --batchlimit <最大数>
              (キーワード:  batchlimit) 接続をわざと止めてから再接続するまでに SMTP 受信プログラムに送信するメッ
              セージの最大数を指定します (デフォルト値は 0 で、これは無制限を表します)。  明示的に  --batchlimit
              に  0 を指定すると、 実行制御ファイルで設定されている上限値は全て上書きされます。 sendmail(8) は通
              常、 メッセージ終端子を受信した直後にメッセージの配送を始めますが、 そんなに素早く応答しない  SMTP
              受信プログラムもあります。 qmail(8) や smail(8) 等の MTA は、 配送ソケットが閉じられるまで配送を待
              つことがあります。 fetchmail が巨大なバッチ処理を行っている時には、 これはうっとうしい遅れを引き起
              こすかもしれません。 バッチの上限値にゼロでない値を何か設定しておくと、 このような遅れを防ぐことが
              できます。 このオプションは ETRN と ODMR では動作しません。

       -B <上限値>, --fetchlimit <上限値>
              (キーワード: fetchlimit) 指定されたサーバ 1 つからの 1 度のポーリングで取得できる メッセージ数を制
              限します。 デフォルトでは制限はありません。 明示的に --fetchlimit に 0 を設定すると、 実行制御ファ
              イルで設定した上限値を全て上書きします。 このオプションは ETRN と ODMR では動作しません。

       -e <メッセージ数>, --expunge <メッセージ数>
              (キーワード: expunge) 指定された数のメッセージの後に削除が行われるようにします。 POP2 や POP3 の場
              合には、fetchmail は QUIT を送って セッションを終わらなければ削除を行うことができません。 したがっ
              てこのオプションを on にすると、 fetchmail  は長いメール取得セッションを複数のサブセッションに分割
              し、 各サブセッションの後に QUIT を送ります。 これは、回線が切れた時に QUIT と同等の処理を行わない
              POP3 サーバで起こる行落ちに対する良い対策になります。 IMAP の場合には、 fetchmail は削除を即座に行
              わせるために、  削除を行うたびに EXPUNGE コマンドを発行するのが普通です。 これはサーバとの通信が不
              安定な時や高価な時には非常に安全な方法です。 というのも、接続が切れてしまった後に 同じメールを再び
              受け取らなくて済むからです。 しかしメールボックスが大きい場合には、 メッセージを消すたびごとにイン
              デックスを付け直す時のオーバーヘッドで、 サーバがかなり大変な目に遭うかもしれません。 ですから、接
              続の信頼性が高い場合には、  削除を行う間隔は長くしたほうが良いでしょう。 このオプションに整数 N を
              指定すると、 fetchmail は N 回目の削除の時だけ実際の削除を行います。 引き数に 0 を指定すると、削除
              は全く行われなくなります   (したがって、実行終了時まで削除は全く行われません)。   このオプションは
              ETRN と ODMR では動作しません。

   認証に関するオプション
       -u <ユーザ名>, --username <ユーザ名>
              (キーワード: user[name])  メールサーバにログインするときに使うユーザ識別情報を指定します。  適切な
              ユーザ識別情報はメールサーバとユーザの両方に依存します。 デフォルト値は fetchmail を実行したクライ
              アントマシン上でのログイン名です。

       -I <インタフェース指定>, --interface <インタフェース指定>
              (キーワード:  interface)  ポーリングを行う前に、特定のインタフェースデバイスが動作していることと、
              特定のローカルまたはリモートの IP アドレス (またはアドレス範囲) を持つことを要求します。 fetchmail
              は SLIP や PPP 経由でメールサーバに対して直接確立された point-to-point の TCP/IP  リンク上で使われ
              ることがよくあります。 これは比較的安全なチャネルです。 しかし、メールサーバへの他の TCP/IP 経路が
              存在するとき (例: リンクが別の ISP に接続されているとき)、  あなたのユーザ名とパスワードは盗聴に対
              して脆弱です  (特にデーモンモードが自動的にメールをポーリングし、 平文のパスワードを予測可能な間隔
              でネットワーク上に流している場合)。 --interface オプションを使うと、これを防ぐことができます。  指
              定されたリンクが上がっていないときや、 マッチする IP アドレスに接続されていないときには、 ポーリン
              グは飛ばされます。 フォーマットは以下です:

                   interface/iii.iii.iii.iii/mmm.mmm.mmm.mmm

              最初のスラッシュの前のフィールドはインタフェース名です (つまり、sl0, ppp0 等)。 2 番目のスラッシュ
              の前のフィールドは許可される  IP  アドレスです。 2 番目のスラッシュの後のフィールドは、許可する IP
              アドレスの範囲を 指定するマスク値です。 マスクがない場合には、255.255.255.255  (つまり、完全なマッ
              チ)  が指定されたものとして扱われます。  このオプションを現在サポートしているのは Linux と FreeBSD
              だけです。 FreeBSD 固有の情報については、後述の monitor セクションをご覧ください。

       -M <インタフェース>, --monitor <インタフェース>
              (キーワード: monitor) デーモンモードでは、アクティブでない状態が一定時間続くと、  自動的に切断され
              る一時的なリンク (例: PPP 接続) が いつまでも接続したままになる可能性があります。 このオプションは
              アクティブ状態を監視する  システムの  TCP/IP  インタフェースを指定します。  毎回のポーリング間隔の
              後、リンクが確立しているけれど    そのリンク上で他の通信がされていなければ、ポーリングは飛ばされま
              す。 しかし、fetchmail がシグナルで起動された場合は、 監視のチェックは飛ばされ、無条件にポーリング
              が行われます。 このオプションは現在 Linux と FreeBSD でのみサポートされています。 FreeBSD の場合、
              monitor オプションと interface  オプションを  root  以外のユーザで動作させるには、SGID  kmem  して
              fetchmail  のバイナリをインストールしなければなりません。 これはセキュリティホールになるかもしれま
              せんが、 fetchmail はインタフェースのデータを集めるとき だけ 実効 GID を kmem グループに設定して動
              作します。

       --auth <タイプ>
              (キーワード:  auth[enticate]) このオプションを使うと認証のタイプを指定することができます (詳しくは
              「ユーザ認証」の項をご覧ください)。 指定可能な値は、any, `password', `kerberos_v5', `kerberos' (非
              常に正確に言うと `kerberos_v4'), gssapi, cram-md5, otp, ntlm, ssh です。 (デフォルトの) any を指定
              すると、 fetchmail は、まず最初にパスワードを必要としない方法 (GSSAPI,  KERBEROS_IV)  を試します。
              次にパスワードを隠す方法 (CRAM-MD5, X-OTP, NTLM) を探します。 そして、サーバがこれらの方法のどれも
              サポートしていない場合にのみ、 パスワードを平文で渡します。 それ以外の値は、いろいろな認証方法を強
              制するために使われます (ssh は認証をさせないようにします)。 password, cram-md5, ntlm, otp 以外の値
              では、  fetchmail  による通常のパスワード問い合わせをさせないようにします。  ssh  トンネルのような
              end-to-end の安全な接続を使っている場合に、 ssh を指定して下さい。 GSSAPI または K4 を使ったプロト
              コルを使っている場合は、 gssapi または kerberos_v4 を指定して下さい。 KPOP  プロトコルを選択すると
              自動的に Kerberos 認証が選択されます。 このオプションは ETRN では動作しません。

   その他のオプション
       -f <パス名>, --fetchmailrc <パス名>
              ~/.fetchmailrc   実行制御ファイルとしてデフォルトでない名前を指定します。  <パス名>  引き数は  "-"
              (ダッシュ 1 つ、標準入力から設定を読み込むことを意味します) またはファイル名でなければなりません。
              同時に  --version  オプションも有効にしていない場合、 指定されたファイル引き数は 0600 (u=rw,g=,o=)
              以外のパーミッションを持っているか、 そうでなければ /dev/null でなければなりません。

       -i <パス名>, --idfile <パス名>
              (キーワード: idfile) POP3 の UID を保存するために使う .fetchids ファイルに別の名前を指定します。

       -n, --norewrite
              (キーワード: no rewrite) 通常、 fetchmail は取得したメール中の RFC-822 のアドレスヘッダ (To, From,
              Cc,  Bcc,  Reply-To) を編集し、 サーバに対してローカルなメールの ID が完全なアドレスに展開されます
              (@ とメールサーバのホスト名が追加されます)。 これにより、クライアントにおけるリプライで 宛先を正し
              くすることが可能になります  (このようにしない場合、メーラはクライアントマシンの ローカルユーザに送
              るべきだと考えるかもしれません!)。  このオプションはこの書き換えを無効にします。   (このオプション
              は、MTA  がメールのヘッダを編集することに対して神経質で、 これを止められることを知りたい人々をなだ
              めるために用意しています。   しかし一般的には、実際に書き換えを止めるのは良い考えではありません。)
              ETRN や ODMR を使うときには、書き換えオプションは無効です。

       -E <envelope 行>, --envelope <envelope 行>
              (キーワード: envelope) このオプションは、 fetchmail がメールの envelope アドレスのコピーを運ぶと想
              定するヘッダを変更します。 通常これは `X-Envelope-To' ですが、これは標準ヘッダではないので、  実際
              には別のものになることがあります。    後述のマルチドロップアドレス処理に関する議論を参照してくださ
              い。 特殊な場合として、`envelope "Received"' を設定すると sendmail 形式の Received  行を処理するこ
              とが可能になります。  このオプションはデフォルトですが、.fetchmailrc  ファイルで  `no envelope' を
              使って Received の処理を動作全体で無効にしていなければ、 必ずしも必要はないはずです。

       -Q <プレフィックス>, --qvirtual <プレフィックス>
              (キーワード: qvirtual) このオプションに割り当てられた文字列プレフィックスは、 envelope  オプション
              で指定されたヘッダ内で見つかった ユーザ名から削除されます (マルチドロップの名前マッチングか ローカ
              ルドメインのチェックのどちらかが利用できる場合、 これらを行うに削除が行われます)。  このオプショ
              ンは fetchmail を使ってドメイン全体のメールを集めている場合と、 お使いの ISP (またはメール転送プロ
              バイダ) が qmail を使っている場合に便利です。 qmail の基本機能の 1 つに

              `Delivered-To:'

              があります。   qmail   はローカルのメールボックスにメッセージを配達するときには必ず、   ユーザ名と
              envelope  recipient  のホスト名をこの行に書きます。 これは主にメールのループを防ぐために行います。
              接続されていないサイトに一括でメールを送る qmail の設定を行うため、 ISP のメールホストはそのサイト
              を  `Virtualhosts' 制御ファイルに書いておくのが普通であり、 これによりそのサイト宛のメールアドレス
              全てにプレフィックスが追加されます。  その結果、'username@userhost.userdom.dom.com'   宛に送られた
              メールの `Delivered-To:' 行は以下のような形になります:

              Delivered-To: mbox-userstr-username@userhost.userdom.dom.com

              ISP  は  'mbox-userstr-' プレフィックスを自由に決められますが、 よく選ばれるのはユーザのホスト名に
              マッチする文字列です。 オプション `envelope  Delivered-To:'  を使うことにより、  fetchmail  に元の
              envelope  recipient を識別させることが安全に行えますが、 正しいユーザにメールを配達するには `mbox-
              userstr-' プレフィックスを 取り除かなければなりません。 これがこのオプションの目的です。

       --configdump
              ~/.fetchmailrc を処理し、指定されたコマンドラインオプションを全て解釈し、 標準出力に設定情報を出力
              します。  設定情報は Python 言語のデータ構造配置になっています。 このオプションは fetchmailconf の
              ような Python で書かれた対話的な ~/.fetchmailrc エディタと一緒に使うためのものです。

ユーザ認証と暗号化

       ETRN を除く全てのモードではクライアントの認証が必要です。 fetchmail  における通常のユーザ認証は、  ftp(1)
       の認証機構によく似ています。  正しいユーザ ID とパスワードは、 メールサーバの内部的なセキュリティシステム
       に依存します。

       メールサーバが、あなたが通常のユーザアカウントを持っている Unix マシンならば、 あなたがいつも使っているロ
       グイン名とパスワードを  fetchmail でも使ってください。 サーバとクライアントの両方で同じログイン名を使って
       いる場合、 -u オプションでわざわざユーザ ID を指定する必要はありません。 というのも、デフォルトの動作では
       クライアントマシン上での  ログイン名をサーバマシンのユーザ ID として使うからです。 サーバマシンでは別のロ
       グイン名を使っている場合には、 -u オプションでログイン名を指定してください。 例えば、'mailgrunt' という名
       前のマシンでのログイン名が 'jsmith' である場合、 以下のようにして fetchmail を起動することになるでしょう:

              fetchmail -u jsmith mailgrunt

       fetchmail のデフォルトの動作では、接続が確立される前に ユーザにメールサーバのパスワードを問い合わせます。
       これは最も安全に fetchmail を使う方法であり、パスワードも盗まれにくなります。 パスワードは ~/.fetchmailrc
       ファイルで指定することもできます。 これはデーモンモードやスクリプトで fetchmail を使う場合に便利です。

       パスワードを指定されておらず、 fetchmail~/.fetchmailrc ファイルからパスワードを展開できなかった場合、
       fetchmail は対話的にパスワードを聞く前にユーザのホームディレクトリの ~/.netrc  ファイルを探します。  この
       ファイル中に、ユーザのメールサーバにマッチするエントリがあった場合、         そのパスワードが使われます。
       fetchmail は poll 名にマッチするものを最初に探します。  これが見つからなければ、via  名にマッチするものを
       チェックします。  ~/.netrc ファイルの詳しい文法については、オンラインマニュアルの ftp(1) を参照してくださ
       い。 (この機能を使うと、複数のファイルにパスワード情報が 分かれることを避けることができます。)

       通常のユーザアカウントを与えないメールサーバでは普通、 ユーザ ID とパスワードはサーバにメールボックスを与
       えるときに  サーバの管理者が割り当てます。 メールボックスのアカウント用の正しいユーザ ID とパスワードが分
       からなければ、 サーバの管理者に連絡しましょう。

       古いバージョンの POP3 (RFC1081, RFC1225) は メールサーバ側で rhosts  を用いる大雑把な形式の独自の認証をサ
       ポートしていました。  この RPOP の変種では、パスワードと同等であるユーザごとの固定 ID は、 予約ポートとの
       接続上で平文のまま送信されていました。 このとき、PASS コマンドでなく RPOPコマンドを使って、  特殊なチェッ
       クが必要なことをサーバに知らせていました。 fetchmail は RPOP をサポートしています (`protocol RPOP' を指定
       すると、 fetchmail に `PASS' ではなく `RPOP' を送らせることができます) が、  これは使わないことを強くお勧
       めします。 この機能は盗聴に弱いため、RFC1460 において削除されました。

       RFC1460  で  APOP  認証が導入されました。 この POP3 の変種では、APOP パスワードをサーバホストに登録します
       (サーバ上でこれを行うプログラムは、 たぶん  popauth(8)  と呼ばれるものです)。  ~/.fetchmailrc  ファイルに
       は、これと同じパスワードを書いてください。  fetchmail  がログインするたびに、パスワードとサーバにおけるグ
       リーティング時刻の 暗号学的に安全なハッシュ値がサーバに送られます。  これは、認証データベースのチェックに
       よって検査できます。

       お使いの  fetchmail  が  Kerberos  のサポート付きで構築されており、  かつ  Kerberos 認証を指定 (--auth か
       .fetchmailrc での authenticate kerberos_v4 オプションを用います) した場合、 fetchmail  は問い合わせ開始時
       に  毎回  Kerberos  チケットを取得しようとします。  注意:  poll 名か via 名のどちらかが `hesiod' ならば、
       fetchmail はメールサーバの検索に Hesiod を使おうとします。

       GSSAPI 認証による POP3 や IMAP を使う場合、 fetchmail はサーバが RFC1731 または RFC1734 に準拠する GSSAPI
       機能を備えていると仮定して使用します。  現在、この機能は Kerberos V 上でしかテストされていないので、 既に
       tiket-granting チケットを持っていることを仮定します。 標準の --user コマンドや .fetchmailrcuser  オプ
       ションを 使って、主に使っている名前とは別のユーザ名を渡すことができます。

       お使いの  IMAP デーモンがグリーティング行で PREAUTH レスポンスを返した場合には、 fetchmail はこれを通知し
       て、通常の認証手順を飛ばします。 これは例えば ssh を明示的に用いて  imapd  を起動している場合などに便利で
       す。 この場合、fetchmail が起動したときに パスワードを問い合わせるのを止めさせるために、 そのサイトでの認
       証の値 `ssh' を宣言できます。

       POP3 を使う場合には、サーバは RFC1938 準拠の 使い捨てパスワードのチャレンジ文字列を発行し、 fetchmail  は
       ユーザのパスワードをパスフレーズとして使って、     必要とされるレスポンス文字列を生成します。    これによ
       り、ネットワーク上に 暗号化されていない機密情報を流すことを避けることができます。

       Compuserve の RPA 認証 (APOP に似ています) がサポートされています。 このサポートを組み込んでいる場合、 ホ
       スト名の中に "@compuserve.com" が見つかると、 fetchmail はパスワードを平文で送らず、 RPA パスフレーズを用
       いた認証を実行しようとします。

       IMAP を使っている場合、 (Microsoft Exchange が使う) Microsoft の NTLM  認証  がサポートされます。  このサ
       ポートを組み込んでいる場合、サーバが機能を示す応答で  「AUTH=NTLM」を返すと、fetchmail は (パスワードを平
       文で送らないで) NTLM 認証を実行しようとします。 「ユーザ名@ドメイン名」の形で user オプションを指定してく
       ださい: 「@」の左の部分はユーザ名として渡され、 「@」の右の部分は NTLM ドメインとして渡されます。

       IPsec を使っている場合には、-T (--netsec) オプションを使うと、 外向きの IP 接続が初期化されるときに使われ
       る IP セキュリティリクエストを渡すことができます。 これは .fetchmailrc ファイルで `netsec' サーバオプショ
       ンを     使って行うこともできます。     どちらの場合でも、オプションの値は     inet6_apps    ライブラリの
       net_security_strtorequest() 関数が受け付ける フォーマットの文字列です。

       --ssl オプションを使うと SSL で暗号化されたサービスにアクセスできます。  これは  .fetchmailrc  ファイルで
       "ssl"  サーバオプションを使っても行えます。  SSL  による暗号化を有効にすると、 SSL セッションの調停の後に
       SSL 接続上で問い合わせが行われます。 POP3 や IMAP といった一部のサービスでは、 SSL による暗号化サービスの
       ために標準プロトコルとは別に  既知のポートが定義されています。 SSL が有効にされており、かつ明示的にポート
       が指定されていなければ、 暗号化通信のポートは自動的に選択されます。

       SSL による暗号化を行うサーバに接続するとき、 サーバは身元確認のためにクライアントに証明書を示します。  証
       明書はチェックされ、接続しようとしているサーバの名前が  証明書の中の標準名と一致することと、 証明書に書か
       れている有効期限によると 現在証明書が有効であることが確かめられます。  どちらかのチェックが失敗すると警告
       メッセージが表示されますが、   接続は継続されます。   サーバの証明書は特定の認証機関  (CA,  Certification
       Authority) によって 署名されている必要はありませんし、 「自分で署名した」証明書であってもかまいません。

       SSL による暗号化を行うサーバによっては、 クライアント側の証明書を要求することがあります。  クライアント側
       の公開  SSL 証明書と秘密 SSL 鍵を指定できます。 サーバが証明書を要求したら、クライアントの証明書は 身元確
       認のためにサーバに送られます。 サーバによっては正当なクライアントの証明書を要求し、  証明書が送られないか
       正当でなければ接続を拒否するものがあります。  サーバによっては、認められている認証機関よる署名が クライア
       ント側の証明書になされていることが必要なものもあります。 鍵ファイルと証明書ファイルのフォーマットは、  内
       部的に動作している SSL ライブラリが必要とする形式 (一般的には OpenSSL) です。

       最後に、SSL の使用について注意書きをします : ネットワーク越しに自分で署名したサーバの証明書を取得するとい
       う 上で述べたような設定では、 消極的な盗み聞きをする相手からは守れますが、 積極的に攻撃してくる相手から守
       るための助けにはなりません。  パスワードを平文で送るのに比べれば、かなり改善されますが、 中継点にいる相手
       からの攻撃は (http://www.monkey.org/~dugsong/dsniff/ にある dsniff のようなツールを使うと特に) 簡単に可能
       であることを知っておかなければなりません。  自分のメールボックスのセキュリティを真剣に考えるなら、 ssh ト
       ンネル (下記の例を参照) をお勧めします。

デーモンモード

       --daemon <間隔> または -d <間隔> を使うと fetchmail をデーモンモードで実行できます。 引き数として、ポーリ
       ングの時間間隔を秒数で指定しなければなりません。

       デーモンモードでは、  fetchmail は自分自身をバックグラウンドでずっと動作させます。 つまり、指定された各ホ
       ストへの問い合わせと、 指定された時間のスリープを繰り返します。

       したがって、単に

              fetchmail -d 900

       を実行すると、 ~/.fetchmailrc に記述された全てのホスト (キーワード `skip'  で明示的に除外されたホストは除
       きます) に対して 15 分ごとに 1 回ポーリングを行います。

