Provided by: manpages-ja_0.5.0.0.20221215+dfsg-1_all bug

名前

       socket - Linux のソケットインターフェース

書式

       #include <sys/socket.h>

       sockfd = socket(int socket_family, int socket_type, int protocol);

説明

       このマニュアルページは Linux ネットワークのソケット層に対する ユーザーインターフェースを記
       述するものである。 BSD 互換ソケットは、ユーザープロセスとカーネル内部の ネットワークプロト
       コルスタック群との間に、 統一的なインターフェースを提供するものである。 プロトコルモジュー
       ルは プロトコルファミリー (protocol familiy) (例: AF_INET, AF_IPX, AF_PACKET)  と  ソケッ
       トタイプ  (socket types) (例: SOCK_STREAM, SOCK_DGRAM)  に分類できる。 これらに関するより
       詳しい情報は socket(2)  を参照のこと。

   ソケット層の関数群
       これらの関数はユーザープロセスがパケットを送受信したり、その他のソケット操作を  行ったりす
       るために用いられる。詳細はそれぞれのマニュアルページを 見てほしい。

       socket(2)  はソケットを生成する。 connect(2)  はソケットをリモートのソケットアドレスに接続
       する。 bind(2)  はソケットをローカルのソケットアドレスにバインドする。 listen(2)  はソケッ
       トに新しい接続が来たら受信するように伝え、 accept(2)  は外部からやってきた接続に対して新し
       いソケットを得るために用いられる。 socketpair(2)  は互いに接続された二つの名前無しソケット
       (anonymous  socket) を返す (AF_UNIX のような、いくつかのローカルなファミリーでしか実装され
       ていない)。

       send(2), sendto(2), sendmsg(2)   はソケットを通してデータを送信し、  recv(2)  recvfrom(2),
       recvmsg(2)   はソケットからデータを受信する。 poll(2)  と select(2) はデータの到着を待った
       り、データ送信の準備ができるまで待ったりする。 さらに、 write(2), writev(2),  sendfile(2),
       read(2), readv(2)  のような標準的な I/O 操作もデータの読み書きに用いることができる。

       getsockbyname(2)  はローカルのソケットアドレスを返し、 getpeername(2) はリモートのソケット
       アドレスを返す。 getsockopt(2)  と setsockopt(2)  はソケット層のオプションやプロトコルオプ
       ションの取得・設定に用いられる。  他のいくつかのオプションの取得・設定には ioctl(2) を使う
       ことができる。

       close(2)  はソケットをクローズする。 shutdown(2)  は全二重なソケット接続を部分的にクローズ
       する。

       シーク動作や、 0 以外の位置に対する pread(2)  や pwrite(2)  はソケットではサポートされてい
       ない。

       非ブロッキングな I/O をソケットで行うことは可能で、  fcntl(2)   を使ってソケットのファイル
       ディスクリプターに  O_NONBLOCK フラグをセットすれば良い。 こうするとブロックされる操作は、
       (通常)    EAGAIN   エラーで戻ることになる   (後で処理が再試行されることが期待されている)。
       connect(2)   では  EINPROGRESS エラーが返される。 この場合、ユーザーはさまざまなイベントを
       poll(2)  や select(2)  を使って待つことができる。

       ┌────────────────────────────────────────────────────────────────────────┐
       │                             I/O イベント                               │
       ├───────────┬─────────────┬──────────────────────────────────────────────┤
       │イベント   │ poll フラグ │ 内容                                         │
       ├───────────┼─────────────┼──────────────────────────────────────────────┤
       │Read       │ POLLIN      │ 新しいデータが到着した。                     │
       ├───────────┼─────────────┼──────────────────────────────────────────────┤
       │Read       │ POLLIN      │ (接続志向のソケットで)    接続の設定が終了し │
       │           │             │ た。                                         │
       ├───────────┼─────────────┼──────────────────────────────────────────────┤
       │Read       │ POLLHUP     │ 接続先で切断要求が生成された。               │
       ├───────────┼─────────────┼──────────────────────────────────────────────┤
       │Read       │ POLLHUP     │ 接続が壊れた (接続志向のプロトコルのみ)。 こ │
       │           │             │ の場合、ソケットに書き込みが行われると       │
       │           │             │ SIGPIPE も送信される。                       │
       ├───────────┼─────────────┼──────────────────────────────────────────────┤
       │Write      │ POLLOUT     │ ソケットには新しいデータを書き込むのに十分な │
       │           │             │ バッファーがある。                           │
       ├───────────┼─────────────┼──────────────────────────────────────────────┤
       │Read/Write │ POLLIN |    │ 外部向けの connect(2) が終了した。           │
       │           │ POLLOUT     │                                              │
       ├───────────┼─────────────┼──────────────────────────────────────────────┤
       │Read/Write │ POLLERR     │ 非同期的 (asynchronous) なエラーが起こった。 │
       ├───────────┼─────────────┼──────────────────────────────────────────────┤
       │Read/Write │ POLLHUP     │ 接続先が片方向を切断した。                   │
       ├───────────┼─────────────┼──────────────────────────────────────────────┤
       │Exception  │ POLLPRI     │ 緊急データ (urgent data)  が到着した。この場 │
       │           │             │ 合は SIGURG が送信される。                   │
       └───────────┴─────────────┴──────────────────────────────────────────────┘
       poll(2)  や select(2)  を使う代わりに、カーネルからアプリケーションに イベントを通知させる
       のに SIGIO シグナルを使う方法もある。  この方法を使うには、  fcntl(2)   を用いてソケットの
       ファイルディスクリプターに  O_ASYNC  フラグをセットし、 SIGIO に対する有効なシグナルハンド
       ラーを sigaction(2)  によって設定しておく必要がある。 後述の シグナル に関する議論も参考に
       すること。

