Provided by: manpages-ja_0.5.0.0.20140515+dfsg-2_all bug

名称

       gawk - パターン検索・処理言語

書式

       awk [ POSIX or GNU style options ] -f program-file [ -- ] file ...
       gawk [ POSIX or GNU style options ] [ -- ] program-text file ...

解説

       gawk  は GNU プロジェクトが実装した プログラミング言語 AWK の処理系です。 本処理系は POSIX
       1003.2  コマンド言語とユーティリティ規約に定められた  言語の定義に適合しています。  本バー
       ジョンはまた、Aho,  Kernighan, Weinberger の著書 The AWK Programming Language の記述にもと
       づいており、 System V Release 4 UNIX の awk の付加機能も含んでいます。  gawk  はまた、Bell
       Labs の新機能および GNU 独自の拡張も提供します。

       コマンドラインは、  gawk へのオプション、(もし -f または --file オプションにより指定されて
       いなければ)AWK  のプログラムテキスト、そして  残りの引数列からなります。  この残りの引数列
       は、定義済み AWK 変数 ARGC, ARGV を用いることで参照できます。

オプションフォーマット

       gawk へのオプションは、伝統的な POSIX 形式の 1 文字オプションと、GNU 形式の ロングオプショ
       ンがあります。 POSIX 形式のオプションは単一の “-” で始まり、一方 GNU 形式のもの は “--” で
       始まります。ロングオプションは GNU の独自仕様と POSIX の必須仕様の両方について用意されてい
       ます。

       POSIX 標準に従い、 gawk 独自仕様のオプションは -W オプションへの引数で与えます。 複数の -W
       オプションを指定することもできます。 後述の ように、各 -W オプションには、それに対応するロ
       ングオプション が存在します。ロングオプションへの引数は、空白を入れずに = でつないで指定す
       るか、その次のコマンドライン引数として渡すことができます。  ロングオプションは、短縮形が一
       意である限り、短縮することができます。

オプション

       gawk は以下のオプションを受け付けます。

       -F fs
       --field-separator fs
              入力フィールドセパレータ (変数 FS の値)を fs とします。

       -v var=val
       --assign var=val
              プログラムを実行する前に、変数 var に値 val を設定します。このようにして設定 した変
              数は、 AWK プログラムの BEGIN ブロック内でも参照できます。

       -f program-file
       --file program-file
              awk への第 1 引数を用いるかわりに、AWK プログラムをファイル program-file から読み込
              みます。 -f (または --file ) オプションは複数回使 用することができます。

       -mf NNN
       -mr NNN
              さまざまなメモリの制限値を NNN に設定します。フラグ f は最大フィールド数、フラグ  r
              は最大レコードサイズを設定します。この  2  つのフラグと  -m オプションは、Bell Labs
              バージョンの UNIX awk に由来しています。しかし、 gawk  にはこのような制限はありませ
              んので、 gawk では本オプションは無視されます。

       -W traditional
       -W compat
       --traditional
       --compat
              互換  モードで動作します。互換モードでは、 gawk は UNIX awk と等価な動作を行い、GNU
              独自拡張は解釈できません。 このオプションの他の形式よりも、 --traditional  を使用す
              ることが好まれます。 詳しくは後述の GNU 拡張 を参照してください。

       -W copyleft
       -W copyright
       --copyleft
       --copyright
              GNU の著作権表示の短いバージョンを標準出力へ書き出し、 成功状態で終了します。

       -W help
       -W usage
       --help
       --usage
              短めのオプション一覧を標準出力へ書き出します。  ( GNU コーディング規約 に従い、本オ
              プションを指定すると   awk   はただちに終了し、成功を意味する終了ステータスを返しま
              す。)

       -W lint

       --lint 他の AWK での処理が疑わしい、あるいは他の AWK との互換性がない構造が ある場合に警告
              を行います。
       -W lint-old
       --lint-old
              オリジナルの Unix awk へ移植できない構造に関して警告を行います。

       -W posix
       --posix
              互換 モードをオンにし、更に以下の制約が課せられます。

              • \x エスケープシーケンスを解釈しません。

              • FS   が単一の空白に設定された場合、空白とタブのみがフィールドを区切り、    改行は
                フィールドを区切りません。

              • キーワード function に対応する別名 func を解釈しません。

              • 演算子 ^^= のかわりに ****= を用いることができません。

              • fflush() 関数は利用できません。

       -W re-interval
       --re-interval
              正規表現のマッチングで インターバル表現 (interval expressions) を有効にします (後述
              の 正規表現 を参照してください)。 インターバル表現は伝統的な AWK 言語では利用できま
              せんでした。  awkegrep が一貫性を持つように、POSIX 標準がこれらを追加しました。
              しかし、これらを使用すると古い AWK プログラムを動かなくしてしまうでしょうから、  こ
              のオプションによって要求されたときと、 --posix が指定されたときに、 gawk はこれらの
              機能を提供します。

       -W source program-text
       --source program-text
              program-text を AWK  プログラムとして用います。本オプションにより、ライブラリ化され
              た関数  ( -f または --file オプションを用いて読み込む) とコマンドラインから入力され
              たプログラムを 簡単に合成することができます。  これは、主にシェルスクリプトで用いら
              れる中規模から大規模な AWK プログラム のために用意されました。

       -W version
       --version
              実行された gawk プログラムのバージョン情報を標準出力へ書き出します。これは主に、 あ
              なたが使用している gawk プログラムが Free Software Foundation が配布してい るプログ
              ラムのうち、最新のものであるかどうかを知る場合に便利です。 またバグレポートのときに
              も有用です。 (本オプションを指定すると、 GNU コーディング規約 に従い、 awk はただち
              に終了し、成功を意味する終了ステータスを返します。)

       --     オプションの終了を意味します。AWK  プログラムに “-” から始まるオプションではない 引
              数を与える場合に便利です。 これは、主に他の POSIX  プログラムの多くが引数に対して行
              う解釈と 一貫性を保つためにあります。

       互換モードでは、他のオプションは不正であるとされるか、無視されます。      通常の実行におい
       て、プログラムテキストがコマンドラインに指定されていれば、 不明なオプションは、AWK  プログ
       ラムに  ARGV 配列を通して渡されます。これ は、AWK プログラムを “#!” 機構を用いて実行する場
       合に特に便利です。

AWK プログラムの実行

       AWK プログラムは、パターンとアクションの組の列と、(もし必要なら) 関数定義か らなります。

              pattern   { action statements }
              function name(parameter list) { statements }

       gawk はまず、 program-file (複数可) が指定されていればそれから、 --source の引数から、ある
       いは、最初のオプションではない引数から  プログラムを読み込みます。 -f--source オプショ
       ンは、コマンドラインで複数回指定できます。 gawk は、すべての program-file とコマンドライン
       で指定したプログラムを結  合して使用します。新しく作った  AWK プログラムひとつひとつに AWK
       関数のライブラリを埋め込む必要が無いので、この機能はライブラリの構築に 便利です。 また、ラ
       イブラリ関数とコマンドラインで指定したプログラムとを混合して使 うことも可能にしています。