       `set daemon <interval>' を ~/.fetchmailrc ファイルに書くことでポーリング間隔を設定することが可能です。 こ
       こで、<interval> は秒数を表す整数値です。 これを行うと、コマンドラインオプションの --daemon 0 または  -d0
       で上書きしない限り、 fetchmail は必ずデーモンモードで起動します。

       ユーザあたり 1 つのデーモンプロセスしか許されません。 デーモンモードでは、 fetchmail はユーザ単位のロック
       ファイルを作成してこれを保証します。

       通常は、バックグラウンドでデーモンを動作している時に fetchmail を呼び出すと、  デーモンに対して起動のシグ
       ナルを送信し、 即座にメールサーバにポーリングさせることができます。 (fatchmali を root で実行していれば起
       動シグナルは SIGHUP で、 それ以外のユーザであれば SIGUSR1 です。)  起動の動作では、認証の失敗や複数回のタ
       イムアウトによって 接続が「刺さっている」ことを示すフラグが全てクリアされます。

       オプション  --quit は、デーモンを起動させるのではなく、動作しているデーモンを殺します (そのようなプロセス
       が無ければ fetchmail が知らせてくれます)。 --quit オプションが唯一のコマンドラインオプションならば、 この
       動作だけを行います。

       quit  オプションは他のコマンドラインオプションと一緒に使うこともできます。 この場合の動作としては、他のオ
       プションと実行制御ファイルを組み合わせて   指定されていることを行う前に、動作しているデーモンを全て殺しま
       す。

       -L  <ファイル名> または --logfile <ファイル名> オプション (キーワード: set logfile) を使うと、 端末と切り
       離されている間に発生した状態メッセージを、 指定されたログファイル (オプションの後にログファイル名を続けて
       ください)  に  リダイレクトすることができます。 ログファイルは追加モードでオープンされるので、 以前のメッ
       セージは削除されません。 このオプションは主にデバッグ用の設定の場合に役に立ちます。

       --syslog オプション (キーワード: set syslog) を使うと、  可能であれば、発生した状態メッセージとエラーメッ
       セージを  syslog(3) システムデーモンに送ります。 メッセージは fetchmail の ID, LOG_MAIL の機能、 LOG_ERR,
       LOG_ALERT, LOG_INFO いずれかの優先度と一緒に記録されます。 このオプションは、サーバからメールを取得してい
       る間のデーモンの状態と   結果を示す状態メッセージとエラーメッセージを記録するためのものです。  この場合で
       も、コマンドラインオプションと .fetchmailrc の処理に対する エラーメッセージは標準エラー出力か指定されたロ
       グファイルに書かれます。 --nosyslog オプションは、これが ~/.fetchmailrc 内で有効にされているか、 -L <ファ
       イル名> または --logfile <ファイル名> オプションが使われているものとして syslog(3) の使用を無効にします。

       -N または --nodetach オプションは、デーモンプロセスの制御端末からの  バックグラウンド化や切り離しを止めま
       す。 これは主にデバッグ時に有効です。 このオプションは logfile オプションも無効にしてしまう点に注意してく
       ださい (たぶんこれではいけないのですが)。

       デーモンモードで動作して POP2 や IMAP2bis サーバに対して ポーリングしている時には、 一時的エラー (DNS  参
       照失敗や sendmail の配送拒否など) が起こると 次のポーリング周期の間には fetchall オプションが有効となりま
       す。 これは頑健さを実現する機能です。 つまり、メッセージを取得できた  (そしてメールサーバでは既読の印が付
       けられた)  けれど、 一時的エラーのためにローカルでは配送されなかった場合、 そのメールは次のポーリング周期
       のときに再び取得されます。 (IMAP の仕組みではメッセージは配達されるまで消去されません。  したがって、この
       ような問題は起こりません。)

       fetchmail がデーモンモードで動作している時に ~/.fetchmailrc ファイルを touch したり変更すると、これは次回
       のポーリングが始まる時に 検出されます。 ~/.fetchmailrc の変更が検出されると、fetchmail はこのファイルを読
       み込み直し、 自分自身を最初から起動し直します (exec(2) を使います。 新しく動作する fetchmail には、状態に
       関するそれまでの情報は一切残りません)。 ~/.fetchmailrc ファイルの文法に違反していると、 新しい  fetchmail
       は起動時に黙って静かに消えてしまうでしょう。

管理用オプション

       --postmaster <ユーザ名> オプション (キーワード: set postmaster) は、 ローカルでメールを受け取る適切なユー
       ザが見つからなかった場合に、   マルチドロップメールが転送される最終地点になるユーザ名を指定します。    通
       常、これは単に fetchmail を起動したユーザです。 起動したユーザが root であれば、 このオプションのデフォル
       ト値はユーザ `postmaster' になります。 postmaster  のユーザ名を空の文字列に設定すると、このようなメールは
       破棄されます。

       --nobounce  オプションは、RFC1894  準拠のエラーメッセージのうち、  送信者に戻される差戻しエラー (bouncing
       error) の通常の動作を止めます。 nobounce が有効な場合、メッセージは送信者ではなく  postmaster  に送られま
       す。

       --invisible   オプション   (キーワード:   set   invisible)  は  fetchmail  を見えなくしようとします。  通
       常、fetchmail は他の MTA と同じように振舞います。  つまり、送信の経路が記述されている  Received  ヘッダを
       メッセージ全てに書き込み、 転送先の MTA に、fetchmail そのものが実行されているマシンから メールが来たこと
       を知らせます。 invisible オプションが有効である場合は、 Received ヘッダは付けられず、fetchmail は転送先の
       MTA をだまして、 メールがメールサーバのホストから直接届いたと思わせようとします。

       --showdots オプション (キーワード: set showdots) は、 たとえ現在の端末 (tty) が標準出力でない場合 (例えば
       ログファイルの場合) でも、進捗状況を表すドットを表示する。 fetchmail バージョン 5.3.0 を起動した場合、 デ
       フォルトでは進捗状況を表すドットは標準出力にしか表示されません。

       --tracepolls オプションを指定することにより、fetchmail に対して "polling {label} account {user}" という形
       式の情報を Received ヘッダに加えるように指示することができます。 ここで、{label} は (指定された設定ファイ
       ル、  通常は  ~/.fetchmailrc での) アカウントラベルです。 また、{user} はメールサーバにログオンするための
       ユーザ名です。 このヘッダは、役立つヘッダ情報のない E メールをフィルタリングしたり、 アカウント毎のメール
       を別々のメールボックスに ソートして入れるのに使うことができます (例えば、メーリングリストが運営されている
       サーバにアカウントがあり、  そのアカウントを使ってメーリングリストを購読している場合に   使うことができま
       す)。 デフォルトでは、このようなヘッダは追加されません。 これは .fetchmailrc では `tracepolls' というキー
       ワードになります。

取得失敗モード

       fetchmail がメールサーバと対話する際に使うプロトコルは、かなり安全です。 25  番ポートへの転送を行う通常の
       操作では、 クライアント上の SMTP 受信プログラムが fetchmail に対して 配送するメッセージを受け取ったことを
       知らせたり、 スパム防御のために拒否したりするまでは、  (削除の印が付いていたとしても)  ホスト上のいかなる
       メッセージも消されません。

       しかし、MDA  に転送する時には、エラーの可能性はずっと高くなります MDA のなかには「安全」なものもあり、 配
       送エラーの場合や一時的なリソース資源を使い果たした場合にも、 0 以外のステータスを必ず返してくれます。  有
       名な procmail(1) プログラムは、このような動作をします。 sendmail(1) や exim(1) のようなメール転送エージェ
       ントとしてデザインされた大部分のプログラムも、 このような動作をします。  これらのプログラムは信頼できる積
       極的な返答を返してくれるので、  メールを失うリスクを負うことなく、 mda オプションをつけて使うことができま
       す。 しかし安全でない MDA では、配送が失敗した場合でも 0 を返します。  このような事が起これば、メールがな
       くなるでしょう。

       fetchmail  の通常モードは、 「新しい」メッセージだけをダウンロードしようとし、 サーバから既に直接読み出し
       た (あるいは、以前に fetchmail --keep を使って受け取った) メールには関与しません (削除もしません)。  しか
       し、--all を指定していない場合でさえ、サーバ上にある 既読のメールが取得される (そして削除される) ことがあ
       ることに お気づきになるでしょう。 このようなことが起こる理由はいくつかあります。

       まず POP2 を使っている場合が考えられます。 POP2 プロトコルには、メッセージの「新規」や「既読」の状態を 表
       現する方法がありません。  したがって、fetchmail は必ず全てのメッセージを 新しいものとして扱わなければなり
       ません。 しかし、POP2 は古くて使われなくなっているので、 これが原因のことはあまりないでしょう。

       POP3 の場合には、RFC1725 を恨んでください。 このバージョンの POP3 プロトコルの仕様では LAST  コマンドが無
       くなっているのですが、  一部の POP サーバがこれに準拠しているのです (これを調べるには、メールサーバに対し
       て  fetchmail  -v  を実行して、  問い合わせの最初の方で行われる  LAST   コマンドへの応答を見てください)。
       fetchmail  のコードでは  POP3  の UID 機能を使って埋め合わせをしようとしています。 これは、それぞれのセッ
       ションで見たメッセージの識別子を、 次のセッションまで .fetchids に保存しておくという方法です。 しかしこの
       方法では、他のクライアントで見たメッセージや、  ホスト上のメーラで直接読まれたけれど その後で消されていな
       いメッセージまでは追いかけられません。 IMAP に乗り換える方がいいでしょう。

       他に起こる可能性がある POP3 の問題として、 メールボックスの途中にメッセージを挿入するサーバが考えられます
       (VMS  のメールの実装の一部に、このようなものがあると言われています)。 fetchmail のコードでは、 新しいメー
       ルはメールボックスの最後に追加されることを想定しています。 これが成り立っていなければ、  古いメッセージの
       一部が新しいものとして扱われることがありますし、  その逆も起こります。 この問題を真っ当に解決する唯一の方
       法は、IMAP に乗り換えることです。

       POP3 の別の問題として、 ユーザのホームディレクトリに一時ファイルが作成できない場合に、 一部の POP3 サーバ
       は文書化されていない応答を返すため、 fetchmail が間違って「No mail」と報告してしまうことがあります。

       IMAP  のコードでは、サーバ上の  \Seen の有無を使って メッセージが新しいかどうかを決めています。 Unix の場
       合、fetchmail は IMAP サーバがメールユーザエージェントが設定した BSD 形式の Status フラグに注目し、  適当
       な時にこれらを使って \Seen フラグを設定することを期待します。 これは IMAP の RFC の仕様にはありませんが、
       我々が知る限りの Unix 用 IMAP サーバは全てこれを行います。 これを行わないサーバでつまずいたときには、  ホ
       スト上の既読のメッセージが  サーバには新しく見えると言った症状が現われるでしょう。 この場合 (あまり起こり
       ませんが) には、fetchmail --keep で 取得したメッセージだけが消されず、かつ既読の印が付けられます。