   ソケットアドレス構造体
       各ソケットドメインにはそれぞれ独自のソケットアドレス形式があり、ドメイン固有のアドレス構造
       体を持っている。    これらの構造体の先頭には、アドレス構造体の種類を示す整数の    "family"
       フィールド (型は sa_family_t) がある。 このフィールドにより、 すべてのソケットドメインで汎
       用的に使用されるシステムコール (例えば、 connect(2), bind(2),  accept(2),  getsockname(2),
       getpeername(2) など) が、特定のソケットアドレスのドメインを判定することができる。

       任意の種類のソケットアドレスをソケット   API   のインターフェースに渡せるように、   struct
       sockaddr 型が定義されている。 この型の目的は、  純粋に、  ドメイン固有のソケットアドレスを
       「汎用的な」型にキャストできるようにする点にある。  これにより、 ソケット API 呼び出しにお
       いて、 コンパイラが型の不一致の警告を出すのを避けることができる。

       これに加えて、ソケット API ではデータ型 struct sockaddr_storage が提供されている。  サポー
       トしているすべてのドメイン固有のソケットアドレス構造体を収容するのに、この型を使うことがで
       きる。 この型は十分な大きさがあり、(メモリー境界への) アラインも適切に行われている (特に、
       IPv6  ソケットアドレスを収容するのにも十分な大きさである)。 この構造体には次のフィールドが
       あり、 このフィールドを使って、 この構造体に実際に格納されているソケットアドレスの型を特定
       することができる。

               sa_family_t ss_family;

       sockaddr_storage 構造体は、 ソケットアドレスを汎用的な方法で扱う必要があるプログラム (例え
       ば、 IPv4 と IPv6 の両方のソケットアドレスを扱う必要があるプログラム) で有用である。

   ソケットオプション
       これらのソケットオプションは、 setsockopt(2)  を用いれば設定でき、 getsockopt(2)  を用いれ
       ば取得できる。  但し、どのソケットの場合も  ソケットレベルには SOL_SOCKET を指定すること。
       注釈がない限り、 optvalint へのポインターである。

       SO_ACCEPTCONN
              このソケットが listen(2)   によって接続待ち受け状態に設定されているかどうかを示す値
              を返す。  値 0 は listen 状態のソケットでないことを、 値 1 は listen 状態のソケット
              であることを示す。このソケットオプションは読み込み専用である。

       SO_ATTACH_FILTER (since Linux 2.2), SO_ATTACH_BPF (since Linux 3.19)
              Attach a  classic  BPF  (SO_ATTACH_FILTER)   or  an  extended  BPF  (SO_ATTACH_BPF)
              program  to  the  socket for use as a filter of incoming packets.  A packet will be
              dropped if the filter program returns  zero.   If  the  filter  program  returns  a
              nonzero  value  which  is  less  than  the packet's data length, the packet will be
              truncated to the length returned.  If the value returned by the filter  is  greater
              than  or  equal  to  the  packet's  data  length,  the packet is allowed to proceed
              unmodified.

              The  argument  for  SO_ATTACH_FILTER  is  a  sock_fprog   structure,   defined   in
              <linux/filter.h>:

                  struct sock_fprog {
                      unsigned short      len;
                      struct sock_filter *filter;
                  };

              The  argument for SO_ATTACH_BPF is a file descriptor returned by the bpf(2)  system
              call and must refer to a program of type BPF_PROG_TYPE_SOCKET_FILTER.