       環境変数  AWKPATH により、 -f オプションで指定されたファイルを検索するパスを指定できます。
       AWKPATH が設定されていない場合のデフォルトパスは ".:/usr/local/share/awk"  です。  (実際の
       ディレクトリは  gawk がどのように構築/インストールされたかに依存して、さまざまなものとなり
       ます。) -f オプションで指定したファイル名が “/” を含んでいる場合は、  パス検索は行われませ
       ん。

       gawk  は、 AWK プログラムを次の順序で実行します。 まず、 -v オプションで指定された変数への
       代入をすべて行います。 次に、プログラムを内部形式にコンパイルします。  そして、(もし存在す
       れば)  BEGIN  ブロック  (複数存在可) を実行します。 配列 ARGV で指定されたファイルを順に読
       み、処理を行います (コマンドラインでファイル名が  指定されていなければ、標準入力に対して処
       理を行います)。

       コマンドラインで指定されたファイル名が var=val という形式ならば、それ は変数への代入である
       と解釈されます。変数 var は値 val に設定されます (これは、すべての BEGIN  ブロックを実行し
       たあとに行われます)。コマンドライン での変数の代入は、AWK が入力をフィールドやレコードに分
       割するためのセパレータ を実行時に変更するのに便利です。また、1 つのデータファイルに 対し数
       回処理を行う必要がある場合、状態をコントロールするのにも便利です。

       配列 ARGV の要素に空 ("") がある場合、 gawk はその要素を無視します。

       gawk は、入力された各レコードに対してマッチする パターン が AWK プログラム内にあるかどうか
       を 検索します。そのレコードにマッチしたパターンすべてについて、それぞれ対応する アクション
       が実行されます。 パターンは、プログラムテキストに出現した順序で検索されます。

       入力が尽きると、 gawk は (もしあれば) END ブロック (複数存在可) を実行します。

変数、レコード、フィールド

       AWK  における変数は動的、すなわち、最初に使用されたときに生成されます。 変数の値は、浮動小
       数点数か、文字列か、あるいは両方です。変数の用い  られ方により変化します。AWK  ではまた、1
       次元配列を利用することができます。 多次元配列 も、擬似的にではありますが、利用可能です。プ
       ログラム実行開始時に、   いくつかの定義済み変数が設定されます。   これらを必要に応じて説明
       し、以下でまとめます。

   レコード
       通常、レコードは改行文字により区切られます。  レコードの区切りは、組み込み変数 RS へ値を代
       入することにより、制御できます。 RS が単一文字の場合、その文字がレコードを区切ります。  そ
       うでない場合は、  RS は正規表現となります。 入力中のテキストで、この正規表現にマッチするも
       のがレコードを区切ります。 しかし互換モードでは、 文字列値の最初の文字だけが、レコードセパ
       レータに使用されます。  RS  が空文字列に設定されているときには、レコードは空行で区切られま
       す。 RS が空文字列に設定されたときには、 FS の値にかかわらず、改行文字は常にフィールドセパ
       レータとなります。

   フィールド
       入力レコードを読み込むごとに、  gawk はそのレコードを フィールド に分割しま す。分割する際
       には、変数 FS の値がフィールドセパレータとして参照されます。 FS の値が1文字なら、その 文字
       を境にフィールドが分割されます。 FS が空文字列の場合、個々の文字がフィールドセパレータとな
       ります。 いずれでもない場合、 FS  は完全な正規表現である  と解釈されます。特殊な場合として
       FS が単一の空白のときには、フィールドは 連続した空白・タブ・改行により分割されます。 (後述
       の --posix の議論を参照してください)。 変数 IGNORECASE (下記参照) の 値は、 FS  が正規表現
       の場合フィールド分割にも影響を与えることと、 RS が正規表現の場合レコード分割にも影響を与え
       ることに注意してください。

       変数 FIELDWIDTHS の値が空白で区切られた数字の列である場合、各フィールドは 固定長であると解
       釈され、  gawk は指定された幅ごとにフィールドの 分割を行います。この場合、 FS の値は無視さ
       れます。 FS に新たに値を設定 することにより、この FIELDWIDTHS の効果を打ち消し、標準の動作
       に戻すことができます。

       入力レコード中の各フィールドの値は、左から  $1,  $2  等という名前で参照できます。 $0 は レ
       コード全体です。フィールドに値を代入することもできます。フィールドは定数だ  けでなく、変数
       によって参照することもできます。以下の例では、入力レコードの  5 番目のフィールドの値を出力
       します。

              n = 5
              print $n

       変数 NF は、自動的に入力レコードのフィールドの数に設定されます。

       存在しないフィールド (すなわち、 $NF より右のフィールド) を参照した結果は 空文字列になりま
       す。しかしながら、存在しないフィールドへの代入(たとえ  ば、 $(NF+2)=5 ) は NF の値を増加さ
       せ、間のフィールドには空文字が設定されます。 さらに $0 の値は、フィールドの値を変数 OFS の
       値でフィールドを区切ったものとして再計算されます。    負のフィールド番号への参照は致命的エ
       ラーとなります。 NF を減少させると、新しい値を越えるフィールドの値は失われます。  $0  の値
       は、フィールドの値を変数 OFS の値でフィールドを区切ったものとして再計算されます。

   組み込み変数
       gawk の組み込み変数は以下のとおりです。

       ARGC        コマンドライン引数の個数  (  gawk  へのオプションと、プログラム指定は含みま せ
                   ん)。

       ARGIND      現在処理中のファイル名が格納されている配列 ARGV のインデックス。

       ARGV        コマンドライン引数の配列。配列は、 0 から ARGC - 1 までのインデックスを 持ちま
                   す。  ARGV の内容を変更することで、入力に用いるファイル名を変 更することができ
                   ます。

       CONVFMT     数値の変換フォーマット。デフォルト値は "%.6g" です。

       ENVIRON     現在の環境変数の値からなる配列。配列は、環境変数名によりインデックスされ  、各
                   要素の値はその環境変数の値です  (例えば ENVIRON["HOME"]/home/arnold となる
                   でしょう)。本配列に 代入を行っても、 gawk からリダイレクトや system() 関数によ
                   り実行される プログラムの環境には影響を与えません(これは、将来の gawk では変更
                   される可能性があります)。

       ERRNO       getline のリダイレクト、 getline による読み込み、 close() 関数の実行時のいずれ
                   かにシステムエラーが発生した場合、変数  ERRNO にはエラーの内容を示した文字列が
                   設定されます。

       FIELDWIDTHS 空白で区切られたフィールド長のリスト。もしこの値が設定されていれば、  gawkFS   の値を用いてフィールド分割するかわりに、固定長のフィールド分割を行   いま
                   す。固定長のフィールド分割機能はまだ実験的なもので、 gawk が改良されるに従って
                   意味が変化する可能性があります。