       ETRN と ODMR モードでは、fetchmail は実際にはメールを取得しません。 その代わりに、サーバの SMTP  リスナに
       対して、  クライアントに  SMTP  経由のキューのフラッシュを開始するように指示します。 したがって、未配送の
       メッセージしか送りません。

スパムフィルタリング

       SMTP リスナの多くでは、指定したドメインから送られてくる不要なメールを ブロックする「スパムフィルタ  (spam
       filter)」を管理者が設定できます。 この機能を呼び出す MAIL FROM あるいは DATA 行は、 (残念なことに) リスナ
       によって異なる SMTP の応答を引き出します。

       最近のバージョンの sendmail はエラーコード 571 を返します。 この返し値は RFC1893 によって  "Delivery  not
       authorized, message refused" として与えられています。

       RFC821  から置き換えられた現在のドラフトによると、  このような状況で返すべき正しい値は、  550  "Requested
       action not taken: mailbox unavailable" とされています (このドラフトでは "[E.g.,  mailbox  not  found,  no
       access, or command rejected for policy reasons]." を追加しています)。

       exim という MTA は 501 "Syntax error in parameters or arguments" を返しますが、 これはもうすぐ 550 に変更
       されます。

       postfix という MTA はスパム拒否の応答として 554 を返します。

       fetchmail のコードは応答のリストのいずれかに該当するメッセージを 認識・破棄します。  このリストはデフォル
       トでは  [571,  550, 501, 554] ですが、 `antispam' オプションを使って設定することができます。 fetchmail が
       メールを破棄してしまう状況は 3 つしか ありませんが、これはそのうちの 1 つです (残りは後述の 552,  553  エ
       ラーの場合と、  マルチドロップされたメッセージで 既に処理されているメッセージ ID を持つものを破棄する場合
       です)。

       fetchmail が IMAP サーバからメールを取得する場合に antispam の応答が検出されると、 antispam  ヘッダを取得
       した後、メッセージ本体を読むことなく 即座にメッセージを拒否します。 したがって、spam メッセージの本体をダ
       ウンロードする分の 課金を支払うことはありません。

       spambounce オプションが有効になっている場合に、  メールがスパム防御を受けると、差出人にメールを受け取らな
       かったことを知らせる RFC1892 の差戻しメッセージが送られます。

SMTP/ESMTP のエラー処理

       先程説明したスパム防御以外にも、 fetchmail は以下の SMTP/ESMTP のエラー応答に対して特殊な動作を行います:

       452 (システムのディスクが不十分です)
            後で取得できるようにサーバのメールボックスにメッセージを残します。

       552 (メッセージが固定の最大メッセージサイズを越えました)
            サーバからメッセージを削除します。差出人に差戻しメールを送ります。

       553 (送信ドメインが不正です)
            サーバからメッセージを削除します。差出人に差戻しメールを送ります。

       他のエラーでは、差出人に差戻しメールが送られます。

実行制御ファイル

       fetchmail  を設定する好ましい方法は、 .fetchmailrc をホームディレクトリに作成することです (これはテキスト
       エディタで直接行なうこともできますし、 fetchmailconf を使って対話的に行なうこともできます)。 コマンドライ
       ン引き数と、このファイル中の引き数が重なっている場合には、 コマンドライン引き数の方が優先されます。

       パスワードの機密を守るため、--version  オプションが有効でない場合には、 ~/.fetchmailrc のパーミッションは
       600 (u=rw,g=,o=) でなければなりません。 600 以外の場合には、 fetchmail は、エラー出力を行って終了します。

       fetchmail が引き数なしで実行される場合、.fetchmailrc ファイルは実行される  コマンドのリストとして読むこと
       ができます。

   実行制御の記法
       コメントは '#' で始まり、その行の最後まで続きます。 そうでない場合、このファイルは フリーフォーマットかつ
       トークン指向の文法で書かれた、 一連のサーバエントリか動作全体のオプションの記述で構成されます。

       トークンには 4 種類あります: すなわち、文法キーワード、数字 (つまり10進数を並べたもの)、 クォートされてい
       ない文字列、クォートされた文字列です。 クォートされた文字列はダブルクォートで囲まれ、空白文字を含むことが
       できます (クォートされた数値は文字列として扱われます)。  クォートされていない文字列は、空白で区切られる任
       意のトークンであり、 数値やクォートされた文字列でなく、 特殊文字 `,', `;', `:', `=' も含まないものです。

       任意の数の空白文字はサーバエントリ中のトークンを区切りますが、 それ以外には無視されます。 標準の C 言語形
       式のエスケープ文字 (\n, \t, \b, 8進数, 16進数) を用いて  表示不可能な文字列や文字列の区切り文字を文字列中
       に埋め込むことができます。

       各サーバエントリは、キーワード  `poll' または `skip'、 これに続くサーバ名、その後に続くサーバオプション、
       さらにその後に続く任意の数のユーザ記述から構成されます。 注意: 一番起こしやすい文法エラーの原因は、  ユー
       ザオプションとサーバオプションを混ぜてしまうことです。

       後方互換性のため、キーワード `server' は `poll' と同義になります。

       英語に似せるため、ノイズワード `and', `with', `has', `wants', `options' を エントリ中の任意の場所で使うこ
       とができます。 これらは無視されますが、エントリがずっと読みやすくなります。 区切り文字 ':', ';', ',' も同
       じく無視されます。

   poll  skip
       `poll'  を指定すると、fetchmail  が引き数なしで実行した時、 このホストへの問い合わせが行われます。 `skip'
       を指定すると、コマンドラインで明示的に指定しない限り   fetchmail   はこのホストにポーリングを行いません。
       (`skip' を使うと、テスト用エントリで安全に実験を行なうことや、 一時的に落ちているホスト用のエントリを簡単
       に無効にすることができます。)

   キーワード/オプションのまとめ
       以下は正式なオプションです。 大括弧 ([]) で括られているキーワードサフィックスは省略可能です。  コマンドラ
       インオプションに対応するものの後には、 `-' と適切なオプション文字があります。

       正式な動作全体のオプションを以下に示します:

       キーワード          オプション   機能
       ────────────────────────────────────────────────────────────────────
       set daemon                       バックグラウンドでのポーリング間隔
                                        を秒数で設定します。
       set postmaster                   最終的なメール受取人の名前を指定し
                                        ます。
       set no bouncemail                送信者ではなく、postmaster    にエ
                                        ラーメールを送ります。
       set no spambounce                スパム防御を受けたときに差戻しメー
                                        ルを送ります。
       set logfile                      エラーメッセージと状態メッセージを
                                        書き込むファイル名
       set idfile                       UID リストを格納するファイル名。
       set syslog                       syslog(3) を使ったエラーのログ取得
                                        を行います。
       set nosyslog                     syslog(3) を使ったエラーのログ取得
                                        を止めます。
       set properties                   fetchmail が無視する文字列の値 (拡
                                        張スクリプトが使うことがありま
                                        す)。

       以下の正式なサーバオプションを示します:

       キーワード       オプション   機能
       ─────────────────────────────────────────────────────────────────
       via                           メールサーバの  DNS   名を指定しま
                                     す。  これは  poll  名を上書きしま
                                     す。
       proto[col]       -p           プロトコルを指定します (大文字・小
                                     文字は関係ありません): POP2, POP3,
                                     IMAP, APOP, KPOP。
       local[domains]                ローカルとして扱うドメインを指定し
                                     ます。
       port             -P           TCP/IP  のサービスポートを指定しま
                                     す。
       auth[enticate]                認証のタイプを設定します (デフォル
                                     ト値は `password')。
       timeout          -t           サーバが動作していない時のタイムア
                                     ウト値を秒数で指定します (デフォル
                                     ト値は 300)。

       envelope         -E           エンベロープアドレスのヘッダ名を指
                                     定します。
       no envelope                   エンベロープアドレスの検索を無効に
                                     します。
       qvirtual         -Q           ユーザ名から取り除く、qmail のバー
                                     チャルドメインのプレフィックス。
       aka                           メールサーバの別の DNS 名
       interface        -I           サーバへのポーリングを行うためには
                                     立ち上がっていなければならない  IP
                                     インタフェースを指定します。
       monitor          -M           動作を監視する IP アドレスを指定し
                                     ます。
       plugin                        サーバ接続を確立するためのコマンド
                                     を指定します。
       plugout                       リスナ接続を確立するためのコマンド
                                     を指定します。
       dns                           マルチドロップ用の  DNS 参照を有効
                                     にします (デフォルト)。
       no dns                        マルチドロップ用の DNS  参照を無効
                                     にします。
       checkalias                    マルチドロップのために IP アドレス
                                     による比較を行います。
       no checkalias                 マルチドロップのために名前による比
                                     較を行います (デフォルト)。
       uidl             -U           POP3  で必ずクライアント側で  UIDL
                                     を使うようにします。
       no uidl                       POP3  での  UIDL  の使用を止めます
                                     (デフォルト)。
       interval                      このサイトだけを  N ポーリングサイ
                                     クル毎にチェックします。 N  は数値
                                     の引き数です。
       netsec                        IPsec セキュリティオプション要求を
                                     渡します。
       principal                     Kerberos 認証の principal を設定し
                                     ます  (imap と kerberos の場合にの
                                     み有効です)。

       正式なユーザオプションを以下に示します:

       キーワード      オプション   機能
       ────────────────────────────────────────────────────────────────
       user[name]      -u           リモートのユーザ名を設定します
                                    (name の後に `here' があると、ロー
                                    カルのユーザ名です)。
       is                           ローカルとリモートのユーザ名を繋ぎ
                                    ます。
       to                           ローカルとリモートのユーザ名を繋ぎ
                                    ます。
       pass[word]                   リモートアカウントのパスワードを指
                                    定します。
       ssl                          SSL  による暗号化を使い、 指定され
                                    た基本プロトコルを使ってサーバと接
                                    続します。
       sslcert                      クライアント側の公開  SSL 証明書を
                                    指定します。
       sslkey                       クライアント側の秘密 SSL  鍵を指定
                                    します。
       sslproto                     接続のために  ssl プロトコルを使わ
                                    せます。
       folder          -r           問い合わせをするリモートのフォルダ
                                    を指定します。
       smtphost        -S           転送先の SMTP ホスト (群) を指定し
                                    ます。

       fetchdomains                 メールを取得するドメインを指定しま
                                    す。
       smtpaddress     -D           RCPT TO 行に書くドメインを指定しま
                                    す。
       smtpname                     RCPT TO 行に書くユーザとドメインを
                                    指定します。
       antispam        -Z           スパム防御と解釈される SMTP の返し
                                    値を指定します。
       mda             -m           ローカルの配送に使う MDA  を指定し
                                    ます。
       bsmtp           -o           追加する  BSMTP バッチファイルを指
                                    定します。
       preconnect                   それぞれの接続の前に実行するコマン
                                    ド。
       postconnect                  それぞれの接続の後に実行するコマン
                                    ド。
       keep            -k           既読のメッセージをサーバから削除し
                                    ません。
       flush           -F           問い合わせの前に既読のメッセージを
                                    全てフラッシュします。
       fetchall        -a           既読・未読にかかわらず全てのメッ
                                    セージを取得します。
       rewrite                      リプライのために目的アドレスを書き
                                    換えます (デフォルト)。
       stripcr                      行末からキャリッジリターン文字を取
                                    り除きます。
       forcecr                      行末にキャリッジリターン文字を強制
                                    します。
       pass8bits                    ESMTP  リスナに対し、BODY=8BITMIME
                                    を強制します。
       dropstatus                   やってくるメールから  Status  行と
                                    X-Mozilla-Status    行を取り除きま
                                    す。
       dropdelivered                やってくるメールから  Delivered-To
                                    行を取り除きます。
       mimedecode                   quoted-printable を 8ビットの MIME
                                    形式のメッセージに変換します。
       idle                         各ポーリングの後、新しいメッセージ
                                    を待つアイドル時間 (IMAP 専用)。
       no keep         -K           既読のメッセージをサーバから削除し
                                    ます (デフォルト)。
       no flush                     問い合わせの前に既読メッセージ全て
                                    はフラッシュしません     (デフォル
                                    ト)。
       no fetchall                  新規メッセージだけを取得します (デ
                                    フォルト)。
       no rewrite                   ヘッダを書き換えません。
       no stripcr                   キャリッジリターン文字を取り除きま
                                    せん (デフォルト)。
       no forcecr                   行末にはキャリッジリターン文字を強
                                    制しません (デフォルト)。
       no pass8bits                 ESMTP リスナに BODY=8BITMIME  を強
                                    制しません (デフォルト)。
       no dropstatus                Status  ヘッダを捨てません (デフォ
                                    ルト)。
       no mimedecode                quoted-printable を 8 ビット  MIME
                                    形式の  メッセージには変換しません
                                    (デフォルト)。
       limit           -l           メッセージのサイズの上限を設定しま
                                    す。
       warnings        -w           メッセージサイズに関する警告の時間
                                    間隔を設定します。
       batchlimit      -b           1   回の接続で転送するする最大メッ
                                    セージ数。

       fetchlimit      -B           1 回の接続で取得する最大メッセージ
                                    数。
       expunge         -e           何回目のメッセージごとに削除を実行
                                    するかを指定します  (IMAP  と POP3
                                    専用)。
       tracepolls                   ポーリングトレース情報を  Received
                                    ヘッダに追加します。
       properties                   fetchmail が無視する文字列値 (拡張
                                    スクリプトで使うことができます)。

       ユーザオプションは全てサーバオプションより後でなければいけません。

        .fetchmailrc においては、`envelope' 文字列引き数の前に、 (空白で区切って) 数値を置くことができます。  こ
       の数字が指定された場合、この値はこのようなヘッダを飛ばす数です  (つまり、この引き数に 1 を指定すると、 与
       えられたタイプの 2 番目のヘッダが選択されます)。  これは、ISP  のローカルの配送エージェントが付けた  偽の
       Received ヘッダを無視する時に便利です。

   オプションスイッチに対応しないキーワード
       `folder' と `smtphost' オプションには (同等のコマンドラインオプションとは異なり)、 空白区切りまたはコンマ
       区切りの名前のリストを続けることができます。

       全てのオプションは、見た通りのコマンドライン引き数に対応しますが、 以下のものはこれに該当しません: `via',
       `interval',  `aka',  `is',  `to', `dns'/`no dns', `checkalias'/`no checkalias', `password', `preconnect',
       `postconnect', `localdomains', `stripcr'/`no stripcr', `forcecr'/`no forcecr', `pass8bits'/`no pass8bits'
       `dropstatus/no dropstatus', `dropdelivered/no dropdelivered', `mimedecode/no mimedecode', `idle/no idle',
       `no envelope'.

       `via' オプションは 同じサイトを指す複数の設定を使うためのものです。  これがある場合、文字列引き数は問い合
       わせ先の メールサーバの実際の DNS 名として扱われます。 これは poll 引き数を上書きし、これを設定を区別する
       単なるラベル  (例えば、このホストを明示的に指定する時にコマンドラインで指定するもの)   にすることができま
       す。

       `interval' オプション (数値の引き数を取ります) を使うと、 基本的なポーリング間隔より少ない頻度で サーバに
       ポーリングを行わせることができます。 `interval N' を指定すると、このオプションが割り当てられた サーバに対
       する問い合わせは N 回ごとのポーリング間隔でしか行われません。

       `is' または `to' キーワードは、その後に続くローカル (クライアント) 名 (または、= で区切られるサーバ名から
       クライアント名へのマッピング) を エントリ中のメールサーバのユーザ名と関連付けます。 is/to  のリストの最後
       の名前に `*' があれば、認識されない名前もそのまま通します。

       1  つのローカル名を使って、クライアントマシンでのユーザ名が メールサーバ上の名前と異なる時に、 メールのリ
       ダイレクトをサポートすることができます。 ローカル名が一つしかないときは、 メッセージの Received, To,  Cc,
       Bcc  ヘッダに関らず、 メールはローカルのユーザ名宛に転送されます。 この場合には、 fetchmail は DNS の参照
       を行いません。

       ローカル名 (または名前マッピング) が複数ある時には、 fetchmail のコードは取得したメールの  Received,  To,
       Cc,  Bcc  ヘッダを参照します  (これが「マルチドロップモード  (multidrop  mode)」です)。 fetchmail は poll
       名、`via', `aka', `localdomains' オプションの いずれかにマッチする、ホスト部分を持つアドレスを探し、 また
       DNS で調べるとメールサーバのエイリアスであるホスト名部分も通常は探します。 アドレスのマッチングの処理方法
       の詳しい内容については、 `dns', `checkalias', `localdomains', `aka' の説明を参照してください。

       fetchmail がメールサーバのユーザ名にも ローカルドメインにもマッチさせられない場合には、メールは差し戻され
       ます。 このメールは通常、差出人に戻されますが、 `nobounce' オプションが有効ならば、これは postmaster に送
       られます (次に、これはデフォルトで fetchmail を呼び出したユーザになります)。

       `dns' オプション (通常は有効) は、マルチドロップメールボックスから取り出した アドレスをチェックする方法を
       制御します。     このオプションが有効の時には、DNS    を使った参照を行なうことにより、    `aka'    または
       `localdomains' の宣言にマッチしないホストそれぞれのアドレスを チェックするロジックが有効になります。 メー
       ルサーバのユーザ名が、  マッチするホスト名部分に割り当てられていることが認識された時、 そのローカルマッピ
       ングがローカルの受信者のリストに追加されます。

       `checkalias' オプション (通常は無効) は、 マルチドロップモードの `dns' キーワードが実行した検出結果を拡張
       し、  エイリアスを使ってポーリングされるものの、  自分自身を識別するにはカノニカルな名前 (canonical name)
       を用いる   リモートの   MTA   をうまく扱う方法を提供します。   このようなサーバがポーリングされたときは、
       envelope アドレスが展開されたことのチェックは失敗し、 fetchmail は To/Cc/Bcc ヘッダを使った配送に戻ります
       (後述の「ヘッダ対 envelope アドレス」を参照してください)。 このオプションを指定すると、 fetchmail  に対す
       る、  poll 名とリモートの MTA が使う名前の両方に関係する全ての IP アドレスを取得し、 これらの IP アドレス
       の比較を行うことの指示になります。 これは、リモートサーバのカノニカルな名前が頻繁に変わる状況で役に立ちま
       す。  これを使わなければ、実行制御ファイルを変更する必要があります。 実行制御ファイルで `no dns' が指定さ
       れた場合は、`checkalias' は無効です。

       `aka' オプションはマルチドロップメールボックスと一緒に使うためのものです。 このオプションを使うと、サーバ
       の  DNS  的な別名のリストを  予め宣言しておくことができます。  これは、速度と容量のトレードオフを可能にす
       る、最適化のためのハックです。 マルチドロップメールボックスを処理している間に、 fetchmail  がメッセージの
       ヘッダを使ったメールサーバの名前の検索をあきらめた時、 予め宣言してある共通の名前を使うと、DNS を参照する
       はめにならないで済みます。 `aka' の引き数として与えた名前は、  拡張子としてマッチされる点に注意してくださ
       い  --  例えば `aka netaxs.com' を指定した場合、 単に netaxs.com という名前のホストにはマッチしませんが、
       pop3.netaxs.com や mail.netaxs.com といった `.netaxs.com' で終る任意のホスト名にマッチします。

       `localdomains' オプションを使うと、ローカルであると fetchmail が判断する ドメインのリストを宣言することが
       できます。  fetchmail がマルチドロップモードでアドレス行を展開し、 かつ後に続くホスト名の部分が宣言された
       ローカルドメインにマッチする時、 そのアドレスは変更されずにリスナまたは MDA に渡されます  (ローカル名マッ
       ピングは適用されません)。

       `localdomains'  を使っている場合には、  `no envelope' も指定する必要があるかもしれません。 このオプション
       は、fetchmail の通常の、 Received 行や X-Envelope-To ヘッダ、 あるいは以前に `envelope'  で設定されたヘッ
       ダの  いずれかから  envelope  アドレスを推定しようとする動作を無効にします。 デフォルトのエントリ中で `no
       envelope' を設定した場合、 `envelope <string>' を用いて個別エントリ中でこれを取り消すことが可能です。  特
       別な場合として、`envelope "Received"' で Received 行の展開の デフォルトの動作が復元されます。

       password オプションは文字列の引き数を必要とします。 この文字列はエントリのサーバで使うパスワードです。

       `preconnect' キーワードを使うと、 fetchmail がメールサーバへの接続を確立する直前に毎回実行する シェルコマ
       ンドを指定することができます。 これは、 ssh(1) に補助させて安全な POP  接続の設定をしようとする時に役に立
       つかもしれません。  コマンドがゼロでないステータスを返した場合、 そのメールサーバへのポーリングは異常終了
       します。

       同様に、`postconnect' キーワードを使うと、メールサーバへの接続が切れた 直後に毎回実行するシェルコマンドを
       指定することができます。

       `forcecr'  オプションは、LF だけで終わる行を転送の前に CRLF で終わるようにするかどうかを制御します。 厳密
       に言うと RFC821 はこれを要求しているのですが、 これを必須としている MTA はほとんどないので、 このオプショ
       ンは通常は無効になっています (このような MTA で特に使われているのは qmail だけで、 書き込み時にこれを行い
       ます)。