              These options may be set multiple times for a given socket, each time replacing the
              previous  filter  program.   The classic and extended versions may be called on the
              same socket, but the previous filter will always be replaced  such  that  a  socket
              never has more than one filter defined.

              Both   classic   and   extended  BPF  are  explained  in  the  kernel  source  file
              Documentation/networking/filter.txt

       SO_ATTACH_REUSEPORT_CBPF, SO_ATTACH_REUSEPORT_EBPF
              For use with the SO_REUSEPORT option, these options allow the user to set a classic
              BPF  (SO_ATTACH_REUSEPORT_CBPF)   or  an  extended  BPF  (SO_ATTACH_REUSEPORT_EBPF)
              program which defines how packets are assigned to  the  sockets  in  the  reuseport
              group  (that  is,  all  sockets  which have SO_REUSEPORT set and are using the same
              local address to receive packets).

              The BPF program must return an index between 0  and  N-1  representing  the  socket
              which  should  receive  the packet (where N is the number of sockets in the group).
              If the BPF program returns an invalid index, socket selection will fall back to the
              plain SO_REUSEPORT mechanism.

              Sockets  are  numbered  in the order in which they are added to the group (that is,
              the order of bind(2)  calls for UDP sockets or the order of  listen(2)   calls  for
              TCP sockets).  New sockets added to a reuseport group will inherit the BPF program.
              When a socket is removed from a reuseport group (via close(2)), the last socket  in
              the group will be moved into the closed socket's position.

              These  options  may  be  set  repeatedly  at any time on any socket in the group to
              replace the current BPF program used by all sockets in the group.

              SO_ATTACH_REUSEPORT_CBPF takes the  same  argument  type  as  SO_ATTACH_FILTER  and
              SO_ATTACH_REUSEPORT_EBPF takes the same argument type as SO_ATTACH_BPF.

              UDP support for this feature is available since Linux 4.5; TCP support is available
              since Linux 4.6.

       SO_BINDTODEVICE
              このソケットを、引数で渡したインターフェース名で指定される (“eth0” のような) 特定の
              デバイスにバインドする。  名前が空文字列だったり、オプションの長さ (optlen) が 0 の
              場合には、 ソケットのバインドが削除される。  渡すオプションは、インターフェース名が
              入ったヌル文字で終端された可変長の文字列である。 文字列の最大のサイズは IFNAMSIX で
              ある。 ソケットがインターフェースにバインドされると、  その特定のインターフェースか
              ら受信されたパケットだけを処理する。  このオプションはいくつかのソケットタイプ、 特
              に AF_INET に対してのみ動作する点に注意すること。  パケットソケットではサポートされ
              ていない (通常の bind(2) を使うこと)。

              Linux  3.8 より前のバージョンでは、このソケットオプションは getsockname(2) で設定す
              ることはできたが、取得することができなかった。 Linux 3.8 以降では、読み出すことがで
              きる。 optlen 引数には、 デバイス名を格納するのに十分なバッファーサイズを渡すべきで
              あり、 IFNAMSIZ バイトにすることを推奨する。 実際のデバイス名の長さは optlen 引数に
              格納されて返される。

       SO_BROADCAST
              ブロードキャストフラグを設定・取得する。有効になっていると、データグラ ムソケットは
              ブロードキャストアドレスにパケットを送信できるようになる。 ストリーム指向のソケット
              には何の効果もない。

       SO_BSDCOMPAT
              BSD  のバグに対して互換性を取るための機能を有効にする。 この機能は Linux 2.0 と 2.2
              の UDP プロトコルモジュールで使用されている。 有効になっていると、 UDP ソケットで受
              信された  ICMP エラーは ユーザープログラムに渡されない。 これ以降のバージョンのカー
              ネルでは、このオプションのサポートは 段階的に廃止されてきた。 Linux 2.4  ではこのオ
              プションは黙って無視され、   Linux  2.6  ではプログラムがこのオプションを使用すると
              (printk() を使って)  カーネルの警告メッセージが出力される。 Linux 2.0  では、このオ
              プションを指定すると、 raw ソケットにおいても BSD のバグ (ランダムヘッダー変更、 ブ
              ロードキャストフラグのスキップ) に対する互換機能が有効になっていた。 しかし、こちら
              は Linux 2.2 で削除された。

       SO_DEBUG
              ソケットのデバッグ機能を有効にする。  CAP_NET_ADMIN  権限を持つプロセスか、実効ユー
              ザー ID が 0 のプロセスでしか 利用できない。

       SO_DETACH_FILTER (Linux 2.2 以降), SO_DETACH_BPF (Linux 3.19 以降)
              These two options, which are synonyms,  may  be  used  to  remove  the  classic  or
              extended  BPF  program  attached  to  a  socket  with  either  SO_ATTACH_FILTER  or
              SO_ATTACH_BPF.  The option value is ignored.