       FILENAME    現在の入力ファイル名。もし、コマンドラインで入力ファイルが指定されてい  なけれ
                   ば、 FILENAME の値は “-” です。しかしながら、 BEGIN ブロック内では FILENAME は
                   未定義です。

       FNR         現在の入力ファイルにおける入力レコード番号。

       FS          入力フィールドセパレータ。デフォルトでは単一の空白です。  上述の フィールド を
                   参照してください。

       IGNORECASE  すべての正規表現と文字列操作において大文字小文字の区別を制御します。もし、
                   IGNORECASE  が  0 でない値に設定されていれば、文字列比較、ルールのパターンマッ
                   チ、 FS によるフィールド分割、 RS によるレコード分割、 ~!~  による正規表現
                   マッチ、定義済み関数 gensub(), gsub(), index(), match(), split(), sub() におい
                   て大文字と小文字の違いは無視されます。このため、 IGNORECASE  が  0  以外の値な
                   ら、  /aB/"ab", "aB", "Ab", "AB" のいずれにもマッチすることになります。 他
                   のAWK 変数と同様に IGNORECASE の初期値は 0 なので、通常は 正規表現と文字列操作
                   において大文字と小文字は区別されます。 Unix では、大文字小文字を無視する場合、
                   ISO 8859-1 Latin-1  文字集合全てを使用できます。  注:  3.0  以前の  gawk  では
                   IGNORECASE は正規表現操作のみに影響しました。現在は文字列比較にも影響します。

       NF          現在の入力レコードのフィールド数。

       NR          現在までに読み込んだ入力レコード数の合計。

       OFMT        数字の出力フォーマット。デフォルト値は "%.6g" です。

       OFS         出力フィールドセパレータ。デフォルトは空白です。

       ORS         出力レコードセパレータ。デフォルトは改行です。

       RS          入力レコードセパレータ。デフォルトは改行です。

       RT          レコードターミネータ。 gawk は、 RS で指定される文字または正規表現にマッチする
                   入力テキストを、 RT に設定します。

       RSTART      match() によりマッチした最初の文字の位置。0 はマッチしなかったことを示します。

       RLENGTH     match() によりマッチした文字列の長さ。-1 はマッチしなかったことを示します。

       SUBSEP      多次元配列を実現する際に用いられる、配列のインデックスを結合する文字。  デフォ
                   ルト値は "\034" です。

   配列
       配列は、ブラケット  ([]) の間の式によってインデックスを指定します。もし式が式 のリス
       ト(式, 式 ...) なら、式の値を変数 SUBSEP の値を区切りとして 結合した文字列をインデックスと
       して用います。これにより、多次元配列を シミュレートしています。例えば、

              i = "A"; j = "B"; k = "C"
              x[i, j, k] = "hello, world\n"

       は、文字列  "hello, world\n" を、文字列 "A\034B\034C" で インデックスした配列 x の要素に代
       入しています。 AWK の配列はすべて、文字列によりインデックスを行う連想配列です。

       特殊な演算子 inif または while  ステートメントで用いることによって、あるインデックス値
       に おける配列の値が定義されているかを調べることができます。

              if (val in array)
                   print array[val]

       もし、配列が多次元インデックスを持つなら、 (i, j) in array を用います。

       in  はまた、 for ループ中で、配列のすべてのインデックス値について繰り返すために 用いること
       ができます。

       配列の要素は、 delete ステートメントを用いて削除することができます。 delete ステートメント
       はまた、 添字を指定せずに配列名のみを指定することにより、 配列全体を削除するためにも使えま
       す。

   変数の型と変換
       変数とフィールドは、(浮動小数点数の) 数値または文字列、あるいは両方として 扱われます。  変
       数の値がどのように解釈されるかは、変数の使われ方によって変化します。  数式中で用いられれば
       変数は数値として解釈され、文字列として用いられれ ば文字列として解釈されます。

       変数の値を強制的に数値であると解釈させたい場合は、変数に 0 を加えます。 文字列と解釈させた
       い場合は空文字列を結合します。

       文字列を数値に変換する必要がある場合、変換は atof(3) によって行われます。 数値を文字列に変
       換する場合は、変数 CONVFMT の値をフォーマット文字列として用いて、 sprintf(3)  により行われ
       ます。AWK  ではすべての数値は浮動小数点数ですが、整数値は常に整数 として変換が行われます。
       よって、以下の場合、

              CONVFMT = "%2.2f"
              a = 12
              b = a ""

       変数 b は文字列値 "12" となり、"12.00" とはなりません。

       gawk は、以下のようにして比較を行います: 2 つの変数が数値なら数値として比 較します。もし片
       方が数値で片方が`数値'文字列なら、数値として比較されます。  片方が数値でない文字列なら、数
       値のほうが文字列に変換され、文字列として  比較されます。両方とも文字列なら、文字列として比
       較されます。POSIX  標準に従う なら、両方とも数値文字列の場合は数値として比較しますが、これ
       は明ら かに間違いです。 gawk はそのような動作をしません。

       "57"   のような文字列定数は数値文字列では   なく    、文字列定数です。「数値文字列」の概念
       は、フィールド、 getline の入力、 FILENAMEARGV の要素、 ENVIRON の要素、数値文字列から
       split() によって作成された配列の要素に対してのみ適用されます。 基本的な考え方では、 ユーザ
       入力 、それも数値に見えるユーザ入力のみが数値として扱われます。

       初期化されていない変数は、数値としては 0 を、文字列としては "" (空文字列) を 持ちます。

パターンとアクション

       awk  は行指向の言語です。まずパターン、次にアクションが続きます。 アクションは {} で囲
       みます。パターンまたはアクションは省略することもできます。  もちろん、両方とも  省略してし
       まっては意味がありません。 パターンがない場合、アクションはすべての入力レコードに 対して適
       用されます。省略されたアクションは以下と等価です。

              { print }

       これはレコード全体を出力します。

       コメントは文字 “#” で始まり、行末まで続きます。空行は、複数ステートメントの 間をあけるのに
       使うことができます。 通常、ステートメントは改行で終わります。ただし、 次の記号で行が終わる
       場合にはこの限りではありません: “,”, {, ?, :, &&, ||do  または  else  で終わる行は、ス
       テートメントが自動的に以降  の行へ継続されます。また、改行の直前に “\” を置くことで、 行を
       継続することができます。この場合、その改行は無視されます。

       “;” で区切ることにより、1行に複数のステートメントを記述することができます。 (通常のように)
       パターン-アクション対中のアクション部におけるステートメントだけではなく、    パターン-アク
       ション対ステートメント自身も、
        “;” で区切って複数置くことができます。

   パターン
       AWK のパターンは、以下のうちのいずれかです。

              BEGIN
              END
              /regular expression/
              relational expression
              pattern && pattern
              pattern || pattern
              pattern ? pattern : pattern
              (pattern)
              ! pattern
              pattern1, pattern2