       `stripcr'  オプションは、取得したメールを転送する前に  キャリッジリターン文字を取り除くかどうかを制御しま
       す。 通常はこれをセットする必要はありません。 なぜなら、MDA が宣言されているときには、 これはデフォルトで
       「オン」(CR 削除が有効) となり、 SMTP  経由で転送されるときには「オフ」(CR  削除が無効)  となるからです。
       `stripcr' と `forcecr' が両方ともオンならば、`stripcr' が優先されます。

       `pass8bits' は、何にでも "Content-Transfer-Encoding: 7bit" を付けてくる 馬鹿な Microsoft のメーラをうまく
       扱うために存在します。 このオプションが無効 (デフォルト)  で、かつこのヘッダが存在すると、  fetchmail  は
       ESMTP  機能を持つリスナに対して BODY=7BIT を宣言します。 実際には 8-bit ISO や KOI-8 の文字集合を使ってい
       るメッセージの場合、 これは問題を起こします。 これらの文字は上位ビットが全て落とされてしまうため、 文字化
       けしてしまいます。  `pass8bits'  がオンであれば、  fetchmail  は  ESMTP  機能を持つリスナ全てに対して必ず
       BODY=8BITMIME を宣言します。 リスナが 8 ビットクリーンであれば (最近のめぼしいものは全部そうです)、  たぶ
       んうまくいくでしょう。

       `dropstatus'  オプションは、取得したメール中の空でない Status 行と X-Mozilla-Status 行を残す (デフォルト)
       か破棄するかを制御します。 これらを残すと、お使いの MUA で (もしあれば)  どのメッセージがサーバ上で既読の
       印が付けられているかを知ることができます。 一方、この動作は新着メール通知プログラムの一部を混乱させること
       があります。 これらのプログラムは、 Status 行が付いているものは全て既読と想定するのです。 (注意: 一部のバ
       グっぽい POP サーバが付ける 空の Status 行は無条件に削除されます。)

       `dropdelivered'  オプションは、取得したメール中の Delivered-To ヘッダを残す (デフォルト) か破棄するかを制
       御します。 このヘッダは、メールサーバ Qmail と Postfix が ループを防止するために使用していますが、 同じド
       メイン内でメールサーバを「ミラー」しようとする場合は邪魔になります。 このオプションは、注意して使用して下
       さい。

       `mimedecode' オプションは、quoted-printable エンコーディングを用いている MIME メッセージを純粋な 8 ビット
       データに自動的に変換するかどうかを制御します。   ESMTP   機能を持ち、8  ビットクリーンなリスナ  (これには
       sendmail などの有名な  MTA  の大部分が含まれます)  に  メールを配送する場合には、  このオプションを使うと
       quoted-printable  で書かれた メッセージヘッダとデータは自動的に 8 ビットデータに変換され、 メールを読むと
       きに理解しやすくなります。 お使いの電子メールプログラムが MIME メッセージを扱えるならば、  このオプション
       は必要ありません。   mimedecode   オプションはデフォルトで無効になっています。   なぜなら、ヘッダに対して
       RFC2047 の変換を行うと文字集合の情報が消えてしまい、 ヘッダのエンコーディングが本文のエンコーディングと異
       なる場合に 好ましくない結果になるからです。

       `idle' オプションは IMAP サーバが RFC2177 IDLE コマンド拡張を サポートしている場合にのみ使用できます。 こ
       のオプションが設定されていて、 かつ IDLE コマンドをサポートしていることを fetchmail が検知した場合、 ポー
       リングの終了毎に IDLE コマンドが発行されます。 このコマンドを使うことで、 IMAP サーバに接続をオープンに保
       持させ、 新しいメールが来たことをクライアントに通知させます。 頻繁にポーリングを行う必要がある場合、 IDLE
       コマンドは、TCP/IP  接続とログイン/ログアウトシーケンスをなくすことで、  バンド幅を押えることができます。
       一方で、IDLE 接続は fetchmail  のほとんどの時間を占めてしまいます。  なぜなら、IDLE  コマンドは接続を切ら
       ず、 サーバが IDLE をタイムアウトしない限り 別のプールが起こることを許可してしまうためです。 複数のフォル
       ダがある場合も動作せず、 最初のフォルダのみがポーリングされます。

       `properties' オプションは拡張のための機構です。 これは文字列の引き数を取りますが、fetchmail  自身はこれを
       無視します。  この文字列引き数を使って、 設定情報を必要とするスクリプトのための情報を保持することができま
       す。 特に、`--configdump'  オプションの出力は、 そのまま Python スクリプトとして利用できる、 ユーザエント
       リに関連するプロパティとなります。

   その他の実行制御オプション
       `here'  と  `there' は、英語と同じような意味で使える便利な単語です。 通常 `user eric is esr' は、リモート
       ユーザ `eric' 宛のメールが `esr' 宛に配達されるという意味です。 しかし、`user eric there is esr here'  と
       書くことでもっと分かりやすくしたり、  `user  esr here is eric there' と書いて意味を反対にすることができま
       す。

       `protocol' キーワードで使用できる有効なプロトコル識別子を以下に示します:

           auto (または AUTO)
           pop2 (または POP2)
           pop3 (または POP3)
           sdps (または SDPS)
           imap (または IMAP)
           apop (または APOP)
           kpop (または KPOP)

       有効な認証のタイプは `any', `password', `kerberos', 'kerberos_v5', `gssapi', `cram-md5',  `otp',  `ntlm',
       `ssh`  です。 `password' タイプは普通のパスワード送信による認証を指定します (パスワードはプレーンテキスト
       のこともあれば、 APOP のようにプロトコル固有の暗号化がされていることもあります)。 `kerberos' を指定すると
       パスワード認証は行われず、  fetchmail はそれぞれの問い合わせの開始時に Kerberos のチケットを取得し、 パス
       ワードとして任意の文字列を送信しようとします。 `gssapi' を指定すると fetchmail は GSSAPI 認証を使います。
       さらに詳しい情報については `auth' キーワードの説明を参照してください。

       `kpop'  を指定すると、1109 番ポート上で Kerberos V4 認証を使う POP3 プロトコルが設定されます。 これらのデ
       フォルト値は、後に現われるオプションによって上書きされます。

       グローバルオプションを指定する文は現在  4  つあります。  `set   logfile'   の後に文字列を記述したものは、
       --logfile  オプションの指定と同じグローバルな設定を行います。 コマンドラインの --logfile はこれを上書きし
       ます。 また `set daemon' は、--daemon オプションと同じように ポーリング間隔を設定します。  これはコマンド
       ラインの --daemon オプションで上書きすることができます。 特例として、--daemon 0 を使って、 強制的にフォア
       グラウンド動作をさせることができます。 `set postmater' 文は、ローカルで一致するものがない場合に  マルチド
       ロップメールがデフォルトで送られるアドレスを設定します。  最後に、`set syslog' を指定するとログメッセージ
       が syslogd(8) に 送られるようになります。

RFC 822 との相互作用

       メッセージの送信アドレスを決めようとするとき、 fetchmail は以下の順でヘッダを参照して行きます:

               Return-Path:
               Resent-Sender: (@ または ! を含んでいない場合は無視される)
               Sender: (@ または ! を含んでいない場合は無視される)
               Resent-From:
               From:
               Reply-To:
               Apparently-From:

       送信アドレスはログの記録と、 SMTP に転送する時の MAIL FROM アドレスの設定のために使われます。  この順序は
       マルチドロップモードでメーリングリストの受信を  うまく処理するためのものです。 その目的は、ローカルアドレ
       スが存在しない場合に、     差し戻しメッセージがメールを出した人やメーリングリスト本体にむやみに返されず、
       メーリングリストの管理者に届くようにすることです (こちらの方がまだマシです)。

       マルチドロップモードでは、宛先のヘッダは以下のように処理されます:  最初に、fetchmail  は Received: ヘッダ
       (あるいは、`envelope' で指定した任意のヘッダ) を探し、 ローカルの受信者アドレスを決めます。  もしメールが
       複数の受信者に宛てたものであれば、   Received  は受信者のアドレスという点では全く情報を持っていないでしょ
       う。

       次に、fetchmail は Resent-To:, Resent-Cc:, Resent-Bcc: 行を探します。  これらのヘッダが存在する場合、これ
       らには最終的な受信者が書かれており、  対になっている To:/Cc:/Bcc: よりも優先されます。 もし Resent-* 行が
       存在しなければ、 To:, Cc:, Bcc:, Apparently-To: 行が探されます。 (Resent-To: があると、To: アドレスが指し
       ている人物は 既にそのメールのコピーを受け取っているものと考えられます。)

設定例

       以下の多くの例では、password  宣言があるが、 これは主に例示のためのものです。 アカウント/パスワードのペア
       を $HOME/.netrc ファイルに 隠しておくことをお勧めします。 このファイルは fetchmail だけでなく ftp(1) やそ
       の他のプログラムでも 使うことができます。

       基本フォーマットを以下に示します:

         poll SERVERNAME protocol PROTOCOL username NAME password PASSWORD

       例:

         poll pop.provider.net protocol pop3 username "jsmith" password "secret1"

       省略形を使えるものもあります:

         poll pop.provider.net proto pop3 user "jsmith" password "secret1"

       複数のサーバを並べることができます:

         poll pop.provider.net proto pop3 user "jsmith" pass "secret1"
         poll other.provider.net proto pop2 user "John.Smith" pass "My^Hat"

       上記の 2 つの例について、空白文字とノイズワードをいくつか増やしたもの を示します:

         poll pop.provider.net proto pop3
             user "jsmith", with password secret1, is "jsmith" here;
         poll other.provider.net proto pop2:
             user "John.Smith", with password "My^Hat", is "John.Smith" here;

       こう書いた方がずっと読みやすいですが、処理の手間はそんなにかかりません (起動時に一度行われるだけです)。

       パラメータ文字列に空白文字を含める必要がある場合には、  文字列をダブルクォートで囲みましょう。 以下のよう
       な形です:

         poll mail.provider.net with proto pop3:
               user "jsmith" there has password "u can't krak this"
                           is jws here and wants mda "/bin/mail"

       最初のサーバ記述では、名前の前にキーワード `poll' ではなく、 キーワード`defaults'  を置くことができます。
       このようなレコードは、  全ての問い合わせで使われるデフォルト値として解釈されます。 これは個別のサーバ記述
       で上書きすることができます。 つまり、以下のように書くことができます:

         defaults proto pop3
               user "jsmith"
         poll pop.provider.net
               pass "secret1"
         poll mail.provider.net
               user "jjsmith" there has password "secret2"

       サーバごとに複数のユーザを指定することもできます   (これが役に立つのは多分、   root    がデーモンモードで
       fetchmail を実行するときだけでしょう)。 1 人のユーザ記述は `user' キーワードで始まり、 ユーザエントリが複
       数ある場合には、 このキーワードがユーザ指定それぞれに含まれていなければなりません。 以下に例を示します:

         poll pop.provider.net proto pop3 port 3111
               user "jsmith" with pass "secret1" is "smith" here
               user jones with pass "secret2" is "jjones" here keep