       SO_DOMAIN (Linux 2.6.32 以降)
              ソケットドメインを整数で取得する。 AF_INET6 のような値が返される。 詳細は socket(2)
              を参照。このソケットオプションは読み込み専用である。

       SO_ERROR
              保留になっていたソケットエラーを取得してクリアする。 このソケットオプションは読み込
              み専用である。整数値をとる。

       SO_DONTROUTE
              ゲートウェイを経由せず、直接接続されているホストにのみ送信する。  send(2)    操作で
              MSG_DONTROUTE  フラグをセットした場合も同じ効果が得られる。  ブール整数のフラグを取
              る。

       SO_INCOMING_CPU (gettable since Linux 3.19, settable since Linux 4.4)
              Sets or gets the CPU affinity of a socket.  Expects an integer flag.

                  int cpu = 1;
                  setsockopt(fd, SOL_SOCKET, SO_INCOMING_CPU, &cpu,
                             sizeof(cpu));

              Because all of the packets for a single stream (i.e.,  all  packets  for  the  same
              4-tuple)   arrive  on the single RX queue that is associated with a particular CPU,
              the typical use case is to employ one listening process  per  RX  queue,  with  the
              incoming  flow  being handled by a listener on the same CPU that is handling the RX
              queue.  This provides optimal NUMA behavior and keeps CPU caches hot.

       SO_INCOMING_NAPI_ID (gettable since Linux 4.12)
              Returns a system-level unique ID called NAPI ID that is associated with a RX  queue
              on which the last packet associated with that socket is received.

              This can be used by an application to split the incoming flows among worker threads
              based on the RX queue on which the packets associated with the flows are  received.
              It  allows  each  worker  thread  to  be associated with a NIC HW receive queue and
              service all the connection requests  received  on  that  RX  queue.   This  mapping
              between  a  app thread and a HW NIC queue streamlines the flow of data from the NIC
              to the application.

       SO_KEEPALIVE
              接続志向のソケットに対する keep-alive メッセージの送信を有効にする。 ブール値の整数
              フラグをとる。

       SO_LINGER
              SO_LINGER オプションを取得・設定する。引数には linger 構造体を取る。

                  struct linger {
                      int l_onoff;    /* linger active */
                      int l_linger;   /* how many seconds to linger for */
                  };

              有効になっていると、  close(2)  や shutdown(2) は、そのソケットにキューイングされた
              メッセージがすべて送信完了するか、  linger  (居残り)   タイムアウトになるまで返らな
              い。無効になっていると、 これらのコールはただちに戻り、クローズ動作はバックグラウン
              ドで行われる。 ソケットのクローズを exit(2)  の一部として行った場合には、残っている
              ソケットの クローズ動作は必ずバックグラウンドに送られる。

       SO_LOCK_FILTER
              When set, this option will prevent changing the filters associated with the socket.
              These  filters  include  any  set  using  the  socket   options   SO_ATTACH_FILTER,
              SO_ATTACH_BPF, SO_ATTACH_REUSEPORT_CBPF, and SO_ATTACH_REUSEPORT_EBPF.

              The  typical  use  case  is  for  a  privileged  process to set up a raw socket (an
              operation that requires the CAP_NET_RAW capability), apply  a  restrictive  filter,
              set  the  SO_LOCK_FILTER  option,  and  then either drop its privileges or pass the
              socket file descriptor to an unprivileged process via a UNIX domain socket.

              Once the SO_LOCK_FILTER option has been enabled, attempts to change or  remove  the
              filter attached to a socket, or to disable the SO_LOCK_FILTER option will fail with
              the error EPERM.