       BEGINEND は特殊なパターンであり、入力と比較されることはありません。すべての  BEGIN  パ
       ターンに対応したアクション部は結合され、  そのようなすべてのアクション部が単一の  BEGIN ブ
       ロック中にあるかのように扱われます。 結合されたアクションは、 すべての入力ファイルの読み込
       みに先立って実行されます。同様にすべての  END ブロックは結合され、すべての入力ファイルの処
       理後 (あるいは、exit ステートメント が実行されたとき) に実行されます。 BEGINEND  はパ
       ターン式内で他のパターンと混ぜて使うことはできません。また、  BEGINEND パターンはアク
       ション部を省略することができません。

       /regular expression/ パターンでは、正規表現 (regular expression)  にマッチした入力レコード
       に対してアクション  が実行されます。正規表現は egrep(1) と同じものが使えます。あとに要約を
       示します。

       関係式(relational expression) では、後述のアクションについての節で示す演算子を用いることが
       できます。 これらは概して、特定のフィールドが正規表現にマッチするかどうかを 調べるために用
       いられます。

       演算子 &&, ||, !  は、それぞれ C 言語での論理AND、論理OR、論理NOT と等価です。 C  言語と同
       様に、評価値が確定した時点で以降の評価を打ち切ります。  これらは複数のパターン式を結合する
       ために使用されます。  他のプログラミング言語と同様、括弧によって評価順序を変更することがで
       きます。

       ?: 演算子は C 言語のものと同様です。もし、最初のパターンが真なら、 テストのために 2 番目の
       パターンが用いられ、そうでなければ 3 番目のパターンが 用いられます。2  番目と  3  番目のパ
       ターンのどちらかだけが評価されます。

       pattern1,  pattern2 形式は 範囲パターン と呼ばれます。範囲パターンは、 pattern1 にマッチす
       るレコードから、 pattern2 にマッチするレコードまでのすべてにマッチします。  この形式は、他
       のパターン式と混合して用いることはできません。

   正規表現
       awk の正規表現は egrep のものと同様に、拡張された正規表現です。 以下の構成要素から成り立っ
       ています。

       c          メタ文字ではない c にマッチします。

       \c         リテラル文字 c にマッチします。

       .          改行を 含む 任意の 1 文字にマッチします。

       ^          文字列の先頭にマッチします。

       $          文字列の終端にマッチします。

       [abc...]   文字リストであり、 abc...  のいずれか 1 文字にマッチします。

       [^abc...]  文字リストの逆であり、 abc...  以外の 1 文字にマッチします。

       r1|r2      選言: r1 または r2 にマッチします。

       r1r2       結合: r1 の直後に r2 が続くものにマッチします。

       r+         r の 1 回以上の繰り返しにマッチします。

       r*         r の 0 回以上の繰り返しにマッチします。

       r?         r の 0 回または 1 回の繰り返しにマッチします。

       (r)        グループ化: r にマッチします。

       r{n}
       r{n,}
       r{n,m}     ブレース中に 1 つか 2 つの数値を記述することにより、 インターバル表現  を表しま
                  す。ブレース中に数値が  1 つある場合、直前の正規表現 rn 回繰り返されます。2
                  つの数値がコンマで区切られている場合、 rn 回から m 回繰り返されます。1 つの
                  数値に続いてコンマがある場合、 r は少なくとも n 回繰り返されます。
                  インターバル表現は  --posix または --re-interval がコマンドラインにて指定されて
                  いるときのみ利用可能です。

       \y         語の先頭または末尾の空文字列にマッチします。

       \B         語の中の空文字列にマッチします。

       \<         語の先頭の空文字列にマッチします。

       \>         語の末尾の空文字列にマッチします。

       \w         語を構成する文字 (レター、数値、アンダスコア) にマッチします。

       \W         語を構成する文字以外の文字にマッチします。

       \`         バッファ (文字列) の先頭の空文字列にマッチします。

       \'         バッファの末尾の空文字列にマッチします。

       文字列定数中で用いることができるエスケープシーケンス (後述参照) は、  正規表現中でも使用す
       ることができます。

       文字クラス  は POSIX 標準で導入された新機能です。 文字クラスは特定の属性を持つ文字列リスト
       の特殊表現ですが、   実際の文字集合自身は国や文字集合によって様々なものとなります。   例え
       ば、アルファベット文字はアメリカ合州国とフランスとでは異なります。

       文字クラスが有効なのは、  文字リストのブラケットの中の正規表現だけです。 文字クラスは、 [:
       と、クラスを表現するキーワードと、 :] で構成されます。 以下に POSIX 表現で定義される文字ク
       ラスを示します。

       [:alnum:]
              アルファベットと数値文字。

       [:alpha:]
              アルファベット文字。

       [:blank:]
              空白とタブ文字。

       [:cntrl:]
              制御文字。

       [:digit:]
              数値文字。

       [:graph:]
              印字可能で可視な文字。 (空白は印字可能ですが見えません。一方 a は印字可能かつ可視で
              す。)

       [:lower:]
              アルファベット文字の小文字。

       [:print:]
              印字可能な文字 (制御文字以外)。

       [:punct:]
              句読点文字 (レター、数値、制御文字、空白文字のいずれでもない文字)。

       [:space:]
              空白文字 (空白、タブ、フォームフィード等の少数の文字を指す)。

       [:upper:]
              アルファベット文字の大文字。

       [:xdigit:]
              16 進数の数値。

       例えば、POSIX 標準以前では、アルファベットと数値の文字にマッチするためには、 /[A-Za-z0-9]/
       と書きました。しかし、別のアルファベット文字が文字集合に含まれる場合、  それらにはマッチし
       ません。 POSIX 文字クラスでは、 /[[:alnum:]]/ と記述することができ、文字集合の すべて のア
       ルファベットと数値にマッチします。

       文字リスト中には、更に  2 つの特殊シーケンスを使用できます。 これらは、 複数の文字によって
       表現される単一シンボル ( 照合文字 と呼ばれます) を持ち、 複数の文字が 参照  やソートにおい
       ては等価であるとされる、非  ASCII  文字集合に適用されます。  (例えば、フランス語では単なる
       “e” とグレーブアクセント付きの e` とでは 等価です。)

       照合シンボル
              参照シンボルは複数文字の参照要素であり、 [..]  で括ります。 例えば、 ch が参照
              要素の場合、  [[.ch.]]   は正規表現となり、この参照要素にマッチします。 一方、 [ch]ch にマッチする正規表現です。

       等価クラス
              等価クラスは 等価な文字リストを指すロケール固有の名前です。名前は [==] で括りま
              す。 例えば、名前 e は “e,” “e`,”, “e`.” のすべてを表現するために使用されるかもしれ
              ません。 この場合、 [[=e=]]e, , e` のいずれかにマッチする正規表現となります。

       これらの機能は英語以外のロケールにて非常に有用です。 gawk が正規表現のマッチングに使用する
       ライブラリ関数は、  現在 POSIX 文字クラスのみを理解し、 参照シンボルと等価クラスは理解しま
       せん。