       これは、ローカルのユーザ名 `smith' を the pop.provider.net のユーザ名  `jsmith'  に対応させ、  ローカルの
       ユーザ名  `jjones' を pop.provider.net のユーザ名 `jones' に対応させます。 `jones' のメールはダウンロード
       後もサーバーに残されます。

       マルチドロップメールボックス用の取得を行う簡単な設定がどんな感じかを 以下に示します:

         poll pop.provider.net:
               user maildrop with pass secret1 to golux 'hurkle'='happy' snark here

       これは、サーバ上のアカウント `maildrop' がマルチドロップボックスであり、 その中のメッセージはサーバのユー
       ザ名 `golux', `hurkle', `snark' に対して 展開するという指定です。 これはさらに、`golux' と `snark' はクラ
       イアントでも サーバと同じ名前を持つけれど、  サーバのユーザ  `hurkle'  宛のメールは  クライアントのユーザ
       `happy' に配送することも指定します。

       別の種類のマルチドロップ接続の例を示します:

         poll pop.provider.net localdomains loonytoons.org toons.org:
               user maildrop with pass secret1 to * here

       これも、サーバ上のアカウント    `maildrop'   が   マルチドロップボックスであることを指定します。   これは
       fetchmail に対し、 loonytoons.org や toons.org ドメイン内のアドレス全て (`joe@daffy.loonytoons.org'  のよ
       うなサブドメインのアドレスも含みます)  は 変更せずにローカルの SMTP リスナへ渡すことを指示します。 これを
       行うときにはメールのループには注意してください!

       ssh と plugin オプションを用いた一つの設定例を示します。 問い合わせは、ssh を経由して、imapd の標準入力と
       標準出力で直接行われます。 この設定では IMAP 認証が飛ばされることに注意して下さい。

       poll mailhost.net with proto imap:
               plugin "ssh %h /usr/sbin/imapd" auth ssh;
                    user esr is esr here

マルチドロップメールボックスの良い使い方と良くない使い方

       ローカルの受信者を複数持つ機能は注意して使ってください。 痛い目を見るかもしれません。 ETRN と ODMR モード
       ではマルチドロップ機能は全く使えない点に注意してください。

       また、マルチドロップモードでは複製されたメールは 消される点にも注意してください。  あるメールが複製されて
       いると判断されるのは、  直前のメッセージと同じメッセージ ID が付いていて、 複数のアドレスが指定されている
       場合です。 このようにメッセージが連続することは、 複数のユーザ宛の 1 通のメールのコピーが 1  つのマルチド
       ロップメールボックスに配送された時に起こります。

   ヘッダ対 envelope アドレス
       基本的な問題は、メールサーバに複数のユーザのメールを  1 つのメールドロップへ投げさせることにより、 それぞ
       れのメールが実際に届けられていたユーザに関する、 もしかすると非常に重要かもしれない情報 (`envelope アドレ
       ス', RFC822 の To/Cc/Bcc ヘッダとは対立するものです) を 捨ててしまう可能性があることです。 この `envelope
       アドレス' は、 メールを適切に振り分けるために必要なアドレスです。

       fetchmail が  envelope  アドレスを推定できることも時々あります。  メールサーバの  MTA  が  sendmail  であ
       り、メールの受信者が 1 人しかいない場合、MTA は envelope アドレスを Received ヘッダに与える `by/for' の項
       を書いているでしょう。 しかし、これは他の MTA でも確実に動作するとは言えませんし、 複数の受信者がいる場合
       にも動作しません。  デフォルトでは、fetchmail  はこれらの行で envelope アドレスを探します。 -E "Received"
       または `envelope Received' を指定すると 動作をこのデフォルトに戻すことができます。

       これを行う代わりに、一部の SMTP  リスナやメールサーバは、  envelope  アドレスのコピーを持つヘッダを各メッ
       セージに挿入します。 このヘッダは (存在するならば) `X-Envelope-To' のことがよくあります。 -E オプションま
       たは `envelope' オプションを用いると、  fetchmail  が想定するヘッダを変更することができます。  この種類の
       envelope  ヘッダを書くと、(ブラインドコピーの受信者も含めた) 全ての受信者の名前がメッセージ受信者に明らか
       になってしまいます。 したがって、これをセキュリティ/プライバシーの問題であると 考えるシステム管理者もいま
       す。

       `X-Envelope-To' を少し変えたものが、 qmail がメールのループを避けるために追加する `Delivered-To' ヘッダで
       す。 これは、通常はユーザのドメインに  マッチする文字列の前に、ユーザ名を置いたものであることが多いです。
       このプレフィックスを取り除くには、 -Q または `qvirtual' オプションを使います。

       残念ながら、これらが両方ともうまく動作しないこともあります。    これらが全て失敗した場合、fetchmail    は
       To/Cc/Bcc  ヘッダから出直して、  受信者のアドレスを決めなければなりませんが、これらのヘッダは信頼できませ
       ん。  特に、メーリングリストのソフトウェアが リスト全体のアドレスしか To ヘッダに付けないでメールを送るこ
       とがよくあります。

       fetchmail がローカルの受信者アドレスを推定できず、 かつ本来の受信者のアドレスが fetchmail  を実行したユー
       ザ以外である場合、 メールは無くなってしまうでしょう。 これがマルチドロップ機能を危険にしている要因です。

       これに関連する問題は、メールのメッセージをブラインドコピーするとき、 Bcc 情報は envelope アドレスとして
       伝えられるということです (X-Envelope ヘッダがなければ、fetchmail が読めるヘッダには書かれません)。 した
       がって、メールサーバのホストが常に  X-Envelope  ヘッダあるいはこれと 同等のヘッダをメールドロップに入れる
       メッセージに書くようになっていなければ、 fetchmail 経由でメールを取得するユーザ宛のブラインドコピーは失敗
       します。

   マルチドロップメールボックスの良い使い方
       ローカル名を複数使うことにより、fetchmail のクライアント側から メーリングリストを管理することができます。
       あなたのユーザ名が `esr' であり、自分宛のメールを受け取ることと (例えば) "fetchmail-friends" という  名前
       のメーリングリストの管理を両方やりたいとします。  それから、あなたのクライアントマシンで エイリアスのリス
       トも管理したいものとします。

       サーバでは、`fetchmail-friends' を `esr' に エイリアス設定することができます。 それから、.fetchmailrc  で
       は `to esr fetchmail-friends here'を宣言します。 すると、`fetchmail-friends' をローカルアドレスとして含ん
       でいる メールが取得されたとき、 メーリングリストの名前が SMTP  リスナが見ている受信者のリストに追加されま
       す。 したがって、エイリアスの展開はローカルで行われます。 必ず、`esr' を fetchmail-friends のローカルのエ
       イリアス展開に含めてください。 さもないと、このメーリングリストだけが宛先になっている  メールを絶対に見る
       ことができません。  また、リスナの「自分にも」というオプションを必ずセットして (sendmail では -oXm コマン
       ドラインオプションか、OXm 宣言です)、 あなたが送ったメッセージのエイリアス展開から あなたの名前が削除され
       ないようにしてください。

       しかし、このトリックに問題がないわけではありません。  あなたがローカル名として宣言して いないメーリングリ
       ストだけが宛先になっているメールが来ると、 その問題が明らかになるでしょう。  このようなメッセージのそれぞ
       れには、 `X-Fetchmail-Warning' ヘッダが付いています。 このヘッダは、fetchmail が受信者アドレス中で 有効な
       ローカル名を見つけられなかったために生成されるものです。 このようなメッセージは、デフォルトで (既に述べた
       ように) fetchmail を実行しているローカルユーザに送られますが、 それが本当に正しい処置なのかをプログラム側
       から知る方法はありません。

   マルチドロップメールボックスの良くない使い方
       マルチドロップメールボックスと、デーモンモードで複数のユーザにサービスを行う fetchmail を同時に使ってはい
       けません。  繰り返しますが、メーリングリストからのメールで問題が起こります。 このようなメールには通常、受
       信者個人のアドレスが書かれていないのです。 fetchmail が  envelope  アドレスを推定できなければ、このような
       メールは fetchmail を実行したユーザ (root であることが多いでしょう) にしか届きません。 また、ブラインドコ
       ピーの宛先になっているユーザはきっと、 このようなメールが全く読めないでしょう。

       もし、 fetchmail を使って 1 つのメールドロップから POP や IMAP 経由で  複数ユーザ宛のメールを取得しようと
       考えているならば、考え直してください (そして、前述のヘッダと envelope アドレスに関する セクションを読み直
       してください)。 メールは単にメールサーバのキューに入れておき、 fetchmail の ETRN や ODMR モードを使って定
       期的に  SMTP での送信を行わせる方が賢いやりかたでしょう (この場合はもちろん、メールサーバでのメールの有効
       期限よりも短い間隔で    ポーリングをしなければならないことになります)。    このような設定ができないのなら
       ば、UUCP による配送を設定してみてください。

       どうしてもこの目的でマルチドロップを使わなければならないのであれば、 fetchmail が参照できる envelope アド
       レスヘッダを メールサーバが書き込むように必ずしてください。  さもなくば、メールはきっと無くなってしまい、
       あなたを呪うために帰ってくることになるでしょう。

   マルチドロップのチェックの高速化
       通常は、複数のユーザが宣言されているとき、  fetchmail は受信者アドレスを先程説明したように展開し、 それぞ
       れのホスト部分を DNSでチェックし、 これがメールサーバのエイリアスかどうかを調べます。  そうであれば、「to
       ... here」宣言で記述された名前のマッピングが実行され、 メールがローカルに配送されます。

       これはとても安全ですが、非常に遅い方法です。  これを高速化するためには、 `aka' を使ってメールサーバのエイ
       リアスを予め宣言してください。 これらは DNS の参照を行う前にチェックされます。 aka のリストがメールサーバ
       の  DNS エイリアス (および、これを指す全ての MX 名) を 全て 含んでいることが確かであれば、`no dns' を宣言
       して DNS 参照を完全に止め、 aka リストに対してのみマッチングを行わせることができます。

終了コード

       シェルスクリプト内で  fetchmail  をうまく使えるように、与えられた接続の間に起きたことを伝えるための  終了
       コードが返されるようになっています。

       fetchmail が返す終了コードを以下に示します:

       0      1 つ以上のメッセージがうまく取得できた場合 (-c オプションを指定している時は、 取得待ちのメールを見
              つけ、取得を行わなかった場合)。

       1      取得待ちのメールが無かった場合。 (サーバ上に古いメールがまだあるけれど、  取得されるものとして選ば
              れていなかった場合もあります。)