       SO_MARK (Linux 2.6.25 以降)
              このソケットから送信される各パケットにマークをセットする (netfilter  の  MARK  ター
              ゲットと似ているが、ソケット単位である点が異なる)。 マークの変更は、 netfilter なし
              でのマークに基づいてのルーティングや、   パケットフィルタリングに使うことができる。
              このオプションを変更するには CAP_NET_ADMIN ケーパビリティが必要である。

       SO_OOBINLINE
              このオプションを有効にすると、帯域外データ (out-of-band data) は 受信データストリー
              ム中に置かれる。有効にしなければ、 帯域外データは受信時に MSG_OOB  フラグがセットさ
              れている場合に限って渡される。

       SO_PASSCRED
              SCM_CREDENTIALS  制御メッセージの受信を有効/無効にする。詳細は  unix(7)  を参照のこ
              と。

       SO_PASSSEC
              SCM_SECURITY 制御メッセージの受信を有効/無効にする。詳細は unix(7)  を参照のこと。

       SO_PEEK_OFF (Linux 3.4 以降)
              MSG_PEEK フラグと一緒に使用された場合 recv(2) システムコールの "peek offset" にこの
              オプションの値が設定される。現在のところ、このオプションは unix(7) ソケットでのみサ
              ポートされている。

              このオプションが負の値に設定された場合、従来の動作となる。 つまり MSG_PEEK フラグが
              指定された recv(2) は、キューの先頭のデータに対して peek 処理を行う (データを読み出
              すが、キューからデータの削除を行わない)。  新規のソケットではこのオプションの値は必
              ず -1 に設定される。

              このオプションに  0 以上の値が設定されると、 そのソケットのキュー上のオプション値で
              指定されたバイトオフセットにあるデータが次の peek 処理で返される。  同時に、  "peek
              offset"  がキューから  peek 処理されたバイト数だけ加算される。したがって、次の peek
              処理ではキューのその次にあるデータが返される。

              recv(2) (や同様のシステムコール) の  MSG_PEEK  フラグなしの呼び出しでキューの先頭の
              データが削除された場合、  "peek offset" は削除されたバイト数だけ減算される。 言い換
              えると、 MSG_PEEK フラグなしでデータを受信すると、 "peek offset" が指すキュー内の相
              対的な位置が狂わないように調整され、この後の peek では、 データ削除が行われなかった
              場合に返されたのと同じ値が返されるということである。

              データグラムソケットでは、 "peek offset" がパケットの途中を指している場合には、  返
              されるデータには MSG_TRUNC フラグが付与される。

              以下の例は SO_PEEK_OFF の利用例を示している。ストリームソケットのキューに以下の入力
              データが入っているものとする。

                  aabbccddeeff

              以下の順序で recv(2) の呼び出しを行うと、コメントに書かれた結果となる。

                  int ov = 4;                  // Set peek offset to 4
                  setsockopt(fd, SOL_SOCKET, SO_PEEK_OFF, &ov, sizeof(ov));

                  recv(fd, buf, 2, MSG_PEEK);  // Peeks "cc"; offset set to 6
                  recv(fd, buf, 2, MSG_PEEK);  // Peeks "dd"; offset set to 8
                  recv(fd, buf, 2, 0);         // Reads "aa"; offset set to 6
                  recv(fd, buf, 2, MSG_PEEK);  // Peeks "ee"; offset set to 8

       SO_PEERCRED
              Return the credentials of the peer process connected to this socket.   For  further
              details, see unix(7).

       SO_PEERSEC (Linux 2.6.2 以降)
              Return  the  security  context  of  the  peer socket connected to this socket.  For
              further details, see unix(7)  and ip(7).

       SO_PRIORITY
              プロトコルで定義された優先度を、このソケットから 送信される全てのパケットにセットす
              る。  Linux はネットワークキュー内部の 整列にこの値を用いる。高い優先度を持っている
              パケットは先に処理される。 ただしそのデバイスのキュー処理のやり方に依存する。 0  か
              ら 6 以外の優先度をセットするには CAP_NET_ADMIN ケーパビリティが必要である。

       SO_PROTOCOL (Linux 2.6.32 以降)
              ソケットのプロトコルを整数で取得する。  IPPROTO_SCTP  のような値が返される。 詳細は
              socket(2) を参照。このソケットオプションは読み込み専用である。

       SO_RCVBUF
              ソケットの受信バッファーの最大サイズを設定・取得する  (バイト単位)。  setsockopt(2)
              を使って値が設定されたときに (管理オーバヘッド用の領域を確保するために)  カーネルは
              この値を  2倍し、  getsockopt(2)    はこの   2倍された値を返す。   デフォルトの値は
              /proc/sys/net/core/rmem_default            ファイルで設定され、許容される最大の値は
              /proc/sys/net/core/rmem_max ファイルで設定される。 このオプションの最小値は  (2倍し
              た値で) 256 である。

       SO_RCVBUFFORCE (Linux 2.6.14 以降)
              このソケットオプションを使うと、特権プロセス   (CAP_NET_ADMIN   を持つプロセス)  は
              SO_RCVBUF と同じことを実行できる。 ただし、上限 rmem_max を上書きすることができる。

       SO_RCVLOWATSO_SNDLOWAT
              Specify the minimum number of bytes in the buffer until the socket layer will  pass
              the  data  to  the  protocol (SO_SNDLOWAT)  or the user on receiving (SO_RCVLOWAT).
              These two values are initialized to 1.  SO_SNDLOWAT  is  not  changeable  on  Linux
              (setsockopt(2)   fails with the error ENOPROTOOPT).  SO_RCVLOWAT is changeable only
              since Linux 2.4.