       \y, \B, \<, \>, \w, \W, \`, \' の演算子は gawk 固有であり、GNU  正規表現ライブラリの機能を
       元にした拡張です。

       様々なコマンドラインオプションによって、正規表現中の文字を gawk がどのように解釈するのかを
       制御できます。

       オプション無し
              デフォルトでは、 gawk は上述の POSIX 正規表現および GNU  正規表現のすべての機能を提
              供します。 しかしながら、インターバル表現はサポートされません。

       --posix
              POSIX  正規表現のみがサポートされ、GNU 演算子はサポートされません (例えば、 \w はリ
              テラル w にマッチします)。 インターバル表現は許されます。

       --traditional
              伝統的な  Unix  awk  の正規表現がサポートされます。GNU   演算子、インターバル表現、
              POSIX  文字クラス ( [[:alnum:]] など) はサポートされません。 8 進または 16 進のエス
              ケープシーケンスで表現される文字は、 正規表現のメタ文字を表現するとしても、  リテラ
              ルとして扱われます。

       --re-interval
              --traditional  が指定されていたとしても、正規表現中でインターバル表現をサポートしま
              す。

   アクション
       アクションは、ブレース {} で囲みます。アクションは通常の代入、条件文、  ループ文等から
       なります。演算子、制御文、入出力文は C 言語とほぼ同様です。

   演算子
       AWK での演算子を、優先順位の高いものから順に示します。

       (...)       グループ化。

       $           フィールド参照。

       ++ --       インクリメント、デクリメント。前置も後置も可能。

       ^           べき乗 (** も同様の意味で使用できる。また **= 代入演算子も存在する)。

       + - !       単項のプラス、マイナス、論理否定。

       * / %       乗算、除算、剰余。

       + -         加算と減算。

       space       文字列結合。

       < >
       <= >=
       != ==       通常の関係演算子。

       ~ !~        正規表現マッチ、否定のマッチ。 注意: ~!~ の左辺に正規表現定数 (/foo/等) を
                   用いてはいけません。正規表現定数は右辺にのみ置くことができます。式 /foo/ ~ exp(($0 ~ /foo/) ~ exp) と等価であり、 これは通常意図するものとは異なります。

       in          配列のメンバ。

       &&          論理 AND。

       ||          論理 OR。

       ?:          C  言語の条件式と同様です。  expr1 ? expr2 : expr3の形式で使います。もし expr1
                   が真なら式の値は expr2  になり、そうでなければ  expr3  になります。  expr2expr3 のうち片方のみが評価されます。

       = += -=
       *= /= %= ^= 代入。絶対代入 (var = value) と演算子代入 (他の形式) がサポートされています。
   制御ステートメント
       制御ステートメントは以下のとおりです。
              if (condition) statement [ else statement ]
              while (condition) statement
              do statement while (condition)
              for (expr1; expr2; expr3) statement
              for (var in array) statement
              break
              continue
              delete array[index]
              delete array
              exit [ expression ]
              { statements }
   入出力ステートメント
       入出力ステートメントは以下のとおりです。
       close(file)         ファイル (またはパイプ、下記参照) をクローズします。
       getline             次のレコードを $0 に読み込みます。 NF, NR, FNR が設定されます。
       getline <file       ファイル  file  から次のレコードを $0 に読み込みます。 NF が設定されま
                           す。
       getline var         次のレコードを変数 var に読み込みます。 NR, FNR が設定されます。
       getline var <file   ファイル file から次のレコードを変数 var に読み込みます。
       next                現在のレコードに対する処理を終了し、次のレコードを読み込み、AWK プログ
                           ラムの最初のパターンから処理を開始します。  C 言語の continue と類似し
                           た意味を持ちます。 もし、入力データの終端に達した場合、 END ブロックが
                           存在すれば実行されます。
       nextfile            現在の入力ファイルに対する処理を終了し、次の入力ファイルからレコードを
                           読み込みます。 FILENAMEARGIND が更新され、 FNR が  1  にリセットさ
                           れ、AWK  プログラムの 最初のパターンから処理が開始されます。入力データ
                           の終端に達したときは、 もし存在すれば、  END  ブロックが実行されます。
                           注:  以前のバージョンの  gawk では next file と 2 語で使用されていまし
                           た。この用法はまだ認識されますが、  警告メッセージを生じさせますし、最
                           終的には無くなる表現です。
       print               現在のレコードを出力します。 出力レコードは ORS 変数の値にて終端されま
                           す。
       print expr-list     式を出力します。各式は OFS  の値で区切られます。出力されるレコードの最
                           後に は ORS の値が付加されます。
       print expr-list >file
                           式をファイル  file に出力します。各式は OFS の値で区切られます。出力さ
                           れるレコードの 最後には ORS の値が付加されます。
       printf fmt, expr-list
                           書式付き出力です。
       printf fmt, expr-list >file
                           ファイル file への書式付き出力です。
       system(cmd-line)    コマンド cmd-line を実行し、終了ステータスを返します (POSIX に対応しな
                           い システムでは使用できない場合があります)。
       fflush([file])      オープンされている出力ファイルまたはパイプ  file  に関連づけられている
                           バッファをフラッシュします。 file を指定しないと、標準出力がフラッシュ
                           されます。 file が空文字列の場合、オープンされているすべてのファイルと
                           パイプのバッファを フラッシュします。
       その他の形式のリダイレクトとして以下のものが利用可能です。 printprintf  に対して、  >>
       file  を指定すると出力はファイル  file に追加され、 | command は出力をパイプに対して行いま
       す。同様に、 command| getline はコマンドの出力から getline を行ないます。 getline はファイ
       ル終端では 0 を、エラー時には -1 を返します。
       注: ループ中で getline へパイプ書き込みする場合または printprintf からパイプ読み取りす
       る場合、 コマンドの新インスタンスを作成するために close() を使用することが必要です。  パイ
       プが EOF を返すときでも、AWK は自動的にはパイプを閉じません。
   printf ステートメント
       AWK  での printf ステートメントと sprintf() 関数 (後述参照) は、以下の変換指定書式を受け付
       けます。
       %c     1 つの ASCII 文字。 %c に対応する引数が数値なら、その値を ASCII コードとみなし て文
              字に変換します。そうでなければ、引数は文字列であると解釈され、その 1 文字目が出力さ
              れます。
       %d
       %i     10 進数 (整数部分)。
       %e
       %E     [-]d.dddddde[+-]dd という形式の浮動小数点数。 %E 形式では e の代りに E が使用されま
              す。

       %f     [-]ddd.dddddd という形式の浮動小数点数。

       %g
       %G     %e%f の短い方の形式の浮動小数点数。余計な 0 は省略されます。 %G 形式では %e の
              代りに %E を使用します。