       2      メール取得のためにソケットをオープンしようとしたときにエラーに出会った場合。  ソケットが何かを知ら
              なくても、心配には及びません。  これは単に「どうしようもないエラー」として扱ってください。  このエ
              ラーは fetchmail が使おうとしたプロトコルが /etc/services にリストされていない場合にも起こります。

       3      ユーザ認証のステップで失敗した場合。  これは通常、ユーザ ID、パスワード、 APOP ID の指定が間違って
              いることを意味します。 これ以外の場合では、標準入力が端末に接続されていない状況で fetchmail を実行
              しようとしていて、 入力できなかったパスワードを入力するためのプロンプトが 出せないことを意味してい
              ます。

       4      何らかの種類の致命的なプロトコルエラーが検出された場合。

       5      fetchmail に与えた引き数に文法エラーがある場合。

       6      実行制御ファイルのパーミッションが正しくない場合。

       7      サーバからエラー状態が報告された場合。 サーバへの接続待ちで fetchmail がタイムアウトを起こした時に
              もこうなります。

       8      クライアント側の排他エラーの場合。これは  fetchmail  が既に動作している別の  fetchmail  を検出した
              か、検出に失敗したため fetchmail が動作しているかどうかはっきりしないことを意味します。

       9      サーバが応答で "lock busy" を返したために、 ユーザ認証ステップが失敗した場合。  ちょっと待ってから
              再挑戦してください!  このエラーはプロトコル全てに実装されているわけではないですし、 サーバ全てに実
              装されているわけでもありません。 このエラーがサーバに実装されていない場合には、 このコードではなく
              "2" が返されます (前の項目を参照してください)。 "lock busy" やこれに似たテキストで "lock" という語
              を含むものを応答として返す、 qpopper  や他のサーバと通信したときにこのコードが返されることがありま
              す。

       10     SMTP ポートのオープンやトランザクションを行おうとしている時に fetchmail の動作が失敗した場合。

       11     致命的な  DNS のエラー。fetchmail が起動時に DNS の参照に失敗し、 その先を実行できなかったときに起
              こります。

       12     BSMTP のバッチファイルをオープンできなかった場合。

       13     取得の制限によりポーリングが終了した (--fetchlimit オプションを参照)。

       14     サーバがビジーであることを示します。

       23     内部エラーの場合。標準エラー出力に出るメッセージを詳しく見てください。

       fetchmail  が複数のホストに問い合わせを行う場合、  いずれかの問い合わせでメールをうまく取得できれば、  ス
       テータス 0 が返されます。 そうでないに返されるエラーステータスは、 最後に問い合わせを行ったホストのステー
       タスとなります。

ファイル

       ~/.fetchmailrc
            デフォルトの実行制御ファイル

       ~/.fetchids
            ホストと前回の読んだメールのメッセージ ID を対応づける ファイルのデフォルトの位置 (UIDL コマンドをサ
            ポートしている、 RFC1725 準拠の最近の POP3 サーバでしか使うことができません)。

       ~/.fetchmail.pid
            多重実行を防ぐためのロックファイル (非 root モードの場合)。

       ~/.netrc
            FTP の実行制御ファイル。(もしあるならば) 対話的にパスワードを求める前に、 最終的にパスワードが検索さ
            れるファイルです。

       /var/run/fetchmail.pid
            多重実行を防ぐためのロックファイル (root モード、Linux の場合)。

       /etc/fetchmail.pid
            多重実行を防ぐためのロックファイル (root モード、/var/run が無いシステムの場合)。

環境変数

       環境変数 FETCHMAILUSER が設定されている場合、  エラー通知をメールで知らせるためのユーザ名として使われます
       (デフォルトではローカル名が使われます)。 この環境変数が設定されていない場合、 環境変数 LOGNAME か USER の
       値が正しく設定されていれば (例えば、この値に対応する UID がセッションのユーザ ID に一致する)、 その名前が
       デフォルトのローカル名として使われます。  これらの環境変数も設定されていない場合、 getpwuid(3) がセッショ
       ン ID に対する パスワードエントリを取得できなければいけません  (このような手の込んだロジックは、  1  つの
       ユーザ ID に複数のユーザ名が対応する場合を うまく扱うために用意されています)。

       環境変数 FETCHMAILHOME が 実際に存在する正しいディレクトリ名に設定されている場合、 ファイル .fetchmailrc,
       .fetchids, .fetchmail.pid は、 起動したユーザのホームディレクトリではなく、  この環境変数で指定したディレ
       クトリに置かれます (ファイル名の先頭にあるドットは取り除かれます)。 .netrc ファイルは、FETCHMAILHOME の設
       定に関係なく、 起動したユーザのホームディレクトリでロックされます。

シグナル

       fetchmail デーモンが root 権限で動作している場合には、 SIGHUP によりスリープ状態から覚め、 skip  指定でな
       いサーバ全てに対してポーリングを行います (これはシステムデーモンの普通の伝統に従うものです)。

       デーモンモード  fetchmail  が  root  権限以外で動作している場合、 デーモンを起こすには SIGUSR1 を使います
       (logout による SIGHUP がデフォルトの動作をそのまま持ち、 fetchmail を kill するかもしれないためです)。

       バックグラウンドで fetchmail が動作しているときに、フォアグラウンドで fetchmail  を実行すると、上記のうち
       適切なデーモンが起こされます。

バグと既知の問題

       mda   オプションと   plugin   オプションは相性が良くありません。  MDA  からエラー状態を取得するためには、
       fetchmail  は通常のシグナル処理を変更する必要があります。  このようにすると、ポーリングサイクルが終るまで
       死んだプラグインプロセスが破棄されません。  そして、ゾンビプロセスが非常にたくさんできた場合は リソースの
       枯渇が起こってしまいます。 プラグインを使った MDA への配送を行わないか、 大量のゾンビプロセスで溢れるかも
       しれないリスクを負うかのどちらかになります。

       マルチドロップモードで使われている  RFC822 アドレスのパーザは、 技術的には正しいけれどおかしな @-アドレス
       で詰まってしまうことがあります。 また、クォートと埋め込みコメントの使い方がおかしいと、  パーザの動作がお
       かしくなりやすいです。

       メッセージに複数の  envelope ヘッダがある場合、 fetchmail には最後に処理されたヘッダしか見えません。 これ
       を回避するには、  envelope  ヘッダの内容全てを  1  つのヘッダにまとめるフィルタ   (procmail,   mailagent,
       maildrop に手順を指示すれば、 これはかなり簡単に行えます) をメールサーバ側で使ってください。

       プロトコルのうちのいくつかを使う場合には、   プログラムが暗号化されていないパスワードを  メールサーバまで
       TCP/IP 接続上で送る必要があります。 これは、パケットスニファ (packet sniffer) や もっと高機能な監視ソフト
       ウェアによって  名前とパスワードの組を盗まれる危険性の元となります。 Linux と FreeBSD の場合、--interface
       オプションを使うと、 特定のローカルまたはリモートの IP アドレスを持つ  特定のインタフェースデバイスに対し
       てのみ  ポーリングが可能であるように制限できますが、  その場合でも  (a)  どちらかのホストが  無差別モード
       (promiscuous mode) でオープンできる ネットワークデバイスを持っているか、 (b) 間にあるネットワーク接続が盗
       聴可能であれば盗聴は可能です。  パスワードを暗号化するだけでなく、全ての通信を暗号化するためにも、 ssh(1)
       トンネリングの使用をお勧めします。

       mda オプションで %F, %T エスケープを使うとセキュリティホールができます。 なぜなら、これらのエスケープは攻
       撃者が操作できるテキストを  シェルコマンドに渡すからです。 シェル文字になる可能性があるものは、実行の前に
       `_' に置換されます。 fetchmail は MDA を実行している間、 SUID  により得ることができた権限を一時的に全て破
       棄するので、    このセキュリティホールはかなり小さくなっています。   しかし、できるだけ安全にするために、
       fetchmail をroot のアカウントから実行するときには、 %F, %T を含むmda コマンドを使ってはいけません。

       fetchmail における bouncemail と spambounce の出し方では、 ローカルホストの 25 番ポートで SMTP 経由のメー
       ルが送れなければなりません。

       このプロセスをバックグラウンドで実行している時に ~/.fetchmailrc を修正し、文法を間違ってしまうと、 バック
       グラウンドのプロセスは何も言わずに終了してしまいます。 悪いことに、このプログラムは何かを書き出して終了す
       ることができません。 なぜなら、syslog を有効にすべき否かが、まだ分からないからです。

       (設定を標準入力から読み込む) -f - オプションは、 プラグインオプションとは互換性がありません。

       UIDL  コードは一般的にあまり当てにならないもので、 行を飛ばした場合やエラーの場合に、コードの状態を失いや
       すい傾向があります (そのため、古いメッセージが再度閲覧されてしまいます)。 このような場合は、IMAP4  に乗り
       換えて下さい。

       `principal' オプションは Kerberos IV しか扱わず、 Kerberos V は扱いません。

       コメント、バグ報告、苦情の類は、fetchmail-friends  メーリングリスト <fetchmail-friends@lists.ccil.org> に
       送ってください。      HTML       版の       FAQ       が       fetchmail       のホームページにあります。
       http://www.tuxedo.org/~esr/fetchmail へ行くか、 `fetchmail' 関連のページを WWW で検索してください。

著者

       Eric  S. Raymond <esr@snark.thyrsus.com>。 ここでは挙げられないほど多くの方々がコードやパッチを提供してく
       ださいました。 このプログラムは Carl Harris <ceharris@mal.com> さん作の popclient  を基にしており、これを
       置き換えるものです。 内部的にはまったく異なるものになりましたが、 インタフェース設計の一部については、 こ
       のご先祖様のものをそのまま引き継いでいます。

関連項目

       mutt(1), elm(1), mail(1), sendmail(8), popd(8), imapd(8), netrc(5)

準拠している標準規約

       SMTP/ESMTP:
            RFC 821, RFC2821, RFC 1869, RFC 1652, RFC 1870, RFC1983, RFC 1985

       mail:
            RFC 822, RFC2822, RFC 1123, RFC 1892, RFC 1894

       POP2:
            RFC 937

       POP3:
            RFC 1081, RFC 1225, RFC 1460, RFC 1725, RFC1734, RFC 1939, RFC 1957, RFC2195, RFC 2449

       APOP:
            RFC 1460, RFC 1725, RFC 1939

       RPOP:
            RFC 1081, RFC 1225

       IMAP2/IMAP2BIS:
            RFC 1176, RFC 1732

       IMAP4/IMAP4rev1:
            RFC 1730, RFC 1731, RFC 1732, RFC 2060, RFC 2061, RFC 2195, RFC 2177, RFC 2683

       ETRN:
            RFC 1985

       ODMR/ATRN:
            RFC 2645

       OTP: RFC 1938

       LMTP:
            RFC 2033

       GSSAPI:
            RFC 1508

                                                                                                    fetchmail(1)