              Before  Linux  2.6.28  select(2),  poll(2),  and  epoll(7)   did  not  respect  the
              SO_RCVLOWAT setting on Linux, and indicated a socket as readable when even a single
              byte of data was available.  A subsequent read from the  socket  would  then  block
              until SO_RCVLOWAT bytes are available.  Since Linux 2.6.28, select(2), poll(2), and
              epoll(7)  indicate a socket as readable only if  at  least  SO_RCVLOWAT  bytes  are
              available.

       SO_RCVTIMEOSO_SNDTIMEO
              送信・受信のタイムアウトを指定する。これを越えるとエラーを報告する。  引数は struct
              timeval である。 入出力関数がタイムアウト時間の間ブロックされ、かつデータの送信また
              は  受信が行われていた場合は、転送されたデータ量が関数の返り値となる。 何もデータが
              転送されずにタイムアウトに達した場合は、 -1 を返し、 errnoEAGAINEWOULDBLOCKEINPROGRESS (connect(2) の場合) が設定され、 あたかもソケットに非ブロッキングが
              指定されたように見える。 タイムアウト値に (デフォルト値である) 0 に設定すると、  操
              作は決してタイムアウトしなくなる。 タイムアウトが影響を及ぼすのは、 ソケット I/O を
              実行するシステムコールだけ (例えば read(2), recvmsg(2), send(2),  sendmsg(2))  であ
              る。 select(2), poll(2), epoll_wait(2)  などにはタイムアウトは影響を及ぼさない。

       SO_REUSEADDR
              bind(2)   コールに与えられたアドレスが正しいかを判断するルールで、 ローカルアドレス
              の再利用を可能にする。 つまり AF_INET  ソケットなら、そのアドレスにバインドされたア
              クティブな  listen 状態のソケットが存在しない限り、バインドが行える。 listen 状態の
              ソケットがアドレス INADDR_ANY で特定のポートにバインドされている場合には、 このポー
              トに対しては、どんなローカルアドレスでもバインドできない。 引数はブール整数のフラグ
              である。

       SO_REUSEPORT (Linux 3.9 以降)
              Permits multiple AF_INET or AF_INET6 sockets to be bound  to  an  identical  socket
              address.   This  option  must  be  set  on each socket (including the first socket)
              prior to calling bind(2)  on the socket.  To prevent port  hijacking,  all  of  the
              processes  binding  to  the  same  address  must have the same effective UID.  This
              option can be employed with both TCP and UDP sockets.

              For  TCP  sockets,  this  option  allows  accept(2)    load   distribution   in   a
              multi-threaded  server  to be improved by using a distinct listener socket for each
              thread.  This provides  improved  load  distribution  as  compared  to  traditional
              techniques such using a single accept(2)ing thread that distributes connections, or
              having multiple threads that compete to accept(2)  from the same socket.

              For UDP sockets, the use of this option can provide better distribution of incoming
              datagrams  to  multiple  processes  (or  threads)  as  compared  to the traditional
              technique of having multiple processes compete to receive  datagrams  on  the  same
              socket.

       SO_RXQ_OVFL (Linux 2.6.33 以降)
              Indicates  that  an  unsigned  32-bit  value  ancillary  message  (cmsg)  should be
              attached to received skbs indicating the number of packets dropped  by  the  socket
              since its creation.

       SO_SELECT_ERR_QUEUE (Linux 3.10 以降)
              When  this  option  is  set  on  a  socket,  an  error condition on a socket causes
              notification not only via the exceptfds set of select(2).  Similarly, poll(2)  also
              returns a POLLPRI whenever an POLLERR event is returned.

              Background:  this  option  was  added when waking up on an error condition occurred
              only via the readfds and writefds sets of select(2).  The option was added to allow
              monitoring  for  error conditions via the exceptfds argument without simultaneously
              having to receive notifications (via readfds)  for regular data that  can  be  read
              from  the socket.  After changes in Linux 4.16, the use of this flag to achieve the
              desired notifications is no longer necessary.  This option is nevertheless retained
              for backwards compatibility.