       %o     符号なしの 8 進数 (整数)。

       %u     符号なしの 10 進数 (整数)。

       %s     文字列。

       %x
       %X     符号なしの 16 進数 (整数)。 %X 形式では、 abcdef の代りに ABCDEF を用います。

       %%     単一の文字 % 。引数は使用しません。

       % と上記の制御文字との間にオプショナルな追加のパラメータを置く  ことができます。以下にそれ
       らを示します。

       -      左寄せ。

       空白   数値変換において、正の値のプレフィックスは空白となり、 負の値のプレフィックスはマイ
              ナス記号となります。

       +      プラス記号は幅修正子 (後述)  の前に使用し、  整形されるデータが正であったとしても、
              数値変換に対して常に符号を付けることを指示します。 + は空白修正子に優先します。

       #      ある制御レターに対して「別の形式」を使用します。  %o  に対しては先行する 0 を与え、
              %x%X に対しては非 0 の結果に対して先行する 0x0X を与えます。 %e, %E, %f  に
              対しては結果に常に小数点を含めます。 %g, %G に対しては結果の末尾から 0 を取り除きま
              せん。

       0      先頭の 0 (ゼロ) はフラグとして動作し、 出力を空白ではなく 0  でパディングすることを
              示します。    これは非数値の出力書式に対しても適用されます。   このフラグが有効なの
              は、フィールド幅が印字される値の幅より広いときだけです。

       width  フィールドが指定した幅 width になるようにパディングされます。フィールドは通常空白で
              パディングされます。 0 フラグが使用された場合には 0 でパディングされます。

       .prec  印字において使用する精度を数値で指定します。  %e, %E, %f の書式に対しては、小数点の
              右側に印字される数字の数を指定します。 %g, %G  の書式に対しては、仮数部の最大数を指
              定します。  %d, %o, %i, %u, %x, %X の書式に対しては、印字される数字の最小数を指定し
              ます。 文字列に対しては、印字される文字列からとりだされる最大の文字数を指定します。

       ANSI C の printf() の動的な幅 width と精度 prec の指定機能が使用できます。  または  精度
       の指定部分に * を指定することで、その値を printf または sprintf() への引数で指定できます。

   特殊ファイル名
       printprintf で書き込みときでも、 getline でファイルから読み取るときでも、 入出力リダイ
       レクトを行う場合、  gawk  は内部的な特殊なファイル名を解釈します。  これらのファイル名によ
       り、親プロセス  (通常はシェルです) から受け継いだ オープン状態のファイルディスクリプタを用
       いて入出力を行ったり、実行中の gawk プロセスに関する情報を得ることができます。  特殊ファイ
       ル名は以下のとおりです。

       /dev/pid    現在のプロセスのプロセスID (10 進数で、最後に改行が付きます) を 読み込むことが
                   できます。

       /dev/ppid   現在のプロセスの親のプロセスのプロセスID (10 進数で、最後に改行が付きます)  を
                   読み込むことができます。

       /dev/pgrpid 現在のプロセスのプロセスグループ ID (10 進数で、最後に改行が付きます) を読み込
                   むことができます。

       /dev/user   このファイルを読むことで、改行で終わる単一のレコードが得られます。  各フィール
                   ドは空白で区切られています。   $1getuid(2)  システムコールの値、  $2geteuid(2) システムコールの値、 $3getgid(2)  システムコールの値、  $4getegid(2)   システムコールの値です。もし、さらにフィールドがあれば、   それは
                   getgroups(2) システムコールが返すグループ ID のリストです。 全てのシステムで複
                   数のグループがサポートされているわけではありません。

       /dev/stdin  標準入力。

       /dev/stdout 標準出力。

       /dev/stderr 標準エラー出力。

       /dev/fd/n   オープンされたファイルディスクリプタ n に対応しているファイル。

       エラーメッセージを出力するには、以下の方法が便利です。

              print "You blew it!" > "/dev/stderr"

       もしこの機能が無かったら、次のようにするしかないところです。

              print "You blew it!" | "cat 1>&2"

       これらのファイル名は、コマンドラインのデータファイル指定で使うこともできます。

   数値関数
       AWK は以下の定義済み数値関数を持っています。

       atan2(y, x)   y/x の逆正接をラジアンで与えます。

       cos(expr)     expr の余弦をラジアンで与えます。

       exp(expr)     指数関数。

       int(expr)     整数への切捨て。

       log(expr)     自然対数。

       rand()        0 から 1 の間の乱数を与えます。

       sin(expr)     expr の正弦をラジアンで与えます。

       sqrt(expr)    平方根。

       srand([expr]) expr の値を乱数生成関数の種として用います。式が指定されなかった場合は、 時刻
                     が用いられます。直前の種の値を返します。

   文字列関数
       gawk は以下の定義済み文字列関数を持っています。

       gensub(r, s, h [, t])   対象文字列 t から正規表現 r のマッチを探します。 hg  または  G
                               で開始する文字列の場合、マッチする  r  をすべて s に置き換えます。
                               そうでない場合、 h は何番目の  r  のマッチを置き換えるのかを示しま
                               す。 t が与えられない場合、代りに $0 が使用されます。 置換テキスト
                               s では、シーケンス \n ただし n は 1 から 9  までの数字を使用して、
                               n  番目にマッチした括弧付きサブ式を示すことができます。 シーケンス
                               \0 は文字 &  と同様、マッチしたテキスト全体を表します。  sub()gsub() とは異なり、修正された文字列が関数の結果として返され、 元の
                               対象テキストは変更され ませんgsub(r, s [, t])        文字列 t  中で正規表現  r  にマッチした部分をすべて  s  に置換しま
                               す。置換の個数を返します。  t を指定しなかった場合は $0 が用いられ
                               ます。 置換テキストでは、 & は実際にマッチしたテキストで置き換えら
                               れます。 \& を使用するとリテラルの & を得ることができます。 sub(),
                               gsub(), gensub() における & とバックスラッシュに関する完全な議論は
                               Effective AWK Language Programming を参照してください。

       index(s, t)             文字列  s 中に含まれる文字列 t の位置を返します。 t が含まれていな
                               い場合は 0 を返します。

       length([s])             文字列 s の長さを返します。 s を指定しなかった場合には $0 の長さを
                               返します。

       match(s, r)             文字列 s 中で正規表現 r にマッチする位置を返します。マッチしない場
                               合は 0 を 返します。 RSTARTRLENGTH の値が設定されます。

       split(s, a [, r])       文字列 s を正規表現 r を用いて分割し、配列 a に格納します。 フィー
                               ルド数を返します。 r が省略され た場合は FS が用いられます。配列 a
                               の内容は、分割前にクリアされます。  分割は、上述のフィールド分割と
                               同じ動作を行います。

       sprintf(fmt, expr-list) 書式 fmt に従って exp-list を整形表示し、結果の文字列を返します。

       sub(r, s [, t])         gsub() と似ていますが、最初にマッチした文字列のみが置換されます。

       substr(s, i [, n])      文字列  si 文字目から始まる最大 n 文字の部分文字列を返します。
                               n が省略された場合、 i 文字目以降の部分文字列が返されます。

       tolower(str)            文字列 str  をコピーし、大文字をすべて小文字に変換したものを返しま
                               す。 アルファベットでない文字は変化しません。

       toupper(str)            文字列  str をコピーし、小文字をすべて大文字に変換したものを返しま
                               す。 アルファベットでない文字は変化しません。