       SO_SNDBUF
              ソケットの送信バッファーの最大サイズを設定・取得する  (バイト単位)。  setsockopt(2)
              を使って値が設定されたときに (管理オーバヘッド用の領域を確保するために)  カーネルは
              この値を   2倍し、   getsockopt(2)    はこの  2倍された値を返す。  デフォルトの値は
              /proc/sys/net/core/wmem_default            ファイルで設定され、許容される最大の値は
              /proc/sys/net/core/wmem_max  ファイルで設定される。 このオプションの最小値は (2倍し
              た値で) 2048 である。

       SO_SNDBUFFORCE (Linux 2.6.14 以降)
              このソケットオプションを使うと、特権プロセス  (CAP_NET_ADMIN   を持つプロセス)   は
              SO_SNDBUF と同じことを実行できる。 ただし、上限 wmem_max を上書きすることができる。

       SO_TIMESTAMP
              Enable or disable the receiving of the SO_TIMESTAMP control message.  The timestamp
              control message is sent with level SOL_SOCKET and  a  cmsg_type  of  SCM_TIMESTAMP.
              The  cmsg_data  field is a struct timeval indicating the reception time of the last
              packet passed to the user in this  call.   See  cmsg(3)   for  details  on  control
              messages.

       SO_TIMESTAMPNS (Linux 2.6.22 以降)
              Enable  or  disable  the  receiving  of  the  SO_TIMESTAMPNS  control message.  The
              timestamp control message  is  sent  with  level  SOL_SOCKET  and  a  cmsg_type  of
              SCM_TIMESTAMPNS.  The cmsg_data field is a struct timespec indicating the reception
              time of the last packet passed to the user in this call.  The clock  used  for  the
              timestamp is CLOCK_REALTIME.  See cmsg(3)  for details on control messages.

              A  socket  cannot  mix  SO_TIMESTAMP and SO_TIMESTAMPNS: the two modes are mutually
              exclusive.

       SO_TYPE
              ソケットのタイプを整数で取得する (例: SOCK_STREAM)。 このソケットオプションは読み出
              し専用である。

       SO_BUSY_POLL (Linux 3.11 以降)
              データがなかった際にブロッキング受信での  busy polling のおおよその時間をマイクロ秒
              単位で設定する。 この値を増やすには CAP_NET_ADMIN ケーパビリティが必要である。 この
              オプションのデフォルト値は /proc/sys/net/core/busy_read で制御できる。

              /proc/sys/net/core/busy_poll の値により、 SO_BUSY_POLL がセットされたソケットに対し
              て  select(2)  や  poll(2)  を行い、報告すべきイベントがない場合に、  select(2)  や
              poll(2) が busy polling をどのくらいの時間行うかが決まる。

              どちらの場合も、busy polling は、そのソケットが最後にデータを受信したネットワークデ
              バイスがこのオプションに対応している場合のみ行われる。

              busy polling により遅延が改善されるはアプリケーションもあるが、 busy polling は CPU
              使用率と電力使用量をともに増加させることになるので、使用する際は注意して行うこと。

   シグナル
       (ローカルもしくはリモート側で)  切断された 接続指向 (connection-oriented) のソケットに対し
       て 書き込みを行うと、その書き込みを行ったプロセスに SIGPIPE が送られ、 EPIPE  が返される。
       write 呼び出しに MSG_NOSIGNAL フラグを指定していた場合はシグナルは送られない。

       FIOSETOWN  fcntl(2)   や SIOCSPGRP ioctl(2) をプロセスまたはプロセスグループに指定しておく
       と、 I/O イベントが起きたときに SIGIO が送られる。 poll(2)  や select(2)  をシグナルハンド
       ラー内で用いれば、どのソケットでイベントが起こったかを  知ることができる。 (Linux 2.2 にお
       ける) 別の方法としては、 F_SETSIG fcntl(2)  を用いてリアルタイムシグナルを設定するやり方も
       ある。  リアルタイムシグナルのハンドラーは、 siginfo_tsi_fd フィールドにファイルディス
       クリプターが入った状態で呼び出される。 詳細は fcntl(2)  を参照のこと。

       状況によっては (例えば複数のプロセスが一つのソケットにアクセスしているなど)、 SIGIO の原因
       となった状態は、プロセスがそのシグナルへの対応を行ったときには  消えてしまっているかもしれ
       ない。 この場合は、プロセスは再び待つようにすべきである。 Linux は同じシグナルを後で再送す
       るからである。