   時間関数
       タイムスタンプを含んだログファイルの処理は AWK プログラムの主な使い道の1つですから、  gawk
       はタイムスタンプを取り出したり、フォーマット するための 2 つの関数を提供します。

       systime() 基準時点からの経過秒数を返します  (POSIX システムでは、基準時点は UTC で 1970 年
                 1 月 1 日 0:00 です)。

       strftime([format [, timestamp]])
                 書式 format に従って timestamp をフォーマットします。 timestampsystime()  が
                 返す値と同じ形式でなければなりません。  timestamp が省略された場合、現在の日付が
                 使用されます。 format  が省略された場合、  date(1)  が出力に使用するものと同じデ
                 フォルトフォーマットが使用されます。 利用可能なフォーマットについては、ANSI C の
                 strftime() 関数の仕様を参照して下さい。パブリックドメインな strftime(3) とそのマ
                 ニュアルページが gawk とともに配布されています。もし、 gawk を作成するためにその
                 strftime を用いた場合は、そのマニュアルに記述されている変換書式が gawk  でも利用
                 可能です。

   文字列定数
       AWK での文字列定数は、ダブルクォート (") に狭まれた文字の列です。 文字列内では、C 言語のよ
       うにいくつかの エスケープシーケンス が使えます。

       \\   バックスラッシュそのもの。

       \a   「警告」文字。通常は ASCII BEL 文字です。

       \b   バックスペース。

       \f   改ページ (フォームフィード)。

       \n   改行。

       \r   復帰 (キャリッジリターン)。

       \t   水平タブ。

       \v   垂直タブ。

       \xhex digits
            \x に続く 16 進数で表現された文字。ANSI C と同様に、 \x に続くすべての 16 進数字 はエ
            スケープシーケンスの一部であるとみなされます。  (この機能によりコミッティによる言語デ
            ザインが分かります。) 例えば、"\x1B" は ASCII ESC (エスケープ) 文字です。

       \ddd 1 桁か 2 桁か 3 桁の 8 進数で表現された文字。例えば、 "\033" は ASCII  ESC  (エスケー
            プ) 文字です。

       \c   文字 c そのもの。

       エスケープシーケンスは正規表現定数内でも用いることができます  (例えば、 /[ \t\f\n\r\v]/ は
       空白文字にマッチします)。

       互換モードでは、8 進および 16 進のエスケープシーケンスで表現される文字は、  正規表現定数と
       して使用された場合、リテラルとして扱われます。 それゆえ、 /a\52b//a\*b/ と等価です。

関数

       AWK では関数を以下のようにして定義します。

              function name(parameter list) { statements }

       関数は、パターンまたはアクションの式から呼び出されたときに実行されます。  関数呼び出しにお
       いて与えられた実引数が、関数宣言における仮引数に 受け渡されます。 このとき配列の場合は参照
       渡しが行われ、他の変数の場合は値渡しで行われます。

       元々  AWK  に関数は備わっていませんでしたので、局所変数の機構はあまり スマートではありませ
       ん。   局所変数は引数リストの余分な引数として宣言します。局所変数と関   数引数を区別するた
       め、余分な空白で区切るのが慣習です。例えば、以下のよ うにします。

              function  f(p, q,     a, b)   # a & b は局所変数
              {
                   ...
              }

              /abc/     { ... ; f(1, 2) ; ... }

       関数呼び出しにおける左括弧は、空白を狭まずに関数名の直後に  置かなければいけません。  これ
       は、文字列結合演算子との曖昧さを生じさせないために必要です。  この制限は、上述の組み込み関
       数にはあてはまりません。

       関数は、他の関数を呼び出したり、自分自身を再帰的に呼び出すことができます。  局所変数として
       用いられる関数引数は、関数起動時に空文字列および 0 に初期化されます。

       関数から値を返すには return expr を使用してください。 値を指定しない場合、または関数の終り
       から “落ちる” (訳注: 関数を閉じるブレースに到達する) ことにより関数から戻る場合、 値は未定
       義です。

       --lint が指定されたとき、 gawk  は実行時ではなくパーズ時に未定義関数の呼び出しに関して警告
       します。 実行時の未定義関数の呼び出しは致命的なエラーとなります。

       function のかわりに func を用いることができます。

使用例

/etc/passwd” から全ユーザのログイン名を取り出し、ソートして出力します。

            BEGIN     { FS = ":" }
                 { print $1 | "sort" }

       ファイルの行数を数える。

                 { nlines++ }
            END  { print nlines }

       行番号をつける。

            { print FNR, $0 }

       全ファイルを通した行番号をつける。

            { print NR, $0 }

関連項目

       egrep(1), getpid(2), getppid(2), getpgrp(2), getuid(2), geteuid(2), getgid(2), getegid(2),
       getgroups(2)

       The AWK Programming Language, Alfred V. Aho, Brian  W.  Kernighan,  Peter  J.  Weinberger,
       Addison-Wesley, 1988. ISBN 0-201-07981-X.

       Effective   AWK  Language  Programming,  Edition  1.0,  published  by  the  Free  Software
       Foundation, 1995.

POSIX 互換

       gawk は最新版の UNIX awk との互換性だけでなく、POSIX 標準との互換性も追求しています。 この
       ため gawk には以下のような機能が取り入れられています。 これらの機能は AWK 本には述べられて
       いませんが、 Bell Labs および POSIX 標準の awk が有している機能です。

       プログラム実行前に変数代入を行なう -v オプションは新しい物です。 AWK  本によれば、コマンド
       ラインで指定された変数代入は  awk が引数をファイル名としてオープンする際に行なわれることに
       なります。つまり これは BEGIN ブロックの実行後です。しかしながら初期の頃の実装では、引数の
       中でファイル名に  先立って変数代入が指定されている場合には、代入は BEGIN ブロック実行の 
         行われていました。そしてアプリケーションは、この「仕様」に依存する  ようになりました。
       awk  がそのドキュメントに合うように直された時、昔の動作に依存している アプリケーションの便
       宜を図るためにこのオプションが加えられました。 (この仕様は AT&T  および  GNU  の開発者達に
       よって合意されました。)

       独自機能のための -W オプションは POSIX 標準に従ったものです。

       引数の列に特別なオプション “--” を指定すると、 gawk はそこがオプションの終わりであると解釈
       します。 互換モードにおいては未定義オプションは警告が出力され、それ以外のものは 無視されま
       す。 通常の実行においては残りの引数は AWK プログラムに引き渡されます。

       AWK  本は srand() の返り値を定義していません。 POSIX 標準 では、その関数が使っている種を返
       し、 乱数シーケンスを追跡できるようにしています。 したがって gawk における srand()  も現在
       の種を返すようにしてあります。