   /proc インターフェース
       core  のソケットのネットワーキングパラメーターには、  /proc/sys/net/core/ ディレクトリ内の
       ファイルを通してアクセスできる。

       rmem_default
              ソケットの受信バッファーサイズのデフォルト値 (バイト単位)。

       rmem_max
              SO_RCVBUF ソケットオプションを用いてユーザーが設定できる ソケットの受信バッファーサ
              イズの最大値 (バイト単位)。

       wmem_default
              ソケットの送信バッファーサイズのデフォルト値 (バイト単位)。

       wmem_max
              SO_SNDBUF ソケットオプションを用いてユーザーが設定できる ソケットの送信バッファーサ
              イズの最大値 (バイト単位)。

       message_costmessage_burst
              トークンバケットフィルターを設定する。 これは外部のネットワークイベントによって引き
              起こされた 負荷限界の警告メッセージに用いられる。

       netdev_max_backlog
              グローバルな入力キューにおける最大のパケット数。

       optmem_max
              ソケットあたりの、補助データ (ancillary data) とユーザー制御データ (iovecs のような
              もの) との和の最大長。

   ioctl
       以下に示す操作には ioctl(2)  を用いてアクセスできる。

           error = ioctl(ip_socket, ioctl_type, &value_result);

       SIOCGSTAMP
              Return a struct timeval with the receive timestamp of the last packet passed to the
              user.   This is useful for accurate round trip time measurements.  See setitimer(2)
              for a description of struct timeval.  This ioctl should be used only if the  socket
              options  SO_TIMESTAMP  and SO_TIMESTAMPNS are not set on the socket.  Otherwise, it
              returns the timestamp of the last packet that was received while  SO_TIMESTAMP  and
              SO_TIMESTAMPNS  were  not  set,  or  it  fails if no such packet has been received,
              (i.e., ioctl(2)  returns -1 with errno set to ENOENT).

       SIOCSPGRP
              Set the process or process group that is to receive SIGIO or  SIGURG  signals  when
              I/O  becomes  possible or urgent data is available.  The argument is a pointer to a
              pid_t.  For further details, see the description of F_SETOWN in fcntl(2).

       FIOASYNC
              O_ASYNC フラグを変更し、ソケットの非同期 (asynchronous) I/O モードを  有効/無効にす
              る。非同期  I/O  モードでは、  新しい I/O イベントが起きたときに、 SIGIO シグナルや
              F_SETSIG で設定されたシグナルセットが発行される。

              引数はブール整数のフラグである。 (この操作は fcntl(2)   を使って  O_ASYNC  フラグを
              セットするのと同じ意味である。)

       SIOCGPGRP
              SIGIOSIGURG を受信したカレントプロセスかプロセスグループを取得する。 ない場合は
              0 が返る。

       有効な fcntl(2)  操作:

       FIOGETOWN
              SIOCGPGRP ioctl(2)  と同じ。

       FIOSETOWN
              SIOCSPGRP ioctl(2)  と同じ。

バージョン

       SO_BINDTODEVICE は Linux 2.0.30 で導入された。 SO_PASSCRED は Linux 2.2 で登場した。 /proc
       インターフェースは  Linux 2.2 で導入された。 SO_RCVTIMEOSO_SNDTIMEO は Linux 2.3.41 以
       降でサポートされている。 それ以前は、タイムアウトはプロトコル固有の固定の設定値で、 読み書
       きをすることはできなかった。

注意

       Linux   は、送受信バッファーの半分を内部のカーネル構造体で用いると仮定している。  したがっ
       て、対応する /proc ファイルはネットワーク回線上での大きさの 2 倍になる。

       Linux では、 SO_REUSEADDR オプションでポートの再利用が許可されるのは、  そのポートに対して
       bind(2)     を前に実行したプログラムとそのポートを再利用    しようとするプログラムの両方で
       SO_REUSEADDR がセットされた場合のみである。 この動作は (FreeBSD などの) いくつかの実装とは
       異なる。これらでは、  後でポートを再利用しようとするプログラムで SO_REUSEADDR オプションを
       セットするだけでよい。 たいていはこの違いは見えない。なぜなら、例えばサーバプログラムは 常
       にこのオプションをセットするように設計されるからである。

関連項目

       wireshark(1),   bpf(2),  connect(2),  getsockopt(2),  setsockopt(2),  socket(2),  pcap(3),
       address_families(7), capabilities(7), ddp(7), ip(7), ipv6(7), packet(7),  tcp(7),  udp(7),
       unix(7), tcpdump(8)

この文書について

       この man ページは Linux man-pages プロジェクトのリリース 5.10 の一部である。プロジェクトの
       説明とバグ報告に関する情報は https://www.kernel.org/doc/man-pages/ に書かれている。