       その他にも以下のような新機能があります。  -f オプションの複数回使用 (MKS awkに倣いました);
       ENVIRON 配列; エスケープシーケンス \a\v ( gawk で最初に実装され、AT&T の awk  にフィー
       ドバックされました);  組み込み関数 tolower()toupper() (AT&T に倣いました); printf にお
       ける ANSI C 変換指定 (AT&T 版で最初に実装されました)。

GNU 拡張

       gawk は POSIX awk に対して多くの拡張が行なわれています。  この節ではそれらについて解説しま
       す。 --traditional オプション付きで gawk を起動することによって、 ここで述べられている拡張
       機能をすべて禁止することができます。

       gawk が持つ以下の機能は POSIX awk では使用できません。

              • エスケープシーケンス \x 。( --posix で抑止できます。)

              • fflush() 関数。( --posix で抑止できます。)

              • systime(), strftime(), gensub() の各関数。

              • 入出力リダイレクトで利用可能な特殊ファイル名は理解されません。

              • 変数 ARGIND, ERRNO, RT は特殊変数ではありません。

              • 変数 IGNORECASE とその副作用は利用できません。

              • 変数 FIELDWIDTHS と固定長フィールド分割。

              • RS の正規表現としての使用。

              • FS に空文字列を設定することにより各文字を切り出す能力と、 split() の  3  番目の引
                数。

              • -f  オプションで指定されたファイル名についてパス検索を行わないこと。 よって、環境
                変数 AWKPATH は特殊な変数ではありません。

              • 現在の入力ファイルに対する処理を終わらせるために使用される nextfile 。

              • 配列全体を削除するために使用される delete 配列 。

       AWK 本は関数 close() の返り値を定義していません。 gawkclose() は、ファイルやパイプをク
       ローズする際に呼び出す fclose(3) や pclose(3)、 からの返り値を返します。

       オプション --traditional 付きで gawk を起動し -F オプションへの引数 fs として “t” を与えた
       場合に、 FS の値はタブ文字に設定されます。 gawk -F\t ...  とタイプしても、シェルが単に “t”
       をクォートするので、“\t” は -F オプションに渡されません。 これは少々見苦しい特殊事例ですの
       で、デフォルトの動作としては 採用されていません。 --posix を指定した場合にも、この動作は行
       なわれません。 タブ文字をフィールドセパレータとして使用したい場合には、 クォートを使用する
       のが最良です: gawk -F'\t' ....

歴史的機能

       gawk は歴代の AWK の実装にあった  2  つの機能を備えています。  1  つめとして、組み込み関数
       length() は引数無しで呼び出せるだけでなく、さらに括弧無しでも呼び出せます!  したがって

              a = length     # Holy Algol 60, Batman!

       は以下の2例と同じです。

              a = length()
              a = length($0)

       POSIX  標準ではこの機能は  “deprecated”  と注意書きされており、  gawk ではコマンドラインで
       --lint を指定した場合に、この機能の使用に対して警告を出力します。

       もう 1 つは、 while, for, do ループ本体の外でも continue, break ステートメントを使用できる
       という機能です。  伝統的な  AWK  の実装では、このように使用した  continue ステートメントを
       next ステートメントと等価なものとして扱ってきました。 gawk では --traditional が指定された
       場合に、この機能を使うことができます。

環境変数

       環境に POSIXLY_CORRECT が存在する場合には、 gawk はコマンドラインで --posix が指定されてい
       る時と全く同じ動作をします。 このとき --lint が指定されていると gawk  はこの作用についての
       警告メッセージを出力します。

       AWKPATH 環境変数を使用して、 gawk-f および --file オプションで指定されたファイル名を検
       索するディレクトリを指定できます。

バグ

       コマンドラインでの変数代入機能を使用するには、変数への代入を直接  コマンドラインに書けばよ
       く、 -F オプションをつける必要はありません。 このオプションは昔の awk との互換性のためだけ
       に残されています。

       ファイル /dev/fd および /dev/stdin, /dev/stdout, /dev/stderr  を実際にサポートしているシス
       テムでの gawk からは、それらがないシステムとは違った出力が得られるかもしれません。 gawk は
       それらのファイルを内部で解釈する際に標準出力への出力を /dev/stdout  への出力と同期させます
       が、それらのファイルを持つシステムでは 出力はそれぞれ異なるファイルへ向けられます。 利用者
       の方で気を付けるようにしてください (Caveat Emptor)。

       文法的に誤った単一文字プログラムはパーズスタックを溢れさせる傾向があり、  まったく分からな
       いメッセージを生成する傾向にあります。  このようなプログラムの診断は驚くべきことに一般に難
       しく、 診断の努力はまったく無意味になります。

バージョン情報

       このマニュアルは gawk バージョン 3.0.6 について記載しています。

作者

       UNIX awk の最初のバージョンは、AT&T Bell Labs の Alfred Aho  と  Peter  Weinberger  および
       Brian  Kernighan によって設計、実装されました。 Brian Kernighan はその保守と改良を続けてい
       ます。

       Free Software Foundation の Paul Rubin と Jay Fenlason が、Seventh Edition UNIX で配布され
       た最初のバージョンの  awk と互換性を持つように gawk を書きました。 John Woods は数々のバグ
       修正を送って下さいました。 David Trueman は、Arnold Robbins が送って下さった内容をもとに、
       gawk を新バージョンの UNIX awk 互換にしました。

       DOS への最初の移植は Conrad Kwok と Scott Garfinkle によって 行なわれました。 現在は Scott
       Deifik が DOS 版の保守をしています。 Pat Rankin は VMS への移植を行ない、Michal Jaegermann
       は  Atari  ST への 移植を行ないました。 OS/2 への移植は Kai Uwe Rommel が Darrel Hankerson
       の助けを借りて 行ないました。 Fred Fish が Amiga サポートの提供を行いました。

バグレポート

       gawk のバグを見付けたら、電子メールを bug-gawk@gnu.org  宛に送ってください。  電子メールに
       は、オペレーティングシステムとそのリビジョン、  gawk  のリビジョン、コンパイルに使用した C
       コンパイラ、 問題を再現するできるだけ小さなテストプログラムとデータを記述してください。

       バグレポートを送る前に 2 つのことを行ってください。 第 1 に、最新の gawk  を使用されている
       ことを確認してください。  多くの (通常微妙な) バグが各々のリリースで修正されていますので、
       ご使用のものが古い場合には問題は既に解決されているかもしれません。 第 2 に、このマニュアル
       ページとリファレンスマニュアルを注意深く読み、    あなたがバグだと思うものが確かにバグであ
       り、 大きく変わった言語仕様ではないことを確認してください。

       バグレポートを  comp.lang.awk  に投稿することだけはしないでください。  gawk   の開発者達は
       時々このニュースグループを読みますが、 バグレポートをこのニュースグループに投稿しても バグ
       レポートとして信頼性がありません。 上記のアドレスへの電子メールでお願いします。

謝辞

       Bell Labs の Brian Kernighan  はテストおよびデバッグの間、貴重な助力を  提供して下さいまし
       た。 感謝致します。

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